2024-05-01から1ヶ月間の記事一覧
本書は以前「幻の女」などを紹介したウィリアム・アイリッシュが、コーネル・ウールリッチ名義で1948年に発表したもの。詩のような美文調と哀愁を帯びたサスペンスが特徴の作者だが、サスペンスにもいろいろな種類がある。本書は、不幸な事件で恋人を亡くし…
本書は元財務官僚で、嘉悦大教授の高橋洋一氏の政策論入門編。筆者がYouTube上の<高橋洋一チャンネル>に2022~23年に挙げた内容を書籍化したもの。政策からみの時事ネタを分かりやすく解説したもので、数字に強い財務官僚(*1)らしくEBPM(*2)の手法で、…
1992年発表の本書は、以前「蒲生邸事件」を紹介した宮部みゆきの社会派ミステリー。本書はミステリーでありながら、山本周五郎賞を受賞した話題作だ。犯罪者に撃たれてリハビリ休職中の本間刑事は、遠縁の青年和也から消えてしまった婚約者を探してくれと頼…
1986年発表の本書は、これまで2作を紹介したマイケル・ボンドの「パンプルムース&ポムフリットもの」。作者は童話「くまのパディントン」シリーズで有名だが、このようなユーモアミステリーも書いている。 主人公は元パリ市警警部で、クビになってからはグ…
本書は2017年にまとめられたものだが、恐らくは読売新聞なりその系列で連載されたコラムを再編したものだろう。著者の磯田道史教授は歴史学者、著書「武士の家計簿」が映画化され、NHK大河ドラマの時代考証なども手掛ける有名人である。現在は浜松市在住で、…
「スペンサーもの」などシリーズ作品で知られるロバート・B・パーカーには、なかなか優れた単発ものがある。以前「ダブル・プレー」などを紹介して、作者の手腕を評価したこともある。1994年発表の本書も、そんな単発もののひとつ。アイルランドがルーツの2つ…
昨日「完全犯罪を狙った奴ら」で、10の実犯罪録を紹介した。その中で多かったのは貧しい(&いかがわしい)男が資産家の女性にすりよって結婚し、妻を殺して遺産を狙うというケース。1975年発表の本書は、それを地で行ったユーモアミステリーである。とはい…
1995年発表の本書は、ロサンゼルス検事局のマーヴィン・J・ウルフ検事と、ジャーナリストのキャスリン・マダーの共著になる、完全犯罪を狙った連中の始末記。その犯行の経緯や、犯人側が「自分は捕まらない」と思っていた犯罪が露見するプロセスが描かれている…
1985年発表の本書は、デビュー作「死人はスキーをしない」などを紹介してきたパトリシア・モイーズの<ヘンリ&エミーもの>。子供のいないティベット主任警視夫妻は、仲睦まじくあまり豪華ではない休暇旅行にたびたび出かけ、食事やワインを楽しんでいるう…
国連でLAWS(Lethal Autonomous Weapon System)禁止の規制検討が進んでいるが、本書は2019年の時点でこのような兵器の区分などを明示したもの。著者の栗原聡氏は慶應大学理工学部教授、AI・ネットワーク研究者である。本書の前半は、 ・人工知能の歴史 ・知…
家内の好きだったBBCのドラマに「プロヴァンスの12ヵ月」(ピーター・メイル)がある。1999年発表の本書は、そのドラマにも刺激を受けてフリーライターの大谷浩己氏が、ボルドーで過ごした1年間の記録である。著者はボルドーのアパルトマンで暮らし、プロヴ…
本書は、東急電鉄の執行役員・都市創造本部運営事業部長である東浦亮典氏が、これからの鉄道会社の在り方を示したもの。2018年の時点で(「COVID-19」を予測したわけではなかろうが)場所に囚われない、都心でなくてもいい働き方を提案している。題名の「私…
1995年発表の本書は、2ヵ月連続で紹介してきたデボラ・クロンビーの<ダンカン&ジェマもの>の第三作。ロンドン警視庁のエリート警視ダンカン・キンケイドと部下でシングルマザーのジェマ・ジェイムズ巡査部長が活躍するものだ。ダンカンは警視という役職…
2020年発表の本書は、以前「砂漠の狐ロンメル将軍」を紹介した日本の戦史家大木毅氏の第二弾。「ドイツ装甲部隊の父」と呼ばれ「電撃戦」を考案して実践した戦車将軍と言われるのが、ハインツ・グデーリアン上級大将。 プロイセンの大地主の家に産まれ、陸軍…
歴史ミステリが得意な英国作家ピーター・ラヴゼイには、30冊ほどの著作がある。いくつかのシリーズがあるが、デビュー作「死の競歩」以来8作の「クリッブ部長刑事もの」が初期のもの。1978年発表の本書は、その最終作品である。 舞台は、1888年ヴィクトリア…
本書は2022年1月から2023年6月までの間、朝日新聞(&デジタル)に掲載された岸田政権関連の記事を加筆修正して集大成したもの。衆院補選で3連敗しても怯む様子を見せない岸田総理について、 ・聞くことは聞くが、進言を受け入れることはない ・現実主義…
1935年発表の本書は、ずっと探していた「倒叙推理3大傑作」のひとつである。作者のリチャード・ハルは以前「他言は無用」を紹介しているが、15作中邦訳は3作だけ。本書は「傑作」とされながら学生の頃には絶版になっていて、読めずにいたものだ。 ウェール…
2013年発表の本書は、以前<シェットランド四重奏>を紹介した、アン・クリーヴスのペレス警部もの。前作「青雷の光る秋」で恋人フランを亡くし、その娘キャシーをひきとってシングルファーザー暮らしをするペレス警部。前作から3年を経ての発表だが作中は…
1946年発表の本書は、本格マニアであるマルセル・F・ラントームが、書いた長編ミステリ3編のうちのひとつ。作者はこれらを、ドイツ軍の捕虜収容所で書いた。あまりに退屈な毎日だったからで、原稿は家族へ送るものに隠されて収容所から出た。彼はのちに脱走し…
本書は出版早々(2024年4月)のものを送っていただいた。出版元は<宣伝会議>だが、電通グループの専門PR会社<電通PRコンサルティング社>の手になるもの。副題に「新しい企業価値を創出する」とあるが、昨日紹介したようにプロパガンダが溢れる現代社会…
2020年発表の本書は、同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授内藤正典氏(多文化共生・現代イスラム地域研究が専門)の「分断」研究。世界で各種の分断が発生し亀裂が増しているが、政治とメディアがあるべき対応をしなかったからだとの主張が垣間見…
1941年発表の本書は、以前「幽霊の2/3」「家蝿とカナリア」などを紹介したヘレン・マクロイのベイジル・ウィリング博士もの。第二次世界大戦がはじまっていたがまだ平穏なニューヨークを舞台に、嫌われ者の富豪美女殺しにウィリング博士が挑む。 ロングアイ…
1954年発表の本書は、警察小説の雄ヒラリー・ウォー初期の作品。リアルな捜査劇を描くとともに、第二次世界大戦後米国の主要都市周辺に雨後の筍のように現れた「郊外住宅地(サバービア)」での市民の生活も紹介しているのが作者の特徴。都市への通勤圏にあ…
1935年発表の本書は、不可能犯罪の巨匠カーター・ディクスンの<H・M卿もの>。作者は、歴史・剣劇が好きで、大陸(特にフランス)が大好き。初期の頃はパリの予審判事アンリ・バンコランを探偵役にしたシリーズを書いていたが、英国を舞台にした巨漢探偵2人…
自民党が裏金問題を受けて派閥解消を掲げたが、そもそも規定に「派閥、分派を許さず」と明記している政党がある。それが、日本共産党。党としての行動を一致させるために有用な規定ともみられるが、逆に硬直した組織になって党首が長く居座ることになりかね…
本書は、以前お多福の捜査主任検事霞夕子ものの中編集「夜更けの祝電」を紹介した夏樹静子の中編集。日米ハーフの女性弁護士朝吹里矢子を主人公にした、中編5編が収められている。作者は学生時代から、NHKの推理クイズ番組のシナリオを手掛けていた。結婚・…
2011年発表の本書は、大艦巨砲主義架空戦記作家横山信義の(めずらしい)SF。この年に亡くなった小松左京の「見知らぬ明日」に感銘を受けた作者は、自分なりの「見知らぬ・・・」を書きたいと思い、本書から始まる短いシリーズを書いた。 ジュール・ヴェルヌの…
第二次世界大戦での陸戦といえば、やはり独ソ戦。2つの陸棲国家が総力を挙げて闘い、今のベラルーシ・ウクライナ・バルト三国・ポーランドなどで多くの血が流れた。欧州戦線と違い、太平洋戦線では大規模な陸戦はほとんどない。島嶼を巡る争いが主体で、大…
2020年発表の本書は、「永遠のゼロ」の作者百田尚樹氏の憲法論。以前「偽善者たちへ*1」を紹介していて、巷間言われるほど偏向した論客(要するに極右のこと)ではないと思った。憲法論としてはこれまで、 ・政治家(石原慎太郎) ・法学者(長谷部恭男、佐…
このDVDは、「NCISーLA:潜入捜査班」のシーズン4。前シーズンからよりエスピオナージ色が強くなり、終盤から登場する副局長グレンジャーと、管理部長ヘティの過去の連携と現在の対立が描かれる。このシーズンを通じて何度か登場するのが、冷戦時代ソ連が米…