歴史小説
今日(11/17)は将棋の日。東大将棋部卒のミステリー作家斎藤栄が、生涯唯一書いた歴史小説は、やはり将棋に関するもの。ある意味作者のライフワークのような作品で、1977年から16年かけて書き継がれたのが「棋聖忍者天野宗歩シリーズ」。本書は全8巻の最初…
本書は、歴史小説の大家池波正太郎の戦国時代もの。以前作者の文庫化初作品集である「元禄一刀流」を紹介したが、その中に収められていた「新陰流の創始者上泉伊勢守」の中編をベースに、800ページの大作に仕上げたものだ。 「活人剣」新陰流の創始者 - 新城…
本書は1976年からあしかけ3年に渡って<週刊新潮>に連載された、歴史小説の大家池波正太郎の作品。二千石の旗本家の妾腹に産まれた男、徳山五兵衛(幼名権十郎)の一代記である。上中下三巻に分かれていて、合計1,700ページにも及ぶ大作。 池波作品の魅力…
池波正太郎「鬼平犯科帳」は、単行本が19巻+1、文庫版が24巻+1(*1)。文庫版で第14巻までは短編集だが、15巻目(単行本では10巻目)の本書が初の長編である。文庫版の出版は1985年だった。 正月明け、長谷川平蔵は東海道筋将監橋のたもとで、黒覆面の大…
18世紀末期のフランス、「自由・平等・博愛」の旗印のもと起ったフランス革命は、多くの陰惨な事件を生んだ。貴族階級の専横に怒った庶民が政権を打倒し、貴族階級を次々にギロチンにかけた。パリの街に虜囚となり命の危険にさらされていた貴族たちを、イギ…
本書は以前「江戸八百八町物語」を紹介した、剣豪作家柴田錬三郎の代表作。「週刊新潮」創刊(1956年)に合わせて、同誌に延々連載された作品である。大目付の娘がころび伴天連に犯されて生まれた子、眠狂四郎。邪剣である「円月殺法」で、並み居る剣客や御…
池波正太郎の「鬼平犯科帳」は全20巻以上だが、ほとんどは短編集。その中で本書(17巻)は、特別長編と銘打たれている。短編が1話完結TVドラマなら、長編は映画にもあたるだろう。おなじみの長谷川平蔵一家、火付け盗賊改方の与力・同心、密偵たちから、時…
2025年発表の本書は、調査会社マルナカインターナショナル代表の中尾ちゑこの手になるオムニバス短編集。テーマはスーパー<マルハン>の繁栄と崩壊である。 <マルハン>は、TVドラマ「おしん」のモデルとなった和田カツが夫と野菜の行商から始めた青果店が…
2006年発表の本書は、フランス革命前後の時代を背景にした作品群(*1)を紹介した藤本ひとみのクラシックミステリー短編集。やはりフランス絶対王政ルイ王朝での、女たちの闘いを描いた中編と3つの短編を収録している。 中編「寵姫モンテスパン夫人の黒ミサ…
2014年発表の本書は、歴史作家葉室麟の「藤原隆家伝」。昨年のNHK大河ドラマでも描かれた平安中期の京都と、元寇以前の外国の来襲があった対馬海峡から博多が舞台である。 二部構成になっていて、龍虎闘乱編では藤原家の権力闘争が中心で、中納言藤原隆家が…
巨匠松本清張のデビュー作は、歴史小説だった。「西郷札」というその短編集はいずれご紹介したい。本書は3編の歴史小説を収めたもの。特に作者の強い主張は見えず、時代に翻弄されたり抗ったり運をつかみ損ねた人たちの姿を淡々と描いたものだ。 表題作「軍…
佐太郎は棒術師範祝一魁の娘翠媛をめとり、日明交易の傍ら「倭寇」を使って反政府行動も操るようになる。明国は南の「倭寇」たちの跳梁だけでなく、北の騎馬民族アルタイの侵攻にも悩まされ、国力を衰えさせている。宦官政治による汚職の蔓延は、著しい富の…
本書は、1988年から89年にかけて産経新聞に連載された陳舜臣の長編歴史ロマン。室町時代末期、毛利元就の落しだね佐太郎が東シナ海を駆け巡る物語だ。室町幕府の権威も揺らぎ、地方豪族(直に戦国大名となる)が剣を競っていた。周防から出雲にかけては、博…
2008年、「アンドロメダ病原体」「ジュラシック・パーク」などの著作で知られるマイクル・クライトンが亡くなった。享年66歳。作家として脂ののった年代なのに、喉頭がんで世を去った。まことに残念である。死後、使っていたPCから、2つの未発表作品が見つ…
2007年発表の本書は、歴史(戦国)作家和田竜のデビュー作。実は2003年に脚本として完成していたものを、小説に改めたものである。スペクタクルシーンはあるものの、映像化がしやすかったのだろう、2011年に映画化されている(主演野村萬斎)。 戦国末期、太…
本書(1997年発表)は、以前「ウィーンの密使」「聖アントニウスの殺人」を紹介した藤本ひとみの、やはりフランス革命を背景にした作品。フランス革命についてはバスティーユ監獄の襲撃や、革命勢力(ジャコバン派など)の内紛、王政諸国の介入くらいしか僕…
本書は文豪坂口安吾の手になるミステリー短編集であり、1950~1953年に発表された8編が収められている。作者は終戦直後に発表した「堕落論」や「白痴」で文壇の寵児となった人だが、昨年紹介した「不連続殺人事件」のようなミステリーも手掛けている。本書…
1993年発表の本書は、英国の冒険作家ダグラス・リーマン後期の作品。作者の作品は、これまで「志願者たちの海軍」など4冊の長編を紹介していたが、いずれもWWⅡを題材にしていた。本書はWWⅠが舞台。実は3部作の最終作品で、 ・緋色の勇者 1850~55年の西ア…
1995年発表の本書は、日本では珍しいインテリジェンス歴史ミステリー。作者の伴野朗は、元朝日新聞記者。外信部畑で、上海支社長の経験もある。デビュー作の「五十万年の死角」で乱歩賞を受賞してから、歴史・冒険・諜報ミステリーを得意とした作家生活に入…
明国が尚寧王を家臣と認め琉球国に封じるという儀式は、3~4ヵ月かけて行われる。百人規模の使節がやってきて、何度も宴会が行われるのだ。使節の下っ端でも傲岸不遜にふるまうので、士分のものだけでなく一般市民も頭を下げて暮らさなくてはいけない。 明…
「枯草の根」で江戸川乱歩賞を獲って文壇デビューした陳舜臣だが、ミステリーより中国の歴史ものが素晴らしい。「小説十八史略」や「秘本三国志」などをこれまでに紹介している。神戸生まれの台湾人である作者ゆえ、本書(1992年発表)の舞台琉球にも多くの…
都筑道夫という作家は非常に作風の広い人で、本書のような時代推理ものから現代もの、SFに至るまで多くの小説を残した。その大半は短編もしくはショートショートで、いずれも皮肉なユーモアが感じられる。ペンネームも10くらいはあり、シリーズものも多い。…
これまで「11枚のトランプ」「亜愛一郎の狼狽」などを紹介している泡坂妻夫の、時代小説が本書。「亜智一郎の恐慌」は幕末ものの短編集だったが、本書は安政時代の江戸を舞台にした長編冒険小説だ。 徳川御三家筆頭尾張62万石、その下屋敷が江戸の西北、今で…
小学生の時、お正月など少し長い休みに子供たちだけでゲームをしていた。高学年になってからは「Bankers」のようなものだったものだったが、低学年の頃はカルタのようなものだった。その中で覚えていたのが、当時TVドラマでやっていた「怪傑ゾロ」をモチーフ…
古い映画をNHK-BSで毎日のように放映してくれるのは、本当にありがたいと思う。特に戦争映画を録画することが多いのだが、西部劇や時代劇も懐かしくていい。これらの中でも、戦闘シーンが生々しく描かれているのが大好きだ。今回も「本棚」にではないのだが…
今日6月2日は本能寺の変の日。「信長の棺」に始まる本能寺三部作以降、戦国時代から徳川幕府初期の<歴史の真相>とも呼べる作品を、作者加藤廣は1ダースほど遺した。デビュー作「信長の棺」以下、千利休や九鬼水軍を扱った作品も以前紹介しているし、他…
以前大家司馬遼太郎の「新選組血風録」を紹介したが、そこでは全15編の脇役だった土方歳三が、本書では全編を貫く主人公である。京都の街で血なまぐさい風を吹かせる以前の三多摩での田舎道場の時代に始まり、甲府・下総・会津から箱館に転戦して戦死するま…
先日「英仏100年戦争などなかった。闘っていたのはどちらもフランス人」とする歴史書を紹介した。面白い視点と思ったので、作者が書いた小説というものを探してみた。佐藤賢一のデビューは「ジャガーになった男」という歴史小説、これで小説すばるの新人賞を…
本書は1955年の海洋冒険小説の巨匠、セシル・スコット・フォレスターの第二次世界大戦もの。作者はナポレオン時代の大英帝国海軍士官ホレイショ・ホーンブロワーもので、第二次世界大戦までに有名となった。しかし戦争が始まると、英国情報省に加わり海軍にも…
昨日司馬遼太郎「新選組血風録」を紹介したのも、このところ「巣ごもり」で古い映画を見ることが増えたから。BSの「木曜時代劇」など、懐かしさに溢れる作品を放映してくれる。先月は「仕掛人藤枝梅安」「柳生武芸帖」を見て、時代劇の良さを再認識している…