新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

デジタル社会

Web3.0時代の資本主義

2022年発表の本書は、以前「人工知能と経済の未来」「現金給付の経済学」を紹介した駒澤大学の井上智洋准教授のメタバース論。単なるテクノロジー論ではなく、Web3.0の時代に資本主義はどう変わるかが考察されている。旧フェイスブックが社名をメタと改めた…

「DX with Security」を目指す経営者に

本書は、2023年に野村総合研究所が発行した、経営者向けの啓発本。テーマはサイバーセキュリティで、特に企業経営者に向けて、 ・セキュリティというが、経営者にとってはどんなリスクなのか ・サイバー攻撃などによって、実際どのような被害が起きているの…

2,300万人社会のDX理念

米中対立の焦点である台湾(中華民国)は、デジタリゼーションの意味で米中の良いとこどりをしたような国との印象がある。技術力が高いのはもちろん、中国ほど強権的でなく、米国ほど自由放任でなく、中庸をいくデジタル政策が進行中だ。 2022年発表の本書は…

新しい階層「クリエイティブ・クラス」

昨日大前研一氏の「稼ぎ続ける力」を紹介したのだが、どんな仕事をするかは高齢者だけでなく若者にとっても重要。残された時間が長い分、より深刻なテーマである。本書は、大前氏より44歳若いメディアアーティスト落合陽一氏の現代仕事論。2016年に発表した…

食にレジャー、死ぬまで楽しもう

いくつか「生き方」を解説してくれたのが、大前研一氏。まだ30歳のころ「企業参謀」を読んで、本当に大きな企業で参謀役を目指すきっかけを作ってもらった。著者はそろそろ80歳だが、本書にもあるようにとてもお元気。バイクに乗り、スキューバで潜り、スノ…

テクノロジー教養講座、2023

2023年発表の本書は、日経電子版の「教えて山本さん」記事を編集したもの。著者の山本康正氏は京都大学経営管理大学院客員教授、「2025年を制覇する破壊的企業」などの著書がある。 ビッグテック(巨大IT)の考え方や発展の方向性、課題と対応などがテーマだ…

日本企業も捨てたものではないよ!

本書は、日本のサイバーセキュリティ業界で高名な横浜信一氏の近著(2023年発表)。著者はNTTHDのCISOであり、グループ30万人のサイバーセキュリティを司る一方、業界団体や国際会議の場の常連。僕自身何度もお世話になっていて、本書を出版早々送っていただ…

先進的な54社のDX事例集

DXという言葉は浸透したのか、バズワード化したのか、聞かれるようにはなったが、誤解も多いようだ。本書は公益社団法人企業情報化協会(通称IT協会)が今年6月に出版した、DXの事例や意識調査結果集。「DX成功ガイド」と表紙にあるように、 ・これからDXを…

GAFA後の世界を予想する

2021年発表の本書は、何冊も紹介しているPHP新書の<世界の知性シリーズ>。今回の知の巨人は、雑誌<WIRED>の創刊編集長ケヴィン・ケリー氏。5,000日(約13年)に一度、テクノロジーの進歩によって社会に大変革が起きると主張し、これまでGAFAの台頭などを…

無意識データ民主主義の提案

2022年発表の本書は、イェール大学助教授の成田悠輔氏(専門は非常に広範囲*1)の民主主義の将来像。資本主義と民主主義は近代社会の両輪。資本主義で経済を廻して富を(富裕層や大企業に)稼がせるが、民主主義は一人一票なので大衆の意志が反映して富が再…

技術の公平な配分という難題

2022年発表の本書は、政治社会学・応用倫理学を専門とする堀内進之介氏の自己追跡技術の解説書。デジタルデータを使った社会構造改革の話かと思って買ってきたのだが、内容はかなり哲学(倫理)的。しかし決して技術排斥や危惧を叫ぶものではなく、筆者のス…

ネット上はれっきとした現実

この言葉は「秋葉原通り魔事件」で昨年死刑執行された加藤智大死刑囚が、筆者に語ったもの。インターネットの爆発的な普及と、平成時代は重なる部分が多い。2019年発表の本書は、ジャーナリスト渋井哲也氏が多くの犯罪者や被害者にインタビューしてまとめた…

5G、それで何ができるのか?

2020年発表の本書は、東京大学大学院教授(電子工学)森川博之氏の「5G論」。僕より1世代若いデジタル研究者で、政府関係の会合等で何度かお会いしたこともある。技術者だがビジネス感覚もお持ちで、この技術をどう高めるかよりどう使って社会に適用する…

「コード」による法の執行

2019年発表の本書は、学習院大学の法学者小塚荘一郎教授のデータ関連の法学解説。仮想通貨や自動運転などについての論文はあるが、デジタル化は法制度に極めて広い範囲で影響を及ぼし、それを概観する書としてこれをまとめるのは大変だったという。タイトル…

「千三」と言われた経営者

2022年発表の本書は、昨年惜しくも亡くなった出井伸之氏のビジネスマンに対する「応援歌」。著者には20年ほど前にお会いし、デジタル政策の文書をまとめることのお手伝いをさせていただいた。曰く「官僚に筆を持たせるな」。本書にも、企業が監督官庁を意識…

政府へのデータ活用制約提案

21世紀は「Data Driven Economy」の時代だが、データの活用は産業界だけのテーマではない。むしろ各国政府にとって、より大きな意味を持つ。いい意味では「Evidence Based Policy Making」のような、確とした統計データに基づく政策決定のようなこともあるだ…

「大衆創業・万衆創新」の国

2022年発表の本書は、(一財)日中イノベーションセンター主席研究員小池政就氏の中国のイノベーション事情とそれを日本がどう生かすかのレポート。日中協力・連携を進める視点で、いくつかの主張が盛り込まれている。筆者の専門は国際関係、エネルギー、技…

ジョン・ロックの思想を実現する

本書は今年「共鳴する未来~データ革命で生み出すこれからの世界(2020年)」を紹介した、慶應大学医学部教授でデータサイエンティストの宮田裕章氏の近著(2021年発表)。前著は何人かの専門家との対談を交えていたが、本書は全てが著者の手になり、より思…

「アルファ碁」に見るAIの深淵

2018年発表の本書は、プロ棋士王九段がAI囲碁について、開発に携わったこともある棋士の立場で、その本質を記したもの。台湾出身の筆者は13歳から日本で暮らし、剛腕の異名をとったこともあると記憶している。 自身の棋風を「ゾーンプレス型」、局地の戦いに…

ARPANETから半世紀

2021年発表の本書は、インターネットの過去・現在・未来を「インターネットの父」村井教授と天才プログラマーと呼ばれた実業家竹中直純氏が対談したもの。 1969年に、米国の3大学の研究所をパケット通信網で結んだのが"APANET"。これがインターネットの最初…

"Techplomacy"を進めるには

2020年発表の本書を、今月来日したMicrosoftの友人から貰った。同社はOSというソフトウエアでPC業界を席巻しながら、スマホではAppleに敗れた。また米国政府と独禁法で争い、法律や常識の異なる各国との軋轢も経験した企業だ。今も世界を支配しようとする凶…

日本でのプラットフォーマー(PF)規制論

2021年発表の本書は、読売新聞社でIT問題を担当、情報セキュリティ大学院大学で2019年には修士号もとった記者若江雅子氏の「PF規制に霞ヶ関は何をしたのか」論。公取・総務省・経産省・個人情報保護委員会や関係する法曹界・学界の人物が多く登場するが、半…

ネット規制強化論の背景

先週、JCLUセミナーの書籍化で、米国他の政府が市民監視にインターネットを役立てているかを紹介した。本書は、逆に政治家(特に選挙)に対してインターネット経由でどのような影響が与えられるかを論じたもの。2018年の発表で、著者の福田直子氏は「大真面…

JCLUセミナー第二弾

本書は、先月「スノーデン日本への警告」を紹介したJCLU(公営財団法人自由人権協会)が、スノーデンらを招いて行ったセミナーの第二弾。前著から1年、2017年のセミナーを書籍化したものである。今回大きく取り上げられていたのが「XKEYSCORE」という市民監…

リープフロッグ型改革の光と影

2020年発表の本書は、中国経済の専門家である伊藤亜聖准教授(東大社会科学研究所)が、多くのデジタル化関連の論文を読み解き、新興国におけるデジタリゼーションの実態とその可能性&リスクを論じたもの。まず中国やインドでの先進的なデジタリゼーション…

監視を抑制できるのは監視

本書は、2016年に自由人権協会(JCLU)が開催した「監視の”今”を考える」の内容を書籍化したもの。2013年に米国政府の内部情報をリークしてロシアに逃れているエドワード・スノーデンがビデオ参加し、日米の識者が彼に質問したり討論した記録である。 国家安…

5Gでなくてはならないアプリ

昨日紹介した「ファーウェイと米中5G戦争」が、5Gのアプリケーションについては漠としたスマートシティしか取り上げていなかった、改めて本書を手に取った。同じく2019年発表で、著者は野村総研(NRI)のコンサルタント亀井卓也氏。 別ブログでは何度か申し…

和製サイバー・サスペンス

本書の著者志駕晃は、本名勅使河原昭。ニッポン放送のディレクター・プロデューサをしている人。50歳を越えてミステリーを書き始め、「スマホを落としただけなのに」で「このミス大賞」の隠し玉賞を受賞している。この作品は、北川景子主演で映画化もされて…

「Data Driven Society」の解説

2020年発表の本書は、慶應大学宮田裕章教授の「Data Driven Society」の解説書。筆者は、医学部医療政策・管理学教室の教授で、専門はデータサイエンス。何度かTVでお見かけし、銀髪と鋭い眼光が印象に残っている。 筆者は医学部で一番カリキュラム制約の少…

データ覇権三国志の行方

本書は先月(2022年3月)末に出版されたばかりのもの。例によって著者からの謹呈本である。著者である「国際経済連携推進センター(Cfiec)」は、半世紀前に「貿易研修センター」として設立され、通産省(当時)の指導の下で国際的なビジネス人材育成や海外…