新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

SF・ファンタジー

核兵器廃絶への道

創元推理文庫にはジャンルを表すマークがあって、本格ミステリーは帽子をかぶった男の頭のシルエット上に「?」、サスペンスは猫という具合。伝奇・怪奇小説には古代の帆船が描かれていた。ほとんど読まなかったそのジャンルだが、「小鼠:グランド・フェン…

ユリとケイの新人時代

1998年発表の本書は、以前「ダーティペアの大復活」を紹介した高千穂遥のSFシリーズ。WWWAのトラブルコンサルタントである黒髪のぶりっ子ユリと、赤毛のボーイッシュなケイのコンビの物語。本編は唯一の外伝で、コンビの新人時代のエピソードが語られる。 大…

狼男、犬神明

本書の作者平井和正は、漫画の原作者を経てSF作家となった人。1963年に「少年マガジン」に連載された「8マン」(画:桑田次郎)で有名になった。この作品はTVアニメにもなり、僕も小学生のころよく見ていた。同時期有名だったのは「鉄腕アトム」だったが、…

溺れるほど好きな人もいる短篇集

本書は、ファンタジー作家(と言ってもいいよね)レイ・ブッラドベリの短編集。作者の長編は以前「火星年代記」と「何かが道をやってくる」を紹介しているが、前者はSF、後者はファンタジーだ。デビュー時のSF色が、時代を経てファンタジーになっているよう…

なぜか出版できた「禁断の書」

2012年発表の本書は、ドイツの作家ティムール・ヴェルメシュの風刺小説。今のガザ紛争とそれに対する世界の反応を見ていると、本書(&映画)が「禁断の書」として葬り去られなかった理由が分からない。 アドルフ・ヒトラー(私)は1945年にベルリンの地下壕…

伝説のストーリーテラー

本書は、以前「アイ・アム・レジェンド」を紹介したリチャード・マシスンの短編集。作者は、ロアルド・ダールともフィリップ・K・ディックとも違う、一癖ある奇妙な味のストーリーテラーだ。1950年代からおよそ半世紀にわたって、小説や脚本を書き続けた。「ア…

本能寺で死ななかった信長

今日は「本能寺の変」があった日。本書の作者井沢元彦は、織田信長を主人公にした歴史ミステリーをいくつも書いた。以前「謀略の首」という長編と、「修道士の首」という短篇集を紹介している。これらはIFの要素はあると言っても、あり得たかもしれない歴…

譲られたのは全てをもたらすもの

2日続けてジョン・D・マクドナルドの作品を紹介した。本書(1962年発表)が、最後に本棚に残っていた作者の著作。本当は船に住む男「トラヴィス・マッギーもの」が読みたいのだが、なぜか手に入らない。「ケープ・フィアー」はサスペンスもの、「夜の終わり」…

二千年の愛、二千年の命

創元推理文庫の<古代帆船>のマークは、怪奇冒険小説のジャンルを表している。僕としては、SFよりも苦手な分野で、ほとんど読んだことがない。それでも「ソロモン王の洞窟」シリーズで有名なこの作者ヘンリー・ライダー・ハガードの名前だけは知っていた。…

モビルスーツという夢

本書は、先日出張で行った時、名古屋栄の丸栄スカイルというショッピングビルにあるBookoffで購入したもの。古いエンタメ本だが、さすがに地元名古屋では見つかるものだと感心した。 1979年、ローカル局「名古屋TV」が放送したアニメ番組「機動戦士ガンダム…

書きたい放題書いてみた

2018年英国で発表された本書は翌年日本でも出版され、早々にBook-offの100円コーナーに並ぶスピード感である。読み始めて驚いたのは、「・・・」という会話を表わすカギカッコが一つもないこと。確かにおれことジャック・プライスの独白が9割を占める小説なの…

懐かしいジュブナイル

日本の「SF御三家」といえば、小松左京・星新一と本書の作者筒井康隆を指す。あまりSFを読まなかった学生時代の僕だが、小松左京のハードでシリアスなSFは嫌いではなかった。星新一のショートショートは、正直何が書いてあるのかわからずほとんど読んでいな…

最悪のシナリオの教本(後編)

上巻は、田所教授の地球物理学的仮説や、小野寺が操縦する深海調査船の活躍が中心だったが、下巻になると主役は日本政府に移る。最後まで名前の出てこない総理、官房長官、防衛大臣らが、田所教授らの調査結果を受けて展開する極秘の「避難計画」である。ま…

最悪のシナリオの教本(前編)

本書は日本を代表するSF作家小松左京が、足かけ9年の歳月をかけて書き上げた大作。東日本大震災&福島原発事故を目の当たりにした菅(当時)総理は、最悪5,000万人の避難を要する可能性を聞かされ、本書のタイトルを思い出したという。全800ページに及ぶ壮…

時間を操る回転木馬

本書(1962年発表)以前「火星年代記」を紹介した、レイ・ブラッドベリの長編ファンタジー。本国では根強い人気のある作家だが、短編集含め8冊しか作品のない寡作家でもある。「火星・・・」がデビュー作で、本書は7作目にあたる。 SF・ファンタジーと一括し…

スペースオペラVer.2.0

以前E・R・バローズの「火星のプリンセス」を、スペースオペラの始まりと紹介した。南軍の兵士カーターが火星に降り立ち、知恵と勇気で火星人と戦い、美女と結ばれ大元帥になるという物語だった。その後SF界では、ヒューマノイド型ではない宇宙人が登場する「…

<霊界>を往復できる男

作者のジョージ・C・チェスブロは、元サーカスの芸人で犯罪学教授となった異色の探偵モンゴを主人公にしたシリーズで有名なミステリー作家だと解説にある。モンゴは小びとなのだが、この設定は現代社会では「誰もが折に触れて巨人国に迷い込んだ小びとのように…

意外な名探偵たち

小林泰三は世代としては「新本格世代の関西人」である。だから作風はというと、ミステリーではなくホラーやSFが主体。しかし本書は、作者がミステリーに(楽しみながら)挑戦した短編集である。ただユーモアSF等でミステリー風の作品は多々あり、ミステリー…

社会課題を反映するに・・・

昨年、短篇集「およね平吉時穴道行」を紹介した半村良の、比較的後期の長編が本書(1992年発表)。「およね・・・」を読んで、とらえどころのない作家だと(失礼にも)評しているが、本書を読んでもその印象は変わらなかった。本書発表のころになると作者は押し…

トレッキーが描く後日譚

先週「Mission Impossible」のビデオを紹介したが、中学生の時やはり毎週楽しみにしていたのが「Star Trek」。重巡洋艦「エンタープライズ」が23世紀ころの宇宙を駆け回るSFドラマだった。原作者ジーン・ロッデンベリーは、一度TV局にこのシリーズを持ち込ん…

アングラ社の超能力者たち

1982年発表の本書は、有名なSF作家二人が共作した近未来SF。二人とは、 ・華麗な文体と豊かな幻想性を持った天才、ロジャー・ゼラズニイ(わが名はコンラッドなど) ・空軍退役軍人でゲームに長じたフレッド・セイバーヘイゲン(バーサーカーものなど) で、…

人間と獣の間・・・

本書はSF小説創成期の大家、H・G・ウェルズの「改造人間もの」である。「宇宙戦争」や「タイムマシン」が有名なのだが、本書「モロー博士の島」も古典として語り継がれるべき作品だと思う。マイクル・クライトンの「ジュラシック・パーク」も、本書の流れにあ…

三度映画化されたSFホラー

リチャード・マシスンという作家の作品を、紹介するのは初めて。1953年から半世紀以上に渡って脚本・小説を書き続けた作家で、僕は短編「激突」をTVで見て出会った。 ◆激突(1971年) ・監督 スティーヴン・スピルバーグ ・主演 デニス・ウィーバー(マクロ…

デストロイヤーの誕生

頭のどこかで「サピア&マーフィー」という共同作者名を覚えていた。何を読んだのか、どんなストーリーだったのかも覚えていない。ところがある日、いつものBook-offで本書を見つけた。著者名は「ウォーレン・マーフィー&リチャード・サピア」となっている…

連邦司令官ジョーンズ、2002

なんとも不思議な物語である。以前短篇集「地図に無い街」、長編「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を紹介したSF作家、フィリップ・K・ディックの初期の長編が本書(1956年発表)。時代は1996年から始まるが、第二次世界大戦後地球上で中ソ対西側諸国の核戦…

80万年後の格差社会

本書は以前「モロー博士の島」を紹介したSF創世記の巨人H・G・ウェルズの初期の短編集。作者の諸作は以後のSF作家たちに偉大な影響を与え、その基本的なアイデアはすべて彼の著作にあるとすら言われている。ただ作者はSF専門の作家だったわけではなく、政治活…

8人のネクサス6型

以前「地図にない町」を紹介した。SF・ファンタジー作家フィリップ・K・ディック。40編ほどの長編と、かなりの数の短編(短編集は20冊以上)を遺した。20歳代の頃から小説を書き始め、1955年の「偶然世界」でSF作家への道を定めた。1963年には「高い城の男」…

2,500万年を飛び越えた船

本書はJ・P・ホーガンの「ガニメデの巨人」シリーズの第二作、前作では、 ・月の裏側で発見されたルナリアン 死亡推定時期は5万年前。遺伝子的には完全に人類だが、現(2029年)人類の及ばぬ技術を持っている。 ・木星の衛星ガニメデで発見されたガニメアン 2…

伝奇作家、半村良

作者は長編・短編集合わせて約60作の著作を残しているが、そのバリエーションは非常に広い。1962年に本書にも収められている100ページほどの中編「収穫」で、ハヤカワSFコンテストに応募し入選して作家生活に入っている。「収穫」は異星人がほとんどの市民を…

Great Barrier Reef, 2020

本書は「地球幼年期の終わり」などで知られるSF作家、アーサー・C・クラークのジュブナイルものである。舞台はちょうどいまごろのグレート・バリア・リーフ。作中に年度は書いてないのだが唯一、 「1881年のことだから、1世紀半も経っていない」 との記述があ…