SF・ファンタジー
本書(1965年発表)の作者ハリー・クレッシングのことは、ペンネームだという以上は何も分かっていない。他にもう1作あることはあるようだが、全く謎めいた作者である。 一人の背の高い男がある日、自転車に乗ってコブの町にやってきた。この街も架空のもの…
誰もその名を知らない人はない、怪物フランケンシュタイン。いろいろな怪奇小説や映画、果てはアニメにまで登場しながら、その誕生については僕も知らなかった。それが本書、1812年発表のメアリ・シェリーの作品である。なんとナポレオン時代のものだったか…
軽妙な短編の名手で、以前「退職刑事」などを紹介した作家都筑道夫。ミステリーのジャンルに留まらない、幅広い作品がある。SFあり、ホラーありなのだが、1986年発表の本書は近代ホラーの短編集。設定として、週末ごとに集い怪奇譚を披露しあう「深夜倶楽部…
1981年発表の本書は、ジェームズ・P・ホーガンのガニメアン三部作(*1)最後の作品。前作までで、 ・惑星ミネルヴァに高度な人類(ルナリアン)の文明があった ・この惑星は爆発して月、冥王星、小惑星帯などになった ・ルナリアンや人類を育てたのは高度な文…
ジェラルド・カーシュは「奇譚作家」と呼ばれている。1911年にロンドン郊外で産まれたユダヤ系イギリス人。貧しい生い立ちで、職も転々とした。広範な職業を経験した中には、レスラーというものもあった。三度結婚、二度離婚。WWⅡに従軍もして、空爆で生き埋…
1959年発表の本書は、以前「人形つかい」を紹介したロバート・A・ハインラインの代表作。ヒューゴー賞受賞のSFの金字塔である。人類が「恒星間戦争」をするようになった時代、当面する敵はクモのような生命体。女王グモや頭脳グモが、凶悪な戦闘クモを指揮して…
1979年発表の本書は、正体不明の作家バリー・サドラーが書き続ける<不老不死の戦士カスカ>シリーズの第一作。ペイパーバックによくある、とんでもない戦闘力を持った個人/部隊の連続物語である。 冒頭、1970年のベトナム戦争。米国軍医は、運ばれてきた負…
1988年発表の本書は、山岳~ミステリー~幻想小説まで作風の広い夢枕獏の<安倍晴明もの>の最初の短編集。NHKの陰陽師番組に作者が出演していたことから、興味を持って買ってきたもの。実際の晴明は40歳過ぎても下積み官僚だったようだが、物語では40歳前(…
おそらく知らない人のいない「吸血鬼ドラキュラ伯爵」。ルーマニアでトルコ兵を多く殺した、串刺し王ドラギがモデルと言われている。その原本たる本書は、1897年にアイルランド出身の作家ブラム・ストーカーが発表したもの。 小説としては、登場人物の日記な…
本書は、ファンタジーの大家レイ・ブラッドベリ初期の短編集。「火星年代記」や「10月はたそがれの国」など有名な諸作はあるが、いつごろブレイクしたかについては定説がない。1940年代後半にパルプ雑誌に作品を発表し始めて、50年代には高級誌にも掲載され…
2016年発表の本書は、昨日「生存者ゼロ」を紹介した安生正の<ゼロシリーズ>第三作。作者は建設会社勤務とあって、感染症の恐怖を描いた第一作、軍事スリラーとしての第二作より、専門に近い内容かもしれない。今回日本政府や関係者が向き合うことになる脅…
2013年発表の本書は、以前「ゼロの迎撃」を紹介した安生正の<ゼロシリーズ>三部作の第一作。第11回「このミステリーがすごい」大賞受賞作である。第二作「ゼロの迎撃」がそれなりに面白かったので、シリーズ作を探していたところ2冊同時に手に入った。 第…
創元推理文庫にはジャンルを表すマークがあって、本格ミステリーは帽子をかぶった男の頭のシルエット上に「?」、サスペンスは猫という具合。伝奇・怪奇小説には古代の帆船が描かれていた。ほとんど読まなかったそのジャンルだが、「小鼠:グランド・フェン…
1998年発表の本書は、以前「ダーティペアの大復活」を紹介した高千穂遥のSFシリーズ。WWWAのトラブルコンサルタントである黒髪のぶりっ子ユリと、赤毛のボーイッシュなケイのコンビの物語。本編は唯一の外伝で、コンビの新人時代のエピソードが語られる。 大…
本書の作者平井和正は、漫画の原作者を経てSF作家となった人。1963年に「少年マガジン」に連載された「8マン」(画:桑田次郎)で有名になった。この作品はTVアニメにもなり、僕も小学生のころよく見ていた。同時期有名だったのは「鉄腕アトム」だったが、…
本書は、ファンタジー作家(と言ってもいいよね)レイ・ブッラドベリの短編集。作者の長編は以前「火星年代記」と「何かが道をやってくる」を紹介しているが、前者はSF、後者はファンタジーだ。デビュー時のSF色が、時代を経てファンタジーになっているよう…
2012年発表の本書は、ドイツの作家ティムール・ヴェルメシュの風刺小説。今のガザ紛争とそれに対する世界の反応を見ていると、本書(&映画)が「禁断の書」として葬り去られなかった理由が分からない。 アドルフ・ヒトラー(私)は1945年にベルリンの地下壕…
本書は、以前「アイ・アム・レジェンド」を紹介したリチャード・マシスンの短編集。作者は、ロアルド・ダールともフィリップ・K・ディックとも違う、一癖ある奇妙な味のストーリーテラーだ。1950年代からおよそ半世紀にわたって、小説や脚本を書き続けた。「ア…
今日は「本能寺の変」があった日。本書の作者井沢元彦は、織田信長を主人公にした歴史ミステリーをいくつも書いた。以前「謀略の首」という長編と、「修道士の首」という短篇集を紹介している。これらはIFの要素はあると言っても、あり得たかもしれない歴…
2日続けてジョン・D・マクドナルドの作品を紹介した。本書(1962年発表)が、最後に本棚に残っていた作者の著作。本当は船に住む男「トラヴィス・マッギーもの」が読みたいのだが、なぜか手に入らない。「ケープ・フィアー」はサスペンスもの、「夜の終わり」…
創元推理文庫の<古代帆船>のマークは、怪奇冒険小説のジャンルを表している。僕としては、SFよりも苦手な分野で、ほとんど読んだことがない。それでも「ソロモン王の洞窟」シリーズで有名なこの作者ヘンリー・ライダー・ハガードの名前だけは知っていた。…
本書は、先日出張で行った時、名古屋栄の丸栄スカイルというショッピングビルにあるBookoffで購入したもの。古いエンタメ本だが、さすがに地元名古屋では見つかるものだと感心した。 1979年、ローカル局「名古屋TV」が放送したアニメ番組「機動戦士ガンダム…
2018年英国で発表された本書は翌年日本でも出版され、早々にBook-offの100円コーナーに並ぶスピード感である。読み始めて驚いたのは、「・・・」という会話を表わすカギカッコが一つもないこと。確かにおれことジャック・プライスの独白が9割を占める小説なの…
日本の「SF御三家」といえば、小松左京・星新一と本書の作者筒井康隆を指す。あまりSFを読まなかった学生時代の僕だが、小松左京のハードでシリアスなSFは嫌いではなかった。星新一のショートショートは、正直何が書いてあるのかわからずほとんど読んでいな…
上巻は、田所教授の地球物理学的仮説や、小野寺が操縦する深海調査船の活躍が中心だったが、下巻になると主役は日本政府に移る。最後まで名前の出てこない総理、官房長官、防衛大臣らが、田所教授らの調査結果を受けて展開する極秘の「避難計画」である。ま…
本書は日本を代表するSF作家小松左京が、足かけ9年の歳月をかけて書き上げた大作。東日本大震災&福島原発事故を目の当たりにした菅(当時)総理は、最悪5,000万人の避難を要する可能性を聞かされ、本書のタイトルを思い出したという。全800ページに及ぶ壮…
本書(1962年発表)以前「火星年代記」を紹介した、レイ・ブラッドベリの長編ファンタジー。本国では根強い人気のある作家だが、短編集含め8冊しか作品のない寡作家でもある。「火星・・・」がデビュー作で、本書は7作目にあたる。 SF・ファンタジーと一括し…
以前E・R・バローズの「火星のプリンセス」を、スペースオペラの始まりと紹介した。南軍の兵士カーターが火星に降り立ち、知恵と勇気で火星人と戦い、美女と結ばれ大元帥になるという物語だった。その後SF界では、ヒューマノイド型ではない宇宙人が登場する「…
作者のジョージ・C・チェスブロは、元サーカスの芸人で犯罪学教授となった異色の探偵モンゴを主人公にしたシリーズで有名なミステリー作家だと解説にある。モンゴは小びとなのだが、この設定は現代社会では「誰もが折に触れて巨人国に迷い込んだ小びとのように…
小林泰三は世代としては「新本格世代の関西人」である。だから作風はというと、ミステリーではなくホラーやSFが主体。しかし本書は、作者がミステリーに(楽しみながら)挑戦した短編集である。ただユーモアSF等でミステリー風の作品は多々あり、ミステリー…