新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

スパイスリラー

在英米国大使の娘婿

1999年発表の本書は、CNNのジャーナリストから謀略小説作家に転じたダニエル・シルヴァの第三作。デビュー作「マルベリー作戦」は第二次世界大戦中の謀略戦を描いたものだったが、第二作「暗殺者の烙印」では現代に舞台を移し、CIAのエージェントであるオズ…

潜っていたスリーパー「蝉」

2013年発表の本書は、先日「窓際のスパイ」を紹介したミック・ヘロンの<泥沼の家シリーズ>第二作。作者は本書で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞している。MI5の落ちこぼれ組織<泥沼の家>では、前作の闘いで2人の欠員ができた。補充されてきたのはやり…

旧ソ連の化学兵器

本書は2020年に発表された、ロシアの作家セルゲイ・レベジェフのスパイスリラー。作者は地質学者で、ロシア北部や中央アジアでの現地調査を7年続けた後作家に転じた。詩人・エッセイスト・ジャーナリストでもあるという。作風としてはソ連崩壊やロシアの闇…

世界最強の諜報機関・・・なの?

古くは「外套と短剣」のスパイスリラーがあり、ジョン・バカンの「39階段」以降隆盛となった英国のこの手の作品群。「007」様の派手なアクション映画も増えて、一時期非常に増えた。しかし冷戦終結とともに全体的に低調になり、今は「もっとリアルな諜報機関…

英国のグリーニー登場

2010年発表の本書は、トム・ウッドのデビュー作。作家の楡周平が「これぞ冒険小説!」と絶賛したと帯にある。僕の読後感としては「これは英国のグリーニーだ」というもの。いまやトム・クランシーの後を継いでいる米国の軍事(スパイ)スリラー作家マーク・…

日本発の国際謀略小説

シミュレーション・ウォーゲームの中には戦争・戦闘だけでなく、国際謀略(外交ともいう)をテーマにしたものもあった。この種のゲームを漁っていた30歳前後、必然的に国際謀略小説(含むノンフィクション)も読むようになっていた。なかなか日本人作家でリ…

おちこぼれ諜報員の闘い

以前元警視総監吉野氏の著書「情報機関を作る」を紹介したが、実際体験した例ではなく、諜報活動の実態例をジョン・ル・カレやフレデリック・フォーサイスの著書を引いて説明していた。近年よりリアルなスパイスリラーが増えていて、吉野氏も引用できる小説に…

このテープは自動的に消滅する

僕が中学生の頃、大好きで毎週見ていたのがこの番組「Mission Impossible」。邦題は「スパイ大作戦」というのだが、この題名は好きでなかった。後にトム・クルーズ主演でシリーズ映画になるが、僕はオリジナルの方がずっと好きだ。先日伊勢佐木町のBook-off…

誰かを殺したときの代償

スパイスリラーの作者で、実際に情報部門を経験した人は多い。彼らの作品は「007ばり」の超人スパイものにはならず、アクションはあるにせよ内省的で、時には哲学的ですらある。本書(1980年発表)の作者テッド・オールビュリーもその一人。英国バーミンガム…

レディ・ヘレンの.25口径

本書(1999年発表)も、ジャック・ヒギンズの「ショーン・ディロンもの」。英国首相の「私的軍隊」と言われる対テロ専門組織の3人、ファーガスン准将、バーンスタイン警視、元IRAのディロンが活躍するシリーズだ。英米の同盟関係もあって、ホワイトハウスの…

江沢民政権のスキャンダル

これまで何冊も紹介しているジェラール・ド・ヴィリエの「プリンス・マルコもの」。1965年から年間4冊ペースで発表され、2008年まで書き継がれた。総計174作品。日本には1980年までの60作品は、創元社や立風書房が翻訳を出していた。その後日本での新作発表が…

兵器技術者の試練

第二次世界大戦直前の緊迫化する国際情勢を背景に、それまでの「外套と短剣」式のエスピオナージをシリアスなものに変えたのがエリック・アンブラー。これまで、 ・第三作「あるスパイの墓碑銘」 ・第五作「ディミトリオスの棺」 を紹介している。今回、第六…

ピット&ジョルディーニョの活躍

以前オレゴン・ファイルやアイザック・ベルものなどを紹介したクライブ・カッスラーだが、その作家デビューは1973年の「海中密輸ルートを探れ」で、主人公は「国立海洋海中機関(NUMA)」のダーク・ピットとその仲間たちだった。上記の紹介記事で「ピットも…

100万人の命を懸けたゲーム

1972年発表の本書は、以前「アンドロメダ病原体」などを紹介した才人マイクル・クライトンが別名義(ジョン・ラング)で書いたサスペンススリラーである。作者は医師であるが本当に科学知識豊富な人で、本書にはメインフレーム時代のコンピュータをハッキン…

大物スパイを巡る闘い

本書は1980年発表、東西冷戦はそろそろ終わりを迎えるころなのだが当事者にはそんなことは分からない。軍事の競争もそうなのだが、諜報戦もピークに達していた。この時代を裏の裏から描くことができるとすれば、マイケル・バー=ゾウハーは最高の作家といっ…

英国冒険小説の傑作なの?

007譚を引き合いに出さなくても、英国人の冒険小説好きは有名な話だ。エンタメ風のものでなく、シリアスな冒険小説の人気も高い。僕も学生の頃にジョン・バカンの「39階段」、文豪サマセット・モームの「アシェンデン」などの名作を読んで、強い印象を持って…

追われるものの暮らし方

本書は「戦闘級のチャンピオン」マーク・グリーニーのグレイマン・シリーズの第四作。目立たない男グレイマンこと元CIAの工作員で暗殺者のコート・ジェントリイが主人公。前作でメキシコマフィアを打ち負かしたものの、故郷のアメリカには戻れなくなってしま…

CIA分析官とその夫

2018年発表の本書はカレン・クリーブランドのデビュー作なのだが、出版前から映画化が決まっていて、出版されるや普段スパイスリラーに興味のない人たちまで購入したという話題作だ。作者は本書の主人公であるヴィヴィアン・ミラー(ヴィヴ)と同じCIA分析官…

ドロミテ・アルプスの金塊

本書の作者ハモンド・イネスは、英国冒険小説の先駆者である。1937年に「ドッペルゲンガー」でデビュー、一貫してジョン・ブル魂にあふれた英国男の冒険譚を書き続けた。別名含めて40冊ほどの著書があり、「キャンベル谷の激闘」や「メリー・ディア号の難破…

千の顔と九の命を持った男

本書(1996年発表)は、ジャック・ヒギンズの「ショーン・ディロンもの」の1編。これまでに「嵐の眼」「サンダーポイントの雷鳴」「密約の地」を紹介してきたが、いずれも初代「グレイマン」ともいえるディロンが活躍する物語だった。しかしその中でも、デ…

ブードゥー教の指導者

本署(2002年発表)は、トム・クランシーとスティーヴ・ピチェニック共著の「オプ・センター」シリーズ第9作。これまでに第一作「ノドン強奪」を始め4作を紹介している。その中では第6作「国連制圧」が面白かった。米国の危機管理組織「オプ・センター」…

よりリアルな諜報員の闘い

アダム・ホールという作家のことは、「不死鳥を倒せ」というスパイ小説で知った。作者の本名はエルストン・トレヴァーといい、10ほどのペンネームで本格ミステリー、冒険小説、スパイ小説、児童文学と幅広い作品を残した。本書は1965年に「不死鳥を倒せ」で…

大統領というストレスフルな商売

本書(2000年発表)は、トム・クランシーがスティーヴ・ピチェニックと共著した「オプ・センターもの」の第七作。以前紹介した「国連制圧」の次作にあたる。 https://nicky-akira.hateblo.jp/entry/2020/03/14/000000 「国家危機管理」を目的に作られたオプ…

スリーパーのオセロゲーム

いわゆるスパイ小説も、古の「外套と短剣」ものから、第一次・第二次世界大戦期に発表されたサマセット・モームの「秘密諜報部員」、エリック・アンブラーの「あるスパイの墓碑銘」などシリアスなものを経て、アクション活劇の「007シリーズ」へと変遷し…

核兵器テロを阻止せよ

「COVID-19」のおかげで米国出張が無くなってしまったからいいのだが、米国の航空事情は決して安全ではない。複雑な手荷物検査や激しいボディチェックをするし、保安員の教育水準も高くないように見える。そんな漠然とした不安感を、すっきり証明してくれた…

香港返還2097年との密約

本書は、ジャック・ヒギンズの「ショーン・ディロン」ものの第三作。歴史ものを除いて作者のスパイスリラーは、英国の特別情報部の責任者ファーガスン准将が登場する。しかし彼自身はいつもわき役のような存在で、主役は別にいる。本書では主役は元IRAのテロ…

ワシントンDCのマルコ

ご存じ神聖ローマ帝国第18代大公マルコ・リンゲ殿下だが、170冊あまりのもの登場作品がある。東京創元社が60冊あまりを翻訳したところで日本に紹介されなくなり、扶桑社が新しく翻訳を始めたのが2002年発表の本書。 このシリーズは1965年の「イスタンブール…

現代スパイスリラーの原点

次の「007シリーズ」では、女性の007が誕生するという話を聞いた。ジェームス・ボンド役はショーン・コネリーから何代にもわたって「セクシーな男優」が務めてきたことを考えて、ダイバーシティも極まれりと思った。 007ものの長編ミステリーを作者イアン・…

シリーズ化できなかったヒロイン

アガサ・クリスティーと言えば、ポアロとミス・マープルがレギュラー探偵の双璧。その他に夫婦探偵トミー&タペンスやバトル警視、パーカー・パインなどのシリーズが知られている。さらに何冊か、単発ものもある。例えば名作「そして誰もいなくなった」は、…

カウンター・テロリズムの手法

ウォーレン・アドラーは米軍通信記者として兵役に就いた後、ジャーナリストを経て作家活動に入った。日本であまり知られていない作家だが、映画「ホワイトハウス・ダウン」のような小説かと思って買ってきた。本書の発表は1986年、ソ連の脅威が薄れつつある…