新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ハードボイルド

スペンサーvs.グレイマン

グレイマン(灰色の男)といってもマーク・グリーニーの描くコート・ジェントリーではない。もし相手がその男だったら、いかにスペンサーがタフガイでも、側にホークが付いていても命は助からない。ここで登場するグレイマンは、これまでスペンサーもので何…

長十手の岡っ引き

笹沢左保著「木枯し紋次郎シリーズ」で手に入ったものは全部読んでしまい、しばらく作者にもご無沙汰だったのだが、今回本書が手に入った。作者には多くの時代劇シリーズがあるが「紋次郎」ほど有名なものは少ない。僕自身も「紋次郎シリーズ」を最初に紹介…

ロンドンのパートタイム殺し屋

英国作家サイモン・カーニックは、本書(2002年発表)がデビュー作。以後、特にレギュラー主人公を持たずにクライム・サスペンスを書き続けている。本書の主人公デニス・ミルンはロンドン警察の巡査部長。警察に入って十数年で、30歳代半ばの独身男だ。 若い…

1,000人の町の17年前の事件

アルファベット順にタイトルを付けるスー・グラフトンの「キンジー・ミルホーンもの」。これまで「証拠のE」までを紹介してきて、本書(1989年発表)が第六作。32歳のバツ2女キンジーは、生まれ故郷のサンタ・テレサで私立探偵をしている。身寄りのない彼…

トゥームストーンの銃声

ボストンの私立探偵「スペンサーもの」で知られる作家ロバート・B・パーカー、スペンサーもの以外でも先日紹介したノンフィクション風の「ダブルプレー」のような単発ものをいくつか発表している。 https://nicky-akira.hateblo.jp/entry/2020/07/09/000000 こ…

ミラマー・アパートの美女たち

これまで「梟はまばたきしない」と「うまい汁」を紹介した、A・A・フェアの「クール&ラム探偵事務所もの」で、「うまい汁」から2年後の1961年に発表されたのが本書。ヘビー級の大女で吝嗇極まりないバーサ・クール女史と共同経営者になった小柄でソフトボイ…

バスケットボールが得意な子供

本書はロバート・B・パーカーの「スペンサーシリーズ」で、長く手に入らなかったもの。1989年発表でシリーズとしては「真紅の歓び」と「スターダスト」の間にあたる。まだ愛犬パールはおらず、ずいぶん若いスペンサー・スーザン・ホークのトリオに会うことがで…

キンジーの危険な年末年始

これまで「アリバイのA」からはじまり、「欺しのD」までを紹介したスー・グラフトンの連作。主人公の私立探偵キンジー・ミルホーンは、サンタテレサに住む離婚歴2度の32歳。ジム通いやジョギングを欠かさない彼女だが、決してマッチョな私立探偵ではない…

探偵をするスペンサー

そんなの当たり前だろうと言われそうだ。ロバート・B・パーカーの描く「スペンサーの世界」では、主人公のスペンサーはボストンで開業している私立探偵である。ただしもう30余冊読んだ限りでは、彼が探偵をするのは本当に珍しい。どちらかというと犯罪者を懲ら…

フィリップ・マーロウ、1991

ロバート・B・パーカーという作家は、本当にストーリーテリングが上手いと思う。好評のスペンサーシリーズはもちろんだが、ノンシリーズの面白さは別格だ。以前初の黒人大リーガー、ジャッキー・ロビンソンが登場するノンフィクション風ハードボイルド「ダブル…

次々に「シリーズ最高傑作」

本書(2000年発表)は、ハーラン・コーベンの「マイロン・ボライターもの」の第七作。これまでは一作ごとに違うスポーツの世界を見せてくれていたのだが、本書ではそういうものは出てこない。第五作あたりからスポーツ代理人商売に身が入らなくなってきて、…

更生不能中年男性の死

南カリフォルニア、サンタ・テレサの私立探偵キンジー・ミルホーン(わたし)のシリーズも4冊目(1987年発表)。作者スー・グラフトンは温暖で比較的富裕層の多いカリフォルニアでも、80年代の米国の病理が大きな影になっていることを看破する。前作「死体…

スペンサーとスーザンの仲

本棚のスペンサーシリーズも残りわずかになってきたある日、藤沢のBook-offで見つけたのが本書。1996年発表の第26作目にあたるらしい。もう30冊以上読んでいるシリーズだが、入手していなかったものと思われる。念のためこのサイト「新城彰の本棚」をスマホ…

翻訳者で変わるトーン

1959年発表の本書は、以前「梟はまばたきしない」を紹介したA・A・フェアの「クール&ラム探偵社」もの。このペンネームはE・S・ガードナーの別名だが、このシリーズは本家のペリイ・メイスンものより良質なミステリーだと思う。特に小柄で腕っぷしはNGだが頭の…

スペンサー、撃たれる!

1997年発表の本書は、前作「チャンス」同様いままで手に入らなかった作品で、ある日Book-offで運良く見つけたもの。ロバート・B・パーカーのスペンサーものはとてもスピーディな展開と、ホークをはじめとするタフガイたちのアクション、スーザン(&パール)と…

志津三郎兼氏の長脇差

前の短編集でおもわぬ名探偵ぶりを発揮することになった木枯し紋次郎だが、本書では危うく(?)渡世から足を洗いそうになる。すでに20年近く放浪の旅をしていて、特に20歳を過ぎてからは、血を見ないでは終わらない事件にばかり巻き込まれている紋次郎であ…

リュー・アーチャー探偵登場

以前「別れの顔」などを紹介した、正統派ハードボイルド作家ロス・マクドナルド。1944年にエスピオナージ「暗いトンネル」でデビューしたが、ミステリー界に足跡を残したのは本書(1949年発表)に始まる、私立探偵リュー・アーチャーものによってである。文…

先代パールのいたころ

軽妙な会話とスピーディなストーリー展開、ロバート・B・パーカーのご存じ「スペンサーもの」で、1990年代半ばの何冊かを新しく見つけた。平塚のBookーoffは、時折探していたシリーズ物がまとめて手に入るのがありがたい。僕に似た趣向の人が書棚を整理してくれ…

直木賞ハードボイルド

先日TVドラマ「非情のライセンス」の原作短編集を紹介した生島治郎の比較的初期の長編が本書(1967年発表)。生島治郎は上海生まれ、早稲田大学英文学科卒業後早川書房で「エラリー・クィーンズ・ミステリ・マガジン」の編集に携わった経歴を持つ。レイモン…

親分衆の前での「名探偵」振り

笹沢左保の「木枯し紋次郎シリーズ」でも、指折りの面白さを持つのがこの中編集。60~70ページの中に事件があり、謎があり、意外な結末があるのがお約束だが、本書の中の「桜が隠す嘘二つ」ほど見事な時代劇ミステリーは滅多にない。下総の国境町では、地場…

ファーストクラスの娼館チェーン

先日「スクールデイズ」を紹介したロバート・B・パーカーの「スペンサーもの」の、次の巻が本書(2006年発表)。前作で「スペンサー一家」に仲間入りしたような黒人ギャングメージャーや弁護士リタは登場せず、スーザンとホークが帰ってくる。そしてもう一人、…

懐かしや、特捜部会田刑事

TV朝日系で1973年から1980年まで放映された刑事ドラマ「非情のライセンス」。刑事ものを各局が競っていたころのシリーズで、それらの中では最もハードボイルド色が強かった印象がある。そのシリーズの原作となったのが、生島治郎作の本書である。主人公の会…

日本の本格ハードボイルド

1990年発表の本書は、ハードボイルド&冒険小説作家大沢在昌の代表作「新宿鮫」シリーズの最初の作品。作者は1979年「感傷の街角」でデビュー、小説推理新人賞を受けている。以降、ヴィヴィッドな作品群で受賞の常連となり、本書も推理作家協会賞を受賞し、…

死体置き場のキンジー

1986年発表の本書は、これまで「アリバイのA」「泥棒のB」を紹介した、スー・グラフトンの第三作。南カリフォルニアのサンタ・テレサに住む、女探偵キンジー・ミルホーン(わたし)のシリーズである。キンジーは32歳、離婚歴2回、元は警官だったが、拳銃…

トレントンの貧困街

1994年発表の本書は、ロマンス小説家として地歩を築いていたジャネット・イヴァノビッチが初めて書いたミステリー。英国推理作家協会から当該年の最優秀処女長編賞に輝いた作品である。舞台となったのはニュージャージー州の州都トレントン、ニュージャージ…

栄五郎一家 vs. 紋次郎

笹沢左保の「木枯し紋次郎」シリーズは、ほとんどが50ページくらいの短編。主要な登場人物は紋次郎のほかには3人くらいで、最後の5ページでそのうちの一人の「意外な正体」が紋次郎によって暴かれるパターンが多い。加えて舞台となった町か村の当時の風習…

拡大するスペンサー一家

本書(2005年発表)は、ロバート・B・パーカーの「スペンサーもの」の後期の作品。今回スペンサーは、ボストン郊外の(多分富裕層の子弟向けの)高校で起きた銃乱射事件の被告の少年を救う仕事を引き受ける。スキーマスクを被った2人の男が4丁の拳銃を撃ちま…

組織の男と家庭生活

以前「悪党パーカー」シリーズを紹介したドナルド・E・ウェストレイク、多彩な作風で知られているがそのルーツは雑誌「マンハント」にある。ミステリー雑誌のひとつで、主にハードボイルド小説を掲載して人気を博した。ウェストレイクはハードボイルド短編で経…

傷心のマイロンを襲う試練

本書はハーラン・コーベンのマイロン・ボライターものの第6作。元バスケットボールのプロで、現在は<MBスポーツレップス>というエージェント会社を運営しているマイロンと、その仲間たちが活躍するハードボイルドシリーズである。 解説には、その仲間たち…

二つのコンドミニアム

ABC・・・順にタイトルを付けていった、スー・グラフトンの第二作が本書。デビュー作から3年を経た、1985年の発表である。主人公は、南カリフォルニアの架空の街サンタ・テレサに住む女私立探偵キンジー・ミルホーン、32歳。健康に気づかいジョギングなどに余…