名作「鷲は舞い降りた」などで有名な、冒険小説の雄ジャック・ヒギンズの比較的初期の作品(1969年発表)が本書。わたしことステーシー・ワイアットはハーバード大学で学んだこともある青年だが、母親の死がきっかけで家を出て傭兵になる。金の密輸に関与してエジプト政府に捕らえられ、収容所で半死半生のところを傭兵仲間に助けられる。
何をやらせてもできるヤツというのはいるもので、彼はピアノもプロ並みの上に初めて拳銃を持たされるとすぐに銃の名手になってしまう。それで傭兵稼業をしていたわけだが、ルーツをたどると祖父はシチリアのマフィアの頭目である。
ステーシーを助けた昔の仲間であるバークはオーストリア人の富豪ホッファから、義理の娘の救出作戦を依頼されていた。
その娘ジョアンナは、シチリア島の山賊セラフィーノ一味に誘拐されたもので、ホッファが身代金を払ったのに、身柄を返してくれないという。バークの頼みで救出作戦に加わることになったステーシーは、セラフィーノ一味が祖父たちと対立関係にあることを知る。シチリアに戻ったステーシーは、祖父の部下たちの助けを借りてジョアンナの行方をつきとめるのだが、その過程でホッファの情婦ローザとわりない関係になってしまう。
AK-47やUZIで武装したステーシーとバークら4人は、セラフィーノの籠る山荘付近に夜間空挺降下し、セラフィーノの手からジョアンナを救出しようとするのだが・・・。プロの傭兵らしく、ステーシーがそれぞれの武器を吟味するシーンが面白い。特に「最後の武器」である拳銃は、スミス&ウェッスンの回転式に5発だけ詰めたものを愛用している。
確かに5発では不十分なのだが、10発以上撃てるブローニングなどのオートマチックはジャムることが多いし、遊底を引かないと発射できない。回転式ならダブルアクションで引き金をひけば撃てるし、万一不発でも次弾をすぐ撃てる。同じようなことを、「ゴルゴ13」が話すシーンも覚えている。