新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

社会派ミステリー

凶銃M-16が狙う生存者

1975年発表の本書は、多作家(600冊以上の作品がある)西村京太郎の、比較的初期の作品。以前「寝台特急殺人事件」で、十津川警部・亀井刑事の名コンビによるトラベルミステリー・シリーズの始まりと紹介したが、それ以前の本書でも両者は登場する。作者はこ…

山本周五郎賞受賞のミステリー

1992年発表の本書は、以前「蒲生邸事件」を紹介した宮部みゆきの社会派ミステリー。本書はミステリーでありながら、山本周五郎賞を受賞した話題作だ。犯罪者に撃たれてリハビリ休職中の本間刑事は、遠縁の青年和也から消えてしまった婚約者を探してくれと頼…

WASP二家族の大河ドラマ

「スペンサーもの」などシリーズ作品で知られるロバート・B・パーカーには、なかなか優れた単発ものがある。以前「ダブル・プレー」などを紹介して、作者の手腕を評価したこともある。1994年発表の本書も、そんな単発もののひとつ。アイルランドがルーツの2つ…

華麗な芸術一家の闇

1995年発表の本書は、2ヵ月連続で紹介してきたデボラ・クロンビーの<ダンカン&ジェマもの>の第三作。ロンドン警視庁のエリート警視ダンカン・キンケイドと部下でシングルマザーのジェマ・ジェイムズ巡査部長が活躍するものだ。ダンカンは警視という役職…

ハーフの女弁護士朝吹里矢子

本書は、以前お多福の捜査主任検事霞夕子ものの中編集「夜更けの祝電」を紹介した夏樹静子の中編集。日米ハーフの女性弁護士朝吹里矢子を主人公にした、中編5編が収められている。作者は学生時代から、NHKの推理クイズ番組のシナリオを手掛けていた。結婚・…

憲兵が主役の戦時ミステリー

今日4/30は、サイゴン(今のホーチミン)市が北ヴェトナム軍に制圧された日。世界最強米軍が、東南アジアの国に屈服した象徴的な日だ。ヴェトナム戦争は、米国市民の心に大きな傷を残した。そんなわけで、ヴェトナム戦争を正面から扱ったミステリーは珍しい…

インド生まれの女、50年の生涯

1994年発表の本書は、先月デビュー作「警視の休暇」を紹介したデボラ・クロンビーの第二作。一人暮らしのエリート警視ダンカン・キンケイドと、シングルマザー巡査部長ジェマ・ジェイムズのコンビが主人公だ。 ダンカンは小規模なアパートで、気ままな独り暮…

200年前のチェスト

2014年発表の本書は、マーク・プライヤーの「ヒューゴー・マーストンもの」の一冊。デビュー作の「古書店主」は以前紹介していて、パリの米国大使館外交保安部長であるヒューゴーが、華の都をカウボーイブーツでのし歩く典型的な「米国の田舎者」ぶりが興味…

エーゲ文明黄金展の危機

1982年発表の本書は、古典文学者キャロル・クレモーのミステリーデビュー作。作者はウィリアム&メアリ大学の教授、専門分野で2冊の著書がある。ミステリー中毒症の重症患者だと自ら言うマニアで、とうとう自分で書いてしまったのが本書。 舞台は東海岸の総…

美緒も歩けば、死体にあたる

1996年発表の本書は、何作も紹介してきた深谷忠記の「黒江壮&笹谷美緒シリーズ」の1作。ずっと手に入らなかったもので、先日藤沢のBookoffでようやく見つけた。作者の未読作品は、あと1冊ノンシリーズが残っているだけ。 2時間推理ドラマの典型のような…

ダンカン・キンケイド警視登場

1993年発表の本書は、ダラス生まれで英国好きの作家デボラ・クロンビーのデビュー作。複数のミステリー賞で、新人賞候補になった作品である。舞台は英国、ロンドン警視庁のエリート警視ダンカンは、弟に譲られた会員制リゾートホテルで休暇を過ごすため、フ…

冤罪者を決して出さぬよう

以前、高木彬光短篇集「5人の名探偵」を紹介したが、その5人の内で僕が最後まで読まなかったのが、本書(1968年発表)の探偵役近松茂道検事のシリーズ。神津恭介を始めとして、作者の探偵役は颯爽とした青年のイメージが強い。しかし近松検事だけは、牛の…

「赤狩り」の中、キャシディ家の闘い

2015年発表の本書は、ロサンゼルスで20年余り映画・TVのライターをしていたデイヴィッド・C・テイラーの作家デビュー作品。日本人があまり知らない米国の「赤狩り」の時代に、ソ連から米国に逃れてきたトム・キャシディ(旧名トマス・カスナヴィエツキ)一家の…

市役所建設部長の3つの悩み

本書は以前「殺人の棋譜」「奥の細道殺人事件」などを紹介した、斎藤栄のノンシリーズ。作者は1970年までは1作/年のペースだったのに、それ以降作品を量産し始める。かつて紹介した「Nの悲劇」も、野口英世の死の真相を探るというテーマは面白かったのだ…

ECCの少壮弁護士

1979年発表の本書はリチャード・N・パターソンの処女作。アメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞を得た作品である。作者は当時32歳、オハイオ州の地方検事補を務めたりアラバマ州で法律事務所を共同経営していたこともある弁護士作家だ。カリフォルニア生まれだが…

アイドル歌手と追っかけ娘の20年後

2000年書き下ろし出版の本書は、以前「越後七浦殺人海岸」などを紹介した大谷羊太郎の八木沢警部補ものの長編。元来ミュージシャンで、大物芸能人の付き人経験もある作者が得意とする芸能界裏面ものである。 大手商社の幹部でニューヨーク駐在の夫を持つ有閑…

カンチェンジュンガが見下ろす街で

1964年発表の本書は「小説十八史略」「アヘン戦争」などの歴史ものや長編推理「割れる」短篇集「獅子は死なず」などを紹介している陳舜臣の国際ミステリー。舞台はインドの北端でチベットに近い街カムドン。元日本軍の衛生兵だったカメラマン長谷川が、街の…

「Cold Case」17年後の雪解け

本書は、以前「恋人たちの小道」を紹介したナンシー・ピカードの2006年の作品。作者は「恋人たち・・・」で登場した市民財団所長のジェニー・ケインや、ジャーナリストのマリー・ライトフットを主人公にしたシリーズが知られているが、本書はノンシリーズの力作…

推理作家には囲碁好きも多い

本書は「浅見光彦シリーズ」でおなじみ、内田康夫の第二作である。以前紹介した「死者の木霊」でデビューした作者が、何を自分の特徴にしようか迷っていたころの作品だと思う。第三作「後鳥羽伝説殺人事件」で浅見光彦がデビューし、その後は浅見シリーズが…

カトリーナから始まった絆

このDVDは「NCISニューオリンズ」のシーズン2。ジャズとお祭りの町で、本家以上に迫力ある捜査劇が繰り広げられる。前シーズンの後半に囮捜査官として時々出ていたソーニャが正式にメンバーに加わり、車椅子のデジタル捜査官パットンの出番も増えた。いずれ…

21世紀キリスト教の危機

本書は2003年発表、宗教象徴学の専門家ラングドン教授を主人公にしたシリーズの第二作。作者のダン・ブラウンは、米国の英語教師から転じた作家。両親・妻ともに数学や宗教・芸術に造詣の深い人たちである。前作「天使と悪魔」でヴァチカンの危機を救ったラ…

欲望と虚飾の街の事件簿

今日(12/1)は、日本では映画の日である。1990年発表の本書は、長年ハリウッド(街だけでなく俳優や映画関係者を含む)を取材してきた記者ジョン・オースティンの手になるもの。彼はハリウッドを「寡頭政治の街」と呼んだ。高名な俳優やプロデューサーが巨…

影の形の変化から・・・

1957年発表の本書は、生涯で7作の長編ミステリーを遺したクリストファー・ランドンの代表作。第二次世界大戦で英国の野戦医療部隊に所属し、少佐にまで昇進した筆者は、退役後いくつかの職業を経て作家に転じた。北アフリカを舞台にした戦記ものから、スパ…

SFからミステリーへの転換点

1990年発表の本書は、100冊ほどの長編を著わし現在も作家活動を続ける山田正紀の中期の作品。作者は、1974年「SFマガジン」に「神狩り」を載せてデビューを果たした。 ・1978年「地球・精神分析記録」で星雲賞 ・1980年「宝石泥棒」で星雲賞 ・1982年「最後…

商社欧州駐在員の奇禍

1987年発表の本書は、「伸介&美保シリーズ」でお馴染みの津村秀介の長編ミステリー。ただし、伸介や美保は登場しない、珍しいノンシリーズである。作者は海外旅行好きで、15年間毎年一度は海外旅行に出かけていたという。特に欧州がお好みで、1960年代から…

鉄道記念日(10/14)の殺人

本書は以前「Wの悲劇」を紹介した、夏樹静子の社会派ミステリー。1992年の発表だが、時代設定は1987年10月からになっている。冒頭被害者の家庭内で交わされる会話などに、当時の流行TV番組だったりタレント同士の結婚話が出てくる。事件の背景となっている…

日本の航空ミステリー

空港や航空機内、あるいは航空業界に携わる人たちの日常を描いたミステリーは航空ミステリーと呼ばれる。アーサー・ヘイリー「大空港」のような巨編もあれば、トニー・ケンリック「スカイ・ジャック」というハイジャックものも海外では多い。さらにルシアン…

ロシアからの暗殺者

このDVDは、ご存じ「本家NCIS」のシーズン12。ますますスケールアップした舞台で、ギブスチームが躍動する。モスクワからコラ半島に展開する「深い森」、ギブスはロシアからの亡命者輸送の任務にあたる。これを阻止しようとしているのはロシア系のパレスチナ…

百億円の身代金、紙幣で1トン余

本書は、寡作家天藤真が1979年に日本推理作家協会賞を受賞した傑作。今日「敬老の日」にふさわしい、紀州の大地主柳川とし子(82歳)が誘拐された事件の顛末である。なぜふさわしいかというと、このおばあさんは誘拐されたにも関わらず、犯人たちを手玉に取…

レンジャー部隊バン・ショウ軍曹登場

2015年発表の本書は、シアトル生まれのグレン・エリック・ハミルトンのデビュー作。アンソニー賞ほか3つの最優秀新人賞を獲得した作品で、書評では「初球ホームランだ」などの賛辞が目立つ。確かに500ページほどの長さを感じさせない、スピーディな展開と工…