新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

政治・経済書

「基地の島・自然の楽園」の真実

僕ら夫婦も大好きな国内旅行先である沖縄、何がいいかと言うと、温暖でアロハで過ごせるところと、物価の安さ。僕は前者が、家内は後者が気に入っている。定宿のある宜野湾市は普天間基地を抱えていて、早く移転が完了してほしいと思ってもいる。 本書は2015…

BIの具体的な試算

昨日、一昨日と新しい分配の在り方についての書を紹介した。 ・井手英策「欲望の経済を終わらせる」 ・井上智洋「現金給付の経済学」 どちらもが取り上げていたのが、BI(ベーシック・インカム)の議論。前者は<維新の会>が主張するBIでは、消費税率を62%…

反緊縮加速主義の提案

本書は以前「人工知能と経済の未来~2030年雇用大崩壊」を紹介した、新進の経済学者井上智洋准教授の最新(2021年)研究。「人工知能・・・」で、AI時代にはBI(ベーシックインカム)が必要との主張をしていた筆者は、その後の「COVID-19」禍で、2030年に来るべ…

反新自由主義の研究

本書は、以前「リベラルは死なない」で旧民進党の制作ブレーンであることを示した慶應大学井手英策教授の近著(2020年発表)。著者は反新自由主義の研究者で、本来「頼り合う社会」であるはずなのに、フリードマンやハイエクらの影響で世界経済が互酬、再分…

インドの勢いと内在する課題

中国包囲網としての「QUAD」に加盟しながら、ロシアに制裁を加える米国主導のG7に背を向けて、ロシア主催の「BRICS」に加わるインド。もうじき人口で中国を抜くだろう超大国インドの動向は国際社会の注目の的だ。しかし僕自身この国のことを良く知らないので…

「COVID-19」禍半年で見られた変化

2020年7月発表の本書は、主として月刊「Voice」に掲載された15の論考(書き下ろしであったり、インタビューをまとめた)を束ねたもの。全体として何かの主張に結び着けようというものではなく、多様な分野の学者、評論家、作家、コンサルタントなどが「COVI…

経済安全保障の特集記事

このブログで「雑誌」を取り上げるのは始めて。週刊誌など、昔は<週刊ベースボール>を買っていた時期もある。空港のロビーなどで<週刊文春>を読むこともあったが、このところはまったくご無沙汰。それなのになぜ<日経ビジネス>を取り上げるかと言うと…

MI6に学ぶインテリジェンス

2020年発表の本書は、国際ジャーナリスト山田敏弘氏が、引退したスパイらにインタビューしてまとめた「インテリジェンス教本」。題名はセンセーショナルに付けてあるが、サイバー空間を含めて日本のインテリジェンス能力やリテラシー向上の方向性を示したも…

中国・韓国に毅然と対する

2020年春に出版された本書は、ジャーナリスト櫻井よしこ氏が自らキャスターとして放映した番組内容を書籍化したもの。放映時期は2019年度下期で、6章(つまり6回放送分)が収められている。放映された番組はYouTubeチャンネルで、「櫻LIVE 君の一歩が明日…

軽やかで意味深い国際情勢論

先月、めいろまさんの「日本人はなぜ世界のニュースを知らないのか」を紹介したが、2021年発表の本書は同じテーマをこのお二人の対談形式で綴ったもの。 ・藤原帰一教授 国際政治学者 ・石田衣良氏 直木賞作家 藤原教授は僕が一番信用している国際政治学者だ…

危機は人々を倫理的にする

本書は以前紹介した「世界史の針が巻き戻るとき」と同じく、ボン大学のマルクス・ガブリエル教授にジャーナリスト大野和基氏がインタビューしてまとめたもの。エマニュエル・トッド教授と同様、Global & Digitalに反対する気鋭の哲学者である。 EUに感じる違…

監察医が診た社会の病理

本書は20,000体以上の死体を解剖した伝説の監察医上野正彦先生の、最新書き下ろしエッセイ(2014年発表)。著者には、「死体は語る」など法医学の専門的な視点から40冊ほどの著書がある。本書は特に近年日本で増えているDV、いじめ、孤独死などを「社会の病…

少子化対策の一助になるか?

「Global & Digital」に反旗を翻す人は少なくないが、高名な学者と言うとエマニュエル・トッド氏が一番かもしれない。ユダヤ系フランス人で、米国型のスタンダードは大嫌いと言う人。歴史学者・人口統計学者であって「女性の識字率が上がると、出生率は下が…

あらゆる暴力が承認された状態

ロシアのウクライナ侵攻は、新たな30年戦争の幕開けだとする識者もいる。連日報道される残虐行為、これまでもボスニア・ヘルツェゴビナやアフガニスタン、シリアなどで繰り返されてきた悲劇である。ただ今回は各国報道機関の注目度が異なり、あまりこの種の…

「大阪維新」の10余年

日本政界の今年最大のイベント(!)参議院議員選挙が、明日いよいよ公示される。一時期民主党が政権を担ったことはあるが、55年体制以降は実質的に自由民主党政権が継続している。現時点では政権交代を狙える野党はいないのだが、その第一の候補は「日本維…

長期政権を支えた無私の人

本書は、まだ「COVID-19」禍が始まったばかりの2020年4月に出版されたもの。以前「小説政界陰の仕掛け人」を紹介した、ルポライター大下英治の菅官房長官論である。「政界陰・・・」が扱っていたのは、中曽根・田中・竹下総理の陰にいた3人だったから、ずいぶ…

英国の悩みと戦略、ロシアの影

2019年発表の本書は、英国に赴任経験もある産経新聞の岡部伸編集委員が、「Brexit」国民投票の後に英国の事情をレポートしたもの。いくつかこのテーマの書物は読んでいるが、英国が抱える問題と共に次の時代に向けた新戦略を紹介していることに特徴がある。 …

防衛費GDP比2%を目指すなら

本書は、外務省で駐タイ大使などを務めた岡崎久彦氏が、2003~2005年にかけて新聞や月刊誌に発表した論考から収録したもの。筆者は外務省を退官してから、岡崎研究所で所長を務め、第二次安倍政権での外交・安全保障ブレーンだった。 これらの論考が書かれた…

最強のモラルパワー大国

米中対立に加え、ロシアのウクライナ侵攻によって、国際的緊張は一気に高まった。ロシアを非難する国は多いが、非難決議にあからさまに反対しないまでも棄権し沈黙(暗黙?)する国も少なくない。中国・インドの両大国もそうだし、欧米流の「正義」に眉をひ…

欧州を侵略する3つの脅威

2018年発表の本書は、読売新聞の三好範英編集委員が、欧州の危機的状況をレポートしたもの。筆者は3度、合計10年以上にわたりベルリン特派員を務めた。当時の人脈を生かして、以下の場所で政府・業界関係者ばかりでなく、一般市民にも取材して本書をまとめ…

TOP1万人の人事を決める選挙

正直まったく評価できない、韓国文政権の5年間が終わった。前の朴政権の最後がひどかった(支持率5%)から、当初80%という高支持率を得て始まったのだが、その後は失政続き。今回の大統領選挙では、激戦の末保守系野党「国民の力」の尹候補が、進歩派の…

日本に必要なのは理系経営者

本書は、菅内閣で政府の成長戦略会議委員を務め、 ・中小企業は小さいがゆえに問題を引き起こし、低生産性を招いている。 ・合併などで大きくなれない企業は、消えてもらうしかない。 ・特に実質税率ゼロの小規模事業者は、減らすべし。 と発言して物議を醸…

ぶっちゃけ日本ってどうよ、2021

一昨日外交官の認識(1993)、昨日ジャーナリストらの目(2004)で日本がどう見られていたかを教えてくれる書を紹介した。本書は2021年時点での「日本人ジョーク集」、すでに3冊出版されているシリーズの「令和編」だ。著者の早坂隆氏はノンフィクション作…

日本についての意識、2004

昨日「日本外交現場からの証言」で、1993年までの日本外交状況を現役官僚が記した書を紹介した。これが公式なものとすれば、2004年発表の本書は日本外交についての「10年後の民間からの評価」とも言えるだろう。主要な7ヵ国について各々の専門家(ジャーナ…

空気を読まない人たちの鼎談

「Brexit」やトランプ現象などを受けて、世界が変わりつつあると警告する書は多く紹介した。2018年発表の本書もその一つだが、特徴はこのお三方が鼎談していること。まえがきにジャーナリスト田原総一朗氏が「空気を読まない榊原英資元財務官、竹中平蔵元経…

使命感を持つ国士的な政治学者

僕は湾岸戦争のころから政治討論番組を見るようになったが、「朝まで生TV」と並んで必ず見ていたのが「サンデープロジェクト」。いずれも田原総一郎氏の司会になるものだが、「サンプロ」のコメンテータに本書の著者高坂正堯教授がいた。関西弁でトボけた語…

マネーというビッグデータ

意外なことだが、一橋大学野口悠紀雄名誉教授の著作を紹介するのは初めてらしい。Web上の記事(現代ビジネス等)をしょっちゅう拝見しているので、著作も呼んだつもりになっていたらしい。本書は2021年末に発表されたもの。もうBook-offの110円コーナーに並…

ヒトのグローバリゼーション

2019年発表の本書は、2017年に起きた「蓮舫二重国籍問題」を受けて、弁護士・法学者・ジャーナリストらで結成された<国籍問題研究会>のレポート。日本は二重国籍を公式には認めていない国だが、少なくとも90万人の重国籍者がいる。特に「一つの中国」原則…

憲法が先か、防衛が先か

これまで何冊か「憲法改正」についての本を読み、緊急事態条項がないと困るという話を理解した。しかし発展途上国のクーデターなど見ていると「軍が議会を制圧、憲法を停止して夜間外出禁止令を布告」などということもある。緊急事態になったら日本だって「…

ロシアとの欧州一長い国境

ロシアのウクライナ侵攻目的は「NATO拡大阻止」だったはずだが、意に反して中立を保っていたフィンランドやスウェーデンにNATO入りを促すことになりそうだ。欧州でロシアと一番長い国境線を接しているのがフィンランド。ロシア革命以前は、ロシアの支配下に…