新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

スパイスリラー

白人支配は悪だったのか?

コンゴの南でアンゴラという国が独立しようとしていたころ、作者ジェラール・ド・ヴィリエの関心はこの国にあったようだ。アフリカだけではなく、欧州(白人)諸国の支配が世界中で終わろうとしていた時代である。柘植久慶の作品にも再三出てくるが、このよ…

マルコ殿下のクーデター計画

ザンジバル島は、タンザニア沖のインド洋に浮かぶ沖縄と同じくらいの面積を持つ島々である。本書の発表の1973年に先だつ1963年にイギリスから独立、タンザニアと合併しながら強い自治権をもつ「ザンジバル革命政府」が統治している。現在の人口は100万人あま…

使い捨て工作員の意地

元SAS隊員の覆面作家、アンディ・マクナブのニック・ストーンもの第5作が本書。前作で、蒸し暑いパナマでCIAの仕事として、単身中国人の子供を狙撃するという唾棄すべき任務に就いていたストーンだが、今回も(別の意味で)唾棄すべきミッションに放…

矜持ある軍人の孤独な闘い

先日、プリンス・マルコがベルリンの壁を越えるという活躍をした「チェックポイント・チャーリー」を紹介したが、それは1973年の発表。それから10年近くたって、ギャビン・ライアルが本書を発表した。「影の護衛」に続くマクシム少佐シリーズの第二作で、こ…

名探偵、マルコ・リンゲ殿下

神聖ローマ帝国大公であるマルコ・リンゲ殿下は、リーツェンの城の修復・維持費用を賄うため、CIAの手先となって世界を走り回っている。米国政府がオフィシャルに手を出せない案件、CIAの「長い手」すらも手の出ないような案件を任されるのだが、普通は人質…

ドイツスパイ網との闘い

かつてイギリス出張の時に機中で見た映画「ダンケルク」、陸海空の独立した視点からセリフをぎりぎりまで排除して、そこで何があったのかを映像で示そうという意図がある作品。実際の現場となったダンケルクで、撮影をするという徹底ぶりらしい。 このときヒ…

嘘というボディガード(後編)

ブリテン島にいたスリーパーは、ドイツ人の父とイギリス人の母を持ち、子供のころイギリスで暮らしていたこともある、アンナ・カタリーナ・フォン・シュタイナー。フォンという名が示すように、父親はドイツ貴族でありネイティブ同様の英語を話すこともでき…

嘘というボディーガード(前編)

古来、ジャーナリストが作家に転じることは多い。1996年に本書でデビューしたダニエル・シルヴァもジャーナリストだった。それも、CNNのエグゼクティブ・プロデューサー在職中に書いたのが本書というから、どこにそんな時間があったのだろうかと驚いた。湾岸…

CIA分析官、サー・ジョン

ラリー・ボンドとたもとを分かち、トム・クランシーはサスペンスフルな作品を多く発表するようになった。主人公としてのジャック・ライアン一家も、時代とともに成長しついには大統領になる。一方若い頃のジャック一家を書くこともあり、本書はその代表的な…

ダッハウ収容所事件の後日談

マイケル・バー=ゾウハーはブルガリア生まれのユダヤ人(もしくはユダヤ系)で、ナチスの迫害を逃れて出国、その後イスラエルに住みついた。パリで学び、イスラエルの新聞社でパリ特派員、イスラエル軍で機甲部隊や空挺部隊に所属し、ダヤン国防相の報道秘…

ドイツが二つあったころ

そんな時代が終わろうとしてドイツ統一が取りざたされていたが、フランスの有名なドイツ嫌いの人がインタビューに応えて「皆さんは私がドイツを好もしく思っていないと思われているようだが、実はそうではない、ドイツは大好きだ。だからこそ、これからも2…

大公殿下自身の事件

神聖ローマ帝国大公であり、リーツェン城の城主であるマルコ・リンゲ殿下は、城の修復・増築・庭園拡大などに多額の費用を必要としている。CIAの仕事を10万ドル単位で引き受けて、何度も命の危険を冒しながらようやく城が棲めるようになってきた。婚約者で、…

カリブ海でのCIA工作

プリンス・マルコには、どうしてもお金が必要な事情がある。オーストリアのリーツェンの城の復旧が(CIAからのお金で)進み、ようやく一部で住めるようになったのだが、まだまだお金が必要なのだ。その上フィアンセのアレクサンドラ(毎回名前だけ出てくる美…

マルコ殿下のFS作戦

太平洋は、地球で一番広い海である。広大なエリアに良港は数えるほどしかない。北部ではハワイ、ミッドウェー、ウエーキ、小笠原、中部ではトラック、クェゼリン、パラオ、グアムなどがある。南部では、本書の舞台である、フィジーやサモアが代表的なものだ…

ハリウッドのナバホ族

以前エラリー・クイーンの「ハートの4」、レイモンド・チャンドラーの「かわいい女」を紹介している。前者は、第二次世界大戦がまだ始まっていない1938年の発表。映画が興隆していたころで、ミステリー作家も原作者として動員されていた。ハリウッドもまだ…

ジム・トンプソン事件を追うマルコ

1967年3月、バンコク在住の絹ビジネスマンであるジム・トンプソンは、マレーシアの高級別荘地キャメロンハイランドで消息を絶った。8月にはアメリカ在住の実姉が殺害されるという事件もあったが、いずれも未解決のままである。ジム・トンプソンのシルクは…

浴槽から大海へ

テリー・ヘイズという人はジャーナリストだったが、映画「マッドマックス2」から脚本を書き始め、クリフハンガー・サラマンダー・フライトプランなどの脚本を手がけた才人である。彼が、2012年小説家としてのデビューを果たしたのが本作「ピルグリム」であ…

香港、1968

およそ50年前の香港。イギリスの施政権下にあり返還の期限までまだ30年近くあるのだが、1万人あまりのイギリス人に対し100倍以上の中国人が生活していて「毛沢東の影」が色濃く指している。おなじみのCIAエージェント、プリンス・マルコ・リンゲ大公殿下は…

バハマ諸島、1967

神聖ローマ帝国第18代大公殿下マルコ・リンゲが、ハリケーン荒れ狂うバハマ諸島で誘拐された技術者の奪還(か暗殺)を図る物語。アメリカ合衆国の裏庭ともいえるカリブ海に、キューバ革命(~1959年)キューバ危機(1963年)が起きて不安定化していたころの…

タンガニーカ湖のほとり

アフリカ中部、南北に長いタンガニーカ湖の北東端にその国はある。面積は日本の2県(岩手県・福島県)を合わせた程度、人口は現在1,000万人ほどである。かつては北に国境を接するルワンダと共に、ベルギーの植民地であった。1962年にベルギーから独立、王制…

オリジナルの007

007の印象はと問われると、どうしても再三放映された映画を思ってしまう。映画は最新作の「007スペクター」までで24作品。約50年間続いている。しかし、原作者のイアン・フレミングはボンドものの長編を映画の半分12作しか書いていない。彼は1953年に…

「謎」というギリシア語

ナチス・ドイツの発明品のひとつに暗号通信機「エニグマ」がある。語源はギリシア語で「謎」という。人を食ったような命名ではある。暗号通信は、軍事上の最高機密といっていい。戦略方針や作戦目標が筒抜けでは、いかに優秀な装備・訓練を施した軍隊でも勝…

ホワイトホール、1980

ギャビン・ライアルといえば、「深夜プラス1」「もっとも危険なゲーム」などで有名な、冒険・アクション作家である。これらの作品は特定の主人公(例えばプリンス・マルコ)を持たず、一人称形式でサスペンスを盛り上げるものだった。シリーズ主人公ものの…

神聖ローマ帝国18代大公殿下

シリア紛争の影響やや強権すぎる運営に批判が集まり不安定になりつつあるエルドアン大統領のトルコだが、ジェラール・ド・ヴィリエの大連作「プリンス・マルコ」シリーズの第一作もイスタンブール周辺が舞台である。1965年当時も政情不安な東西の接点だった…