新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

デジタル社会

組織犯罪者たちのDX

2025年発表の本書は、インターネット上の組織犯罪の実態を、元マル暴刑事の櫻井裕一氏と「闇Web」に詳しい高野聖玄氏が明らかにしたもの。 「トクリュウ」とは匿名流動型犯罪の通称で、ルーツは「オレオレ詐欺」などのチーム犯罪。電話を掛ける者、モノを受…

電脳社会の未来、超入門編

2022年発表の本書は、テクニカル系ジャーナリスト小林雅一氏の「量子コンピュータ(Quantum Computer:QC)超入門編」。これにかかると従来の暗号が解けてしまって、社会システム(例えば仮想通貨)が瓦解すると怖れられているのがQC。通常1ビットは0か1…

真の「情報産業」に脱皮するには

2022年発表の本書は、MUFGで30年以上勤務し主にシステム関連を担当した静岡大学遠藤正之教授の「銀行DX論」。30年前にビル・ゲイツは「銀行機能は必要だが、今の銀行は必要ない」と金融業界の改革を促したとされる。 店舗を設け、バックヤードで紙幣を含む大…

ハッカー浦井と刑事桐野、再度の対決

2020年発表の本書は、これまで「スマホを落としただけなのに*1」「同囚われの殺人鬼*2」を紹介した、志駕晃のサイバーサスペンス。全2作の続編で、ハッカー浦井、刑事桐野だけでなく、最初の被害者だった富田麻美らも登場する。 初登場は、電力会社の子会社…

地獄への道は善意のタイルで・・・

2013年発表の本書は、フィクションもノンフィクションも、単著も共著もこなすデイヴ・エガーズのデジタルサスペンス。昨日「過剰可視化社会」で危惧されたことの、より重症化したケースをフィクションとして取り上げている。 <サークル>は巨大テック企業、…

「見えない信頼」を取り戻す

2022年発表の本書は、「平成史」などを著した歴史家から評論家へと立場を変えたという與那覇潤氏の「可視化社会批判」。多くの日本人がSNSを使い始めた結果「ヒトの可視化」が進んでしまい、変な社会になったと筆者は言う。その変化を加速したのが「COVID-19…

ヒトはサイボーグとして生き残る?

昨日に引き続き、人類の未来に大きく影響する技術の話。2021年発表の本書は、国際政治経済学者浜田和幸氏の「サイボーグ化最前線レポート」。お騒がせ人イーロン・マスク氏の生い立ちからプライベートまで紹介してくれるのだが、その部分はともかく<IoB:In…

ヒトが制御できなくなる新技術

2023年発表の本書は、テクノロジーを起点に未来の在り方を提唱するフューチャリスト小川和也氏の警鐘。人工知能(AI)とゲノム編集技術が急成長していて、人類社会に危機が訪れているとの内容だ。筆者は人類滅亡を、 ・人間による主体的な世界の統治が出来な…

変革のための戦略と事例

2023年発表の本書は、淑徳大学教授雨宮寛二氏(経営学)のDX戦略論と実戦例集。DXを単なるIT導入と勘違いしている企業が多く、本当の意味の構造改革に着手していない。経営学の視点からのDX論として、興味深く読んだ。 DXのキーはデータだが、企業がデータを…

サイバー空間から操られる恋人たち

2017年発表の本書は、志駕晃のデビュー作。<このミス大賞>の15回隠し玉賞を受賞した作品で、以後続編(*1)が発表されている。作者は当時ニッポン放送の開発局長、番組プロデュースなどを手掛けてきた中で、ラジオの番組作りで「情報に対するセンス」を養…

選挙でのマイクロターゲティング

2020年発表の本書は、NHK取材班が米国大統領選挙でマイクロターゲティングがどのように使われたか、その実態と課題、今後の展望をまとめたもの。2018年に放送した<クローズアップ現代+>での取材内容を基にしている。 ヒラリー対トランプという異色の対決…

ハリウッド級合成技術の民主化

2023年発表の本書は、東工大笹原和俊准教授(計算社会科学)のディープフェイク(DF)論。筆者はDFを「ハリウッド級のメディア合成技術が民主化されたもの」と説明する。従来高度な技術・多くの時間・多額の費用を要した偽画像/映像/音声が、インターネッ…

経済安保で注目される今こそ

本書は、今月に出版されたばかりの「日本の半導体70年史」。筆者の牧本次夫氏からいただいたものである。トランジスタ時代からの業界の推移を、インサイダーの目で記述してある。 筆者が技術分野としてこの業界を目指したきっかけは、ソニーのトランジスタラ…

高齢化社会とテクノロジー

2020年発表の本書は、10万人の高齢者と向き合ってきた眼科医平松類氏の医療テクノロジー論。AI、IoT、AR、VR、ビッグデータ等を活用して、医療現場と高齢化社会がどう変わるかを示したもの。眼科はむき出しの臓器で画像診断がしやすい眼を扱うことから、他の…

データがオイルで半導体は内燃機関

2021年発表の本書は、北京特派員経験もある朝日新聞記者福田直之氏の、中国デジタル社会レポート。「20世紀はオイルの世紀、21世紀はデータの世紀」と言われるように「Data Driven Economy」時代になっているが、データの利用にはいくつかの制約がある。特に…

Web3.0時代の資本主義

2022年発表の本書は、以前「人工知能と経済の未来」「現金給付の経済学」を紹介した駒澤大学の井上智洋准教授のメタバース論。単なるテクノロジー論ではなく、Web3.0の時代に資本主義はどう変わるかが考察されている。旧フェイスブックが社名をメタと改めた…

「DX with Security」を目指す経営者に

本書は、2023年に野村総合研究所が発行した、経営者向けの啓発本。テーマはサイバーセキュリティで、特に企業経営者に向けて、 ・セキュリティというが、経営者にとってはどんなリスクなのか ・サイバー攻撃などによって、実際どのような被害が起きているの…

2,300万人社会のDX理念

米中対立の焦点である台湾(中華民国)は、デジタリゼーションの意味で米中の良いとこどりをしたような国との印象がある。技術力が高いのはもちろん、中国ほど強権的でなく、米国ほど自由放任でなく、中庸をいくデジタル政策が進行中だ。 2022年発表の本書は…

新しい階層「クリエイティブ・クラス」

昨日大前研一氏の「稼ぎ続ける力」を紹介したのだが、どんな仕事をするかは高齢者だけでなく若者にとっても重要。残された時間が長い分、より深刻なテーマである。本書は、大前氏より44歳若いメディアアーティスト落合陽一氏の現代仕事論。2016年に発表した…

食にレジャー、死ぬまで楽しもう

いくつか「生き方」を解説してくれたのが、大前研一氏。まだ30歳のころ「企業参謀」を読んで、本当に大きな企業で参謀役を目指すきっかけを作ってもらった。著者はそろそろ80歳だが、本書にもあるようにとてもお元気。バイクに乗り、スキューバで潜り、スノ…

テクノロジー教養講座、2023

2023年発表の本書は、日経電子版の「教えて山本さん」記事を編集したもの。著者の山本康正氏は京都大学経営管理大学院客員教授、「2025年を制覇する破壊的企業」などの著書がある。 ビッグテック(巨大IT)の考え方や発展の方向性、課題と対応などがテーマだ…

日本企業も捨てたものではないよ!

本書は、日本のサイバーセキュリティ業界で高名な横浜信一氏の近著(2023年発表)。著者はNTTHDのCISOであり、グループ30万人のサイバーセキュリティを司る一方、業界団体や国際会議の場の常連。僕自身何度もお世話になっていて、本書を出版早々送っていただ…

先進的な54社のDX事例集

DXという言葉は浸透したのか、バズワード化したのか、聞かれるようにはなったが、誤解も多いようだ。本書は公益社団法人企業情報化協会(通称IT協会)が今年6月に出版した、DXの事例や意識調査結果集。「DX成功ガイド」と表紙にあるように、 ・これからDXを…

GAFA後の世界を予想する

2021年発表の本書は、何冊も紹介しているPHP新書の<世界の知性シリーズ>。今回の知の巨人は、雑誌<WIRED>の創刊編集長ケヴィン・ケリー氏。5,000日(約13年)に一度、テクノロジーの進歩によって社会に大変革が起きると主張し、これまでGAFAの台頭などを…

無意識データ民主主義の提案

2022年発表の本書は、イェール大学助教授の成田悠輔氏(専門は非常に広範囲*1)の民主主義の将来像。資本主義と民主主義は近代社会の両輪。資本主義で経済を廻して富を(富裕層や大企業に)稼がせるが、民主主義は一人一票なので大衆の意志が反映して富が再…

技術の公平な配分という難題

2022年発表の本書は、政治社会学・応用倫理学を専門とする堀内進之介氏の自己追跡技術の解説書。デジタルデータを使った社会構造改革の話かと思って買ってきたのだが、内容はかなり哲学(倫理)的。しかし決して技術排斥や危惧を叫ぶものではなく、筆者のス…

ネット上はれっきとした現実

この言葉は「秋葉原通り魔事件」で昨年死刑執行された加藤智大死刑囚が、筆者に語ったもの。インターネットの爆発的な普及と、平成時代は重なる部分が多い。2019年発表の本書は、ジャーナリスト渋井哲也氏が多くの犯罪者や被害者にインタビューしてまとめた…

5G、それで何ができるのか?

2020年発表の本書は、東京大学大学院教授(電子工学)森川博之氏の「5G論」。僕より1世代若いデジタル研究者で、政府関係の会合等で何度かお会いしたこともある。技術者だがビジネス感覚もお持ちで、この技術をどう高めるかよりどう使って社会に適用する…

「コード」による法の執行

2019年発表の本書は、学習院大学の法学者小塚荘一郎教授のデータ関連の法学解説。仮想通貨や自動運転などについての論文はあるが、デジタル化は法制度に極めて広い範囲で影響を及ぼし、それを概観する書としてこれをまとめるのは大変だったという。タイトル…

「千三」と言われた経営者

2022年発表の本書は、昨年惜しくも亡くなった出井伸之氏のビジネスマンに対する「応援歌」。著者には20年ほど前にお会いし、デジタル政策の文書をまとめることのお手伝いをさせていただいた。曰く「官僚に筆を持たせるな」。本書にも、企業が監督官庁を意識…