新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

殺し屋に狙われた殺し屋

 2000年発表の本書は、名匠ローレンス・ブロックの<殺し屋ケラーもの>。以前連作短編集「殺し屋」を紹介(*1)していて、そこに収められているのが1990~1998年の作品だった。本書はその後日談とも言える長編。しかし内容は、ハンドラーのドットが受けてくる殺しの仕事を、ケラーが次々にこなしていく連作の面も持っている。

 

 ニューヨーク在住のケラーは、原則そこでは仕事をしない。だから依頼を受けると、1週間ほど旅に出るわけ。ケラーは芸術も愛でるし、報酬は趣味である切手収集に費やす。決して守銭奴でもなければ、血に飢えた獣でもない。

 

 何度か殺しを重ねていくうちに、妙なことが起きた。殺しを終えたケラーの派手なコートを、誰かが間違えて着て行ってしまい。その男が射殺体となって見つかった。さらに、ケラーが殺すはずだった目標が、2人続けて別の誰かに殺されてしまう。

 

 また、ふと知り合った女が(何も知らないはずなのに)ケラーの右の親指を見て「人を殺す手相」という。気にしたケラーは占星術師を訪問するが、彼女もまたケラーの仕事で「○○の方位は危険」と予言する。

 

        

 

 予言のことはともかく、ドットとケラーの得た結論は「誰かがライバルとしてのケラーを殺そうとしている」だった。他にも殺された殺し屋が何人かいて、依頼を得やすくするために供給者を減らしているらしい。その正体不明の殺し屋をロジャーと名付けた2人は、相手をあぶりだそうとするのだが・・・。

 

 いくつものエピソードが重なり合っていて、本筋ではないのだがケラーが警官が容疑者になっている窃盗事件の陪審員を努める話が面白い。目立ちたくないケラーは、意図的に陪審員逃れをするのはまずいとして大人しく陪審員に加わる。そこでの評決に至る議論や手続きは、かなりヴィヴィッドだ。

 

 市井に生きる殺し屋の生活を描く、稀有な物語です。作者の才能が分かりますが、ミステリーも随分変質したようで・・・。

 

*1:ケラーは旅が好きだ - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)