新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ハードボイルド

女探偵サニー・ランドル登場

1999年発表の本書は、すでに<スペンサーもの>を紹介しつくしたロバート・B・パーカーの別シリーズ。やはりボストンを舞台にした、私立探偵ものだ。主人公サニー・ランドルは、30歳そこそこのバツイチ女。元夫のリッチーも彼女も警官だった。彼女の父親も引退…

ハウストン通りの南

本書は女流作家サンドラ・スコペトーネが、ジャック・アーリー名義で1984年に発表したデビュー作。米国私立探偵作家協会(PWA)賞の新人賞を獲得した作品である。ハードボイルド私立探偵には、その街の影が色濃い。主人公フォーチューン・ファネリはイタリア…

古書店好きのミステリーマニアに

1979年発表の本書は、久しぶりに見つけた才人ローレンス・ブロックの<泥棒探偵バーニイもの>の第三作。デビュー作「泥棒は選べない*1」を紹介したが、第二作はまだ見つけていない。 バーニイ・ローデンバーは、池波正太郎流にいえば「ひとりばたらきの盗人…

アラフォー渡世人のリアル

以前全15巻の最終巻を紹介した、笹沢左保の「木枯し紋次郎シリーズ」。紋次郎はライバル峠花の小文治の最期を看取って、いずこへともなく姿を消した・・・しかしTV・映画業界が人気者を放っておいてくれるはずもない。解説には、1993年に「帰ってきた木枯し紋次…

16人のフィリップ・マーロウ

本書は、1988年に出版プロデューサーであるバイロン・ブライズがレイモンド・チャンドラーの生誕100年を記念して編んだフリップ・マーロウのアンソロジー。本編は24作の短編を含んでいるが、早川書房が邦訳を出版するにあたり16編に圧縮している。 巻頭作「…

チャンドラーの最高傑作

1953年発表の本書は、レイモンド・チャンドラーの最高傑作として名高い作品。MWA(米国探偵作家クラブ)賞最優秀賞を獲得したフィリップ・マーロウものである。多くのファンが本書を「マーロウもので一番好き」というが、理由は一番長く(600ページ近い)て…

ジャーナリスト探偵ブリスコー登場

1978年発表の本書は、ブルックリン生まれでニューヨークをこよなく愛する作家ピート・ハミルの「サム・ブリスコーもの」の第一作。ハードボイルド小説は、矜持を持った主人公と同時に「街」を描くのだが、マンハッタン界隈を語らせるなら最適任者のひとりが…

血生臭い<倒錯三部作>完結

1992年発表の本書は、ローレンス・ブロックの<無免許探偵マット・スカダーもの>。今年になって紹介した「墓場への切符」「倒錯の舞踏」に続く、倒錯三部作の完結編だと解説にある。アル中の元警官で、高級娼婦エレインと半同棲の生活を送っているマットに…

2組の「相棒」の邂逅

2015年発表の本書は、昨日に引き続きロバート・クレイスの作品。「容疑者」の続編でスコット&マギーが登場するのだが、作者が以前からレギュラーとして使って来た私立探偵エルヴィス・コールと相棒のパイクも出てくる。コールは<世界一の探偵>との看板を…

ハードボイルドの祖、自身の事件

1975年発表の本書は、ノワール作家として知られTV・映画脚本も多いジョー・ゴアズ(*1)が、ハードボイルド小説の祖ダシール・ハメットを主人公に描いた伝記的ハードボイルド。1928年、「血の収穫」「デイン家の呪い」「マルタの鷹」の原稿に手を入れていた…

革服女とゴム服男の猟奇ビデオ

1991年発表の本書は、ローレンス・ブロックの<アル中の元警官マット・スカダー>もの。このころのマットは、酒を断ちAA(アルコール自主治療協会)に通う日々。酒場にも顔を出すが、呑んでいるのはコーヒーかコーク(コカインじゃないよ)。高級娼婦エレイ…

アーチャーが挑む3つの射殺事件

1963年発表の本書は、「動く標的」でデビューし20冊弱の長編ハードボイルドを遺したロス・マクドナルドの<リュウ・アーチャーもの>。先輩格のハードボイルド探偵フィリップ・マーロウが「非情の世界で希望を抱く孤高の騎士」なのに対し、アーチャーは悲劇…

「お金を使わないで」と叫ぶバーサ

1947年発表の本書は、A・A・フェアの「バーサ&ラム君もの」。パートナーになって本来のずうずうしさが増してきたラム君が、細かなお金に執着する探偵所長バーサの悲鳴をよそに、バンバン経費を使って(*1)事件解決にあたる。 そもそも、怪しげな依頼を受ける…

シアトルのソフトボイルド探偵

1980年発表の本書は、リチャード・ホイトのデビュー作。作者はオレゴン州生まれ、ハードボイルド小説好きで陸軍情報部からハワイでのジャーナリスト家業を経て、作家デビューした。この経歴は、本書の主人公ジョン・デンスンと一致している。デンスンはシア…

鋼の筋肉を持った異常犯罪者

1990年発表の本書は、アル中の無免許探偵「マット・スカダーもの」。作者のローレンス・ブロックはシリアスなハードボイルドを書くときは、この探偵を使う。1ダースほどあるシリーズだが、中期の作品である本書は評価が高く、少なくともベスト3には入る傑…

中年作家の「男の意地」

本書はスペンサーもので知られるロバート・B・パーカーの単発もの。比較的初期(1976年)の作品で、スペンサーものを5~6作発表した後、初めてスペンサーの出ない作品を書いた。舞台はスペンサーと同じボストン、主人公の中年作家ニューマンと妻のジャネット…

キンジーの最初の夫、撃たれる!

1999年発表の本書は、ご存じ<キンジー・ミルホーンもの>の第15作目、ついに「O」まで来た。キンジーは警察に勤務し始めたころに最初の結婚をしている。相手のミッキーは一回り以上離れた刑事、輝いて見えたらしい。警官としての能力は高かったが、酒と女…

モンドリアンを巡る陰謀

1983年発表の本書は、ローレンス・ブロックの「泥棒探偵バーニイもの」の第五作。1977年のデビュー作「泥棒は選べない」以降、おおむね年1作発表されてきたのだが、本書の後10年以上新作が途絶えている。 決して暴力は使わない泥棒のバーニイは、表のビジネ…

夜のマンハッタン案内

1986年発表の本書は、ローレンス・ブロックの<マット・スカダーもの>。得意の射撃で強盗を撃った際、跳弾で無垢の少女を殺してしまったマットは、警察を辞め無免許の私立探偵をしている。アル中になったこともあり、今は酒を断って暮らしているが、本書が…

訪ねてきた78歳の大泥棒

昨日に引き続いて、ダニエル・フリードマンの<引退刑事バック・シャッツもの>の第二作(2014年発表)を紹介したい。前作「もう年はとれない」で犯人に銃撃されたバック。九死に一生は得たものの銃創や骨折がなかなか治らず、今は妻のローザと介護付き老人…

人生100年時代のハードボイルド

昨日、還暦を迎えた女4人組の話「暗殺者たちに口紅を」を紹介した。軽快なスパイスリラーだったが、今時60歳は老人とは言えない。そこで敬老の日の今日、手に取ったのが、2012年発表の本書。ニューヨークの弁護士ダニエル・フリードマンのデビュー作で、マ…

立ち直ったヘンリー・リオス

1988年発表の本書は、昨年「このささやかな眠り」を紹介したゲイ作家マイケル・ナーヴァの第二作。前作で33歳だったゲイの弁護士ヘンリー・リオスは、36歳になっている。やはりゲイだった容疑者ヒューを釈放させはしたものの死なせてしまい、ヘンリーは事件…

カルト女探偵クレア登場

2005年8月末、米国南部をカテゴリ3級の大型台風<カトリーヌ>が襲った。低湿地帯の都市ニューオリンズでは市街地の8割が浸水し、多くの犠牲者が出た。2011年発表の本書は、書店員や古書販売などを経験して作家に転じたサラ・グランの作品。本書でデビュ…

ローマ警察ベッリ警部の3日間

1968年発表の本書は、イタリアのミステリーとして珍しいハードボイルド風の警察小説。ローマ警察外人課のベッリ警部は、辣腕刑事であるが(イタリア警察では普通だが)裏稼業を持っている。個人が望まない人物を国外退去させるなど、賄賂を貰って便宜を図る…

ノタ(札付き)の子孫たちの町

1998年発表の本書は、スー・グラフトンの<キンジー・ミルホーンもの>の第14作。前作で怪我を負ったディーツを看病していたキンジーは、サンタ・テレサに帰る途中で、ディーツから紹介された仕事をすることにした。塩湖沿いの町ノタ・レークは、人口2,300人…

さよなら、スペンサー一家

2011年発表の本書は、全39冊を数えるロバート・B・パーカーの「スペンサーもの」の最終作品。1973年「ゴッドウルフの行方」で始まった、ボストンのタフガイ私立探偵スペンサーとその仲間たちのシリーズは、作者の急逝という形で幕を下ろした。 スペンサー一家…

寡黙な中年のゲイ調査員ディヴ

昨年ヒスパニック系のゲイ作家マイケル・ナーヴァの作品を2作紹介した。1978年発表の本書は、その先輩格にあたるゲイ探偵のハードボイルドもの。1960年代までは公民権問題と言えば黒人問題だったが、このころからゲイ(LGBTQ)問題になってきたという。 作…

鎮魂歌か、パロディか?

ハードボイルドの探偵というのは、20歳代では厚みが出ない。できれば40歳代くらいで、世の中の酸いも甘いも経験したタフガイが望ましい。ロバート・B・パーカーのスペンサーなど、最初の頃は30歳代のチンピラ。40歳代の風情になって、なかなかの貫禄になった。…

海軍に入ったラム君

1942年発表の本書は、A・A・フェアの「バーサ&ラム君もの」。前年末の真珠湾攻撃により、米国は戦争状態に入った。筆の早い作者は、さっそく時勢に合わせた作品を仕上げたという次第。パートナーのラム君を軍隊にとられては大変とバーサは四方に手を廻すのだ…

ラストベルトの自動車産業

1992年発表の本書は、サラ・パレツキーのヴィクことV・I・ウォーショースキーものの第7作。これまでの6冊を通して、質の高い女性ハードボイルドものだと感じている。ただ問題は、このところページ数が増していること。本書に至っては600ページ近くあって、列…