新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

警察小説

2万人の顔が見える島

2013年発表の本書は、以前<シェットランド四重奏>を紹介した、アン・クリーヴスのペレス警部もの。前作「青雷の光る秋」で恋人フランを亡くし、その娘キャシーをひきとってシングルファーザー暮らしをするペレス警部。前作から3年を経ての発表だが作中は…

5月のコネチカットで死んだ娘

1954年発表の本書は、警察小説の雄ヒラリー・ウォー初期の作品。リアルな捜査劇を描くとともに、第二次世界大戦後米国の主要都市周辺に雨後の筍のように現れた「郊外住宅地(サバービア)」での市民の生活も紹介しているのが作者の特徴。都市への通勤圏にあ…

ダルジール警視の多忙な休暇

1975年発表の本書は、昨年「秘められた感情」を紹介したレジナルド・ヒルの「ダルジール&パスコーもの」。前作「秘められた・・・」で警部に昇進し、プロポーズにも成功したピーター・パスコーとエリーの結婚式で幕が開く。 上司としてスピーチをするダルジー…

エジンバラでハイド氏を追う

以前スティーブンソンの「ジーキル博士とハイド氏」を紹介したが、英国の古典であるこの作品をモチーフにした作者も少なくないようだ。イアン・ランキンもその一人で、昨日紹介したデビュー作「紐と十字架」には何ヵ所かこの書が出てきた。第二作である本書…

SAS出身の刑事ジョン・リーバス登場

本書の作者イアン・ランキンは、スコットランドのファイフ生まれの作家。1986年のデビュー作は普通小説だったが、翌年発表の本書でエジンバラ署の一匹狼刑事ジョン・リーバスを主人公としたシリーズを始める。これまで1ダース以上の作品が、本国では出版さ…

マクリーンの警察小説

1969年発表の本書は、冒険小説の雄アリステア・マクリーンが書いた警察小説。デビュー作「女王陛下のユリシーズ号」から後年の「金門橋」まで、映画化された有名な「ナヴァロンの要塞」を含めて、軍事スリラー・戦記小説に特徴がある作家だ。本書の解説には…

マルチン・ベックものの最高傑作

1971年発表の本書は、以前デビュー作「ロゼアンナ」を紹介した、マイ・シューヴァル、ペール・ヴァルー夫妻の「マルチン・ベックもの」。ストックホルム警察の殺人課ベック警視と、その部下たちの捜査を描く警察小説シリーズである。全10作のうちの第四作で…

「地獄篇」を目標にした殺人者

2003年発表の本書は、昨日「褐色の街角」を紹介したマルコス・M・ビジャントーロの第二作。前作で麻薬組織のボスであるムリージョ(通称テクン・ウマン)の圧力を受けながらも<翡翠のピラミッド>事件を解決したシングルマザー刑事ロミリアは、首に受けた傷に…

ナッシュヴィルのラティーナ女刑事

作者のマルコス・M・ビジャトーロはサンフランシスコ生まれ、テネシー州や紛争が激しかったころのグアテマラやニカラグアで過ごし、現在はアラバマ州で中南米からの移民の相談を受けていると解説にある。2001年の本書がデビュー作、以後2年に一度のゆったりと…

北欧の警察小説、全10巻開幕

「英米中心、ちょっとだけフランス」というのがミステリー界の常識だったが、20世紀後半になっていろいろな国のミステリーが紹介されるようになってきた。その嚆矢となったのが、スウェーデンの警察小説である「マルチン・ベックもの」。1965年発表の本書は…

推理小説へのレクイエム

本書(1958年発表)の作者フリードリッヒ・デュレンマットは、スイス生まれの作家。画才も発揮し、ミステリ小説のほか戯曲なども多く書いた。本格ミステリがいかにも都合よくできていることに疑問を持ち、よりリアルな(アイロニカルな)犯罪小説を書いたの…

靴と神経をすり減らす商売

本書は「千草検事シリーズ」などを紹介している、土屋隆夫の長編第二作(1958年発表)。雑誌「宝石」などに秀逸な短編を発表していた作者は、ミステリー評論家中島河太郎の勧めで長編「天狗の面」を書いて好評を得た。続く第二作は、日本では珍しい本格「警…

パスコー警部自身の事件

以前「殺人のすすめ」を紹介したレジナルド・ヒルの「ダルジール&パスコー」ものは、英国では有名なシリーズ。英国の雑誌<ミリオン>が65名の推理作家にアンケートした「有名な探偵は?」の問いで、6位に入っている。7位がエルキュール・ポアロというか…

半魚人連続殺人事件

2009年発表の本書は、以前に「カルトの狂気」を紹介した、CBSの人気TVシリーズ「CSI:マイアミ」の1編。前作同様、SF&サスペンス作家のドン・コルテスに手になるもの。マイアミ・デイド郡警察の鑑識部門、CSIのリーダーは爆発物が専門の鑑識官ホレイショ・…

警官の父親を殺した容疑者

エド・マクベインの大河ドラマ「87分署シリーズ」は、1956年から約50年間書き継がれた。前回1990年発表の「晩課」を紹介したが、本書はその次の作品(1991年発表)。1990年代後半以降の作品は手に入っておらず、本棚の残りも少なくなった。本書では、9作目…

「新光映画」に蠢く欲望

1961年発表の本書は、直木賞作家水上勉の手になるミステリー。作者は貧しい家庭に育ち一時出家、事実上寺に預けられた。還俗後、様々な職業に就き離婚も経験、血を吐くこともあった。松本清張「点と線」を読んでミステリーに開眼し、社会派の雄となった。本…

大都会のボランティア警官

本書(1975年発表)は、「87分署もの」などで知られるエド・マクベインの「ノン・シリーズ」の1作。先月西海岸を舞台にした「ホープ弁護士もの」の「金髪女」を紹介しているが、本書はアイソラではない架空都市での引退警官の活躍を描いたものだ。都市は多…

8人の青年たちの秘密

1993年発表の本書は、ポーラ・ゴズリングの第11作。「モンキーパズル」あたりからレギュラー探偵を登場させている作者は、前作「ブラックウォーター湾の殺人」でこれまでのストラーカー&ケイトに加えて、ブラックウォーター郡の若き三世保安官マット・ゲイ…

三世保安官マット・ゲイブリエル

1992年発表の本書は、ポーラ・ゴズリングの「ストライカー警部補&ケイトもの」の第三作。「モンキー・パズル」の事件で知り合った剛腕警部補ジャック・ストライカーと気の強い大学教授ケイト・トレボーンは、「殺意のバックラッシュ」事件で緊密な仲となり…

証拠しか相手にしない

以前「死の冬」を紹介した「CSIニューヨーク」の邦訳第二作が本書。原本となったのは、2009年に放映されたCBSのTVドラマである。科学捜査班の活躍を描く人気のドラマで、本家はラスベガス、スピンアウトとしてマイアミとこのニューヨークがある。ニューヨー…

田舎町の警官連続殺人事件

1989年発表の本書は、一作ごとに作風を変えレギュラー主人公を持たなかったポーラ・ゴズリングが、初めて連続性ある作品としたもの。米国東部オハイオ州の田舎町グランサムを舞台にした第二作ということになる。前作「モンキー・パズル」では大学内の事件を…

幼馴染の女医、没落貴族そして警部

作風をカメレオンのように変える女流作家ポーラ・ゴズリング、全て水準以上の作品ばかりでアクション・ラブサスペンスから本格ミステリーまで変身を繰り返している。発表時系列に読んできて、本書が第七作。前作「モンキー・パズル」から警察小説っぽい雰囲…

CSI、もう一つのスピンアウト

以前CBSのTVドラマシリーズ「CSI:科学捜査班」のラスベガス版とスピンアウトのニューヨーク版を紹介した。2006年発表の本書は、もう一つのスピンアウト「マイアミ版」である。このシリーズのノーベライゼーションは、サスペンス/SF作家のドン・コルテスが…

西ドイツからの木彫りの動物

昨日紹介した「サディーが死んだとき」から2作空けて、1974年に発表された「87分署シリーズ」が本書。これもボロボロの装丁で買ってきた。舞台は真夏のアイソラ(架空都市)、刑事部屋にはエアコンもなく扇風機が生ぬるい風を送ってくるだけ。この時期には…

妻が死んでくれて、本当に嬉しい

本書も藤沢の古書店で見つけた「87分署シリーズ」の1冊、1972年発表のものでシリーズ26作目にあたる。作者のエド・マクベインはこのシリーズを「刑事群像もの」として書き続けていて、だれかひとりのヒーロー刑事を描くつもりはなかった。だから「麻薬密売…

「補聴器の男」の陰謀

しばらく前に、藤沢のBook-offの帰り道、昔ながらの古本屋の店頭に、エド・マクベインの「87分署シリーズ」で、ハヤカワミステリのカバーもないものを数冊見つけた。その中で未読のものが3冊あって買ってきたので、今日からそれをご紹介したい。 まず本書(…

2月の凍てつくニューヨーク

以前「CSI:科学捜査班」のラスベガスシリーズをご紹介しているが、「CSI」にはスピンオフとしてマイアミとニューヨークがある。本書は、そのニューヨーク版のノベライゼーション。一流作家にTVドラマとしてのCSIのシチュエーションだけ使わせ、自由にミステ…

「象牙の塔」の異常殺人者

本書(1985年発表)は、ポーラ・ゴズリングの第6作。毎回テーマやスタイルを変える作者は本当につかみどころがない。前作「赤の女」はスペインを舞台にしたラブサスペンスだったが、本書は米国北部(ラストベルト?)の田舎町にある大学で全てが完結する。…

赤ん坊殺しと100万ドルのブツ

1989年、本書の発表でエド・マクベインの87分署シリーズは41作目になった。本書の帯によると、マクベインがこのころ初来日しているらしい。1956年「警官嫌い」で始まったシリーズは34年続いているわけだ。刑事たちはほとんど年を取らないし、昇進もしない。…

刑事たちが追った「鬼畜事件」

今日12/16は、9年前の2012年に「ルーシー・ブラックマン事件」の判決(無期懲役)が東京高裁で下りた日である。2014年発表の本書は、この事件を追った警視庁捜査一課の刑事たちの実録を記したドキュメンタリーである。 2000年7月、麻布署にやってきた英国…