新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

業界情報

日本一のための準備と用兵

プロ野球のペナントレースも大詰め。これからクライマックスシリーズから日本シリーズへ、5~7戦の短期決戦が始まる。140試合ほども闘うペナントレースでは、3連敗どころか10連敗してもリカバリ手段はある。しかし、短期決戦ではそうはいかないから、自ず…

経済安保で注目される今こそ

本書は、今月に出版されたばかりの「日本の半導体70年史」。筆者の牧本次夫氏からいただいたものである。トランジスタ時代からの業界の推移を、インサイダーの目で記述してある。 筆者が技術分野としてこの業界を目指したきっかけは、ソニーのトランジスタラ…

4冊目になりました

2022年発表の本書は、昨年「日本人は何も知らない」を3冊紹介した「めいろまさん」こと谷本真由美氏のシリーズVol.4。前作と何が違うかというと、ロシアのウクライナ侵攻があって国際情勢がより緊迫したこと。本書でも欧州事情を中心に、普通の日本人の国際…

サイバー空間に触れたリスク研究者

2024年発表の本書は、昨日「ウクライナ戦争の200日」を紹介した小泉悠氏が、サイバーセキュリティの専門家小宮山功 3)安い地価や良好な交通アクセス 4)需要、消費地に近い ことのほか、法令の制約が少なく、税制が有利、技術者らが得やすいなどであれば…

高齢化社会とテクノロジー

2020年発表の本書は、10万人の高齢者と向き合ってきた眼科医平松類氏の医療テクノロジー論。AI、IoT、AR、VR、ビッグデータ等を活用して、医療現場と高齢化社会がどう変わるかを示したもの。眼科はむき出しの臓器で画像診断がしやすい眼を扱うことから、他の…

18,000もの組織が守る国内治安

2021年発表の本書は、米国在住のジャーナリスト冷泉彰彦氏の米国警察事情。米国ミステリーは沢山読んでいる僕だから、米国警察組織についておおむねのことは知っているが、改めて確認しようと買って来たもの。よく映画等に出てくるFBIなどは連邦警察で、その…

2040年に医療制度を崩壊させぬよう

2022年発表の本書は、放射線医学が専門で医療経営にも詳しい奥真也医師の「日本の医療制度診断診断」。題名に「医療貧国」とあるが、本書のデータを見る限りちょっと誇大広告。例えばOECD各国(カッコ内が平均)との比較で、 ・MRIは人口100万人あたり55台(…

難民保護のための国連活動

2019年発表の本書は、今話題のUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)を経てUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)駐日代表である滝澤三郎氏の国連レポート。日本政府の法務省を辞め国連職員となった筆者は、グローバル化の先進組織である国連で生き延びてい…

データリテラシーを磨く

2021年発表の本書は、ベンチャー投資家山本康正氏のデータ活用論。筆者はBTMU(現MUFG)からGoogleを経て、日本企業やベンチャーキャピタルへの助言も行っている。そんな彼の、①情報の集め方、②活かし方、③偽情報の見抜き方が記されている。実は③を期待して…

Smart City より WISE City

本書は、東急電鉄の執行役員・都市創造本部運営事業部長である東浦亮典氏が、これからの鉄道会社の在り方を示したもの。2018年の時点で(「COVID-19」を予測したわけではなかろうが)場所に囚われない、都心でなくてもいい働き方を提案している。題名の「私…

Global & Digital時代の企業価値向上

本書は出版早々(2024年4月)のものを送っていただいた。出版元は<宣伝会議>だが、電通グループの専門PR会社<電通PRコンサルティング社>の手になるもの。副題に「新しい企業価値を創出する」とあるが、昨日紹介したようにプロパガンダが溢れる現代社会…

派閥や分派を許さないゆえ

自民党が裏金問題を受けて派閥解消を掲げたが、そもそも規定に「派閥、分派を許さず」と明記している政党がある。それが、日本共産党。党としての行動を一致させるために有用な規定ともみられるが、逆に硬直した組織になって党首が長く居座ることになりかね…

5年前にちゃんとバラしてました

2018年発表の本書は、元東京地検特捜部副部長で衆議院議員の経験もある若狭勝氏の政界裏面(というより暴露)書。著者とはある縁があって面識があり、この本も紹介されたもの。特捜部時代は政治家の不祥事を追うのが仕事だったが、ひょんなことから4年間に…

法人類学者と死体たち

2004年発表の本書は、法人類学者エミリー・クレイグ博士の経験を綴ったノンフィクション。「死体は語る」の上野正彦氏が推薦している書だ。クレイグ博士はもともとは医療イラストレータ、検視解剖の現場で助手的な役割をしているうちに法人類学の道を目指し…

記者は何故戦場を目指すのか?

2021年発表の本書は、ジャーナリスト佐藤和孝氏の、現代アフガニスタンレポート。筆者は、2012年にシリアで取材中に銃撃されて亡くなったジャパンプレス山本美香氏の同僚であり、山本美香記念財団の代表理事でもある。40年間の記者生活を、アフガニスタン・…

デジタルロビーイングの歴史に学ぶ

本書は先月発売になったばかりのもの。渡辺弘美氏とは15年程前に知り合い、業界団体の場でデジタル政策を論じてきた縁で、新刊書を送っていただいた。筆者は旧通産省で産業政策を21年、アマゾン合同会社でロビーイング15年の経験を持ち、現在は公共政策を向…

ヒトはどこまで行けるか

2021年発表の本書は、大野和基氏が世界の知性にインタビューするPHP新書の一冊。本書のテーマは「ヒトを進化させる科学」である。8人の科学者が登場し、人類の未来を(ポジティブに)語る。 冒頭の化学者ダウドナ教授は、<クリスパー・キャス9>という非…

社会問題のるつぼ

本書は、BS朝日の「町山智浩のアメリカの今を知るTV」で、2016~22年にかけて放映された内容をもとに書籍化された「現代アメリカの病巣」論。町山氏は映画評論家でジャーナリスト、相方の藤谷文子氏は女優。いくつものインタビューを交えながら、ドラマのよ…

時代に取り残されたメディア

2021年発表の本書は、近代日本の代表的メディアである朝日新聞(グループ)の経営課題に関するレポート。著者は「宝島特別取材班」となっているが、4人の共著。うち2人は朝日新聞社員だった人。 旧士族だろう、村山家と上野家が興した新聞社で、太平洋戦争…

110番する前の基礎知識

今日は110番の日、2021年発表の本書は、昨年も「警察の階級」を紹介した元キャリア警察官古野まほろの「警察官・組織のトリセツ」、一般市民から見た、警察組織の使い方である。 原則としての「民事不介入」はあるが、民事・刑事の境目はあいまいで、動きた…

「共産党の牙城」と呼ばれた機関

2020年発表の本書は、国際政治評論家白川司氏の「日本学術会議追及」。菅内閣がこの組織の構成員半数の改選にあたり6名を選ばなかったことから、多くの市民にこの組織のことが知られるようになった。本書は同会議の問題を追求したものだが、多少偏向してい…

1,350万件の電子カルテを分析する

2022年発表の本書は、長年電子カルテの開発・普及・利用に関わった油井敬道氏(アライドメディカル取締役)の医療費論。医療業界は通常の市場原理が働きにくいので、電子カルテなどのビッグデータ分析で実態を明らかにし、患者・保健者も含めた社会全体での…

危機が生む政策起業イノベーション

2019年発表の本書は、アジア・パシフィック・イニシャティブの創設者船橋洋一氏のシンクタンク論。冒頭、シンクタンクは世界的な危機(戦争や恐慌)を受けて、設立されたとある。 ・WWⅠ ブルッキングズ、CFR ・WWⅡ RAND、CSIS ・冷戦 PIIE 公正な政策提言を…

「所詮言葉の問題」ではない

2016年発表の本書は、心理学者岡本真一郎教授(愛知学院大学心身科学部心理学科)のコミュニケーション論。インターネット上では、すでに国家間の謀略レベルの「偽ニュース」が充満しているが、悪口・嘘・ヘイト等の本質は変わらないと考えて買ってきた書で…

若人への「住み方改革」提案

2020年発表の本書は、ボストンコンサルから三井不動産に移った牧野知弘氏の不動産業界情報。人口減少、都市への人口集中、空き家の増加、タワマンブーム、老朽マンション問題などを取り上げ、これからの人生で不動産とどう付き合うべきかを示してくれる書だ…

4人の殺人犯のココロを追う

2018年発表の本書は、精神科医岩波明氏の殺人犯の心療録。主に4つの事件について、 ・殺人犯の生い立ち、生活環境や教育事情 ・事件の背景や、それに至るまでのトラブル等 ・診療をしてみての殺人犯についての分析 が示されている。 ◇宝石商を射殺した童話…

ジュール・ヴェルヌの予言

「80日間世界一周」を書いた作家のジュール・ヴェルヌは、「いつの日か人類は、80時間で世界一周ができるようになる」と予言したらしい。本書は、それをやってみようと企み、実際に成し遂げたルポである。ただ最後に「実は87時間かかりまして、80時間台での…

腐敗の原因は幹部?それとも政治?

2021年発表の本書は、朝日新聞藤田知也記者の「日本郵政の腐敗レポート」。ここに取り上げられている問題は、 1)かんぽ保険の不正販売 2)内部通報制度の機能不全 3)ゆうちょ銀行の不正引き出し 4)同じく投資信託販売不正 5)NHKへの報道弾圧 6)総…

闘える日本軍へのヒント

2018年発表の本書は、何冊か軍事関係の書を紹介しているCSIS上級顧問エドワード・ルトワック氏の「闘える日本軍への助言」である。ただ本書出版に時点では「COVID-19」禍もウクライナ紛争も始まっていない。筆者の戦略思考は、現時点ではうなずけないものが…

銃口を人に向けるな!

先週、岐阜県の自衛隊訓練場で、驚くべき事件が起きた。小銃の射撃訓練で3名の自衛官が撃たれ、2人が亡くなったのだ。これは、単なる事故や困った個人の暴走ではなく、自衛隊の組織が抱える問題なのだと気づかされたのが本書(2020年発表)。 著者の二見龍…