新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

業界情報

5年前にちゃんとバラしてました

2018年発表の本書は、元東京地検特捜部副部長で衆議院議員の経験もある若狭勝氏の政界裏面(というより暴露)書。著者とはある縁があって面識があり、この本も紹介されたもの。特捜部時代は政治家の不祥事を追うのが仕事だったが、ひょんなことから4年間に…

法人類学者と死体たち

2004年発表の本書は、法人類学者エミリー・クレイグ博士の経験を綴ったノンフィクション。「死体は語る」の上野正彦氏が推薦している書だ。クレイグ博士はもともとは医療イラストレータ、検視解剖の現場で助手的な役割をしているうちに法人類学の道を目指し…

記者は何故戦場を目指すのか?

2021年発表の本書は、ジャーナリスト佐藤和孝氏の、現代アフガニスタンレポート。筆者は、2012年にシリアで取材中に銃撃されて亡くなったジャパンプレス山本美香氏の同僚であり、山本美香記念財団の代表理事でもある。40年間の記者生活を、アフガニスタン・…

デジタルロビーイングの歴史に学ぶ

本書は先月発売になったばかりのもの。渡辺弘美氏とは15年程前に知り合い、業界団体の場でデジタル政策を論じてきた縁で、新刊書を送っていただいた。筆者は旧通産省で産業政策を21年、アマゾン合同会社でロビーイング15年の経験を持ち、現在は公共政策を向…

ヒトはどこまで行けるか

2021年発表の本書は、大野和基氏が世界の知性にインタビューするPHP新書の一冊。本書のテーマは「ヒトを進化させる科学」である。8人の科学者が登場し、人類の未来を(ポジティブに)語る。 冒頭の化学者ダウドナ教授は、<クリスパー・キャス9>という非…

社会問題のるつぼ

本書は、BS朝日の「町山智浩のアメリカの今を知るTV」で、2016~22年にかけて放映された内容をもとに書籍化された「現代アメリカの病巣」論。町山氏は映画評論家でジャーナリスト、相方の藤谷文子氏は女優。いくつものインタビューを交えながら、ドラマのよ…

時代に取り残されたメディア

2021年発表の本書は、近代日本の代表的メディアである朝日新聞(グループ)の経営課題に関するレポート。著者は「宝島特別取材班」となっているが、4人の共著。うち2人は朝日新聞社員だった人。 旧士族だろう、村山家と上野家が興した新聞社で、太平洋戦争…

110番する前の基礎知識

今日は110番の日、2021年発表の本書は、昨年も「警察の階級」を紹介した元キャリア警察官古野まほろの「警察官・組織のトリセツ」、一般市民から見た、警察組織の使い方である。 原則としての「民事不介入」はあるが、民事・刑事の境目はあいまいで、動きた…

「共産党の牙城」と呼ばれた機関

2020年発表の本書は、国際政治評論家白川司氏の「日本学術会議追及」。菅内閣がこの組織の構成員半数の改選にあたり6名を選ばなかったことから、多くの市民にこの組織のことが知られるようになった。本書は同会議の問題を追求したものだが、多少偏向してい…

1,350万件の電子カルテを分析する

2022年発表の本書は、長年電子カルテの開発・普及・利用に関わった油井敬道氏(アライドメディカル取締役)の医療費論。医療業界は通常の市場原理が働きにくいので、電子カルテなどのビッグデータ分析で実態を明らかにし、患者・保健者も含めた社会全体での…

危機が生む政策起業イノベーション

2019年発表の本書は、アジア・パシフィック・イニシャティブの創設者船橋洋一氏のシンクタンク論。冒頭、シンクタンクは世界的な危機(戦争や恐慌)を受けて、設立されたとある。 ・WWⅠ ブルッキングズ、CFR ・WWⅡ RAND、CSIS ・冷戦 PIIE 公正な政策提言を…

「所詮言葉の問題」ではない

2016年発表の本書は、心理学者岡本真一郎教授(愛知学院大学心身科学部心理学科)のコミュニケーション論。インターネット上では、すでに国家間の謀略レベルの「偽ニュース」が充満しているが、悪口・嘘・ヘイト等の本質は変わらないと考えて買ってきた書で…

若人への「住み方改革」提案

2020年発表の本書は、ボストンコンサルから三井不動産に移った牧野知弘氏の不動産業界情報。人口減少、都市への人口集中、空き家の増加、タワマンブーム、老朽マンション問題などを取り上げ、これからの人生で不動産とどう付き合うべきかを示してくれる書だ…

4人の殺人犯のココロを追う

2018年発表の本書は、精神科医岩波明氏の殺人犯の心療録。主に4つの事件について、 ・殺人犯の生い立ち、生活環境や教育事情 ・事件の背景や、それに至るまでのトラブル等 ・診療をしてみての殺人犯についての分析 が示されている。 ◇宝石商を射殺した童話…

ジュール・ヴェルヌの予言

「80日間世界一周」を書いた作家のジュール・ヴェルヌは、「いつの日か人類は、80時間で世界一周ができるようになる」と予言したらしい。本書は、それをやってみようと企み、実際に成し遂げたルポである。ただ最後に「実は87時間かかりまして、80時間台での…

腐敗の原因は幹部?それとも政治?

2021年発表の本書は、朝日新聞藤田知也記者の「日本郵政の腐敗レポート」。ここに取り上げられている問題は、 1)かんぽ保険の不正販売 2)内部通報制度の機能不全 3)ゆうちょ銀行の不正引き出し 4)同じく投資信託販売不正 5)NHKへの報道弾圧 6)総…

闘える日本軍へのヒント

2018年発表の本書は、何冊か軍事関係の書を紹介しているCSIS上級顧問エドワード・ルトワック氏の「闘える日本軍への助言」である。ただ本書出版に時点では「COVID-19」禍もウクライナ紛争も始まっていない。筆者の戦略思考は、現時点ではうなずけないものが…

銃口を人に向けるな!

先週、岐阜県の自衛隊訓練場で、驚くべき事件が起きた。小銃の射撃訓練で3名の自衛官が撃たれ、2人が亡くなったのだ。これは、単なる事故や困った個人の暴走ではなく、自衛隊の組織が抱える問題なのだと気づかされたのが本書(2020年発表)。 著者の二見龍…

日韓インテリジェンス協力に向けて

G7広島サミットには韓国の尹大統領も参加、西側への親密ぶりを示した。ひょっとするとだが、来年はG8の一国になっているかもしれない。前政権でまったく途絶えていた、日韓の協力も再開すすだろう。その中にはインテリジェンスに関するものもあって欲しいと…

決して知能犯ではない

本書は元国税調査官で経営コンサルタントの大村大次郎氏が、2005年に発表したもの。少し古い書で、今では改善されていることもあるかもしれないが、日本の税制や税務当局の限界を含め、脱税に関する情報を満載した「脱税ゼミナール」のようなものだ。冒頭筆…

遺伝子操作とゲノム編集の違い

この本(2019年発表)を読んだきっかけは、遺伝子操作(GMO)食品規制はあるが、ゲノム編集食品についてはまだ規制はないと聞いたから。1990年代、米国で「腐らないトマト」が売り出されたが、GMO食品だったことから市場から追放されている。以後GMO食品に関…

5G、それで何ができるのか?

2020年発表の本書は、東京大学大学院教授(電子工学)森川博之氏の「5G論」。僕より1世代若いデジタル研究者で、政府関係の会合等で何度かお会いしたこともある。技術者だがビジネス感覚もお持ちで、この技術をどう高めるかよりどう使って社会に適用する…

日本人をだますのは簡単

2021年発表の本書は、昨年「日本人は何も知らない」を2冊紹介した「めいろまさん」こと谷本真由美氏のシリーズVol.3。前作では「COVID-19」禍における各国の対応を含めて、日本メディアが伝えていない海外事情を紹介してくれた。本書では、欧州事情を中心に…

失敗して当たり前

2015年発表の本書は、警察官僚で危機管理分野を担当する警察大学校の樋口晴彦教授の危機管理論。多くの危機管理の実例を示した、実践的な書だ。ただ後半は太平洋戦争や幕末の戦争指導の例が多く、あまり新味はない。それよりも前半、福島原発事故など昨今の…

革新技術と医療の進化

2019年発表の本書は、中部医学会の重鎮齋藤英彦氏が編者となり、日本の医療技術・システムの最前線を8人の著者と共に紹介したもの。編者は名古屋大学医学部教授が長く、著者の何人かも名古屋大学と関係ある人達だ。 名古屋大学は最初に医学部・工学部が設立…

11人のプロボノ著者たち

本書は今日(2023年1/30)発売されるもの。なぜそんなものを持っているのかと言うと、著者の一人から事前に貰っていたから。こういうのを「私家版」というのだっけ。テーマは「昨今リスクが急騰しているサイバー攻撃にどう備えるか」である。 サイバーセキュ…

10の階段を登っていく

今日は110番の日。2020年発表の本書は、キャリア警察官僚出身のミステリー作家古野まほろの警察組織紹介。ミステリーでは、○○警部や××警視が出てきて捜査の指揮を執る。ある作品には「警部補ともなれば、勝手な越境捜査くらいはできる」とあったが、これはと…

「人質司法」の現場にて

本書の著者原田宏二氏は、元北海道警警視長。1995年に釧路方面本部長で退官した後、2004年道警の裏金問題について「告白」をし、以降警察の健全化や冤罪事件撲滅に向けた運動を続けた人。安倍政権が進める刑事訴訟法の改正にあたり、警察の現場や市民生活へ…

日本でペリー・メイスンは育つか

昨日佐々木知子著「日本の司法文化」を紹介して、検挙率95%、無罪率0.1%という日本の犯罪捜査や裁判の状況をご紹介した。ゴーン被告人の肩を持つつもりはさらさらないが、これほど「超精密」な司法文化では法廷弁護士の役割は目立たない。そこで検察から見…

超精密司法の国の検察

あえて題名は言わないが、TVの検察ものドラマを見ていて「ちょっと外れすぎ」だと思った。確かに「型破りな検事が・・・」と宣伝されているが、いくらなんでも日本の検察官には見えない。そこで10余年前に読んだ本だが、本書(2000年出版)を本棚から出してきて…