新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

警察小説

ミュージカル<ジェニーの部屋>

2000年発表の本書は、巨匠エド・マクベインの<87分署シリーズ>第50作目。通常複数の事件が並走し、それらは個別に解決されたり棚上げされたりするのだが、本書は(記念作らしく)4つの事件が絡み合って大団円に至る。 70歳前の男ヘールが死んだ。死体発見…

近代警察の組織的捜査を描き

1952年発表の本書は、これまで「愚か者の祈り」などの警察小説を紹介してきたヒラリー・ウォーのデビュー作。本格ミステリーではわき役だった警官の組織的な捜査をち密に描き、近代警察小説の嚆矢となった記念作品である。 マサチューセッツ州ボストンの大学…

B型の連続暴行殺人犯

1982年発表の本書は、多作家西村京太郎初期の作品。すでにトラベルミステリーを量産し始めたころだが、本書は意欲的な警察小説である。9月の金曜日、OLが全裸暴行死体で発見される。採取された精液はB型の犯人を示していた。翌金曜日、今度は女子学生が同…

シリアルキラー死刑執行の前に

2020年発表の本書は、昨年の敬老の日のころ「もう年はとれない」「もう過去はいらない」を紹介したダニエル・フリードマンの<バック・シャッツもの>。メンフィス署の名刑事だったバックも、すでに89歳。前2作で.357マグナムを振るうなど活躍したのだが、…

なぜ切符販売員が狙われる

1929年発表の本書は、F・W・クロフツの<フレンチ警部もの>。1920年「樽」でデビューした作者は、レギュラー探偵フレンチ警部を得て、安定した本格ミステリーを毎年発表するようになっていた。この年には米国でエラリー・クイーンもデビューし天才探偵が増え…

身も心も傷ついた同士が・・・

2013年発表の本書は、脚本家・ハードボイルド作家(*1)として鳴らしたロバート・クレイスが新しい主人公を得て書き始めたシリーズ第一作。その主人公とは、 ・パトロール中相棒の女性警官を殺され、自らも重傷を負った巡査スコット ・アフガニスタンで自爆…

唄う修道女の秘密

1999年発表の本書は、エド・マクベインの<87分署シリーズ>第49作。1956年の「警官嫌い」から始まったこのシリーズ、ついに世紀末まで続いたことになる。今回も、複数の事件が交錯するが、メインとなっているのは修道女が扼殺され、公園に捨てられていた事…

未明のアイソラ、女たちの死

1997年発表の本書は、エド・マクベインの<87分署シリーズ>。クリング刑事中心の「ロマンス」に続く作品で、ひさびさにホース刑事が登場する。刑事たちは3交代勤務をしている。800-1600の昼勤、1600-2400の夜勤、000-800の深夜勤だ。この週、キャレラとホ…

ナポリの5月はすぐ裏切る

2013年発表の本書は、昨年末紹介したマウリツィオ・デ・ジョバンニの<P分署シリーズ>の第二作。21世紀に、ナポリを舞台に展開するイタリア版<87分署もの>。先達と同じく、複数の事件が並走し、やがて関連してきたりそのままになったり、未解決で終わっ…

日本の警察小説のパイオニア

1988年発表の本書は、NHKのTVドラマ「事件記者」(1958年~)の脚本も担当したジャーナリスト出身の作家島田一男の作品。1946年に<宝石>の新人賞を獲り、1948年からリアルなミステリーのシリーズを多数発表するようになった。1950年から山田風太郎・高木彬…

女運の悪い二枚目、ついにゴール?

1995年発表の本書は、エド・マクベインの<87分署シリーズ>。以前紹介した「悪戯」に次ぐ作品で、今回の主役はバート・クリング三級刑事。第一作からの主要レギュラーで、金髪・スマートな二枚目青年である。しかし、女運がとても悪い。最初の恋人クレアと…

ダルジール&パスコーのファンに捧ぐ

本書は、昨年末の「骨と沈黙」まで何作かを紹介したレジナルド・ヒルの「ダルジール&パスコーもの」の中短編集。各作品の初出は分からないが、1994年に4編をまとめた形で出版されている。全体として、このシリーズのファンに向けたサービス作品集のような…

.300口径、アーマーピアシング弾

2019年発表の本書は、国際的ベストセラー作家ロバート・ポビの最初の邦訳本。作者は骨董商出身という経歴で、インターネットのない山荘に籠って執筆をするという。 舞台は数年来の冬の嵐が吹き荒れるマンハッタン、運転中の捜査官が狙撃されて事故が広がり、…

デフ・マンに見込まれたキャレラ

1993年発表の本書は、エド・マクベインの<87分署シリーズ>。以前紹介した「キス」に続く作品で、キャレラ刑事たちのライバル「デフ・マン」がまた登場する。例によって複数の事件が並走して、刑事たちを悩ませる。今回は3つの事件+「デフ・マン」の陰謀…

神を演じたダルジール警視

1990年発表の本書は、以前「秘められた感情」や「四月の屍衣」を紹介した、レジナルド・ヒルの「ダルジール&パスコーもの」。「秘められた・・・」から20年近く経っていて、パスコーは主任警部に昇進している。妻のエリーとの間に子供も生まれて、私生活は安定…

ナポリの<87分署>

2013年発表の本書は、先月「寒波」を紹介したイタリア発の警察小説シリーズの第一作。作者のマウリツィオ・デ・ジョバンニは、ナポリ生まれで銀行員出身。このシリーズは、ナポリの下町に位置する架空の<ピッツオファルコーネ署:通称P分署>の刑事部屋を…

定期船<ジロンド号>が運ぶもの

1922年発表の本書は、「樽」でデビューしたF・W・クロフツの第三作。後年の名探偵フレンチ警部は登場せず、素人を含む複数の捜査官が英仏海峡をまたぐ組織犯罪に挑む。 ボルドーの街に近いレク川のほとり。ワインを扱う商社員メリマン青年は、ふと迷い込んだ製…

殺人犯の息子と娘が死んだ

2014年発表の本書は、イタリアの<87分署>との言われるマウリツィオ・デ・ジョバンニの<P分署シリーズ>第三作。分署立て直しで赴任してきたパルマ署長の指揮で、麻薬がらみで地に落ちたP分署の士気は回復しつつある。11月のナポリは凍てつくほど寒い日が…

愛と裏切りの街、アイソラ

1992年発表の本書は、巨匠エド・マクベインの<87分署シリーズ>。以前紹介した「寡婦」に続く作品である。新書版で350ページを越える大作で、キャレラたちは何度も命を狙われると訴える女エマのため、アイソラの街を歩き回る。 株式仲買人マーティン・ボウ…

戸口で待ち受ける死

1961年発表の本書は、以前「愚か者の祈り」を紹介した警察小説の雄ヒラリー・ウォーの「フェローズ署長シリーズ」の1作。ハードボイルド作家を目指した作者は、最初私立探偵ものを3作出したものの売れず、クロフツ流の「足を使う警官」を主人公にし社会問…

看護師ジェシイの冒険

1956年発表の本書は、巨匠エラリー・クイーンの異色作。エラリーは一度も登場せず、主人公はリチャード(ディック)・クイーンと看護師ジェシイ・シャーウッド。2人は以前紹介した「真鍮の家」で結婚しているのだが、そのなれそめが本書の事件である。 ディ…

歓楽の街の特殊技能者たち

本書は、以前「ダブル・ディーラー」を紹介したマックス・アラン・コリンズのCSI(ラスベガス版)もの邦訳第二弾。CBSの人気ドラマで、いくつものスピンアウトがあるが、このラスベガス版が本家。ラスベガス市警科学捜査班主任で、昆虫学者のギル・グリッソ…

2万人の顔が見える島

2013年発表の本書は、以前<シェットランド四重奏>を紹介した、アン・クリーヴスのペレス警部もの。前作「青雷の光る秋」で恋人フランを亡くし、その娘キャシーをひきとってシングルファーザー暮らしをするペレス警部。前作から3年を経ての発表だが作中は…

5月のコネチカットで死んだ娘

1954年発表の本書は、警察小説の雄ヒラリー・ウォー初期の作品。リアルな捜査劇を描くとともに、第二次世界大戦後米国の主要都市周辺に雨後の筍のように現れた「郊外住宅地(サバービア)」での市民の生活も紹介しているのが作者の特徴。都市への通勤圏にあ…

ダルジール警視の多忙な休暇

1975年発表の本書は、昨年「秘められた感情」を紹介したレジナルド・ヒルの「ダルジール&パスコーもの」。前作「秘められた・・・」で警部に昇進し、プロポーズにも成功したピーター・パスコーとエリーの結婚式で幕が開く。 上司としてスピーチをするダルジー…

エジンバラでハイド氏を追う

以前スティーブンソンの「ジーキル博士とハイド氏」を紹介したが、英国の古典であるこの作品をモチーフにした作者も少なくないようだ。イアン・ランキンもその一人で、昨日紹介したデビュー作「紐と十字架」には何ヵ所かこの書が出てきた。第二作である本書…

SAS出身の刑事ジョン・リーバス登場

本書の作者イアン・ランキンは、スコットランドのファイフ生まれの作家。1986年のデビュー作は普通小説だったが、翌年発表の本書でエジンバラ署の一匹狼刑事ジョン・リーバスを主人公としたシリーズを始める。これまで1ダース以上の作品が、本国では出版さ…

マクリーンの警察小説

1969年発表の本書は、冒険小説の雄アリステア・マクリーンが書いた警察小説。デビュー作「女王陛下のユリシーズ号」から後年の「金門橋」まで、映画化された有名な「ナヴァロンの要塞」を含めて、軍事スリラー・戦記小説に特徴がある作家だ。本書の解説には…

マルチン・ベックものの最高傑作

1971年発表の本書は、以前デビュー作「ロゼアンナ」を紹介した、マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー夫妻の「マルチン・ベックもの」。ストックホルム警察の殺人課ベック警視と、その部下たちの捜査を描く警察小説シリーズである。全10作のうちの第四作…

「地獄篇」を目標にした殺人者

2003年発表の本書は、昨日「褐色の街角」を紹介したマルコス・M・ビジャントーロの第二作。前作で麻薬組織のボスであるムリージョ(通称テクン・ウマン)の圧力を受けながらも<翡翠のピラミッド>事件を解決したシングルマザー刑事ロミリアは、首に受けた傷に…