SF・ファンタジー
本書は、以前「アイ・アム・レジェンド」を紹介したリチャード・マシスンの短編集。作者は、ロアルド・ダールともフィリップ・K・ディックとも違う、一癖ある奇妙な味のストーリーテラーだ。1950年代からおよそ半世紀にわたって、小説や脚本を書き続けた。「ア…
今日は「本能寺の変」があった日。本書の作者井沢元彦は、織田信長を主人公にした歴史ミステリーをいくつも書いた。以前「謀略の首」という長編と、「修道士の首」という短篇集を紹介している。これらはIFの要素はあると言っても、あり得たかもしれない歴…
2日続けてジョン・D・マクドナルドの作品を紹介した。本書(1962年発表)が、最後に本棚に残っていた作者の著作。本当は船に住む男「トラヴィス・マッギーもの」が読みたいのだが、なぜか手に入らない。「ケープ・フィアー」はサスペンスもの、「夜の終わり」…
創元推理文庫の<古代帆船>のマークは、怪奇冒険小説のジャンルを表している。僕としては、SFよりも苦手な分野で、ほとんど読んだことがない。それでも「ソロモン王の洞窟」シリーズで有名なこの作者ヘンリー・ライダー・ハガードの名前だけは知っていた。…
本書は、先日出張で行った時、名古屋栄の丸栄スカイルというショッピングビルにあるBookoffで購入したもの。古いエンタメ本だが、さすがに地元名古屋では見つかるものだと感心した。 1979年、ローカル局「名古屋TV」が放送したアニメ番組「機動戦士ガンダム…
2018年英国で発表された本書は翌年日本でも出版され、早々にBook-offの100円コーナーに並ぶスピード感である。読み始めて驚いたのは、「・・・」という会話を表わすカギカッコが一つもないこと。確かにおれことジャック・プライスの独白が9割を占める小説なの…
日本の「SF御三家」といえば、小松左京・星新一と本書の作者筒井康隆を指す。あまりSFを読まなかった学生時代の僕だが、小松左京のハードでシリアスなSFは嫌いではなかった。星新一のショートショートは、正直何が書いてあるのかわからずほとんど読んでいな…
上巻は、田所教授の地球物理学的仮説や、小野寺が操縦する深海調査船の活躍が中心だったが、下巻になると主役は日本政府に移る。最後まで名前の出てこない総理、官房長官、防衛大臣らが、田所教授らの調査結果を受けて展開する極秘の「避難計画」である。ま…
本書は日本を代表するSF作家小松左京が、足かけ9年の歳月をかけて書き上げた大作。東日本大震災&福島原発事故を目の当たりにした菅(当時)総理は、最悪5,000万人の避難を要する可能性を聞かされ、本書のタイトルを思い出したという。全800ページに及ぶ壮…
本書(1962年発表)以前「火星年代記」を紹介した、レイ・ブラッドベリの長編ファンタジー。本国では根強い人気のある作家だが、短編集含め8冊しか作品のない寡作家でもある。「火星・・・」がデビュー作で、本書は7作目にあたる。 SF・ファンタジーと一括し…
以前E・R・バローズの「火星のプリンセス」を、スペースオペラの始まりと紹介した。南軍の兵士カーターが火星に降り立ち、知恵と勇気で火星人と戦い、美女と結ばれ大元帥になるという物語だった。その後SF界では、ヒューマノイド型ではない宇宙人が登場する「…
作者のジョージ・C・チェスブロは、元サーカスの芸人で犯罪学教授となった異色の探偵モンゴを主人公にしたシリーズで有名なミステリー作家だと解説にある。モンゴは小びとなのだが、この設定は現代社会では「誰もが折に触れて巨人国に迷い込んだ小びとのように…
小林泰三は世代としては「新本格世代の関西人」である。だから作風はというと、ミステリーではなくホラーやSFが主体。しかし本書は、作者がミステリーに(楽しみながら)挑戦した短編集である。ただユーモアSF等でミステリー風の作品は多々あり、ミステリー…
昨年、短篇集「およね平吉時穴道行」を紹介した半村良の、比較的後期の長編が本書(1992年発表)。「およね・・・」を読んで、とらえどころのない作家だと(失礼にも)評しているが、本書を読んでもその印象は変わらなかった。本書発表のころになると作者は押し…
先週「Mission Impossible」のビデオを紹介したが、中学生の時やはり毎週楽しみにしていたのが「Star Trek」。重巡洋艦「エンタープライズ」が23世紀ころの宇宙を駆け回るSFドラマだった。原作者ジーン・ロッデンベリーは、一度TV局にこのシリーズを持ち込ん…
1982年発表の本書は、有名なSF作家二人が共作した近未来SF。二人とは、 ・華麗な文体と豊かな幻想性を持った天才、ロジャー・ゼラズニイ(わが名はコンラッドなど) ・空軍退役軍人でゲームに長じたフレッド・セイバーヘイゲン(バーサーカーものなど) で、…
本書はSF小説創成期の大家、H・G・ウェルズの「改造人間もの」である。「宇宙戦争」や「タイムマシン」が有名なのだが、本書「モロー博士の島」も古典として語り継がれるべき作品だと思う。マイクル・クライトンの「ジュラシック・パーク」も、本書の流れにあ…
リチャード・マシスンという作家の作品を、紹介するのは初めて。1953年から半世紀以上に渡って脚本・小説を書き続けた作家で、僕は短編「激突」をTVで見て出会った。 ◆激突(1971年) ・監督 スティーヴン・スピルバーグ ・主演 デニス・ウィーバー(マクロ…
頭のどこかで「サピア&マーフィー」という共同作者名を覚えていた。何を読んだのか、どんなストーリーだったのかも覚えていない。ところがある日、いつものBook-offで本書を見つけた。著者名は「ウォーレン・マーフィー&リチャード・サピア」となっている…
なんとも不思議な物語である。以前短篇集「地図に無い街」、長編「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を紹介したSF作家、フィリップ・K・ディックの初期の長編が本書(1956年発表)。時代は1996年から始まるが、第二次世界大戦後地球上で中ソ対西側諸国の核戦…
本書は以前「モロー博士の島」を紹介したSF創世記の巨人H・G・ウェルズの初期の短編集。作者の諸作は以後のSF作家たちに偉大な影響を与え、その基本的なアイデアはすべて彼の著作にあるとすら言われている。ただ作者はSF専門の作家だったわけではなく、政治活…
以前「地図にない町」を紹介した。SF・ファンタジー作家フィリップ・K・ディック。40編ほどの長編と、かなりの数の短編(短編集は20冊以上)を遺した。20歳代の頃から小説を書き始め、1955年の「偶然世界」でSF作家への道を定めた。1963年には「高い城の男」…
本書はJ・P・ホーガンの「ガニメデの巨人」シリーズの第二作、前作では、 ・月の裏側で発見されたルナリアン 死亡推定時期は5万年前。遺伝子的には完全に人類だが、現(2029年)人類の及ばぬ技術を持っている。 ・木星の衛星ガニメデで発見されたガニメアン 2…
作者は長編・短編集合わせて約60作の著作を残しているが、そのバリエーションは非常に広い。1962年に本書にも収められている100ページほどの中編「収穫」で、ハヤカワSFコンテストに応募し入選して作家生活に入っている。「収穫」は異星人がほとんどの市民を…
本書は「地球幼年期の終わり」などで知られるSF作家、アーサー・C・クラークのジュブナイルものである。舞台はちょうどいまごろのグレート・バリア・リーフ。作中に年度は書いてないのだが唯一、 「1881年のことだから、1世紀半も経っていない」 との記述があ…
米国のSF小説ブームの第一波は1950年代、アイザック・アシモフやA・C・クラーク、R・A・ハインラインなどの諸作が評判を呼んだ。しかし、その後米ソ冷戦や核戦争の恐怖もあって、SF小説は下火になった。現実のサイエンスがフィクションに追いつき始めていた…
コナン・ドイルは自分を有名にしてくれたシャーロック・ホームズを、本当は好きではなかったようだ。一度はスイスの滝壺に落として殺したつもりだったが読者の熱望で生き返らせるしかなかった。それに比べると、登場作品は少ないものの、本書の主人公チャレ…
有名なヒッチコック監督のサスペンス・ホラー映画「サイコ」、シャワーを浴びる女性を切り刻むシーンに始まり、衝撃のラストまで「怖いもの見たさ」で見てしまった映画だった。演出はもちろんだが、子供のころにストーリーの怖ろしたをしっかり味わった記憶…
「宇宙の戦士」などのSF作品で有名なロバート・A・ハインラインは、5年間海軍士官として駆逐艦などに乗り組んでいた。しかし第二次世界大戦を前に病気を得てエンジニアリングの世界に転じ、大戦中はレーダー関係の技術者として「カミカゼ」の検知技術向上に貢…
とにかく読み進むのに重くて、手が疲れる小説だった。宮部みゆきのSF・歴史小説「蒲生邸事件」は、新書版で530ページの大長編である。作者は1986年に「オール読物推理小説新人賞」の候補になって以降、数々のミステリー・SF・ファンタジー・時代小説を書き、…