新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

スパイスリラー

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二人の二重スパイの邂逅(後編)

マンディとケイトの子供が生まれて8年が経った。その間エイモリーの指揮のもと、マンディは何度も東欧に出かけ、サーシャ経由でいろいろなものを受け取った。マンディ自身は、2つの自分を見ていた。 マンディ1号:パブリックスクールのスポーツマン、ワイ…

二人の二重スパイの邂逅(前編)

2003年発表の本書は、スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレが怒りを持って「9・11後の諜報のリアルな世界」を描いたもの。ベトナム戦争の反戦運動から、ソ連崩壊・冷戦終結、地域紛争、テロとの戦いの時代を通した大河ドラマである。 テッド・マンディはインド生…

マルタ聖騎士団最高勲爵士リンゲ殿下

1979年発表の本書は、ジェラール・ド・ヴィリエの<プリンスマルコもの>。今回の舞台は、地中海の中央に浮かぶ島マルタ島(共和国)。 マルタ共和国の首脳部は事実上リビアの支配下にあり、西側諜報員は民主化勢力を支援する活動をしていた。政府の腐敗の実態…

軍参謀長にかかるスパイの嫌疑

1978年発表の本書は、ジェラール・ド・ヴィリエの<プリンス・マルコもの>。先月紹介した「バグダッドの黒豹」同様、京都のBookoffで見つけたものだ。欧州のほとんどの言語を自在に操り、驚異的な記憶力を持っているマルコ・リンゲ殿下は、浪費が激しい婚約者…

律儀な園芸家の美しい新妻(後編)

ジャスティンのもとに、現地から事件の最新状況が届いた。ブルームの衣服が見つかり、その様子からはブルームがテッサと運転手ノアを殺して逃げたように思われた。 一方ジャスティンとテッサの家は、ナイロビのもロンドンのも、何者かに家探しをされた。テッ…

律儀な園芸家の美しい新妻(前編)

2001年発表の本書は、「寒い国から帰ってきたスパイ」やスマイリー三部作を紹介してきたスパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの作品。 舞台は1月(真夏)のケニア、ナイロビの難民高等弁務官事務所に悲報が入った。アフリカにおける女性人権擁護活動をしていた…

確実な死か、十中八九の死か

1997年発表の本書は、以前軍事スリラー「報復*1」を紹介した幅広い作風の鬼才ドン・ウィンズロウのスパイスリラー。 砂漠の町に生れた不良少年ティム・カーニーは、海兵隊員としてイラク戦争の英雄になった。複数の戦車を前に多くの仲間の命を救ったのだ。し…

怪物<クロノス>を斃せるか

1987年発表の本書は、W・L・デアンドリアの「クロノス計画」に発する三部作の最終作品。冷戦初期のソ連の諜報作戦<クロノス>は、西側諸国特に米英に多くの影を落とした。三部作の主人公で名無しのスパイも、実はそのおとし子である。彼は本書では、アラン・…

処刑を待つ貴公子、リンゲ殿下

1969年発表の本書は、しばらくご無沙汰だったジェラール・ド・ヴィリエの<プリンス・マルコもの>。近代的なスパイスリラーの中で、サスペンス・アクション・エロス・バイオレンスが入りまじり、陰謀論も豊富なシリーズだが、邦訳は最近見かけない。創元社が…

サセックスの一つ目巨人

1985年発表の本書は、先月「クロノス計画」を紹介したW・L・デアンドリアのスパイスリラー、「クロノス計画」の続編である。前作でクリフォード・ドリスコルと名乗っていた主人公は、ジェフリィ・ベルマンとして英国にやってきた。ドリスコルは死んだことにな…

ヘティを狙う敵と内通者の疑惑

このDVDは「NCIS LA:潜入捜査班」のシーズン6。前シーズンの最終話でカレンとサムはイスラム過激派の潜水艇に閉じ込められ、テロの巻き添えになりそうになる。そのころ、支局長のヘティは首都での聴聞会に臨んでいた。 第一話「潜水」では、ケンジーたちは…

WWⅡ、キューバでの暗闘(後編)

ヘミングウェイは、ドイツ人も含む客を呼んでパーティを繰り返す。ドイツ人女優のディートリッヒもいるが、彼女はナチスを否定する発言が多い。一体誰がドイツのスパイなのか、そもそもヘミングウェイのパーティに意味はあるのか?ルーカスは暗号を解読し、…

WWⅡ、キューバでの暗闘(前編)

1999年発表の本書は、SF・ファンタジーからアクション小説まで幅広い作風の大家(*1)ダン・シモンズのスパイスリラー。歴史上の人物が多く登場し、スケールの大きな物語になっている。主人公のルーカス捜査官は、30歳前でFBIの作戦実行部門SISの所属。 メキ…

デアンドリアの国際陰謀小説

1984年発表の本書は、<マット・コブもの>など本格パズラーで読者を楽しませてくれたW・L・デアンドリアのスパイスリラー。米ソ冷戦のスパイ戦、サスペンス横溢の誘拐もの、「ホッグ連続殺人*1」に代表される作者の特徴「言葉遊び」が詰まった、カテゴリ分け…

おはよう、ブリッグス君

このDVDは、オリジナル「Mission Impossible」のシーズン1。まだジム・フェルプス(ピーター・グレーブス)が登場せず、リーダーはダン・ブリッグス(スティーブン・ヒル)である。シナモン・バーニー・ウィリーは最初からレギュラーだが、ほぼ全ての話に登…

3人の兄の仇を狙う女伯爵

2002年発表の本書は、ジャック・ヒギンズの<ショーン・ディロンもの>、以前紹介した「復讐の血族」の続編にあたる。前作でディロンたちに米国大統領暗殺計画を阻止され、3人の兄を殺されてしまったケイト・ラシッドは復讐に燃えていた。ベドウィンの王家…

人身売買組織の犯行の裏には(後編)

コートの接近を知ったヤコは、強引に予定を早めて女たちを船に乗せた。その中にやはりタリッサの妹ロクサナがいた。組織のTOPであるケイジは、以前ロクサナに言い寄ったことがあり、この絶世の美女をモノにしたいと思っていた。ルート上の者たちには、彼女を…

人身売買組織の犯行の裏には(前編)

2020年発表の本書は、マーク・グリーニーの<グレイマンもの>第9作。これまで三人称で語られていた主人公コート・ジェントリーの行動だが、本書は一人称で書かれている。冒頭、ボスニア紛争当時の悪漢を狙うシーンで、これまでとは異なったサスペンスを感…

スパイたちへの鎮魂歌、完結

1991年発表の本書は、3ヵ月連続紹介してきたフレデリック・フォーサイスの<騙し屋4部作>完結編。聴聞会はサム・マクレディに同情する声も上がり始めていたが、最後に紹介された件は、彼がカリブ海にある英領バークレー諸島の独立騒動の折にとった意表を…

WWⅠでのフランスレジスタンス

本書は、フランスのスパイ小説作家ピエール・ノールのWWⅠもの。激戦地ソンムの(ドイツから見て)背後にある町サン=コランタンは、ドイツ軍の占領下にあった。占領軍司令官ニーデルシュトフ大佐がプロシア貴族(伯爵)で、戦果には満足しているものの、プロ…

カダフィが贈る20トンの武器弾薬

1991年発表の本書は、フレデリック・フォーサイスの<騙し屋シリーズ>第三作。これまでの2作品で卓越した諜報能力を示したサム・マクレディだが、その能力について「将来も必要だろうか?」と疑問を投げかけられている。聴聞会の弁護役は、ならばと第三の…

名門ラシッド家の4兄妹

本書は、冒険小説の雄ジャック・ヒギンズが、以前紹介した「審判の日」と同じ2000年に発表したもの。「審判の日」同様、英国首相の私的軍隊ファーガスン少将(准将から昇進)、ショーン・ディロン、バーンスタイン警視のトリオと、米国大統領直属のブレイク…

亡命希望のKGB大佐の正体

1991年発表の本書は、フレデリック・フォーサイスの<騙し屋マクレディもの>第二作。冷戦が終わり秘密情報部(SIS)の整理にあたり、スケープゴートにされそうなサム・マクレディは、前作「騙し屋」でソ連軍の戦闘序列マニュアルを取得したことを成果として…

闇の政商が仕掛ける3つの事件

2001年発表の本書は、これまで「千年紀の墓標」から「細菌テロを討て!」まで4作を紹介した、トム・クランシー&マーティン・グリーンバーグ共著の<アップリンク社もの>の第5作。このシリーズは8作発表されていて、あと第6作だけが未入手。 今回の主な…

50万ポンド相当の金塊

1972年発表の本書は、冒険小説の雄ジャック・ヒギンズ初期の作品。IRA指導者に率いられた一隊が、英国の輸送船を襲い50万ポンド相当の金塊を奪ったことから物語が始まる。作者の作品の常連で諜報機関の元締めファーガスン准将は、銃器密輸の容疑で拘束されて…

冷戦終結、スパイたちの運命

1991年発表の本書は、フレデリック・フォーサイスのエスピオナージ。「騙し屋4部作」の第1作で、ずっと探していたものだ。第2~4作はすでに本棚にあるので、今月から毎月1冊紹介していきたい。 サム・マクレディは英国秘密情報部SIS(*1)のベテラン諜…

日本の古典的スパイスリラー

1966年発表の本書は、読売新聞の特派員から作家に転じた三好徹のスパイスリラー。日本のミステリーで欧米に後れを取るとしたら、この分野だろう。太平洋戦争前は当然のこと、戦後になってもスパイものはあまり書かれなかった。しかし作者は、特派員だった経…

チューリッヒは金塊を歓迎する

1975年発表の本書は、昨年末2冊紹介したサイモン・クインの<ヴァチカンの殺さないスパイもの>第三作。元CIAで法皇に直接仕える異端審問官のキリーは、ローマから消えたネリー司教の後を追ってチューリッヒにやってきた。 司教のアパートには高価な調度や…

クレタ人のピアニスト

1980年発表の本書は、冒険小説の雄ジャック・ヒギンズのノンシリーズ。主人公はクレタ人のピアニスト、そして殺し屋のジョン・ミカリ。ギリシアの名家の出身だが幼くして両親を亡くし、大物の祖父に育てられた。3歳の頃からピアノに才能を発揮するが、20歳…

スマイリーとカーラの決着

1980年発表の本書は、スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの<スマイリー三部作>の完結編。デビュー作「死者にかかってきた電話」以降、作者の作品によく登場した中年スパイであるジョージ・スマイリーが、ついに宿敵カーラとの決着を付ける。 三部作第一作で…