新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

Mission Impossible, 1855

SF「アンドロメダ病原体」から、ミステリー「サンディエゴの12時間」、ノンフィクション「5人のカルテ」まで、才人マイクル・クライトンの諸作をこれまで紹介してきた。1975年発表の本書は、ドキュメンタリータッチの歴史ミステリーである。蒸気機関で機動…

なぜイスラムは声を挙げない?

2021年発表の本書は、中国の新疆ウイグルにおけるウイグル族弾圧に関する考察。社会学者橋爪大三郎教授と、イスラム学者中田考氏の対談で構成されている。ウイグル族弾圧について欧米の報道はいくつもあり、強制連行・抑圧・暴力・文化的破壊・漢民族化・レ…

海外の視点で見た「デジタル日本」

2021年発表の本書は、「ルポ貧困大国アメリカ」などを著したジャーナリスト堤未果氏のデジタル日本への警告。以下の点は僕もよく知っていて、推進側を努めているのだが、批判的な視点だとこうなるのかと驚かされた。 ・最高権力を持つ「デジタル庁」 ・政府…

そのバッジの意味は何?

2020年発表の本書は、2019年にNHKスペシャルで放映された「崖っぷち?わが町の議会」の基になったアンケート結果の分析書。日本中の地方議員(県会・市会・町村会・区会)約32,000人に選挙ややりがい、議会の在り方など17項目の質問をし、約20,000回答を得た…

無意識データ民主主義の提案

2022年発表の本書は、イェール大学助教授の成田悠輔氏(専門は非常に広範囲*1)の民主主義の将来像。資本主義と民主主義は近代社会の両輪。資本主義で経済を廻して富を(富裕層や大企業に)稼がせるが、民主主義は一人一票なので大衆の意志が反映して富が再…

北欧の警察小説、全10巻開幕

「英米中心、ちょっとだけフランス」というのがミステリー界の常識だったが、20世紀後半になっていろいろな国のミステリーが紹介されるようになってきた。その嚆矢となったのが、スウェーデンの警察小説である「マルチン・ベックもの」。1965年発表の本書は…

事実か小説か、17歳リックの冒険

朝鮮戦争末期の1952年春、米国海兵隊の6名が旧満州吉林近くの人造湖に潜入した。目標は中国共産党が稼働させている原子力研究所。国民党軍や地元ゲリラの助けを借りて、これを破壊せよというミッションだった。若干17歳でこの作戦に参加したローレンス・ガ…

過疎「地域」対策の本質論

2022年発表の本書は、地方政策に悩んできた僕に、問題の本質を明らかにしてくれたもの。著者の花房尚作氏は、鹿児島育ちで世界を見たマルチタレント。政府には過疎対策はあっても、過疎地域対策がないと喝破する。その結果「人口が減る」という現象に対応す…

19歳赤毛の美女、危険につき

1942年発表の本書はハドリー・チェイス作で、昨日紹介した「ミス・ブランディッシの欄」の続編。発禁になった前作から4年だが、ストーリーとしては20年が経過している。牛肉王の娘ミス・ブランディッシは、ギャング団の殺し屋スリムに監禁され数ヵ月を過ご…

発禁となったバイオレンス小説

1938年、本書が発表されると英国ミステリー界は騒然となった。作者ハドリー・チェイスは本書がデビュー作、この後多くのバイオレンス・犯罪小説を世に送る。米国のギャングなど無法者ばかりが登場する小説が、ついに大英帝国でも発表されたのだ。しかも本家…

消えた機密文書と臨時職員(後編)

英国のEU加盟計画などがあり、大使館の文書係は多忙を極めていた。だから本来なら臨時職員を充てることはない仕事を、ハーティングに任せざるを得なかったわけだ。彼の有能さは役に立ったが、それが事件を招いている。 ハーティングは、目立たない男。休日は…

消えた機密文書と臨時職員(前編)

本書は回顧録「地下道の鳩」などを紹介したスパイ作家ジョン・ル・カレの、本格的なエスピオナージュ。1968年の発表で、当時は英国のEU(EECだったかな)入りや、東西ドイツ再統一などで世論は沸騰、西ドイツやベルギーではデモの嵐が吹き荒れていたころ。ま…

地球経済のマクロ観測2022

2022年発表の本書は、元経済企画庁長官宮崎勇氏と元日銀審議委員田谷禎三氏が書き続けてきた世界経済をマクロに見た書。前作が2012年発表で、宮崎氏が2016年に亡くなってからは、田谷氏一人で改訂作業をされたという。世界経済の輪郭に始まり、貿易、金融、…

地方伝承・旅情・地図

本書は巨匠松本清張の1968年の作品。「宝石」に2年半の間連載されていたもので、作者はこの期間、後に単行本化された長編だけでも少なくとも6本の連載を持っていた。後年の作家内田康夫が「連載が始まった時点では、犯人が誰かは私にもわかりません」と言…

推理小説へのレクイエム

本書(1958年発表)の作者フリードリッヒ・デュレンマットは、スイス生まれの作家。画才も発揮し、ミステリ小説のほか戯曲なども多く書いた。本格ミステリがいかにも都合よくできていることに疑問を持ち、よりリアルな(アイロニカルな)犯罪小説を書いたの…

粛清と虐殺に明け暮れた独裁者

2022年発表の本書は、国際政治学者(元都知事というべきか?)舛添要一氏の独裁者シリーズ。前2冊はムッソリーニとヒトラーを取り上げたとあるが、トリのスターリンは2人を合わせた以上の「怪物」だったようだ。 グルジア(現ジョージア)生まれのヨシフ・…

ディーン先生得意の大団円

昨年レオ・ブルースの「死の扉」を紹介したが、これがデビュー作になるキャロラス・ディーンは、とても名探偵らしい名探偵だと思った。ニューミンスターのパブリックスクールで歴史教師を務める40歳の独身男、歴史探偵とも呼ばれ歴史書から当時の事件の真相…

腐敗の原因は幹部?それとも政治?

2021年発表の本書は、朝日新聞藤田知也記者の「日本郵政の腐敗レポート」。ここに取り上げられている問題は、 1)かんぽ保険の不正販売 2)内部通報制度の機能不全 3)ゆうちょ銀行の不正引き出し 4)同じく投資信託販売不正 5)NHKへの報道弾圧 6)総…

明国を親とし薩摩を兄と(後編)

明国が尚寧王を家臣と認め琉球国に封じるという儀式は、3~4ヵ月かけて行われる。百人規模の使節がやってきて、何度も宴会が行われるのだ。使節の下っ端でも傲岸不遜にふるまうので、士分のものだけでなく一般市民も頭を下げて暮らさなくてはいけない。 明…

明国を親とし薩摩を兄と(前編)

「枯草の根」で江戸川乱歩賞を獲って文壇デビューした陳舜臣だが、ミステリーより中国の歴史ものが素晴らしい。「小説十八史略」や「秘本三国志」などをこれまでに紹介している。神戸生まれの台湾人である作者ゆえ、本書(1992年発表)の舞台琉球にも多くの…

NATO加盟の議論の前の予習

今日から始まるNATOの会議に、韓国の尹大統領とともに岸田総理が出席するという。もし日韓両国が加盟などということになったら、もはや「北大西洋」ではなく「北大洋」条約になって、NATO→NOTOになるかもしれない。 2021年発表の本書は、以前「プーチン幻想…

地球人役もなかなかいいね

このDVDは、以前シーズン2&3を紹介した「Mission Impossible」のオリジナル版シーズン4。マーチン・ランドーとバーバラ・ベインの夫婦が降板して、変装名人役パリスとしてレナード・ニモイが加わった。「Star Trek」でヴァルカン人との混血スポック副長…

お多福の女検事霞夕子

本書は、以前「Wの悲劇」を紹介した夏樹静子の中編集。作者にはもう一人ハーフの女弁護士朝吹里矢子のシリーズがあるが、これは女検事「霞夕子シリーズ」。彼女は検察官、それも捜査主任検事だ。40歳代前半の彼女は、寺の住職である夫を持つ。小柄で風采が…

反新自由主義ならば考えて欲しい

2020年発表の本書は、財政学・環境経済学が専門の京都大学諸富徹教授の税制論。僕たちがGlobal & Digital化は当然と思っているのに、多くの知の巨人が「それによって格差が拡大したし、容認している各国政府はけしからん」と非難している書を一杯読んだ。国…

伝説のストーリーテラー

本書は、以前「アイ・アム・レジェンド」を紹介したリチャード・マシスンの短編集。作者は、ロアルド・ダールともフィリップ・K・ディックとも違う、一癖ある奇妙な味のストーリーテラーだ。1950年代からおよそ半世紀にわたって、小説や脚本を書き続けた。「ア…

チームになれば日本人は強い

2022年発表の本書は、以前「国土と日本人」を紹介した、国交省元技監大石久和氏の近著。自然災害が多く山脈や河川で分断された、脆弱かつ不便な国土で育った日本人は、コミュニティを作るのが巧み。城壁で敵と味方を分断する、欧州の文化とは違うのだと力説…

進化心理学から見たフェイク史

2022年発表の本書は、認知科学を専門とする石川幹人博士のフェイク史。フェイクニュースが社会全体の脅威になりつつある今、科学的な対応が可能かを知りたくて本書を読んでみた。 「協力するサル」である人類は、食糧の少ない草原で生きるため、50~100人の…

<ザ・キャンパス>外伝

2014年発表の本書は、マーク・グリーニーが書き継いだトム・クランシーの「ジャック・ライアンもの」。このところの主人公はライアン大統領ではなく、ジャック・ジュニアも所属する民間情報機関<ザ・キャンパス>である。大統領が先頭に立ってドンパチと言…

世界を動かしているのはカネ

2005年発表の本書は、東京銀行を振り出しに国際金融の世界を巡った倉都康行氏の現代金融論。1990年代に「金融Big-Bang」というブームがあり、僕自身金融の勉強をしたとことがあって、最後にたどり着いたのが本書。デリバティブズをはじめとする金融技術が落…

消えたクラシック・ロールスロイス

1988年発表の本書は、これまで創元推理文庫で7作を紹介したシャーロット・マクラウドの「セーラ&マックスもの」。8作目の本書以降は、扶桑社から邦訳が出版されている。美術品探偵マックス・ビターソンと結婚し、子供も生まれたケリング家の一員セーラは…