新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ハードボイルド

黒と白のブルックリン、1947

ボストンの軽妙な私立探偵スペンサーものしか読んだことのなかったロバート・B・パーカーのノンフィクション風ハードボイルドが本書。アメリカ人なら「誰も」が知っている近代最初の黒人大リーガー、ジャッキー・ロビンソンとその周辺の人物が実名で登場する…

弁護士・探偵そして精神科医

本書は正統派ハードボイルド作家、、ロス・マクドナルドの後期の作品(1969年発表)。大家だと思っていた作者だが、リュー・アーチャーものを18編、その他を6編しか発表していない。1949年「動く標的」でデビューした作者とアーチャー探偵、以前紹介した「…

都会のハンター

ドナルド・ハミルトンという作者の名前は、どこかで聞いた記憶がある。狙撃手とギャング風の男のイラスト、魅力的なタイトルなので買ってしまってから作者のことを調べてみた。ハミルトンは「マット・ヘルムシリーズ」の原作者だった。それで名前に記憶があ…

ひよわだが抜け目のない羊

本書の作者A・A・フェアは知らないという人も、ぺリー・メイスンという弁護士のシリーズには記憶があるのではなかろうか。A・A・フェアとは、ペリー・メイスンシリーズの原作者E・S・ガードナーの別名である。ガードナーは、私立探偵ドラルド・ラムと…

エスメラルダという街

ハードボイルドの雄レイモンド・チャンドラーは、長編を7作しか残さなかった。1958年発表の本書が、その最後の作品。代表作「長いお別れ」を発表後、作者は4年間沈黙していた。そして本書発表後に亡くなっている。実は「プードルスプリングス物語」という…

プロゴルファー夫妻の息子

本書はスポーツエージェントで「MBスポーツレップス」の経営者であるマイロン・ボライターが主人公の第四作。アメリカンフットボール、テニス、バスケットボールの世界を舞台にした三作に続き、本書ではゴルフの世界が描かれる。 最もマイロンはゴルフをスポ…

マイロン・ボライター自身の事件

本書はハーラン・コーベンのマイロン・ボライターものの第三作。スポーツエージェントであるマイロンとその仲間たちの活躍を描いた作品群で、これまでフットボールとテニスの世界での事件を扱っている。いずれもプロの契約金やCM出演料、果ては裏金まで、膨…

極寒シカゴの女探偵

サラ・パレッキーのV・I・ウォーショースキーものの第三作が本書。ヴィクことミズ・ウォーショースキーはアラサーのバツイチ女探偵、ホームグラウンドはシカゴである。僕は経験がないが、シカゴの冬は零下30度にもなるという。この極寒の街で、ヴィクは大掛か…

ヒッピーたちのその後

ロバート・B・パーカーのスペンサーシリーズも本書(2003年発表)で30作となった。スペンサーは朝鮮戦争従軍経験もあるということだったから、普通ならこの時点で70歳を越えているはずだが、私生活含めて若々しい。ただスーザンと飼っていた愛犬パールは前作…

8月のマンハッタン

ニューヨークという街も、意外と自然環境が厳しいようだ。蒸し暑く、少し歩いただけで汗がしたたり落ちると本書にある。暑さがピークの8月、大富豪はみなヨーロッパに行ってしまう。裕福な人たちは、国内だが夏の別荘に出掛けて留守。一般の労働者も、かな…

五大湖の海運事業

シカゴの女探偵ヴィクことV・I・ウォーショースキーが登場する第二作が本書。前作で巧妙な保険金詐欺を暴いた彼女は、五大湖の巨大な海運事業にかかわる事件に挑む。ヴィクのたった一人の親近者であるブーム・ブーム青年が死んだ。彼はヴィクの従兄弟にあたり…

「センパー、ファイ」が口癖

あとがきの後の解説には、本書のようなものを「軽ハードボイルド」というのだとある。表紙のアニメも含めて、いかにも軽めの私立探偵ものだなという印象を与えている。シアトルを舞台に活躍する私立探偵ジェィグ・ロシターとその仲間たちの物語で、本書に続…

本物の「探偵小説」

古典的な本格ミステリーを、「明晰神のごとき名探偵が・・・」などと評するが、オーギュスト・デュパンを先祖とするこの種の人たちが「私立探偵」を業として営んでいる例は多くない。ファイロ・ヴァンスは貴族の遊民だし、エラリー・クィーンは作家、ミス・マー…

ニューヨークの暗黒街

以前「裁くのは俺だ」を紹介したが、その作品でデビューしたのがバイオレンス作家のミッキー・スピレーンとその主人公マイク・ハマー。本書はマイク・ハマーものの5作目にあたる。書評では通俗的なハードボイルドの亜流と紹介され、タブロイド紙専科のよう…

21世紀のパーカー

以前「悪党パーカー/人狩り」を紹介した、リチャード・スタークの「悪党パーカーシリーズ」の21世紀になってから書かれたものが本書(2001年発表)。「人狩り」が1962年の作品で、以降15冊が出版されたが1974年の「殺戮の月」で一旦終了していた。それが199…

ボストンのビジネスウィメン

前作「ポットショットの銃弾」で派手な銃撃戦を見せたスペンサー、今回はホームグラウンドに戻って富豪の銀行家殺人事件に挑む。銀行オーナーのネイザン・スミスは58歳、ベッドルームで全裸の射殺体で発見される。凶器は珍しい.40口径の拳銃。寡聞にしてこん…

スペンサーの「荒野の七人」

ある日スペンサーのところに西部から来た若妻メアリが訪ねてきて、夫を殺した奴を捕まえてくれと訴えかける。彼女の住む町ポットショットは荒れ地に囲まれた山間の町で、巣くったならず者集団<ザ・デル>に脅かされている。彼女の夫スティーブは海兵隊上が…

グリンゴ、スペンサー

前回中国からの不法移民の中に芽生えた犯罪組織と戦ったスペンサー、今度はヒスパニック系の犯罪組織との闘いである。今回の舞台はボストンの北の街プロクター、これも架空の街ではないかと思う。本書の発表された1995年は、日本ではバブルが崩壊しかけてい…

プアホワイトへの道

前作「ダブル・デュースの対決」は、ボストンの黒人貧民街を描いた作品だった。麻薬中毒の状態で生まれてくる子供、14歳で母親になる売春婦、銃をふりかざして荒れ狂う少年団など黒人社会の暗部を見せつけてくれた。ロバート・B・パーカーの次作が暴くのは…

優しくなくては生きている意味が・・・

初冬のボストン、有名女優ジル・ジョイスを主演にしたTVドラマのロケ隊がハリウッドからやってきた。ジルは20年近くTV界のトップ女優であり、彼女の予定さえ押さえれば13週間の(つまり1/4年の)シリーズドラマは作れて、3大ネットワークが奪い合っ…

テニスというビッグビジネス

スポーツ・エージェントであるマイロン・ボライターが、探偵役を務めるスポーツシリーズの第二作が本書。今回のテーマはテニス。作者であるハーラン・コーベンは、第一作ではアメリカ人に最も人気の高いアメリカン・フットボールの世界が舞台にしたが、テニ…

壊れた家庭の物語

ボストンの私立探偵スペンサーとその仲間たちを描いたこのシリーズ、初期の作品「失投」と「初秋」は名作だとの評価が高い。「失投」はレッドソックスのエースが脅迫されて八百長に手を染めたのを、スペンサーが救う話。「初秋」は壊れた家庭で自閉症になっ…

シルヴァーマン博士自身の事件

ロバート・B・パーカーのレギュラー探偵スペンサーはボストン中心に活動するタフガイだが、恋人(知り合ってから10年以上経ってもそのままだが)スーザン・シルヴァーマンなくしては、力を発揮できない。学校のカウンセラーをしていた彼女がハーヴァードの…

スペンサーが愛を取り戻す話

このシリーズ第二作の「誘拐」以降、スペンサーの恋人として読者に紹介されてきた心理カウンセラースーザン・シルヴァーマンは、作を重ねるごとに存在感を増してスペンサーの生活に入り込んできた。ところが10作目の「拡がる環」では、大学院で心理学を学ぶ…

不良少女とおせっかい探偵

名作といわれる「初秋」では、ボストンの私立探偵スペンサーはひよわで自立できない少年の心身を鍛え、一人前の男への入口へと誘った。本来の私立探偵としての依頼の範囲を越えた「おせっかい」な行動の顛末がつづられて、多くの読者の共感をよんだ。 ロバー…

アメリカンドリームのビジネス

ハーラン・コーベンは大学時代にバスケットボールやフットボールのプレーヤーで、卒業後いくつかの職業に就いたのち、本書で作家デビューを果たした。主人公マイロン・ボライターは、バスケットボール選手として大学で花形、NBLで活躍を始めるが、試合中のケ…

シカゴの女私立探偵登場

シカゴ在住の女流ミステリー作家、サラ・パレッキーの最初の作品が本書。同じくシカゴで活躍する女性私立探偵V・I・ウォーショースキーを主人公にした長編が、いままで18作発表されている。ウォーショースキーは名前の通りポーランド系、警官だった父親か…

卑しき街の孤高の騎士

正統的ハードボイルドというと、ダシール・ハメット⇒レイモンド・チャンドラー⇒ロス・マクドナルドという系譜が思いつく。今回はその次男坊、レイモンド・チャンドラーをご紹介したい。主人公フィリップ・マーロウは、ハリウッドに住む私立探偵。作中では、…

これぞ日本のハードボイルド

小鷹信光という人は、評論家/翻訳家というのが普通の認識だと思うのだが、伝説のハードボイルド小説も書いている、それが本書「探偵物語」。かつてTVの連続ドラマとして放映されたものの原作である。僕もTVで見た記憶はあり、故人となった松田優作、成…

ウーマンリブの闘士

ハードボイルド小説と言えば、普通は男の世界。ハンフリー・ボガートのように、バーボンをあおり葉巻をくゆらす。半熟卵のようなベトベトした感傷はないので、女は添え物的に居ればいい、という次第。ハメットが「血の収穫」を著わしたのが1929年で、それか…