スパイスリラー
昨年アリステア・マクリーンの第二次世界大戦三部作の最後「シンガポール脱出」を紹介したが、それに続く作者の第四作が本書。ハンガリー動乱から2年後の1959年に発表されている。舞台は氷雪が舞うハンガリー、ソ連の抑圧が強化され秘密警察AVOの影に民衆は…
昨日に引き続き、本書はサイモン・クインの<異端審問官もの>。シリーズ第四作(1974年発表)で、昨日紹介した事情で邦訳は2作目。今回チェルラ異端審問所長とキリー審問官に与えられた任務は、アフリカのトランス・コンゴ出身の黒人枢機卿ジョン・ミーマ…
1974年発表の本書は、匿名作家(*1)サイモン・クインのスパイスリラー。ヴァチカンの聖務省が持つ異端審問所の審問官(Inquisitor)フランク・キリーのシリーズだ。原作は6冊出ているのだが、なぜか第一作、第三作が翻訳できなかった。そこで第二作の本書…
このDVDは、これまで2~6シーズンまでを紹介してきた「Mission Impossible」の最終シーズン。1973年に放映されたもので、いくつかのエピソードを覚えていた。高校生になっていたはずだが、欠かさず見ていたものと思われる。大好きなリンダ・ディ・ジョージ…
1985年発表の本書は、音楽プロデューサであるポール・マイヤーズが書き始めたエスピオナージの第一作。作者は、小澤征爾氏らとも交流のある欧州では高名なプロディーサだという。主人公のマーク・ホランドは引退した英国情報部員。今は音楽プロデューサとし…
2016年発表の本書は、デビュー作「The Poisoned Rose」で2001年の米国探偵作家クラブ賞ペーパーバック賞を獲った、ダニエル・ジャドソンのスパイスリラー。かなりの銃器マニアで、コネチカット州在住というくらいしか情報がない作家である。おおむね1作/年…
このDVDは「NCIS LA:潜入捜査班」のシーズン5。前シーズンの最後に、心身ともに痛手を受けたディークスの復帰から物語が始まる。これまでは「ただの相棒」としてやや頼りなくて愛嬌のある彼と距離を置こうとしていたケンジーだが、ここに来て「支えなくて…
1928年発表の本書は、「月と6ペンス」などで知られる文豪サマセット・モームの自伝的スパイスリラー。作者自身WWⅠではスイスを拠点に諜報活動に従事し、大戦末期にはロシアでの革命を阻止しようと現地で工作をしたが、任務は失敗に終わった。 冒頭、作家の…
冷戦期のリアルなスパイスリラーと言えば、ル・カレ、バー=ゾウハー、デイトンらの名前が挙がるが、もうひとりグレアム・グリーンも有名な作家だ。しかし、これまでどの作品も読んだことが無かった。今回入手できたのが、1978年発表の本書。 1963年、英国MI…
2013年発表の本書は、元イスラエル軍准将エフタ・ライチャー・アティルの作品。同国の秘密情報機関モサドの内幕を描いたもので、作者はモサドではないが軍の情報担当だったことから、モサドについての知識や人脈は多いと思われる。「はじめに」で、作者は本…
2022年発表の本書は、歴史ミステリ作家ディアナ・レイバーンが「年配女性のカッコよさ」をテーマに書いたスパイスリラー。WWⅡで各国は、多くの諜報機関を作った。そのいくつかは正式に国家所属となった(例:OSS⇒CIA)が、闇組織として残ったものもある。<…
1987年発表の本書は、従軍経験のあるフリージャーナリスト、アンドルー・カプランのスパイスリラー。作者はテルアビブ大学在学中に<六日間戦争>に参加、米国に帰国後も陸軍に入隊している。本書ともう1篇、片目のジャックことジャック・ソーヤーものを書…
1965年発表の本書は、米国探偵作家クラブの最優秀賞に輝いたスパイ小説。本書でデビューしたアダム・ホールと地味なスパイであるクィラーは、以前「暗殺指令タンゴ」を紹介したことがある。スパイスリラーは古典である「外套と短剣」ものから、シリアスな、…
本書は以前「幽霊の2/3」「家蠅とカナリア」などを紹介した、ヘレン・マクロイの心理探偵ベイジル・ウィリングものの1冊。時代が第二次欧州大戦真っ盛りの1943年ということで、本格ミステリーながらスパイスリラーといってもいい筋立てになっている。 舞台…
1976年発表の本書は、英国の国際サスペンス作家ジェラルド・シーモアの第二作。1975年のデビュー作「暗殺者のゲーム」が好評を博し、「ル・カレ以来の衝撃的なデビュー」と讃えられている。作者はもともとジャーナリスト、TVのレポーターからテロ・破壊活動…
レン・デイトンは英国のスパイスリラー作家。作者は「スパイ小説の詩人」とあだ名されていて、後期(1980年代)のSISサムスンもの三部作(全て紹介済み)が有名だ。邦訳は光文社から出版されている。しかしそれ以前にもいくつもの作品を発表していたが、それ…
2019年発表の本書は、オーストリアの歴史ミステリー作家アレックス・ベールのWWⅡユダヤ人悲話。1942年春、前年に始まった独ソ戦はドイツにも大きな負担を与えていた。ナチス幹部は荒廃したポーランドやベラルーシなどの土地を、ユダヤ人の労働力で再生させよ…
このDVDは、これまで2~5シーズンまでを紹介してきた「Mission Impossible」のシーズン6。1972年に放映されたもので、それまでとはやや趣が異なってきた。シーズ2~3のころは、大半が海外ミッション。東欧が舞台(の設定)だったことが多い。だから指令…
1963年発表の本書は、ようやく手に入ったジョン・ル・カレの名作。以前紹介した「高貴なる殺人」に次ぐ第三作で、作者の名前を不朽のものにした現代エスピオナージの古典的作品。米国探偵作家クラブ賞と英国推理作家協会賞をダブル受賞している。 オランダ語…
このDVDは、「NCISーLA:潜入捜査班」のシーズン4。前シーズンからよりエスピオナージ色が強くなり、終盤から登場する副局長グレンジャーと、管理部長ヘティの過去の連携と現在の対立が描かれる。このシーズンを通じて何度か登場するのが、冷戦時代ソ連が米…
1966年発表の本書は、昨日紹介した「怪盗タナーは眠らない」のシリーズ第二作。アル中探偵マット・スカダー、泥棒バーニー、殺し屋ケラーなど多くのレギュラーを持つローレンス・ブロックの作品中でも、かなり独特なものだと分かった。解説にはユーモアミス…
不思議な作風の作家ローレンス・ブロック。これまでいくつかの短編集と、アル中探偵「マット・スカダーもの」、軽妙洒脱な泥棒「バーニーもの」を紹介している。今回手に入った本書(1966年発表)が、初期のシリーズ「怪盗タナーもの」の第一作である。 エヴ…
1988年発表の本書は、これまで「過去からの狙撃者」「パンドラ抹殺文書」など出色のスパイスリラーを紹介してきた、マイケル・バー=ゾウハーの歴史スパイもの。WWⅠ当時、パレスチナを含むアラビア半島全域はオスマン・トルコ帝国支配だった。パレスチナには…
女王アガサ・クリスティは、本書発表の1927年には私生活で非常に不安定な状況にあった。翌年には最初の夫アーチボルトと離婚することになるし、この年には失踪事件も起こしている。後に二度目の夫マックス・マーロワンと再婚してから、長期にわたり高品質の…
1980年発表の本書は、英国情報部の10年程在籍したテッド・オールビューリーのエスピオナージュ。20作以上の作品があり、TVドラマのシナリオ等も手掛けた人だという。本書は11作目、舞台は米国で大統領選挙の背景にあるソ連の陰謀を、SIS局員のマッケイとCIA…
このDVDは、これまでシーズン2~4を紹介した「Mission Impossible」のシーズン5。さすがに女性レギュラーの不在はまずいと思ったのか、今回ダナ・ランバートが加わった。レスリー・ウォーレンが演じる、ソバカスと大きな目が特徴の美人スパイだ。さらにダ…
ミステリーの女王アガサ・クリスティは、本当はスパイものが大好き。デビュー作「スタイルズ荘の怪事件」でもその傾向があるし、トミー&タペンスが登場する4作は明るいスパイものの典型だった。1970年発表の本書は、ポワロもマープルも登場しないノンシリ…
1966年発表の本書は、多作家西村京太郎の初期の作品。前年サリドマイド訴訟をテーマにした社会派ミステリー「天使の傷痕」で江戸川乱歩賞を獲得した作者が、一転して太平洋戦争当時の日米和平工作を描いたスパイスリラーとして世に送ったもの。 「寝台特急殺…
このDVDは「NCIS:LA潜入捜査班」のシーズン3。前シーズンの最後に主人公G・カレンのルーツが東欧にあったことがわかる。やはり背後にいたのは管理部長のヘティ。現地に乗り込んだ彼女を救うため、カレンのチームはルーマニアの黒海沿いの街に潜入した。 ル…
2008年発表の本書は、スパイ小説の大家ジョン・ル・カレの晩年の作品。昨年回想録「地下道の鳩」を紹介しているが、どうも本格スパイ小説を紹介するのは初めてらしい。舞台はドイツの港町ハンブルグ、そこにやってきたやせぎすのイスラム青年イッサ。チェチェ…