新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

配達されなかった3通の手紙(後編)

 2通目の手紙も失われて、最後の2人がすがったのはもともとの現場に残された金庫。実は金庫は新旧あって、古い金庫に最後の1通が残されていた。ウォーカーが査問委員会メイヤー判事宛てたもので、

 

・英国船ルシタニア号の沈没に関する聴聞会を行ったと聴いた

・嘘の上塗りで終わることがないように、私が沈没させたことを告白する

 

 とある。ルシタニア号はドイツのUボートによって沈められ、1,200人もの犠牲者を出した。この事件によって、WWⅠに米国が参戦したことは周知である。連合国にとっては(死者はともかく)ありがたい事件であった。

 

 歴史家は、ルシタニア号がUボートよりずっと優足だったのに、わざわざ速度を落としていたことや、護衛艦が任務を打ち切ってしまったことを不思議がる。200人近い米国人や米国からの軍事物資を載せていたのを、何者かがわざと狙わせたような・・・。

 

        

 

 手紙の中にある短い暗号文を解読しようとするギリアンとマックスの2人は、再三襲撃を受ける。そしてついに解いた暗号は、WWⅠ当時英国海軍が使っていたもので、船舶の位置を示すものだった。

 

 謎の郵便物の転送ルートは、ワシントンDCの私書箱が終点になっていた。ホワイトハウスも近いその郵便局の私書箱を借りていたのは、英国大使館の所属員を名乗る者で、記録にない昔からずっと利用しているという。ただ決済は現金払いで、大使館もそんな私書箱のことは知らないという。追及を続ける2人に上司は「ウォーカーは、名うての詐欺師。手紙そのものが信用できない」と捜査の打ち切りを迫る。停職処分を受けてしまったギリアンは・・・。

 

 WWⅠ時代の大事件を背景に、事態を隠ぺいしたい勢力に挑む郵政捜査官の活躍を描いた力作です。展示艦となっている、WWⅠ当時の巡洋艦内での闘いは迫力がありました。当時もっとも米国を引きずり込みたがっていた英国の海軍大臣は、かのチャーチル卿。ありえた過去と、それを隠そうとする現代の事件がからみあった、興味深い作品でした。