新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

警察小説

国分寺からの西武線沿線にて

本書(2006年発表)も、深谷忠記の「壮&美緒シリーズ」の比較的後期の作品。以前「千曲川殺人悲歌」を紹介した時に、叙情の美しいトラベルミステリーと評したのだが本書もその流れである。ただ今回の舞台は、もう少し都会的なところだ。 冒頭、美緒が仕事仲…

2人の画家とNシステム

日本のミステリーの特徴のひとつ「トラベル・ミステリー」、このような英語はなく日本での造語である。レギュラー探偵が日本の地方に関わる殺人事件を解決しようと、列車や飛行機、高速道路、連絡船などを駆使して駆け回るのが特徴だ。もちろんその地方の美…

血まみれのハロウィン

本書(1988年発表)は、ご存じエド・マクベインの87分署シリーズの第40作目。1956年の「警官嫌い」で始まったシリーズは、1/3世紀を経て続いている。主人公の刑事たちは、ほとんど年も取らず昇進もしない。「時が止まった刑事部屋」である。 このシリーズの…

ウォルセイ島の歴史

本書は、アン・クリーヴスの<シェットランド四重奏>第三章。「大鴉の啼く冬」「白夜に惑う夏」に続くもので、2009年発表作品である。北海にあるシェットランド諸島は英国領土ではあるが、古来ノルウェー、デンマークやドイツとのかかわりが深い。僕が「Bre…

モンマルトルの連続殺人

フランスミステリー界の重鎮ジョルジュ・シムノンは、ベルギー生まれ。故郷のリェージュはフランス語に近いワロン語を話すエリアにあり、第二次世界大戦前から本格ミステリーをフランス語で書ける数少ない作家のひとりである。有名なメグレ警部(のち警視)…

子供が5人だけの集落

イギリスの一番北の端、すでの北極圏にあるシェットランド諸島を舞台にしたアン・クリーヴスの4部作は、その叙情的な描写が美しい独特の作品群である。4部作の第一作「大鴉の啼く冬」が2006年に公表されたが、クリーヴス自身はその時点で作家キャリアは20…

ウィリス刑事自身の事件

エド・マクベインの「87分署シリーズ」は刑事群像を描いていて、のちに多くの日本の刑事ドラマが作られたが、そのモデルになったものである。ニューヨークがモデルと言われる架空の街アイソラで、所轄の刑事部屋が主な舞台だ。中心的なのはキャレラ刑事だが…

ダルジール警視登場

レジナルド・ヒルは英国のミステリー作家。1970年に「A Clubbable Woman」でデビューし、1971年発表の本書が第三作にあたる。日本への紹介は少し遅れ、1980年にハヤカワが本書を翻訳したのが最初である。街の名前は分からないが、ロンドンに近い海岸の町のよ…

パウダー課長最後の挨拶

マイクル・Z・リューインのパウダー警部補シリーズは3作、本書で最後になった。インディアナポリスの貧しい私立探偵アルバート・サムスンシリーズが有名だが、マニアの中には哀愁を漂わせるパウダー警部補ものの方が好きだと言う人もいる。 サムスンものに…

87分署、皆殺し計画

前作「稲妻」の最後に、「ヤツが帰ってきた」と87分署の刑事たちが青くなるシーンがある。すでに3度、キャレラ刑事たちを窮地に陥れ、一度は主人公のキャレラに散弾銃で重傷を負わせた男「デフ・マン」が帰ってきたのである。 そもそも「稲妻」の冒頭から、…

87分署もの、欠けた輪

最後のエド・マクベイン87分署シリーズ「凍った街」を読んでから、ずいぶん時間が経った。全部で56作あるこのシリーズ、学生の頃に読んだのは30作目までくらいだった。それを数年前から少しづつBook-offで買い集めて来て読んでいるのだが、第37作「稲妻」が…

良いおまわりになるためのクイズ

マイクル・Z・リューインのアルバート・サムスンシリーズを1冊を残して読んでしまったので、もうひとつのシリーズであるパウダー警部補ものを買ってきた。パウダー警部補はインディアナポリス警察のベテラン刑事。サムスンものにも、ちょい役で出てきたこ…

フランス人の警官

ミステリーというと、やはり主役は英米。フランスはミステリーの舞台になることは多いが、作家については日本に紹介されたものは少ない。悪女もので知られるカトリーヌ・アルレーやサスペンスものが得意のセバスチャン・ジャプリゾなどは知られているが、本…

圧巻の大河ドラマ(後編)

南部の白人たちにとっては黒人奴隷の労働力で綿花を栽培/収穫するのが最も大きな産業だったが、南北戦争(州間戦争と彼らは言う)に敗れてから黒人労働力にかけるコストが上がり、害虫被害も出て生活は苦しくなっていた。もちろん、黒人たちもより苦しい生…

圧巻の大河ドラマ(前編)

ミステリー小説の上手さには、4つのカテゴリーがあると思う。 (1)構想 プロットと言ってもいい。全体を流れるテーマを、どういうスタンスで扱うか。まれには、これそのものがトリックだったりする。 (2)エピソード ごく短い短編を除いては、複数のエ…

クロフツのレギュラー探偵

けれん味たっぷりの名探偵ではなく、地道な捜査をする普通人探偵を主人公に「樽」でデビューした鉄道技師F・W・クロフツも、やがてレギュラー探偵を持つようになった。それがこの人、フレンチ警部である。原題も「Inspector French & The Starvel Tragedy…

刑事たちのホームドラマ

エド・マクベインの87分署シリーズでは、何人かの刑事たちが主人公である。メインキャラクターは(殺すことができなくなったので)不死身のキャレラ二級刑事。このほか、長身・金髪の二枚目クリング三級刑事、薄い頭髪を気にするマイヤー二級刑事、海軍上…

デフ・マン三度目の挑戦

1956年に第一作「警官嫌い」が発表されてから、エド・マクベインはコンスタントに87分署シリーズを発表し、1973年に出版された本編は27作目である。12作目「電話魔」で登場しキャレラ刑事に重傷を負わせ、22作目「警官(サツ)」でもおなじみの刑事たちを…

アイソラでの人種差別

エド・マクベインの「87分署シリーズ」も、33作目になった。最初の作品「警官嫌い」から23年が経ち、何人かの刑事が殉職した。例によって不死身のキャレラ刑事は主役として活躍を続けているが、23年間昇進することなく二級刑事のままである。 ろうあ者の妻…

誘拐という重犯罪

ウィリアム・P・マッギヴァーンは第二次世界大戦後にデビューし、1ダースあまりの警察小説を書いた。そのうちのいくつかは映画化されている。本書は彼の代表作のひとつで、マンハッタンを舞台に富豪の孫娘の誘拐事件に挑むFBIの捜査を描いたものだ。 19…

アイソラの好敵手

エド・マクベイン「87分署シリーズ」は、分署刑事たちのチームプレイを描いた大河ドラマのようなものである。刑事やその関係者は、殉職含めて入れ替わってゆく。読者は刑事たちになじみができて、ひいきの刑事が活躍すると嬉しくなる。 作者はシリーズ12作…

大都市アイソラの刑事たち

1950年代の繁栄していたアメリカ。第二次世界大戦が終わり、米ソ対立の時代に入ろうとしていた時だったが、アメリカは世界の盟主だった。ハリウッド発の映画は自由主義陣営にくまなく供給され、TVドラマも世界に流れていった。アメリカは新しい文化の源だっ…