2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧
1973年発表の本書は、多作家西村京太郎の初期作品。70年代に作者は「消えたタンカー」など海にまつわるシリーズを発表していたが、本書はその中でも白眉と言える出来栄えである。 32歳のヨットマン内田は、25フィート級のクルーザー<マーベリックⅠ世号>で…
このDVDは、米国CBSで2011年に放映されたシリーズ。かつて同じCBSで1968年から12シーズンに渡って放映された「Hawaii-5O」のリメイクである。旧作は純粋な刑事ドラマだったが、リメイク版はもう少し荒っぽく仕上がっている。 舞台も同じハワイ、4人の主要な…
このところ毎月、1910~20年代の長編ミステリーが確立した時代の傑作を紹介している。今月は1921年の作品「赤い館の秘密」。かつて本格探偵小説ベスト10といえば、間違いなく選ばれていた作品である。作者のA・A・ミルンは、「くまのプーさん」で知られた童…
2020年発表の本書は、ボストンコンサルから三井不動産に移った牧野知弘氏の不動産業界情報。人口減少、都市への人口集中、空き家の増加、タワマンブーム、老朽マンション問題などを取り上げ、これからの人生で不動産とどう付き合うべきかを示してくれる書だ…
空港や航空機内、あるいは航空業界に携わる人たちの日常を描いたミステリーは航空ミステリーと呼ばれる。アーサー・ヘイリー「大空港」のような巨編もあれば、トニー・ケンリック「スカイ・ジャック」というハイジャックものも海外では多い。さらにルシアン…
2022年発表の本書は、国際NGOで市民運動を続けてきたベン・フィリップス氏の反新自由主義運動論。地球上には種々の格差(国・地域・宗教・性別・嗜好・人種・民族等)があるが、究極的には1%のエリートが権力と富を独占し、99%の人から収奪を続けている。…
1982年発表の本書は、第二次世界大戦にパイロットとして従軍経験もある脚本家デビッド・オズボーンのスパイスリラー。作者はマッカーシズム旋風の時期には米国を離れていたが、1976年に欧州から戻っている。欧州にいたころからぽつりぽつりと作品を発表し、…
このDVDは、ご存じ「本家NCIS」のシーズン12。ますますスケールアップした舞台で、ギブスチームが躍動する。モスクワからコラ半島に展開する「深い森」、ギブスはロシアからの亡命者輸送の任務にあたる。これを阻止しようとしているのはロシア系のパレスチナ…
米中対立の焦点である台湾(中華民国)は、デジタリゼーションの意味で米中の良いとこどりをしたような国との印象がある。技術力が高いのはもちろん、中国ほど強権的でなく、米国ほど自由放任でなく、中庸をいくデジタル政策が進行中だ。 2022年発表の本書は…
1995年発表の本書は、日本では珍しいインテリジェンス歴史ミステリー。作者の伴野朗は、元朝日新聞記者。外信部畑で、上海支社長の経験もある。デビュー作の「五十万年の死角」で乱歩賞を受賞してから、歴史・冒険・諜報ミステリーを得意とした作家生活に入…
2019年発表の本書は、いずれも海軍兵学校卒業のデイビッド・ブランズ(潜水艦乗り)とJ・R・オルセン(情報将校)の共著による、サイバー軍事スリラー。2人は2つの軍事スリラーを自費出版したが、本書は大手出版社から出版された「公的な」デビュー作。日米…
1983年発表の本書は、以前「過去からの狙撃者」などのスパイスリラーを紹介したマイケル・バー=ゾウハーのドキュメンタリー。1972年9月、ミュンヘン五輪の最中に起きたパレスチナゲリラの人質事件が帯で強調されているが、実質的に20世紀のパレスチナ紛争…
本書は、寡作家天藤真が1979年に日本推理作家協会賞を受賞した傑作。今日「敬老の日」にふさわしい、紀州の大地主柳川とし子(82歳)が誘拐された事件の顛末である。なぜふさわしいかというと、このおばあさんは誘拐されたにも関わらず、犯人たちを手玉に取…
直木賞作家有馬頼義の手になる本書は、1958年に<週刊読売>に連載されたもの。作者のミステリー代表作となった。作者は化け猫騒動でお馴染みの、久留米藩有馬家の末裔。伯爵家の生まれだったが、戦後に全財産を差し押さえられ無一文となった。種々の職業を…
昨日大前研一氏の「稼ぎ続ける力」を紹介したのだが、どんな仕事をするかは高齢者だけでなく若者にとっても重要。残された時間が長い分、より深刻なテーマである。本書は、大前氏より44歳若いメディアアーティスト落合陽一氏の現代仕事論。2016年に発表した…
いくつか「生き方」を解説してくれたのが、大前研一氏。まだ30歳のころ「企業参謀」を読んで、本当に大きな企業で参謀役を目指すきっかけを作ってもらった。著者はそろそろ80歳だが、本書にもあるようにとてもお元気。バイクに乗り、スキューバで潜り、スノ…
2021年発表の本書は、今は立憲民主党の中堅議員となった小川淳也議員の政策論。ノンフィクション作家の中原一歩氏がインタビュー形式でまとめたもの。小川議員は旧民主党政権で総務政務官を努めたが、民進党~希望の党~無所属~立憲民主党と所属を変えてい…
2015年発表の本書は、シアトル生まれのグレン・エリック・ハミルトンのデビュー作。アンソニー賞ほか3つの最優秀新人賞を獲得した作品で、書評では「初球ホームランだ」などの賛辞が目立つ。確かに500ページほどの長さを感じさせない、スピーディな展開と工…
2018年発表の本書は、精神科医岩波明氏の殺人犯の心療録。主に4つの事件について、 ・殺人犯の生い立ち、生活環境や教育事情 ・事件の背景や、それに至るまでのトラブル等 ・診療をしてみての殺人犯についての分析 が示されている。 ◇宝石商を射殺した童話…
以前「テロ資金根絶作戦」などを紹介した、SAS出身の作家クリス・ライアン。60冊余りの作品があるが、多くは軍事スリラー。「テロ・・・」のマット・ブラウニングのように複数の作品の主人公を務めるヒーローものも多いが、本書(2005年発表)は単発もの。主人…
2016年発表の本書は、ベテランジャーナリスト山田順氏が「地方創生の闇」を指摘したもの。僕自身20年近く(デジタル屋として)地域活性化には取り組んできたつもりだが、中央政府の「施策」では地域は元気にならないと感じていて、そのモヤモヤ感を吹き飛ば…
2005年発表の本書は「どんでん返し職人」ジェフリー・ディーヴァーの<リンカーン・ライムもの>。面白くて、前作「魔術師」まで一気呵成に読んだのだが、新作が100円コーナーに並ぶのを待っているうちに、約2年経ってしまった。十分在庫が溜まったところで…
2017年発表の本書は、以前「資本主義の終焉と歴史の危機」などを紹介した経済学者水野和夫氏の未来展望論。「資本主義の・・・」で収奪するフロンティアが無くなれば、資本主義は終わる、その前兆が金利ゼロだと述べた筆者が、では未来はどうなるのかを示した書…
本書は、TV朝日・東映系ですでにシーズン22まで続いている科学捜査ドラマ「科捜研の女」の、劇場版のノベライゼーション。映画(科捜研の女~劇場版)は2020年のシーズン20の最終回で制作が発表され、一昨年封切られている。 何作か紹介しているが米国CBS系…
2022年発表の本書は、ジャーナリスト大野和基氏が世界の知性にインタビューしてまとめたもの。PHP新書で何冊も紹介したのだが、宝島社新書からも出ていた。テーマはプーチンの戦争とその後。6名の識者に加え調査集団「ベリングキャット」創始者エリオット・…
1994年発表の本書は、スー・グラフトンの「キンジー・ミルホーンもの」の第11作。警官よりも私立探偵が性に合っているという西海岸の女探偵キンジーは、何度も危険な目に遭い、自宅も愛車もオフィスも失いながら「時給50ドル+経費」の探偵業を辞めようとは…
京都の夏は暑いという。冬は底冷えするともいう。でも魅力的な観光地で、一度ちゃんと勉強したいと思っていた。そこで、2012年発表と少し古いものだが本書を買って来た。現地に詳しい11名の専門家の共著で、編者は説話伝承学芸会員の山嵜氏ら。秋になったら…
2023年発表の本書は、日経電子版の「教えて山本さん」記事を編集したもの。著者の山本康正氏は京都大学経営管理大学院客員教授、「2025年を制覇する破壊的企業」などの著書がある。 ビッグテック(巨大IT)の考え方や発展の方向性、課題と対応などがテーマだ…
2002年発表の本書は、いくつも作品を紹介してきたポーラ・ゴズリングの、僕の本棚に残っている最後の1冊。最初シチュエーションの異なる作品を立て続けに発表してきた作者も、ある時点から五大湖沿岸の町ブラックウォーター・ベイと近くの街グランサムを舞…
本書は、1995年の乱歩賞&直木賞を同時受賞した藤原伊織の作品。同作者の別作品によるW受賞はあるものの、同一作品としては史上初のものである。作者は本書の主人公たちと同じ東大仏文科卒、電通勤務時代に「踊りつかれて」(1977年)と「ダックスフントの…