架空戦記
本書は「大鑑巨砲作家」横山信義初期のシリーズ「修羅の波濤」の外伝。「鋼鉄のリヴァイアサン」でデビューした作者は、本当に書きたかった「八八艦隊物語」全5巻ののち、「修羅の波濤」全8巻で太平洋戦争のシリーズものを書き続ける自信を得たように思う…
2020年発表の本書は、以前「国のために死ねるか*1」を紹介した自衛隊の特殊部隊創設者伊藤祐靖氏の架空戦記。「国の・・・」に書かれた自衛隊特殊部隊の思想、訓練、日常、覚悟や、自衛隊上層部、防衛相幹部、政治家などに対する現場からの見方を小説形式で著し…
2005年発表の本書は、以前「そして帝国は消えた」を紹介した落合信彦の国際謀略小説。日本でこの種のヴィヴィッドな作品は少なく、ジャーナリスト出身で、石油ビジネスの裏面にも詳しい作者ならではの迫力ある1冊だ。 時は2007年、経済成長著しい中国だが、…
以前「サイレントコア」や「UNICOON」シリーズの架空戦記を紹介している大石英司は、1980年代後半からの架空戦記ブームの中で「現代ものでややSF傾向」な作品を得意とし、特に航空機への思い入れが強い印象だった。デビュー作「B-1爆撃機を追え」がそれを表…
このシリーズ6冊は「大鑑巨砲作家」横山信義の太平洋戦記。昨年紹介した「蒼洋の城塞」同様、少しずつBook-offの100円コーナで6冊を揃えた。このシリーズのアイデアは2つ。まず主人公たる戦闘艦が存在する。「巡洋戦艦浅間シリーズ」同様の設定で、今回は…
2016年発表の本書は、アジア系米国作家ピーター・トライアスの第二長編。邦訳されたのは本書が最初である。帯にあるように第二次世界大戦は枢軸側が勝利、米国は日独によって分割統治されている。そんな世界の北アメリカ大陸西海岸での、 ・日帝に抵抗する米…
2011年発表の本書は、大艦巨砲主義架空戦記作家横山信義の(めずらしい)SF。この年に亡くなった小松左京の「見知らぬ明日」に感銘を受けた作者は、自分なりの「見知らぬ・・・」を書きたいと思い、本書から始まる短いシリーズを書いた。 ジュール・ヴェルヌの…
2015年発表の本書は、元航空自衛隊員だった数多久遠(あまた くおん)の架空戦記。意味ありげなペンネームである。ネット作品「日本海クライシス2012」でデビューし、リアルな冒険小説作家として知られるとある。 本書の舞台は尖閣列島周辺の東シナ海、中国…
本書(全6巻)は、ご存じ「大鑑巨砲作家」横山信義の架空戦記。新刊で買うのはもったいない(ゴメンね)ので、Book-offの100円コーナーで見かけるたびに買って6冊を揃え、この夏休みにまとめて読んでみた。 始まりは1942年4月のドゥーリトル空襲。史実で…
「蒼海の尖兵」シリーズは、大鑑巨砲架空戦記作家横山信義の比較的初期の作品。本編7作のほか、何冊か外伝が出版されている。本書は2001年に出版された「外伝1」。どうしても太平洋を挟んで日米両艦隊が戦えば、日本に勝ち目がないのが分かり、作者は本シ…
本書は、以前「本当の潜水艦の戦い方」を紹介した中村秀樹氏の架空戦記。作者は海上自衛隊で潜水艦長を経験し、防衛研究所での太平洋戦争の潜水艦戦史研究で知られた人。 隠密性が命の難しい艦種 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp) テーマは定番のミッドウェー海…
本書は、以前「Redsun & Blackcrossもの」の「フリードリヒ大王最後の勝利」を紹介した佐藤大輔の短編集。かつて(1991年)天山出版から出されていた作品群に、新作を加えて文庫化したもの。太平洋戦争のIFを、思い切り詰め込んでいる。 今にして思えば、太…
2020年発表の本書は、尖閣諸島を巡る日中両軍の海戦をハイライトにした架空戦記。作者の喜安幸夫は「台湾週報」編集長を経て、作家に転じ「台湾の歴史」で日本文芸家クラブでノンフクション賞を受賞している。李登輝友の会、日本ウイグル協会会員でもある。 …
本書は「海の架空戦記作家」横山信義が、本当に書きたいものを書いたシリーズの1作。第二次世界大戦はどう転んでも日本に勝ち目がなかったことは、何度も紹介している。それでも架空戦記作家たちは、工夫をを凝らして、 ・なんとか善戦できるように ・あわ…
昨年大石英司の「サイレントコア」シリーズの1編「魚釣島奪還作戦」を紹介したが、作者がもうひとつシリーズ化していたのが「UNICOON」もの。国連が軍事的即応部隊を極秘に持っていたという設定(その資金は日独が提供)で、1990年代に多く発表されている。…
20世紀の終わりごろ、日本には「架空戦記ブーム」があった。その多くは太平洋戦争を描いたもの。実際にあの悲惨な戦争を経験した人の多くは現役を引き、戦争体験を語ることも少なくなった。例えば僕らの世代では、戦記物などを読んで「あの時こうしていたら…
2017年発表の本書は、テキサス州で孫たちと引退生活を楽しんでいる元弁護士ウォルト・グラッグが書き下ろした架空戦記。作者は冷戦期に、西ドイツにあった欧州軍司令部に3年間勤務した経験がある。 本書の「歴史」では、2010年頃プーチン大統領が失脚、後継…
本書は以前「ジョーンズの世界」などを紹介した、SF作家フィリップ・K・ディックのパラレルワールドもの。1963年のヒューゴー賞を受賞していて、作者の最高傑作と位置づける評論家も多い作品だ。昔「Red Sun & Black Cross」というゲームがあり、これを基にし…
本書(1955年発表)は、以前「荒鷲の要塞」「金門橋」を紹介した冒険小説の大家アリステア・マクリーンのデビュー作である。舞台は北緯70度近辺の北極圏、何もかもが凍り付く厳寒の海だ。なぜこんなところで戦闘が発生するかと言うと、1943年の時点では欧州…
昨日荒巻義雄の「紺碧の艦隊」シリーズを紹介したが、それに遅れること3年、SF作家田中光二が1993年~1998年の間に発表したのがこの「新・太平洋戦記シリーズ」である。作者は非常に多作で、300冊を優に超える作品群がある。NHKで教育番組のプロデューサ…
本書は1990年から1996年まで、全20巻を数えた架空戦記「紺碧の艦隊」の1冊目である。作者の荒巻義雄はSF作家、1972年短篇集「白壁の文字は夕日に映える」でデビューし星雲賞日本短編賞を受賞している。伝奇ロマンを得意としていたが、1986年の「ニセコ要塞1…
尖閣諸島周辺に中国海警局などの船舶が出没し、台湾海峡と共に東シナ海のホットスポットとなっている。この海域をテーマにした軍事スリラーはいくつもあるし、 ・武装漁民が上陸したら手が付けられない。 ・中国海軍力の充実は著しく、海上自衛隊では歯が立…
昨日、一昨日と「Brexit」を巡る動きを庶民目線と政治家目線でレポートしてくれた書を紹介している。本書は1998年発表のフィクション。内容は英国が国民投票でEU離脱を決め、さらに米国合流も決めるというものだ。20世紀末ついに統合通貨ユーロ導入が秒読み…
第二次世界大戦の大西洋での海戦といえば、英国作家を多く思い出す。例えば、ダグラス・リーマンの諸作は何冊も紹介している。これに比べ英国海軍と戦った相手、ドイツ海軍を主役に据えた話は、少なくとも日本ではあまり多く紹介されていない。以前、「Uボー…
第二次大戦であまりにもあっけなく降服してしまったので、フランスは「戦争に弱い国」という印象があるかもしれない。しかし、大陸制覇に一番近づいたのは、1800年過ぎのフランス皇帝ナポレオンである。グラン・ダルメ(大陸軍)を率いてイベリア半島・地中…
「歴史探偵」と自称(他称?)する人は日本に何人かいるが、本書の作者保阪正康もそのひとり。学生時代は左翼系の闘士だったそうだが、ノンフィクション作家として太平洋戦争前からの軍部の行動について非常に厳しい目を持った人である。靖国神社についても…
以前「蜀の巻」を紹介した柘植久慶の「逆撃シリーズ三国志編」、本書はその「魏の巻」である。日本人が知っているこの時代の中国は「三国志演義」が基になっているので、魏の国の曹操は悪役として認知されている。 しかし判官びいきな「演義」と違い、正史「…
柘植久慶という作家は元グリーンベレー大尉と称していて、1986年「ザ・グリーンベレー」という本でデビューした。サバイバルに関するもの、歴史上の戦略・戦術・指揮官に関するもの、架空戦記というにはあまりにリアルな小説など、膨大な著作がある。以前「…
本書は海上自衛隊護衛艦艦長、幹部学校教官、護衛隊司令、総監部防衛部長などを歴任した渡邉直が、ミリタリーマガジンの携帯サイトに連載していた「南海の虎ー小説海賊物語」を文庫出版したものである。時代は20xx年となっているが、登場する艦艇から見て202…
今や警察小説作家となった佐々木譲。1979年「鉄騎兵、飛んだ」でデビューして後、その名を有名にしたのが本書から始まる第二次世界大戦秘録3部作である。元は本田技研に勤めていて、F-1プロジェクトで知り合ったエンジニアに零戦の設計に携わった人がいたと…