2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧
深谷忠記の「壮&美緒シリーズ」は、2010年を過ぎたころから名探偵黒江壮の出番が減ってきた。全体で400ページほどあるのだが、50ページも出てきてくれない。これまで「壮の頭脳と勝部長刑事の足」で難事件を解決してきたのだが、その比重が「足」の方に移っ…
本書は米国大手シンクタンクCSISの上級顧問である著者に、訳者の奥山真司がインタビューした10編の記事をまとめたもの。著者エドワード・ルトワックはルーマニア生まれのユダヤ人、イタリアで育ち英国に渡り軍属として英国籍を取得している。専門は軍事史、…
米国を赤と青に分断した大統領選挙も、一応の決着をみた。しかし分断は終わっていない。上院・下院選挙では共和党が善戦したため、バイデン次期大統領は難しい政権運営を迫られるだろう。米国国民は、トランプ先生のもう4年は困るが、民主党にも期待できな…
本書(2005年発表)は、ロバート・B・パーカーの「スペンサーもの」の後期の作品。今回スペンサーは、ボストン郊外の(多分富裕層の子弟向けの)高校で起きた銃乱射事件の被告の少年を救う仕事を引き受ける。スキーマスクを被った2人の男が4丁の拳銃を撃ちま…
本書の著者、土屋大洋慶應大学教授とは何度も会合でご一緒し、どぎつい内容をユーモアたっぷりに柔らかく伝える話術に感心させられることが多い。言うまでもなくサイバーセキュリティ研究の第一人者であり、単なるテクノロジーを越えて地政学から安全保障の…
フレッド・カサックはパリ出身の作家、全部で7作の短めの長編小説を残した。1957年「死よりも苦し」でデビュー、大半の作品を1950年代に発表している。そのうち「日曜日は埋葬しない」でフランス推理小説大賞を受賞している。本書は、その前後に発表された…
マージェリー・アリンガムという女流作家は、英国ではアガサ・クリスティ、ドロシー・L・セイヤーズ、ナイオ・マーシュと並んで同時代の4大女流ミステリー作家として知られている。ただほとんど日本に紹介されていないマーシュほどではないにしても、日本の読…
本書は以前紹介した高木彬光の「百谷泉一郎&明子」ものの1冊で、1966年に7ヵ月にわたって「週刊大衆」に連載されたものである。全330ページほどだから、連載の各回に10ページほどの長さで掲載されていたのだろう。その10ページはある種の短編のようなもの…
57年前の今日、テキサス州ダラス市街でケネディ大統領が暗殺された。ソ連帰りの元海兵隊員オズワルドが逮捕されたが、警察からの移送中に彼も暗殺されてしまった。事件はオズワルドの単独犯行で一応の決着を見たが、それを信じない人は多い。1992年にはオリ…
本書の発表は1940年、英国大陸派遣軍がダンケルクから命からがらの撤退をし、フランスは降伏してしまった年だ。チャーチル首相が「Their Finest Hour」と強がっても、英国が一番苦しかったころに違いない。皮肉なことだが、前年に代表作「そして誰もいなくな…
エドガー・アラン・ポーの創始になるミステリーというもののうち、本格探偵小説という分野が黄金時代を迎えたのは1920年代からだろう。アガサ・クリスティのデビューも今回紹介するフリーマン・ウィルズ・クロフツのデビューも1920年である。 1926年には、S…
本書は、寡作家ながら日本のミステリー作家の中で最も精緻な本格ものを残した土屋隆夫の代表作。登場するのは、千草検事とその仲間の刑事たちである。多分40年以上昔に単行本で読んでいるはずだが、手に入ったのは光文社が「新装版」として出版したもの。3…
西村京太郎という作家は、膨大な作品を書いている。長編・短編集合わせるとその数600冊ほど。1965年の長編二作目「天使の傷痕」で江戸川乱歩賞を受賞している。その後、特に決まった探偵役を持たずノンシリーズを発表していたが、1978年の本書(40冊目)で十…
水上勉という作家は、非常に幅広い作風を持った人。100冊を超える長編小説があり、直木賞・菊池寛賞・吉川英治賞・谷崎潤一郎賞・川端康成文学賞などを総なめにしている。代表作として取り上げられるのは、 ・五番町夕霧楼 ・越前竹人形 ・飢餓海峡 などがあ…
2週間ほど前、横江公美著「隠れトランプのアメリカ」をご紹介した。11/3投開票だが、郵便投票などもあり簡単には決着しない。それを狙って10/31に緊急出版されたものだ。本書はもっと切迫した緊急出版、突然の安倍総理の辞任に伴い「安部後継」を自認してい…
本書は、津村秀介の「伸介&美保」シリーズの一編。殺人の舞台は、北陸本線と金沢の名勝兼六園。例によって容疑者には鉄壁のアリバイがあるのだが、その前の事件背景設定が秀逸である。作者は約20年にわたって「週刊新潮」の「黒い事件簿」を書き続けた人だ…
以前「悪党パーカー」シリーズを紹介したドナルド・E・ウェストレイク、多彩な作風で知られているがそのルーツは雑誌「マンハント」にある。ミステリー雑誌のひとつで、主にハードボイルド小説を掲載して人気を博した。ウェストレイクはハードボイルド短編で経…
作者のマイケル・バー=ゾウハーは、恐らくは元モサド隊員。六日間戦争(1967年)でダヤン国防相の報道官を務め、第四次中東戦争(1973年)では自ら空挺隊員としてスエズ運河を渡っている。自らの軍事・諜報経験を基にして「過去からの狙撃者」や「エニグマ…
本署(2002年発表)は、トム・クランシーとスティーヴ・ピチェニック共著の「オプ・センター」シリーズ第9作。これまでに第一作「ノドン強奪」を始め4作を紹介している。その中では第6作「国連制圧」が面白かった。米国の危機管理組織「オプ・センター」…
アン・クリーヴスの<シェットランド四重奏>は、本書(2010年発表)で一応完結する。「一応」と言ったのは、この後に「Dead Water(2013年)」という作品があるからだ。ただ作者がもくろんだ「冬⇒夏⇒春⇒秋」の季節毎の4作品の流れは、これで一区切りという…
1年ほど前、「ウィーンの密使」を紹介した藤本ひとみの、同じくフランス革命前後を舞台にしたミステリー。事件が起きたのはベルギー国境に近い北フランスの街アラス。この街は、1940年ロンメル将軍の「幽霊師団」が電撃戦を繰り広げたという歴史しか、僕は…
ルーファス・キングという作家のことは、今まで全く知らなかった。デビュー作「Mystery De Lux」は1927年の発表というから、同じニューヨークを舞台にしたミステリー作家としては、かのエラリー・クイーンよりも先輩である。第三作「Murder by the Clock」(…
1950年6月、金日成の北朝鮮軍は38度線を越えて「南朝鮮」に侵攻、瞬く間にソウルを陥とし釜山近くまで進撃する。その後米軍中心の国連軍が仁川に上陸作戦を敢行、逆に平壌を陥とし鴨緑江まで攻め上るが中国軍の介入で後退、結局38度線で停戦することになる…
本書は巨匠エラリー・クイーンの、最後から2番目の長編ミステリーである。以前最後の作品「心地よく秘密めいた場所」(1971年発表)を紹介しているが、本書はその1年前に発表されたものだ。 エラリーの活躍の舞台は、通常は父親は市警本部の警視をしている…
以前「視聴率の殺人」「ホッグ連続殺人」「ピンク・エンジェル」を紹介した、W・L・デアンドリアの第四作が本書(1981年発表)。2作間をあけて、メディア大手<ネットワーク>の特別企画担当役員マット・コブが帰ってきた。<ネットワーク>はNBCやCBSをモデ…
なんと訳したらいいのだろうか?本書は1989年発表なのだが、主婦の日常や家庭内での事件を扱うミステリーのことらしく、この頃から徐々に増えてきたと解説にある。「日常ミステリ」とか「家庭ミステリ」と訳すべきかと訳者は言うが、「井戸端会議ミステリ」…
先日「闇ウェブ」を取り上げた時に、インターネットの奥深い闇のところでは、麻薬や児童ポルノ、銃器、クレジットカード番号、口座情報、ID/パスワードなどが売られていて、その支払いには「足のつかないビットコイン」が使われていることを紹介した。今日…
本書は発行日2020年10月31日の、まさに出たばっかりの本。Book-off専門の僕が、なぜそんな本を持っているかと言うと、著者に送ってもらったから。横江公美東洋大教授とは20年来の知りあいで、15年ほど前に僕がタフツ大フレッチャー校との交渉役を務めた時ず…
刑事コロンボものは、ほとんどリチャード・レビンソンとウィリアム・リンクの合作によるものだ。ところがわずかに別の著者による原作があって、本書はそのひとつ。作者はアルフレッド・ローレンスである。・・・しかし実はこの作品、TVドラマ化されているもので…
「本棚」ではないのだが、このところ古い映画を見てついコメントしたくなることがある。今日はそんな一つの映画を紹介したい。題名は「頭上の敵機」、原題は「12-O'clock High」で、12時上空とは真上を指す。舞台となっているのは1942年ころの欧州西部戦線。…