新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

SF・ファンタジー

スペースオペラVer.2.0

以前E・R・バローズの「火星のプリンセス」を、スペースオペラの始まりと紹介した。南軍の兵士カーターが火星に降り立ち、知恵と勇気で火星人と戦い、美女と結ばれ大元帥になるという物語だった。その後SF界では、ヒューマノイド型ではない宇宙人が登場する「…

<霊界>を往復できる男

作者のジョージ・C・チェスブロは、元サーカスの芸人で犯罪学教授となった異色の探偵モンゴを主人公にしたシリーズで有名なミステリー作家だと解説にある。モンゴは小びとなのだが、この設定は現代社会では「誰もが折に触れて巨人国に迷い込んだ小びとのように…

意外な名探偵たち

小林泰三は世代としては「新本格世代の関西人」である。だから作風はというと、ミステリーではなくホラーやSFが主体。しかし本書は、作者がミステリーに(楽しみながら)挑戦した短編集である。ただユーモアSF等でミステリー風の作品は多々あり、ミステリー…

社会課題を反映するに・・・

昨年、短篇集「およね平吉時穴道行」を紹介した半村良の、比較的後期の長編が本書(1992年発表)。「およね・・・」を読んで、とらえどころのない作家だと(失礼にも)評しているが、本書を読んでもその印象は変わらなかった。本書発表のころになると作者は押し…

トレッキーが描く後日譚

先週「Mission Impossible」のビデオを紹介したが、中学生の時やはり毎週楽しみにしていたのが「Star Trek」。重巡洋艦「エンタープライズ」が23世紀ころの宇宙を駆け回るSFドラマだった。原作者ジーン・ロッデンベリーは、一度TV局にこのシリーズを持ち込ん…

アングラ社の超能力者たち

1982年発表の本書は、有名なSF作家二人が共作した近未来SF。二人とは、 ・華麗な文体と豊かな幻想性を持った天才、ロジャー・ゼラズニイ(わが名はコンラッドなど) ・空軍退役軍人でゲームに長じたフレッド・セイバーヘイゲン(バーサーカーものなど) で、…

人間と獣の間・・・

本書はSF小説創成期の大家、H・G・ウェルズの「改造人間もの」である。「宇宙戦争」や「タイムマシン」が有名なのだが、本書「モロー博士の島」も古典として語り継がれるべき作品だと思う。マイクル・クライトンの「ジュラシック・パーク」も、本書の流れにあ…

三度映画化されたSFホラー

リチャード・マシスンという作家の作品を、紹介するのは初めて。1953年から半世紀以上に渡って脚本・小説を書き続けた作家で、僕は短編「激突」をTVで見て出会った。 ◆激突(1971年) ・監督 スティーヴン・スピルバーグ ・主演 デニス・ウィーバー(マクロ…

デストロイヤーの誕生

頭のどこかで「サピア&マーフィー」という共同作者名を覚えていた。何を読んだのか、どんなストーリーだったのかも覚えていない。ところがある日、いつものBook-offで本書を見つけた。著者名は「ウォーレン・マーフィー&リチャード・サピア」となっている…

連邦司令官ジョーンズ、2002

なんとも不思議な物語である。以前短篇集「地図に無い街」、長編「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を紹介したSF作家、フィリップ・K・ディックの初期の長編が本書(1956年発表)。時代は1996年から始まるが、第二次世界大戦後地球上で中ソ対西側諸国の核戦…

80万年後の格差社会

本書は以前「モロー博士の島」を紹介したSF創世記の巨人H・G・ウェルズの初期の短編集。作者の諸作は以後のSF作家たちに偉大な影響を与え、その基本的なアイデアはすべて彼の著作にあるとすら言われている。ただ作者はSF専門の作家だったわけではなく、政治活…

8人のネクサス6型

以前「地図にない町」を紹介した。SF・ファンタジー作家フィリップ・K・ディック。40編ほどの長編と、かなりの数の短編(短編集は20冊以上)を遺した。20歳代の頃から小説を書き始め、1955年の「偶然世界」でSF作家への道を定めた。1963年には「高い城の男」…

2,500万年を飛び越えた船

本書はJ・P・ホーガンの「ガニメデの巨人」シリーズの第二作、前作では、 ・月の裏側で発見されたルナリアン 死亡推定時期は5万年前。遺伝子的には完全に人類だが、現(2029年)人類の及ばぬ技術を持っている。 ・木星の衛星ガニメデで発見されたガニメアン 2…

伝奇作家、半村良

作者は長編・短編集合わせて約60作の著作を残しているが、そのバリエーションは非常に広い。1962年に本書にも収められている100ページほどの中編「収穫」で、ハヤカワSFコンテストに応募し入選して作家生活に入っている。「収穫」は異星人がほとんどの市民を…

Great Barrier Reef, 2020

本書は「地球幼年期の終わり」などで知られるSF作家、アーサー・C・クラークのジュブナイルものである。舞台はちょうどいまごろのグレート・バリア・リーフ。作中に年度は書いてないのだが唯一、 「1881年のことだから、1世紀半も経っていない」 との記述があ…

五万年前の男

米国のSF小説ブームの第一波は1950年代、アイザック・アシモフやA・C・クラーク、R・A・ハインラインなどの諸作が評判を呼んだ。しかし、その後米ソ冷戦や核戦争の恐怖もあって、SF小説は下火になった。現実のサイエンスがフィクションに追いつき始めていた…

ジュラシックパーク、1912

コナン・ドイルは自分を有名にしてくれたシャーロック・ホームズを、本当は好きではなかったようだ。一度はスイスの滝壺に落として殺したつもりだったが読者の熱望で生き返らせるしかなかった。それに比べると、登場作品は少ないものの、本書の主人公チャレ…

後ろから書いてゆく小説

有名なヒッチコック監督のサスペンス・ホラー映画「サイコ」、シャワーを浴びる女性を切り刻むシーンに始まり、衝撃のラストまで「怖いもの見たさ」で見てしまった映画だった。演出はもちろんだが、子供のころにストーリーの怖ろしたをしっかり味わった記憶…

惑星タイタンのナメクジ

「宇宙の戦士」などのSF作品で有名なロバート・A・ハインラインは、5年間海軍士官として駆逐艦などに乗り組んでいた。しかし第二次世界大戦を前に病気を得てエンジニアリングの世界に転じ、大戦中はレーダー関係の技術者として「カミカゼ」の検知技術向上に貢…

昭和11年2月26日の密室殺人

とにかく読み進むのに重くて、手が疲れる小説だった。宮部みゆきのSF・歴史小説「蒲生邸事件」は、新書版で530ページの大長編である。作者は1986年に「オール読物推理小説新人賞」の候補になって以降、数々のミステリー・SF・ファンタジー・時代小説を書き、…

Science Fact小説の草分け

新型コロナウィルスが暴れまわっているからというわけではないが、本棚から本書を引っ張り出してきた。作者マイクル・クライトンは、ハーバード・メディカルスクール在学中から小説を書き始め「緊急の場合は」(1968年発表)でデビュー、本書(1969年発表)…

火星と地球の運命

レイ・ブラッドベリは不思議な作家である。一応SF作家と分類されているようだが、幻想文学者という表現の方が正しい。単にファンタジー作家というには、作風が重すぎるのだ。どちらかというと短編のキレに鋭さがあり、「十月は黄昏の国」という短編集は高…

円には端がない

本書はアイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史」第三巻、ここで宇宙大河ドラマは一応の終わりを迎える。一応の・・・と言ったのは、この後30年を経てアシモフが第四巻「ファウンデーションの彼方へ」を発表、第五巻にも取り掛かるという情報があったからだ。 …

WWWAのトラブルコンサルタント

SFはあまり読まない僕だし、ましてやスペースオペラというジャンルは全くといっていいほど読んでいない。E・E・スミスのレンズマンシリーズなど、手に取ったこともない。それでも、このシリーズだけは読んでいた。高千穂遥のダーティペアシリーズ。「S-…

予想できなかった歴史

本書はアイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史」の第二作。巨大な帝国の衰退を予知した歴史心理学者ハリ・セルダンは、帝国崩壊後の暗黒時代を短くするため2つのファウンデーション(百科事典財団)を辺境に設けた。第一作は第一ファウンデーションが誕生…

百科事典による国際政治

今まで「黒後家蜘蛛の会」などのミステリーを紹介したアイザック・アシモフだが、いかにミステリー好きとは言え本業はサイエンスフィクションである。数ある著作の中でも、傑作と言われるのが前回紹介した「鋼鉄都市」と本書から始まる「銀河帝国興亡史」だ…

スペースオペラ、ここに始まる

いわゆるサイエンスフィクション(SF)の古典と言えば、フランスのジュール・ヴェルヌ「月世界へ行く」、イギリスのH・G・ウェルズ「宇宙戦争」などが挙げられるだろう。SFっぽいものも残したE・A・ポーはアメリカ人だが、アメリカで始祖と言えば本…

アシモフの見た100年後

SFの巨人アイザック・アシモフは、「ロボット(工学)三原則」を定めたことで有名だが、この原則に関して1940年から1950年までの10年間に書き続けた短編を集めたものが本書。最近映画化もされたのだが、第二次世界大戦中から書かれていたことに驚いた。 人…

幻のカルトTVドラマ

シリーズものならいざ知らず、全く新しい作者・作品で、小説として出版される前にTVもしくは映画になることは多くない。ところが本書に収められている長めの中編のひとつ「ラスヴェガスの吸血鬼」は、フリージャーナリストであった(当時26歳の)ジェフ・…

ドイルの「地球最後の日」

シャーロック・ホームズものでおなじみ、サーの称号も貰ったコナン・ドイルはSFものにも興味を示しもう一人の主人公チャレンジャー教授を生み出した。長身でノーブルなホームズに比べ、類人猿と間違えられそうな外観、短躯で毛むくじゃらという人好きされ…