2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧
今日4/30は、サイゴン(今のホーチミン)市が北ヴェトナム軍に制圧された日。世界最強米軍が、東南アジアの国に屈服した象徴的な日だ。ヴェトナム戦争は、米国市民の心に大きな傷を残した。そんなわけで、ヴェトナム戦争を正面から扱ったミステリーは珍しい…
2010年発表の本書は、当時東京都知事だった石原慎太郎氏の「リーダー論」。高名な作家で、政界にユニークな足跡を残した人であり、日本が覚醒するような議論を(ある時は過激に)展開し続けた人である。 日本人に誇りを持たせるためか、真実ではないかもしれ…
本書は、昨日紹介した「自衛隊最高幹部が語る台湾有事」と同様、中国軍の台湾侵攻をシミュレートした結果のレポートである。シミュレーションは国会議員10名余で、2022年に実施された。筆者山下裕貴元陸将は、その企画・指導役だった。 数ヵ月に渡って偽情報…
台湾有事について、自衛隊OBや政治家、シンクタンク研究員等が、2021年の8月に丸2日かけてテーブルトーク型シミュレーション(TTX)を行った。その推移と、結果を受けた座談会の模様(*1)を記したのが本書。参加者には僕の知人の名もあった。 シナリオは…
2016年発表の本書は、昨日「生存者ゼロ」を紹介した安生正の<ゼロシリーズ>第三作。作者は建設会社勤務とあって、感染症の恐怖を描いた第一作、軍事スリラーとしての第二作より、専門に近い内容かもしれない。今回日本政府や関係者が向き合うことになる脅…
2013年発表の本書は、以前「ゼロの迎撃」を紹介した安生正の<ゼロシリーズ>三部作の第一作。第11回「このミステリーがすごい」大賞受賞作である。第二作「ゼロの迎撃」がそれなりに面白かったので、シリーズ作を探していたところ2冊同時に手に入った。 第…
1993年発表の本書は、歴史・軍事もの作家柘植久慶のフィールドワークもの。グリーンベレーの一員として各地の戦闘に加わったという作者は、退役後も世界を巡って数々の取材をした。その際に、本書のテーマでもある麻薬問題の現場を見ることになる。世界全体…
1966年発表の本書は、昨日紹介した「怪盗タナーは眠らない」のシリーズ第二作。アル中探偵マット・スカダー、泥棒バーニー、殺し屋ケラーなど多くのレギュラーを持つローレンス・ブロックの作品中でも、かなり独特なものだと分かった。解説にはユーモアミス…
不思議な作風の作家ローレンス・ブロック。これまでいくつかの短編集と、アル中探偵「マット・スカダーもの」、軽妙洒脱な泥棒「バーニーもの」を紹介している。今回手に入った本書(1966年発表)が、初期のシリーズ「怪盗タナーもの」の第一作である。 エヴ…
2023年発表の本書は、記者からフリーライターに転身した栗下直也氏の「政治家のお酒通信簿」。古来為政者は、周囲の人の真意を知るために酒宴を利用した。ロシアのピョートル大帝などは、3日3晩の宴会に側近たちを閉じ込め酒を呑ませ続けた。もちろん為政…
1988年発表の本書は、これまで「過去からの狙撃者」「パンドラ抹殺文書」など出色のスパイスリラーを紹介してきた、マイケル・バー=ゾウハーの歴史スパイもの。WWⅠ当時、パレスチナを含むアラビア半島全域はオスマン・トルコ帝国支配だった。パレスチナには…
1999年発表の本書は、トム・クランシー&マーティン・グリーンバーグの<剣>シリーズの第三作。軍事システム開発会社アップリンク社の私設部隊<剣>の名前の由来は、アレキサンダー大王がゴルディアスの結び目を剣で断ち切ったとする故事にちなんでいる。…
1994年発表の本書は、先月デビュー作「警視の休暇」を紹介したデボラ・クロンビーの第二作。一人暮らしのエリート警視ダンカン・キンケイドと、シングルマザー巡査部長ジェマ・ジェイムズのコンビが主人公だ。 ダンカンは小規模なアパートで、気ままな独り暮…
今週ご紹介している「日本地図シリーズ」、最後はお城である。昨日の「大名の日本地図」にあったように、1~3万石クラスの小大名だと城は持てず陣屋が精々だった。それでも100位の藩は城持ちだったし、天領(幕府直轄地)にも城/城跡はある。本書では100…
「日本地図シリーズ」第三弾は、幕末期の大名と藩に関するもの。著者の中嶋繁雄氏は歴史ノンフィクション作家。「廃藩置県」の前には、天領の他に全国に約280の藩が存在した。地方政府でもあったこの組織群について本書では、 ・当主と明治政府での地位(公…
本書は、昨日に引き続き「日本地図シリーズ」の第二弾。同じく武光教授に加えて、合戦研究会の皆さんが著者に加わっている。そこそこの勢力同士がぶつかり合ったものを合戦と定義しているようで、戦場が海外のものは除かれている。巻末にある日本合戦史には…
以前文書新書の「世界地図シリーズ」を何冊か紹介した。今日から4日間、おなじ文春新書の「日本地図シリーズ」で書棚にある4冊を紹介したい。初日の今日は、県民性もしくは地域性に関するもの。著者の武光誠氏は、明治学院大学教授で専門は歴史哲学、思想…
2018年発表の本書は、元東京地検特捜部副部長で衆議院議員の経験もある若狭勝氏の政界裏面(というより暴露)書。著者とはある縁があって面識があり、この本も紹介されたもの。特捜部時代は政治家の不祥事を追うのが仕事だったが、ひょんなことから4年間に…
1990年発表の本書は、自身英語教師でもあるW・エドワード・ブレインのデビュー作。作者は、写真を見ると「サンダーバード」の科学者ブレインズを思わせる風貌である。「寄宿舎という閉鎖空間での事件、青年たちの姿が鮮明」との評価があるが、他の作品につい…
1937年発表の本書は、以前紹介した「一角獣の殺人」に引き続き、英国の諜報員ケン・ブレイクとイーブリンが登場するカーター・ディクスンの<H・M卿もの>。そもそもH・Mことヘンリー・メルヴェール卿の得意は怪奇な事件と密室の謎。しかし彼は陸軍諜報部長官…
1971年発表の本書は、パトリシア・モイーズの<ヘンリ&エミーもの>。以前紹介した「死の贈物」の次の作品にあたる。デビュー作「死人はスキーをしない」でも、ヘンリたちはイタリアアルプスのスキー場で事件に巻き込まれるのだが、今回の舞台もスイスの山…
2022年発表の本書は、以前「人工知能と経済の未来」「現金給付の経済学」を紹介した駒澤大学の井上智洋准教授のメタバース論。単なるテクノロジー論ではなく、Web3.0の時代に資本主義はどう変わるかが考察されている。旧フェイスブックが社名をメタと改めた…
2018年発表の本書は、マーク・グリーニーによる「暗殺者グレイマン」シリーズの第七作。前々作「暗殺者の反撃」でCIAの陰謀を打破し、追われる身ではなくなった<グレイマン>ことコート・ジェントリー。前作「暗殺者の飛躍」では、CIAの外郭工作員として自…
2014年発表の本書は、マーク・プライヤーの「ヒューゴー・マーストンもの」の一冊。デビュー作の「古書店主」は以前紹介していて、パリの米国大使館外交保安部長であるヒューゴーが、華の都をカウボーイブーツでのし歩く典型的な「米国の田舎者」ぶりが興味…
1982年発表の本書は、古典文学者キャロル・クレモーのミステリーデビュー作。作者はウィリアム&メアリ大学の教授、専門分野で2冊の著書がある。ミステリー中毒症の重症患者だと自ら言うマニアで、とうとう自分で書いてしまったのが本書。 舞台は東海岸の総…
2017年発表の本書は、NHK「いけずな京都旅」のコメンテータである国際日本文化研究センター井上章一所長の京都論。TV番組では軽妙に「いけず」と博識を披露している著者だが、てっきり文系研究者と思っていたら建築学の教授(建築史・意匠論)だった。確かに…
1905年発表の本書は、以前<ブラウン神父もの>や「知りすぎた男」を紹介したG・K・チェスタトン初期の短編集。全く新しいビジネスを創造することで入会できる<奇商クラブ>についての短編6編と、短編「背信の塔」中編「驕りの樹」が収められている。<奇商…
2022年発表の本書は、気鋭の政治学者白井聡氏と抗う新聞記者望月衣塑子氏の現代政治批判書。安倍元総理が亡くなった後の選挙で、立憲・共産連携がぎくしゃくし、両党が議席を減らし維新の会が台頭した後の政治情勢を分析したもの。基本的には、自民・公明・…
1975年発表の本書は、昨年「秘められた感情」を紹介したレジナルド・ヒルの「ダルジール&パスコーもの」。前作「秘められた・・・」で警部に昇進し、プロポーズにも成功したピーター・パスコーとエリーの結婚式で幕が開く。 上司としてスピーチをするダルジー…
創元推理文庫にはジャンルを表すマークがあって、本格ミステリーは帽子をかぶった男の頭のシルエット上に「?」、サスペンスは猫という具合。伝奇・怪奇小説には古代の帆船が描かれていた。ほとんど読まなかったそのジャンルだが、「小鼠:グランド・フェン…