本格ミステリー
本書は、以前「マダム・タッソーがお持ちかね」を紹介した歴史ミステリー作家ピーター・ラヴゼイの1983年の作品。作者は本書で、英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞を獲得している。 本書の時代背景は1921年。第一次世界大戦後間もないころで、クリスティ…
1932年発表の本書は、毎月1冊紹介している本格ミステリーの技巧派アントニー・バークリーの<名探偵シェリンガムもの>。先月紹介した「最上階の殺人」と並ぶ、このシリーズの傑作との評判がある。 新居に引っ越してきた新婚夫婦が邸内を調べていて、地下室…
1940年発表の本書は、ジョン・ディクスン・カーの第一短編集。カーのレギュラー探偵と言えば、いずれも大兵肥満のフェル博士とヘンリ・メリヴェール卿の2人でよく似ている。本書に収められた10編中6編には、やはりよく似た体形のマーチ大佐が登場する。 「…
2011年発表の本書は、香港在住で台湾推理作家協会の海外会員、陳浩基の本格ミステリー。翻訳版で島田荘司推理小説賞を受賞している。舞台は香港、香港警察の許巡査部長が主人公だが、胎児を含む一家3人の惨殺シーンで幕を開ける。複雑な事件ではなく不倫関…
本書は1905年に短編「十三号独房の問題」でデビューした、ジャック・フットレルとその名探偵<ヴァン・ドゥーゼン教授もの>の第一短編集。以前に第三短編集は紹介していて、有名な<タイタニック号>で未発表原稿とともに沈んだ悲劇の作家であることはご承…
1924年発表の本書は、文豪ながら本格ミステリーを多く遺したイーデン・フィルポッツが、ハリントン・ヘキスト名義で発表したロマンスミステリー。 壊れた家庭の出身ながら、富豪である伯父の助けで医師になったノートン青年は、海辺を散歩していて美しい姉妹…
1944年発表の本書は、女王アガサ・クリスティの本格ミステリー。レギュラー探偵ポアロらが登場しない作品として、これまで「シタフォードの謎*1」「蒼ざめた馬*2」を紹介しているが、本書はその中間に位置する珍しいノンシリーズだ。 なぜレギュラー探偵を使…
1950年発表の本書は、巨匠エラリー・クイーンの<ライツヴィルもの>。エラリーのもとに匿名の手紙が来るのは珍しくないのだが、ライツヴィルの新聞ベタ記事が添えられていたのでエラリーはそれらを読んだ。心臓麻痺で死んだ男、大富豪が自殺、一人の男の失…
1931年発表の本書は、今年になって毎月紹介しているアントニー・バークリーの<名探偵シェリンガムもの>。帯にあるように「名作ミステリ新訳プロジェクト」で創元社から改めて出版されたものだ。僕が学生の頃にはすでに絶版で、幻の本格ミステリだったもの…
1936年発表の本書は、不可能犯罪の巨匠ジョン・ディクスン・カーの最大長編。実に入り組んだ筋立てで、謎が膨らんだ後一気に解決するが、さらにその向こうに謎が・・・という筋立て。学生時代に読んで閉口したのを覚えている。 フェル博士は4ヵ月ぶりにロンド…
1933年発表の本書は、F・W・クロフツの<フレンチ警部もの>。創元社が絶版になっていたものを2020年に復刊してくれたシリーズの1冊。中学時代にミステリーを読み始めた時には、すでに入手困難になっていた作品である。 猪の背のようになだらかな丘の麓に点在…
本書は「本格の鬼」鮎川哲也の短編集。1973~76年にかけて種々の雑誌に掲載された7編が収録されている。探偵役を務める「わたし」は、暴力捜査で職場を追われた元刑事、体力と行動力では人後に落ちないけれど、推理のキレはイマイチ。そんな「わたし」が本…
1930年発表の本書は、巨匠エラリー・クイーンの第二作。典型的な「Who done it?」ミステリーで、最後の一行で犯人の名前を挙げるというアクロバティックなものだ。ニューヨーク五番街のフレンチ百貨店で、1階の飾り窓では壁に収納できるベッドの展示が行わ…
2017年発表の本書は、ミシャル・バークビイのホームズ・パスティーシュ第二弾。本書でも、先月紹介した「ベイカー街の女たち*1」同様、ハドソン夫人とメアリー・ワトソンが探偵役を務める。 ハドソン夫人は腸閉塞の激痛で意識を失い、目覚めると病院の一室だ…
1930年発表の本書は、先月デビュー作「レイトン・コートの謎」を紹介した、アントニー・バークリーの<名探偵シェリンガムもの>。シチュエーションの意外性にこだわった作者ゆえ、本書も面白い趣向のミステリーに仕上がっている。 高名な探偵作家ヒルヤード…
1987年発表の本書は、アリバイ崩しの大家津村秀介の<浦上伸介シリーズ>。比較的初期の作品で、まだ後年の<伸介&美保>のコンビになっていない。<週刊広場>記者の伸介(このころまだ20歳代)が<毎朝日報>の先輩谷田実憲とひたすら呑みながら真犯人を…
1996年発表の本書は、コリン・デクスターの<モース主任警部もの>。英国でTVでシリーズ放映されたことによって、モース主任警部は英国一有名な探偵となっている。叩き上げで独身、警視への昇進もあるかどうかわからないが、事件を見る目は確か。ただ、部下…
2016年発表の本書は、ロンドン生まれロンドン育ちの歴史好きで、クリスティらに影響を受けて育ったというミシャル・バークビイのデビュー作。コナン・ドイル財団公認のホームズ・パスティーシュ(仏語で模倣作品の意)で、主人公はハドソン夫人とメアリー・…
1925年発表の本書は、寡作ながら印象深い作品を遺したアントニー・バークリー・コックスのデビュー作。これまで「毒入りチョコレート事件」やアイルズ名義の倒叙もの「殺意」などを紹介している。作者が一番多く登場させた探偵役がロジャー・シェリンガムで…
1932年発表の本書は、S・S・ヴァン・ダインの<ファイロ・ヴァンスもの>第6作。中国陶器の蒐集家コー兄弟が殺された二重殺人事件にヴァンスが挑むのだが、作者の他の作品にもまして複雑怪奇な事件で捜査は難航する。 2階の寝室で安楽椅子に座って死んでいた…
本書は、巨匠エラリー・クイーン最後の短編集だが、最後の長編「心地よく秘密めいた場所」の次の長編になるはずだった「間違いの悲劇」のシノプシス(梗概)が中心になっている。1929年「ローマ帽子の謎」でデビューした、フレデリック・ダネイ(1905-1982)…
1940年発表の本書は、不可能犯罪の巨匠ジョン・ディクスン・カーの<フェル博士もの>。2023年になって、60年ぶりの新訳で創元社が出版してくれたもの。中学生の頃にすでに絶版になっていて、僕にとっては全くの新作と同じである。 エセックス州サウスエンド…
2020年発表の本書は、米陸軍やメリーランド州警察に勤めた後、本書でデビューしたエリカ・ルース・ノイバウアーの本格ミステリー。アガサ賞最優秀新人賞を受賞した作品である。 舞台はWWⅠ後1926年のエジプト。22歳で結婚した夫を戦争で亡くし、未亡人暮らし…
1990年発表の本書は、以前短篇集「謎解きはディナーの後で」を紹介した、ジェームズ・ヤッフェの<ママシリーズ>。珠玉の安楽椅子探偵ものだったが、後年このユダヤ人一家は、ブロンクスからロッキー山脈の麓、メサグランデの街に移ってきた。NYPDで警視に…
1971年発表の本書は、多作家西村京太郎の初期作品。出版社の勧めで往年の名探偵が登場する作品を書くことにした作者が、4部作を書き下ろした第一作。クイーン、ポワロ、メグレと明智が集められて、三億円事件に挑むことになる。大富豪佐藤大造は、模擬「三…
蒲田のBookoffで見つけた本書が、マージェリー・アリンガムの<キャンピオン氏の事件簿:第一集>。これまで日本で再編出版された3冊の短編集のうち、2冊を紹介している。探偵役のアルバート・キャンピオンは、1900年生まれ。1929年の「The Crime at Black…
1949年発表の本書は、女王アガサ・クリスティのノンシリーズ。レギュラー探偵は登場せず、警視庁副総監ヘイワードの息子チャールズが私として登場する。ノンシリーズゆえ買う気になれなかったので、ほぼ最後の未読女王作品となった。 WWⅡで長く英国を離れて…
1930年発表の本書は、F・W・クロフツの凡人探偵<フレンチ警部もの>。以前紹介した「フレンチ警部と紫色の鎌」の次の作品にあたる。今回警部は、アイルランド島とグレート・ブリテン島の間にあるノース海峡(幅21km)を巡る陰謀に挑戦する。 ロンドンに引退し…
本書は、昨日紹介した斎藤栄「2階建て新幹線殺人旅行」とほぼ同時期(1985年)に発表された、やはり新幹線車中の殺人事件を扱ったもの。舞台や時期は同じなのに、全く違った重厚な社会派ミステリーなので、あえて今日紹介したい。 作者森村誠一はデビュー二…
1940年発表の本書は、不可能犯罪の巨匠ディクスン・カーの<H・M卿もの>。前作「かくして殺人へ」でもWWⅡの始まりが事件に影を落としていたが、本書はまさにその渦中。貨客船<エドワーディック号>は、米国から軍需物資を載せて英国へ向かうのだが、その航…