歴史小説
2008年、「アンドロメダ病原体」「ジュラシック・パーク」などの著作で知られるマイクル・クライトンが亡くなった。享年66歳。作家として脂ののった年代なのに、喉頭がんで世を去った。まことに残念である。死後、使っていたPCから、2つの未発表作品が見つ…
2007年発表の本書は、歴史(戦国)作家和田竜のデビュー作。実は2003年に脚本として完成していたものを、小説に改めたものである。スペクタクルシーンはあるものの、映像化がしやすかったのだろう、2011年に映画化されている(主演野村萬斎)。 戦国末期、太…
本書(1997年発表)は、以前「ウィーンの密使」「聖アントニウスの殺人」を紹介した藤本ひとみの、やはりフランス革命を背景にした作品。フランス革命についてはバスティーユ監獄の襲撃や、革命勢力(ジャコバン派など)の内紛、王政諸国の介入くらいしか僕…
本書は文豪坂口安吾の手になるミステリー短編集であり、1950~1953年に発表された8編が収められている。作者は終戦直後に発表した「堕落論」や「白痴」で文壇の寵児となった人だが、昨年紹介した「不連続殺人事件」のようなミステリーも手掛けている。本書…
1993年発表の本書は、英国の冒険作家ダグラス・リーマン後期の作品。作者の作品は、これまで「志願者たちの海軍」など4冊の長編を紹介していたが、いずれもWWⅡを題材にしていた。本書はWWⅠが舞台。実は3部作の最終作品で、 ・緋色の勇者 1850~55年の西ア…
1995年発表の本書は、日本では珍しいインテリジェンス歴史ミステリー。作者の伴野朗は、元朝日新聞記者。外信部畑で、上海支社長の経験もある。デビュー作の「五十万年の死角」で乱歩賞を受賞してから、歴史・冒険・諜報ミステリーを得意とした作家生活に入…
明国が尚寧王を家臣と認め琉球国に封じるという儀式は、3~4ヵ月かけて行われる。百人規模の使節がやってきて、何度も宴会が行われるのだ。使節の下っ端でも傲岸不遜にふるまうので、士分のものだけでなく一般市民も頭を下げて暮らさなくてはいけない。 明…
「枯草の根」で江戸川乱歩賞を獲って文壇デビューした陳舜臣だが、ミステリーより中国の歴史ものが素晴らしい。「小説十八史略」や「秘本三国志」などをこれまでに紹介している。神戸生まれの台湾人である作者ゆえ、本書(1992年発表)の舞台琉球にも多くの…
都筑道夫という作家は非常に作風の広い人で、本書のような時代推理ものから現代もの、SFに至るまで多くの小説を残した。その大半は短編もしくはショートショートで、いずれも皮肉なユーモアが感じられる。ペンネームも10くらいはあり、シリーズものも多い。…
これまで「11枚のトランプ」「亜愛一郎の狼狽」などを紹介している泡坂妻夫の、時代小説が本書。「亜智一郎の恐慌」は幕末ものの短編集だったが、本書は安政時代の江戸を舞台にした長編冒険小説だ。 徳川御三家筆頭尾張62万石、その下屋敷が江戸の西北、今で…
小学生の時、お正月など少し長い休みに子供たちだけでゲームをしていた。高学年になってからは「Bankers」のようなものだったものだったが、低学年の頃はカルタのようなものだった。その中で覚えていたのが、当時TVドラマでやっていた「怪傑ゾロ」をモチーフ…
古い映画をNHK-BSで毎日のように放映してくれるのは、本当にありがたいと思う。特に戦争映画を録画することが多いのだが、西部劇や時代劇も懐かしくていい。これらの中でも、戦闘シーンが生々しく描かれているのが大好きだ。今回も「本棚」にではないのだが…
今日6月2日は本能寺の変の日。「信長の棺」に始まる本能寺三部作以降、戦国時代から徳川幕府初期の<歴史の真相>とも呼べる作品を、作者加藤廣は1ダースほど遺した。デビュー作「信長の棺」以下、千利休や九鬼水軍を扱った作品も以前紹介しているし、他…
以前大家司馬遼太郎の「新選組血風録」を紹介したが、そこでは全15編の脇役だった土方歳三が、本書では全編を貫く主人公である。京都の街で血なまぐさい風を吹かせる以前の三多摩での田舎道場の時代に始まり、甲府・下総・会津から箱館に転戦して戦死するま…
先日「英仏100年戦争などなかった。闘っていたのはどちらもフランス人」とする歴史書を紹介した。面白い視点と思ったので、作者が書いた小説というものを探してみた。佐藤賢一のデビューは「ジャガーになった男」という歴史小説、これで小説すばるの新人賞を…
本書は1955年の海洋冒険小説の巨匠、セシル・スコット・フォレスターの第二次世界大戦もの。作者はナポレオン時代の大英帝国海軍士官ホレイショ・ホーンブロワーもので、第二次世界大戦までに有名となった。しかし戦争が始まると、英国情報省に加わり海軍にも…
昨日司馬遼太郎「新選組血風録」を紹介したのも、このところ「巣ごもり」で古い映画を見ることが増えたから。BSの「木曜時代劇」など、懐かしさに溢れる作品を放映してくれる。先月は「仕掛人藤枝梅安」「柳生武芸帖」を見て、時代劇の良さを再認識している…
中学生の時、国語の先生に「Xの悲劇」を紹介してもらってから欧米ミステリーにハマった僕だが、それ以前はと言うと「時代小説」をよく読んでいた。そのなかでも最初(の頃)に読んだのが本書。大家司馬遼太郎が「小説中央公論」に1962年に連載した、15編の…
本書は歴史小説の大御所池波正太郎の手になる、その後の真田家の物語である。以前紹介した「真田太平記」全12巻は、11巻目でクライマックスともいえる「大阪夏の陣」が終わり、12巻は徳川方として生き残った真田信之が、信州松代10万石の基礎を固める話だっ…
以前泡坂妻夫の「亜愛一郎の狼狽」を紹介したが、本書はその時代劇版。時代設定は幕末なのでもちろん愛一郎は登場せず、その祖先と思われる亜智一郎が主人公である。第13代将軍家定と第14代将軍家茂には、直属の隠密部隊「雲見番」がいたという設定。天候・…
1981年発表の本書は、以前「志願者たちの海軍」など3冊を紹介した、ダグラス・リーマンが得意とする小型艦の戦争物語り。「志願者たち・・・」同様、主人公の主な敵はナチスドイツの全金属性高速艇「シュネルボート」。これを英国海軍が「Enemy Boat」と呼んで…
2009年発表の本書は、連綿と続く英国ミステリー史の中でも高い評価を得るべき作品だと思う。作者のイモジェン・ロバートソンは歴史ミステリーを得意としていて、本書がデビュー作。上下巻合計650ページ以上の大作だが、3つの物語が交互に語られ大団円に向か…
今月横浜ベイエリアに行って「新港中央広場」などに咲く、色とりどりのチューリップを見てきた。その中にとても濃いコーヒー色をした花弁がいくつかあり、まるで「黒い花びら」だなと思った。それが本書の題名「黒いチューリップ」である。1850年の作品で、…
トランプ先生が「中国ウイルス」と連呼したのをきっかけに、米国で東洋人へのヘイト・クライムが増えてきている。日系・韓国系の人も含めて、生命・財産の危険にさらされているが、これは長く蓄積されてきたプアホワイトたちの不満が噴出したものだろう。こ…
昔少年サンデーというマンガ雑誌があり、小学生の僕は「伊賀の影丸」という連載を一番の楽しみにしていた。先年事故で亡くなった横山光輝の作品としては、「鉄人28号」よりずっと好きだった。忍者というものの実像はかなり歪められていたのだが、それは子…
本書は1991年に5年にわたる連載が終わって文庫化されたもの。作者の陳舜臣については、これまでにも「小説十八史略」や「耶律楚材」など中国の歴史小説をいくつも紹介している。三国志についても「秘本三国志」や「曹操」を読んだことがある。その紹介記事…
本書は、陳舜臣の「わが集外集」の改題短編集である。作者には歴史ものから現代もの、ミステリーから冒険小説まで幅広い作品がある。多くの作品の中で、短編集にまとめられなかった9編がここに収められている。必然的に、上記の幅広い作風の9編を集めたこ…
これまで何作か井沢元彦の歴史ミステリーを紹介しているが、本書はその中にある「謀略の首」と同様織田信長が探偵役を務める。「謀略の首」は石山本願寺攻防戦と毛利水軍との合戦を背景にした長編小説だったが、本書は7編を収めた短篇集。小説現代に、1981…
田中芳樹という作者の本は、「銀河英雄伝説」を読んだことがあるだけ。それもTVアニメを見て、興味を持ったからである。「アルスラーン戦記」などの著作もあってサイエンスフィクション作家と言われているが、実は中国史に深い造詣を持ち「岳飛伝」など歴史…
脚本家で、舞台・映画・TVドラマと八面六臂の活躍を続ける才人三谷幸喜が、たった5日間の「会議」を描いたのが本書。一代の天才織田信長が明智光秀に討たれ天下統一に暗雲がさしたが、その光秀も討たれ「Beyond信長」を決める場になったのは、戦場ではなく…