新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ハードボイルド

壊れた家庭の物語

ボストンの私立探偵スペンサーとその仲間たちを描いたこのシリーズ、初期の作品「失投」と「初秋」は名作だとの評価が高い。「失投」はレッドソックスのエースが脅迫されて八百長に手を染めたのを、スペンサーが救う話。「初秋」は壊れた家庭で自閉症になっ…

シルヴァーマン博士自身の事件

ロバート・B・パーカーのレギュラー探偵スペンサーはボストン中心に活動するタフガイだが、恋人(知り合ってから10年以上経ってもそのままだが)スーザン・シルヴァーマンなくしては、力を発揮できない。学校のカウンセラーをしていた彼女がハーヴァードの…

スペンサーが愛を取り戻す話

このシリーズ第二作の「誘拐」以降、スペンサーの恋人として読者に紹介されてきた心理カウンセラースーザン・シルヴァーマンは、作を重ねるごとに存在感を増してスペンサーの生活に入り込んできた。ところが10作目の「拡がる環」では、大学院で心理学を学ぶ…

不良少女とおせっかい探偵

名作といわれる「初秋」では、ボストンの私立探偵スペンサーはひよわで自立できない少年の心身を鍛え、一人前の男への入口へと誘った。本来の私立探偵としての依頼の範囲を越えた「おせっかい」な行動の顛末がつづられて、多くの読者の共感をよんだ。 ロバー…

アメリカンドリームのビジネス

ハーラン・コーベンは大学時代にバスケットボールやフットボールのプレーヤーで、卒業後いくつかの職業に就いたのち、本書で作家デビューを果たした。主人公マイロン・ボライターは、バスケットボール選手として大学で花形、NBLで活躍を始めるが、試合中のケ…

シカゴの女私立探偵登場

シカゴ在住の女流ミステリー作家、サラ・パレッキーの最初の作品が本書。同じくシカゴで活躍する女性私立探偵V・I・ウォーショースキーを主人公にした長編が、いままで18作発表されている。ウォーショースキーは名前の通りポーランド系、警官だった父親か…

卑しき街の孤高の騎士

正統的ハードボイルドというと、ダシール・ハメット⇒レイモンド・チャンドラー⇒ロス・マクドナルドという系譜が思いつく。今回はその次男坊、レイモンド・チャンドラーをご紹介したい。主人公フィリップ・マーロウは、ハリウッドに住む私立探偵。作中では、…

これぞ日本のハードボイルド

小鷹信光という人は、評論家/翻訳家というのが普通の認識だと思うのだが、伝説のハードボイルド小説も書いている、それが本書「探偵物語」。かつてTVの連続ドラマとして放映されたものの原作である。僕もTVで見た記憶はあり、故人となった松田優作、成…

ウーマンリブの闘士

ハードボイルド小説と言えば、普通は男の世界。ハンフリー・ボガートのように、バーボンをあおり葉巻をくゆらす。半熟卵のようなベトベトした感傷はないので、女は添え物的に居ればいい、という次第。ハメットが「血の収穫」を著わしたのが1929年で、それか…

正統派ハードボイルドの系譜

1929年、ダシール・ハメットが「血の収穫」を発表してから、リアリティのあるハードボイルドミステリーが興隆してきた。曰く「殺人をしゃれた花瓶から引き抜いて、裏通りに投げ出した」らしい。これまでのミステリーが富裕層の豪邸で展開されていたところ、…

飛び交う.45ACP弾

ハードボイルド小説というジャンルは、ダシール・ハメットが始めたと言われ、より文学的なチャンドラー、ミステリーの色濃いロス・マクドナルドなどの後継者たち(全く作風は違うのだが)を含めてそのジャンルとして区分されている。 「ハードボイルド」の意…

あっしには関わりのねえこって

日本のミステリーには独特のジャンルがあって、徳川時代に「目明し」という捜査官が犯罪を追いかける「捕物帖」というのがそれ。人形佐七などは、白皙の貴公子然としていて「人形のよう」だからその名がついている。神津恭介ではないが、イケメンは名探偵の…

レッドソックスのエースに何が

レイモンド・チャンドラーの描くアメリカは、1940年代のロスアンゼルス。事件を追うフィリップ・マーロウの周りには軍に入隊するなど、第二次大戦の色が濃い。エド・マクベインの87分署シリーズは、架空都市アイソラの1950年代から始まる。刑事の何人かは…

私立探偵の矜持

「男はタフなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」とは、ロサンゼルスの私立探偵フィリップ・マーロウの有名なセリフである。レイモンド・チャンドラーは、マーロウものの長編を7つしか残さなかった。フレミングの007ものの12作より…

名無しの非情な探偵

1929年というのは、第一次大戦後世界経済の中心になったアメリカから「大恐慌」が発生して、暗雲が漂ってきた年である。それ以降、ドイツではナチス党が台頭、中国東北部には日本の傀儡国家「満州国」が生まれるなど、世界は次の大戦に向かって転げ落ちてゆ…

ロサンゼルスの黒人街

ウォルター・モズリイはカリフォルニア生まれの作家、ユダヤ人の母と黒人の父を持ち少年期は貧しい暮らしだったようだ。40歳を前に発表した本書がいくつかの賞を受賞し、プロ作家となった。以後成人向けやサイエンスフィクションなど40作ほどを書いたが、一…

正統派ハードボイルド

ダシール・ハメットは、従来のミステリーの探偵があまりにも現実離れしていると考えて、プロの探偵を登場させた。「血の収穫」の主人公「おれ」はコンチネンタル探偵社のサラリーマン探偵。「マルタの鷹」の主人公サム・スペードは、仲間とふたりで探偵事務…

ボストンのタフガイ

西海岸の有名都市と言えば、ロサンゼルス・サンフランシスコ・シアトルあたりだろう。ハイテクの香りもあるビジネスの街だ。一方東海岸で3つというと、ワシントンDC・ニューヨーク・ボストン。政治の中心DC、金融はじめビジネスはニューヨーク、そして…

おせっかいな私立探偵

ロバート・B・パーカーのレギュラー探偵スペンサーは、かなりおせっかいな探偵である。僕が最初に読んだ「失投」では、レッドソックスのエースが八百長をしているのかどうかの調査を球団に依頼される。エースは妻の秘密をネタに強請られて、泣く泣く「失投…

南カリフォルニアの女探偵、デビュー

アルファベットを順番にシリーズタイトルに付けてゆくという、稚気あふれる作品群を残したのが、女流作家スー・グラフトン。長く脚本家を務めてきたのだが、収入は多くても脚本家は影の存在、自分の顔を出して物語を世に問いたいと考えての転身だったらしい…