新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ペントハウスに幽閉された修道女

 1985年発表の本書は、先月「逃げ出した秘宝」を紹介したドナルド・E・ウェストレイクの「ドートマンダーもの」。作者は2~3年おきにこのシリーズを書いていて、本書は「逃げ出した・・・」の続編にあたる。泥棒の天才と自称して実際素晴らしい冴えを見せるドートマンダーだが、選んだ仲間のミスなどで窮地に陥ったり、成果(要するにカネだ)を挙げられないでいる。

 

 今回も300ドルの手付金で倉庫からキャビアを盗む仕事を請け負ったものの、ドジを踏んで相棒のオハラは逮捕され、ドートマンダー自身も手ぶらで逃げる羽目に。高層ビルから転がり落ちた先は、修道院。ところが並み居る尼さんたちは、彼を警察に突き出そうとはせず、仕事を依頼してきた。

 

        

 

 仲間の修道女の一人が父親に拉致され、幽閉されているという。父親とは大銀行家で南米の国を(財政的に)所有しているほどの大金持ち。74階建てのマルチテナントビルの上層階は彼の独占エリアで、娘はそこで還俗して政略結婚するよう「洗脳」されようとしている。依頼は、彼女の救出である。

 

 ドートマンダーは当該ビルに宝石店なども入っていることを確認し、依頼を引き受け仲間を集める。どうせ警備システムを破るのなら、救出の他にカネ目のものもいただこうというわけ。錠前破りが見つからなかったが、50年近く服役していたという男が参加してくれ、ドートマンダー一味は高層ビルへ潜入する。

 

 ところが銀行家は南米某国でのクーデターを企画していて、傭兵部隊60名をビルに集合させていた。そこに迷い込んだドートマンダーは、60丁のライフルを突き付けられてしまう。

 

 一難去ってまた一難なのだが、グリーニーの「暗殺者シリーズ」のようなリアリティはない。奇策もあるが唖然とするようなご都合主義で、ドートマンダー一家は窮地を脱する。このシリーズ、シリアスに読むとバカを見るような気がします。お笑いネタと考えるのがよろしいようで・・・。