新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

紀行・その他

もう1冊のガイドブック

一昨年「名城の日本地図」を紹介したが、同じテーマをもっとビジュアルに示してくれたのが本書。2012年の発表で、BS朝日の人気番組「日本の城ミステリー紀行」で番組の案内役を務めた歌舞伎俳優坂東三津五郎(十代目*1)が、27の城を紹介してくれる。筆者は…

マニアのためのガイドブック

僕も20歳前後まではそうだったのだが、ミステリーマニアとして「Best○○」という言葉には弱い。その中に自分が読んでいない本がどれだけあるか、リストから消込みをして本屋通いをすることになる。 2012年発表の本書は、文春文庫が日本推理作家協会員やマニア…

人類の脳がもたらす「不都合」

本書は、以前「上級国民・下級国民」を紹介した橘玲氏の心理学的人間の行動分析。<週刊新潮>に2021~2022年に連載された「人間、この不都合な生き物」を、加筆修正して書籍化したものだ。前著は社会課題について「言ってはいけないこと」としてまとめたも…

インシャラー、ブクラ、マレシ

「神の汚れた手」などの諸作で知られる作家曽野綾子氏。1975年に始めてアラブの国を訪れ、以後交流を深めたと前書きにある。アラブ人の本音に触れるようになり、2003年に発表したのが本書。かなり警句的だが、彼の民族の行動様式を理解させてくれる書である…

1999年7月、人類滅亡?

1974年発表の本書は、<神津恭介もの>などで知られる高木彬光の「ノストラダムス大予言についての論考」。当時五島勉著「ノストラダムス大予言」が売れていて、この予言の的中率は99%で、1999年7月に人類の99%が死滅するとの言説が流れていた(*1)。天…

コロナ禍にも耐える底力

2021年発表の本書は、昨日に引き続き柏井壽氏の京都解説。「COVID-19」禍で大打撃を受けている京都の街を見て、筆者がその復活を予測した書である。パンデミックの前、京都はオーバーツーリズム状態。東山の麓を巡る206号系市バスは、大きな荷物を持った外国…

碁盤の目の中のスポット188

行楽シーズンである。今日と明日、京都出身のエッセイスト(元は歯科医)柏井壽氏の京都紹介を取り上げたい。2019年発表の本書は<洛中通り案内>。京都の中心市街地は碁盤の目のように通りが東西南北に走り、住所ではなく「○○通り▼▼下がる」などと交差点名…

歴史好きの旅行者の必帯書

本書は京都生まれの歴史作家澤田瞳子氏の、京都旅行エッセイ。<問題小説>に2005~07年に連載したコラムを、四季別に編集したもの。これまで何冊か京都の旅行書を紹介してきたが、あるものは歴史学的過ぎ、あるものは「るるぶ」に近いようなガイドブックだ…

知っておいて損のないイタリア

2009年発表の本書は、ロンバルディア平原の田舎町クレモナ出身の大学教員、アレッサンドロ・ジェレヴィーニ氏の作品。著者はヴェネチア大学から東大を経て、本書発表当時は早稲田大で准教授を務めていた。日本文化・文学にあこがれて19歳の時に初来日、日本…

大江戸って小さかったんだ

2003年発表の本書は、大江戸研究者大石学氏の編纂になる、東京駅名探訪。東は葛西、北は赤羽、西は羽村、南は大森の中にある56の駅の歴史について、20名の著者が論考を寄せている。 通して思ったのは「大江戸って小さかったのだな」ということ。浅草は郊外の…

嵯峨育ち、宇治暮らしゆえ

本書は以前「京都ぎらい官能編」を紹介した、NHK「いけず京都シリーズ」の案内人井上章一国際日本文化研究センター所長が、2016年の新書大賞を受賞した記念作。筆者は京都市右京区嵯峨育ちゆえ、自己紹介欄に京都市ではなく京都府出身と書くという。外部の人…

外からだから見える事

今日2月22日は、忍者の日。2019年発表の本書は、直木賞作家姫野カオルコさんが、故郷滋賀県のことをやや自虐的に綴ったもの。筆者は1958年甲賀市生まれ、「昭和の犬」で直木賞を受賞し、東京と故郷を往復しながら作家活動を続けている。その滋賀県だが、あ…

「源氏物語」は読んでいないので

今年のNHK大河ドラマの舞台は「源氏物語」なのだそうだ。そういえば、歴史好き読書好きの僕だが「源氏物語」は読んでいないし、あらすじさえ知らない。だからというわけではないが、Book-offでふと手に取ったのが本書(1993年発表)。弁護士作家和久峻三作「…

追悼、夕張食堂の歌姫

歌手の大橋純子さんが亡くなった。享年73歳。後に債権管理団体となる夕張市の出身で、夕張食堂のお嬢さんだった。高校生の頃、そのパワフルな歌声、特に爆発するような高音に驚いてファンになった。創元推理文庫の本格ミステリーを買うのを我慢(!)して、L…

インバウンドの津波をくぐりぬけ

今年、家内が大学時代の友人たちと京都に一泊旅行をしてきた。「大人の京都が割と良かった」とのことで、夫婦での京都旅行を計画しようと思う。その参考にと買ってきたのが本書(2012年発表)で、日経紙の京都支社が、 ・お勧めの京都 ・京都の楽しみ方 ・地…

コンパクトなガイドブック

京都の夏は暑いという。冬は底冷えするともいう。でも魅力的な観光地で、一度ちゃんと勉強したいと思っていた。そこで、2012年発表と少し古いものだが本書を買って来た。現地に詳しい11名の専門家の共著で、編者は説話伝承学芸会員の山嵜氏ら。秋になったら…

温故知新のサラリーマン論

「梟の城」で直木賞を獲り「竜馬がゆく」などの大作で知られる作家司馬遼太郎は、戦後いくつかの新聞社で記者をしていた。30歳を過ぎたら作家になろうと考え、文章修行をしたのがこの時代。新聞記者はプロフェッショナルだが、サラリーマンでもある。若い大…

鉄道院周遊俊妙居士

今日は鉄道の日(毎年10/14)である。明治22年に鉄道省によって制定された記念日だ。これまで多くの「鉄道愛」の書を紹介してきた宮脇俊三氏は、2003年に亡くなっている。享年76歳、戒名は「鉄道院周遊俊妙居士」という。本書は作者が晩年に情熱を燃やした「…

鉄道愛に溢れたエッセィ

大手の出版部長だった作者は、子供のころからの鉄道(というか汽車)好き。小学校入学前から時刻表を読みふけり、周囲は「神童」と思ったらしい。それが高じて日本中の国鉄全部乗るという快挙を成し遂げ「時刻表2万キロ」という著書で文壇デビューを果たし…

100人、もっとかな?分からない

本書はサウスカロライナ州フローレンスを中心に大量猟奇殺人をして、1991年に電気椅子にかけられたドナルド・ギャスキンズ(通称ピーウィー:ちび)の口述を、作家のウィルトン・アースが編集したもの。編者は、できるかぎりこの死刑囚の言葉(翻訳なのでよ…

五木流、人生100年時代の計

昨日、大前研一氏の「人生100年時代、自ら働き方改革をしてエクセレント・パースンになれ!」という書を紹介した。プロとしての生き様には参考になることも多いのだが、本書はもう少し内省的な「100年時代の計」。 著者の五木寛之氏は(紹介するまでもないが…

迷える子羊が歩く美食の道

昨日「添乗員が参照するヒミツの参考書:魅惑のスペイン」を紹介した。面白かったのだが、バスク地方を始めとする北スペインの記述がないのが、残念だった。そこで、ちょっと趣旨は違うけれど北スペインを歩いた記録である本書を探してきた。著者の小野美由…

アフリカはピレネーより始まる

本書は、先月「ドイツものしり紀行」を紹介した紅山雪夫氏の紀行、スペイン編。1997年トラベルジャーナル社より出版された「スペインの古都と街道」を改題、文庫化したものである。馴染み深いドイツと違い、僕ら夫婦のスペイン体験は一度だけ。 マドリードの…

エトルリアの里でワインを飲み歩く

折角「With COVID-19」の雰囲気が北半球には広がってきたのに、ロシア・ウクライナ紛争で海外旅行のハードルがまた増えた。そろそろ欧州へ行きたいな、イタリアやスペインが・・・と思って<HIS>のサイトを見ると、航空料金が以前の1.5~2倍になっているよう…

父なるライン、母なるドナウ

本書は以前「フランスものしり紀行」、先月「ヨーロッパものしり紀行」を紹介した紅山雪夫氏の紀行シリーズ・ドイツ編。ローマ時代の遺跡(今でも使われているものも!)や中世の城塞、街並みを訪ねて回る旅行案内である。原本は1993年にトラベルジャーナル…

よりDeepな旅行のために

著者の紅山雪夫氏の紀行本は、何冊も持っている。日本旅行作家協会理事を務めた人で、特に欧州への旅行の助け(期待を膨らませることも含めて)となる著書が多い。本書の内容は、1991年に<トラベルジャーナル誌>に掲載されたものを再構成して文庫化されて…

女王の三大戯曲、第三作

先々月「ねずみとり」、先月「検察側の証人」を紹介したミステリーの女王アガサ・クリスティの戯曲第三弾が本書。1956年の作品で、これもロングラン公演を達成しているし、日本でも上演されていると解説にある。 構成は3幕4場で、場面はケント州の邸宅<コ…

女王の三大戯曲、第二作

ミステリーの女王アガサ・クリスティは、小説の他にいくつかの戯曲も遺した。小説のTVドラマ化や映画化も多いのだが、もともと戯曲として書かれたものにはそれなりの風情もある。1950年代、女王の地位を不動にし水準以上の力作を作者が書いていたころ、全7…

勝負師の心理学・哲学

先月紹介した「麻雀放浪記」。これは実話をもとにしたフィクションだが、実際に「玄人(バイニン)」と呼ばれる世界で、20年間無敗の伝説を持つのが本書の著者桜井章一氏。どのような世界だったかは、上記フィクションを参照いただくとして、途方もない金額…

半世紀以上続くロングラン戯曲

本書はアガサ・クリスティの手になる、いくつかの戯曲のうちでも最高とされるもの。1952年に初演されてから、20世紀中に2万回以上上演されたという。舞台はロンドンから50kmほど離れた田舎町、古民家を改装してマンクスウェル山荘という民泊を始めたモリー…