警察小説
「英米中心、ちょっとだけフランス」というのがミステリー界の常識だったが、20世紀後半になっていろいろな国のミステリーが紹介されるようになってきた。その嚆矢となったのが、スウェーデンの警察小説である「マルチン・ベックもの」。1965年発表の本書は…
本書(1958年発表)の作者フリードリッヒ・デュレンマットは、スイス生まれの作家。画才も発揮し、ミステリ小説のほか戯曲なども多く書いた。本格ミステリがいかにも都合よくできていることに疑問を持ち、よりリアルな(アイロニカルな)犯罪小説を書いたの…
本書は「千草検事シリーズ」などを紹介している、土屋隆夫の長編第二作(1958年発表)。雑誌「宝石」などに秀逸な短編を発表していた作者は、ミステリー評論家中島河太郎の勧めで長編「天狗の面」を書いて好評を得た。続く第二作は、日本では珍しい本格「警…
以前「殺人のすすめ」を紹介したレジナルド・ヒルの「ダルジール&パスコー」ものは、英国では有名なシリーズ。英国の雑誌<ミリオン>が65名の推理作家にアンケートした「有名な探偵は?」の問いで、6位に入っている。7位がエルキュール・ポアロというか…
2009年発表の本書は、以前に「カルトの狂気」を紹介した、CBSの人気TVシリーズ「CSI:マイアミ」の1編。前作同様、SF&サスペンス作家のドン・コルテスに手になるもの。マイアミ・デイド郡警察の鑑識部門、CSIのリーダーは爆発物が専門の鑑識官ホレイショ・…
エド・マクベインの大河ドラマ「87分署シリーズ」は、1956年から約50年間書き継がれた。前回1990年発表の「晩課」を紹介したが、本書はその次の作品(1991年発表)。1990年代後半以降の作品は手に入っておらず、本棚の残りも少なくなった。本書では、9作目…
1961年発表の本書は、直木賞作家水上勉の手になるミステリー。作者は貧しい家庭に育ち一時出家、事実上寺に預けられた。還俗後、様々な職業に就き離婚も経験、血を吐くこともあった。松本清張「点と線」を読んでミステリーに開眼し、社会派の雄となった。本…
本書(1975年発表)は、「87分署もの」などで知られるエド・マクベインの「ノン・シリーズ」の1作。先月西海岸を舞台にした「ホープ弁護士もの」の「金髪女」を紹介しているが、本書はアイソラではない架空都市での引退警官の活躍を描いたものだ。都市は多…
1993年発表の本書は、ポーラ・ゴズリングの第11作。「モンキーパズル」あたりからレギュラー探偵を登場させている作者は、前作「ブラックウォーター湾の殺人」でこれまでのストラーカー&ケイトに加えて、ブラックウォーター郡の若き三世保安官マット・ゲイ…
1992年発表の本書は、ポーラ・ゴズリングの「ストライカー警部補&ケイトもの」の第三作。「モンキー・パズル」の事件で知り合った剛腕警部補ジャック・ストライカーと気の強い大学教授ケイト・トレボーンは、「殺意のバックラッシュ」事件で緊密な仲となり…
以前「死の冬」を紹介した「CSIニューヨーク」の邦訳第二作が本書。原本となったのは、2009年に放映されたCBSのTVドラマである。科学捜査班の活躍を描く人気のドラマで、本家はラスベガス、スピンアウトとしてマイアミとこのニューヨークがある。ニューヨー…
1989年発表の本書は、一作ごとに作風を変えレギュラー主人公を持たなかったポーラ・ゴズリングが、初めて連続性ある作品としたもの。米国東部オハイオ州の田舎町グランサムを舞台にした第二作ということになる。前作「モンキー・パズル」では大学内の事件を…
作風をカメレオンのように変える女流作家ポーラ・ゴズリング、全て水準以上の作品ばかりでアクション・ラブサスペンスから本格ミステリーまで変身を繰り返している。発表時系列に読んできて、本書が第七作。前作「モンキー・パズル」から警察小説っぽい雰囲…
以前CBSのTVドラマシリーズ「CSI:科学捜査班」のラスベガス版とスピンアウトのニューヨーク版を紹介した。2006年発表の本書は、もう一つのスピンアウト「マイアミ版」である。このシリーズのノーベライゼーションは、サスペンス/SF作家のドン・コルテスが…
昨日紹介した「サディーが死んだとき」から2作空けて、1974年に発表された「87分署シリーズ」が本書。これもボロボロの装丁で買ってきた。舞台は真夏のアイソラ(架空都市)、刑事部屋にはエアコンもなく扇風機が生ぬるい風を送ってくるだけ。この時期には…
本書も藤沢の古書店で見つけた「87分署シリーズ」の1冊、1972年発表のものでシリーズ26作目にあたる。作者のエド・マクベインはこのシリーズを「刑事群像もの」として書き続けていて、だれかひとりのヒーロー刑事を描くつもりはなかった。だから「麻薬密売…
しばらく前に、藤沢のBook-offの帰り道、昔ながらの古本屋の店頭に、エド・マクベインの「87分署シリーズ」で、ハヤカワミステリのカバーもないものを数冊見つけた。その中で未読のものが3冊あって買ってきたので、今日からそれをご紹介したい。 まず本書(…
以前「CSI:科学捜査班」のラスベガスシリーズをご紹介しているが、「CSI」にはスピンオフとしてマイアミとニューヨークがある。本書は、そのニューヨーク版のノベライゼーション。一流作家にTVドラマとしてのCSIのシチュエーションだけ使わせ、自由にミステ…
本書(1985年発表)は、ポーラ・ゴズリングの第6作。毎回テーマやスタイルを変える作者は本当につかみどころがない。前作「赤の女」はスペインを舞台にしたラブサスペンスだったが、本書は米国北部(ラストベルト?)の田舎町にある大学で全てが完結する。…
1989年、本書の発表でエド・マクベインの87分署シリーズは41作目になった。本書の帯によると、マクベインがこのころ初来日しているらしい。1956年「警官嫌い」で始まったシリーズは34年続いているわけだ。刑事たちはほとんど年を取らないし、昇進もしない。…
今日12/16は、9年前の2012年に「ルーシー・ブラックマン事件」の判決(無期懲役)が東京高裁で下りた日である。2014年発表の本書は、この事件を追った警視庁捜査一課の刑事たちの実録を記したドキュメンタリーである。 2000年7月、麻布署にやってきた英国…
本書(2009年発表)は以前「死の天使」を紹介した「CSI:科学特捜班」の、日本に紹介された第6作。今回は寒さも忍び寄るラスベガスで、CSIグリッソムのチームが猟奇連続殺人犯を追う。ご存じCBSの人気TVドラマシリーズだが、絵になるように捜査班のチームに…
本書(2008年発表)も、CBS系の人気TVドラマ「CSI:科学捜査班」のノベライゼーション。本家ラスベガスを舞台にしたシリーズの(日本での出版では)5冊目にあたる。このシリーズ、通常の映画のノベライゼーションと違って、舞台や登場人物は踏襲するけれど…
これまで、米国CBSのドラマNCISとCSIを取り上げてきた。前者は国際線のフライトで英語に耳を馴らすために見始め最近はDVDを購入しているし、後者はノーベライズされた翻訳ものを買ってきた。前者のノーベライズはないようだが、後者のDVDは見つけた。いずれ…
フランスのミステリーというと、多くはサスペンス。本格ミステリーと言われるメグレ警部(警視)ものにしても、英米の本格とはちょっと味の違ったものだ。しかし近代には本格ミステリーも増えて来て、本書(1996年発表)の作者フレッド・ヴァルガス(女性で…
高木彬光が産み出した名探偵は、神津恭介に始まり、百谷泉一郎夫婦、大前田栄策、墨野隴人などがいるが、TVドラマにもなったせいか本書の霧島三郎の知名度が高い。神津恭介シリーズもTVで放映されるのだが、何しろ天才過ぎて長続きしなかったようにも思う。…
1994年発表の本書は、エド・ディーのデビュー作。ニューヨーク市警本部組織犯罪部の2人の刑事が活躍する、「刑事ライアン&グレゴリー」シリーズの第一作でもある。作者自身この組織犯罪部で20年勤務したということで、その活動や相手方となる犯罪組織の細…
イタリアと言えば「太陽の国」、陽光降り注ぐイメージだがフランス・スイスに国境を接する一番小さな州ヴァッレ・ダオスタ州が本書の舞台。スイスアルプスの麓にあり、ウィンタースポーツが盛んなところだ。2013年発表の本書は、ローマっ子作家アントニオ・…
本書の作者深谷忠記の作品を、ずいぶんたくさん紹介してきた。とはいえ著作は80冊を越えているので、その何分の一に過ぎないが。作者はもう80歳に近いはずだが、なかなかの健筆である。2010年代になってから、「文庫書下ろし」が目立ってきた。以前紹介した…
何度かNCIS(ネイビー犯罪捜査班)の紹介をしているが、同じCBS系列で少し先輩格の捜査ドラマと言えば、CSI(科学捜査班)が挙げられると思う。両者はこの種のドラマのTOP争いを長く繰り広げた。 CSI:2000~2015 ラスベガスの科学捜査チームの活躍を描く。C…