2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧
本書は「本格の鬼」鮎川哲也の「ペトロフ事件」に次ぐ第二作、作者の最高傑作と評される作品である。主な被害者と容疑者4人は、鬼貫警部の大学時代の同級生(法学部)との設定で、人物名が独特なのは「稚気」のゆえだろう。イニシャルが、A.A、B.B、C.C、Z.…
2012年発表の本書は、東京・青山の老舗ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」の副校長奥山久美子氏の、ワイン選び教本。日本で消費されるワインの価格帯を、 ・1,000~2,000円 カジュアル ・2,000~5,000円 中級 ・5,000~20,000円 高級 ・20,000円以…
1990年発表の本書は、ご存じ津村秀介の「伸介&美保もの」。「宍道湖殺人事件」に始まる湖シリーズの1冊で、舞台は日本最大の湖琵琶湖。京都から東へ向かうJR路線は、琵琶湖を挟んで北に湖西線、南に東海道線と二又に分かれる。湖西線で分岐駅山科の次の駅…
2003年発表の本書は、昨日「褐色の街角」を紹介したマルコス・M・ビジャントーロの第二作。前作で麻薬組織のボスであるムリージョ(通称テクン・ウマン)の圧力を受けながらも<翡翠のピラミッド>事件を解決したシングルマザー刑事ロミリアは、首に受けた傷に…
作者のマルコス・M・ビジャトーロはサンフランシスコ生まれ、テネシー州や紛争が激しかったころのグアテマラやニカラグアで過ごし、現在はアラバマ州で中南米からの移民の相談を受けていると解説にある。2001年の本書がデビュー作、以後2年に一度のゆったりと…
今月日本経済の行方について、2冊の対照的な書(*1)を紹介した。どうしても生産性向上は悪だとする森永教授の主張は受け入れがたく、もう1冊日本の成長戦略を語る本書(2022年発表)を読んでみた。著者松江英夫氏はデロイト・トーマツの執行役員、主張は…
本書は2003年発表、宗教象徴学の専門家ラングドン教授を主人公にしたシリーズの第二作。作者のダン・ブラウンは、米国の英語教師から転じた作家。両親・妻ともに数学や宗教・芸術に造詣の深い人たちである。前作「天使と悪魔」でヴァチカンの危機を救ったラ…
1984年発表の本書は、グローヴァー・ライトの第三作。元はミュージシャンだった作者は、60年代に米軍の依頼で各地の慰問に行き、軍隊との接点を持った。後にドバイのクラブで歌うようになり、支配人になって現地の特殊部隊員らと交流を持った。英国特殊部隊…
2022年発表の本書は、ジャーナリスト清水克彦氏の手になる台湾有事の背景と展望。筆者は軍事が専門ではないが、文化放送のMCを務めて人脈が広がり、多くのキーマンにインタビューして本書をまとめている。 そもそも今の中国は、米国が育てた。ソ連に対応した…
本書は、ファンタジー作家(と言ってもいいよね)レイ・ブッラドベリの短編集。作者の長編は以前「火星年代記」と「何かが道をやってくる」を紹介しているが、前者はSF、後者はファンタジーだ。デビュー時のSF色が、時代を経てファンタジーになっているよう…
密室の大家ジョン・ディクスン・カーは、パリの予審判事アンリ・バンコランものから、英国人の太っちょ探偵2人に主人公を移してブレイクした。カー名義のフェル博士と並び、カーター・ディクスン名義の本書(1934年発表)では、英国情報部の高官ヘンリー・…
本書は、2023年に野村総合研究所が発行した、経営者向けの啓発本。テーマはサイバーセキュリティで、特に企業経営者に向けて、 ・セキュリティというが、経営者にとってはどんなリスクなのか ・サイバー攻撃などによって、実際どのような被害が起きているの…
本書は2015年にノルウェーで発表された犯罪小説、作者のジョー・ネスボもオスロ在住のサスペンス作家だ。作者は2000年代から、児童向けの<Dr.プロクターもの>や一般向けの<刑事ハリー・ホーレもの>を書いている。 本書の舞台は1977年クリスマス前のオス…
2020年発表の本書は、欧州暮らしが長く6ヵ国語を話すフリージャーナリスト宮下洋一氏の<排外的ポピュリズム>レポート。筆者は、チェコ・オランダ・ドイツ・イタリア・フランス・イギリスを巡り、ポピュリズム政党党首や市民、移民にもインタビューして事…
1960年発表の本書は、エリス・ピーターズのクリスマスミステリー。作者は英国ミステリー界では「修道士カドフェルもの」などで有名とのことだが、これまで手に入っていない。以前シャーロット・マクラウド編のアンソロジー「サンタクロースにご用心」に1作…
本書(1999年発表)は、「刑事コロンボ」シリーズの比較的新しい作品。このシリーズは1968年から7シーズンと、1989年から3シーズン+スペシャル版で2003年まで新作放映は続いた。デビュー作「殺人処方箋」の頃には41歳だった主演のピーターフォークは、80…
1995年発表の本書は、スー・グラフトンの「キンジー・ミルホーンもの」。シリーズ中最高傑作との評価されるもので、サンタ・テレサの私立探偵キンジーは、ダラスからシカゴまで駆け抜ける「宝探し」をする羽目になる。 きっかけは、家主ヘンリーの知り合いの…
このDVDは、リメイク版「Hawaii-5O」のシーズン2。前シーズンの最後に、宿敵ウォー・ファットの奸計に嵌り知事殺しの罪を着せられたマクギャレット少佐は、脱獄して罪を晴らそうとする。別件で留置されていたコノも、危険な囮捜査に従事する形で復職を果た…
2020年発表の本書は、国際政治評論家白川司氏の「日本学術会議追及」。菅内閣がこの組織の構成員半数の改選にあたり6名を選ばなかったことから、多くの市民にこの組織のことが知られるようになった。本書は同会議の問題を追求したものだが、多少偏向してい…
ミステリーの女王アガサ・クリスティは、本当はスパイものが大好き。デビュー作「スタイルズ荘の怪事件」でもその傾向があるし、トミー&タペンスが登場する4作は明るいスパイものの典型だった。1970年発表の本書は、ポワロもマープルも登場しないノンシリ…
来年の米国大統領選挙も、この顔合わせになると予想されている。2021年秋、バイデン政権が誕生した後に、同志社大学法学部の村田晃嗣教授が発表したのが本書。その年、一応の決着は付いたはずなのに「選挙は盗まれた」と信じるトランプ支持者も多く帯にある…
2021年発表の本書は、同志社大学政策学部の吉田徹教授の民主主義体制論。なんと、くじ引きで政策担当者(議員等)を決める「ロトクラシー」という政治手法がテーマだ。 現在多くの民主主義国で行われているのが、代表制民主主義。僕たちは民主主義国対専制主…
1966年発表の本書は、多作家西村京太郎の初期の作品。前年サリドマイド訴訟をテーマにした社会派ミステリー「天使の傷痕」で江戸川乱歩賞を獲得した作者が、一転して太平洋戦争当時の日米和平工作を描いたスパイスリラーとして世に送ったもの。 「寝台特急殺…
昨日、軍事ライター兵頭二十八氏の、技術・戦術面から見た日米開戦の状況分析「真珠湾の真実」をご紹介した。後年伝えられていたより、さらに日米間の戦力格差は大きかったことが分かった。それでは、なぜ無謀というより絶望の開戦に至ったか、高名な歴史探…
2001年発表の本書は、以前「こんなに弱い中国人民解放軍」「日本転覆テロの怖すぎる手口」を紹介した軍事ライター兵頭二十八氏の初期作品。戦争をリードするのは古来技術だが、その比重が近代には途方もなく大きくなった。国力が10~20倍ある米国に挑んだ帝…
英国の本格ミステリー作家には、女流が多い。女王クリスティをはじめセイヤーズやアリンガムから近年のP・D・ジェイムズなど枚挙にいとまがない。そんな中で、最近まで日本に紹介されていなかった大家がいる。それが本書の作者E・C・R・ロラック。匿名作家であり…
昨日加谷珪一氏の「スタグフレーション」で、賃金が上がらず物価が上がる経済危機の中では、生産性を上げるしかないとの主張を紹介したのだが、2023年発表の本書は、それとは真逆の主張をしている。著者の森永卓郎氏は獨協大学教授、TVでもおなじみの論客で…
2022年発表の本書は、気鋭の経済評論家加谷珪一氏のインフレーション論。景気後退期のインフレーションを、スタグフレーションと呼び経済学上極めて良くない事態とされている。今の日本は、そうなりかかっているというのが筆者の主張(*1)である。 本書で引…
フランスの作家モーリス・ルブランが、いかにもフランスらしい「名探偵」アルセーヌ・ルパンを世に送り出したのは、1905年だった。神出鬼没で変幻自在な強盗紳士、警察のハナ先から貴重なものを失敬するヒーローである。多くの作品が書かれ、のちに「ルパン三…
G20/B20の会合の中で、中露らとは違った意味で困った国なのがサウジアラビア。「国境を越えるデータ」を決して認めず、グローバル経済の足かせとなっている。ただ、本書(2021年発表)の帯にあるように、謎に包まれていて内実が見えない。そこで宗教学と現代…