新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

社会派ミステリー

サルディニア島の弁護士

今年の新年の旅行はローマだった。島のワインを呑みに行ったような旅だったが、やっぱりシチリアやサルディニアのものは美味しいと思う。帰国して「そういえばイタリアン・ミステリーがあったな」と探し出したのが本書。なんとサルディニア島を舞台にしたも…

パリのカウボーイ

昔よく旅行で行ったパリ、中心を流れるセーヌ川沿いには多くの古書店(というか屋台)が出ている。今年 初めに旅行で行ったマドリードでも、、アトーチャ駅のそばに古書屋台が並んでいた。日本ではBook-offに通う僕だが、洋書の目利きなどできるはずもなく、…

神田三河町の親分

歴史ミステリーという分野はいくつもの国で書かれているが、日本には独自のものとして「捕物帳」というジャンルがある。大江戸808町の治安を守る警察組織の現場として、岡っ引きたちの活躍を描いたシリーズである。その開拓者と言われるのが、「半七捕物帳」…

裁判員制度への道

弁護士作家である和久峻三の得意領域はもちろん法廷もの、「赤カブ検事シリーズ」など連作ものもあるがこれらはある意味ビジネスとして書いているものだろう。本当に書きたかったのは、本書のような裁判制度やその歴史に関してのものではないかと思う。 本書…

教育崩壊、1982

以前、美緒&壮シリーズや、「177文字の殺人」を紹介した、ミステリー作家の深谷忠記が最初に書いた長編ミステリーが本書である。1982年に江戸川乱歩賞の最終選考に残った作品で、作者はその後1985年の1万分の1ミリの殺人(別題:殺人ウィルスを追え)でサ…

寒い国から帰る前に

ジョン・ル・カレという作家は、言うまでもなくスパイ小説界の大御所である。デビュー作「死者にかかってきた電話」はさほど売れなかったものの、第三作「寒い国から帰ってきたスパイ」はベストセラーになった。以降、「ティンカー・テイラー・ソルジャー・…

パウダー課長最後の挨拶

マイクル・Z・リューインのパウダー警部補シリーズは3作、本書で最後になった。インディアナポリスの貧しい私立探偵アルバート・サムスンシリーズが有名だが、マニアの中には哀愁を漂わせるパウダー警部補ものの方が好きだと言う人もいる。 サムスンものに…

もうじき17シーズン目に

海外へ出かけるフライトで一番楽しみにしているのは食事だが、その次に重要なのは機内エンタメ。このところ僕のイチオシは、CBSのTVドラマ「NCIS~ネイビー犯罪捜査班」である。見始めて4~5年になる。基本はミステリーで、エスピオナージ仕立ての時も、軍…

「公害」はテーマか味付けか?

1966年、「殺人の棋譜」で江戸川乱歩賞を得た斎藤栄が、1970年に発表したのが本書。多作家である著者が、自身のベスト3に挙げている自信作である。題名にあるように、松尾芭蕉の「奥の細道」研究がテーマのひとつになっている。研究内容は、「芭蕉は忍者で…

可哀そうすぎアルバート・サムスン

インディアナポリスの心優しき私立探偵アルバート・サムスン、「A型の女」でデビューした彼はこれまで6作の長編で探偵役を務めた。「インディ500」くらいしか目立った話題のない地方都市で、地味に探偵業を営んできた。銃はもたず、暴力を振るう事もない。…

中国人不法入国者の街

ロバート・B・パーカーのレギュラー主人公スペンサーのホームグラウンドは、ボストン。アメリカ合衆国発祥の地とも言える、東海岸の港町だ。僕も10余年前、年間3回通ったことがあり、当地で食べるエビやカニ、あるいはクラムチャウダーなどの海の幸を楽しん…

18歳、エドの成長物語

最近あまり見かけない作家のひとり、フレドリック・ブラウンのかつての人気シリーズ「エド・ハンター」ものの第一作が本書。エド青年はカーニバル暮らしだが、たびたび事件に巻き込まれ伯父のアンブローズ・ハンターと共に探偵役を務める。このシリーズは7…

真剣師連続殺人事件

おなじみ浦上伸介シリーズの比較的初期の作品(1986年発表)の本書だが、浦上や先輩格の相棒「毎朝日報」の谷田編集長が大好きな将棋の世界の事件である。浦上はアマ二~三段、谷田は四段で将棋クラブに通う棋力。今回の事件の中心人物たちは、それをはるか…

87分署もの、欠けた輪

最後のエド・マクベイン87分署シリーズ「凍った街」を読んでから、ずいぶん時間が経った。全部で56作あるこのシリーズ、学生の頃に読んだのは30作目までくらいだった。それを数年前から少しづつBook-offで買い集めて来て読んでいるのだが、第37作「稲妻」が…

良いおまわりになるためのクイズ

マイクル・Z・リューインのアルバート・サムスンシリーズを1冊を残して読んでしまったので、もうひとつのシリーズであるパウダー警部補ものを買ってきた。パウダー警部補はインディアナポリス警察のベテラン刑事。サムスンものにも、ちょい役で出てきたこ…

サラリーマン世界のミステリー

作者の浅川純は、日立製作所の茨城にある事業所で調達部門の管理職だったが、18年勤めた会社を辞めて作家になった人である。当時のはやり言葉「脱サラ」を地で行った人で、その関係の著作も多い。ミステリーも好きだったようで「浮かぶ密室」(1988年)、「…

サムスンが挑む50年前の事件

シリーズ第5作で著しい成長を見せたインディアナポリスの中年私立探偵アルバート・サムスンについては、しばらく前に紹介した。 前々作では破産状態だった彼だが、ようやく普通の暮らしを取り戻し、事件解決にも冴えを見せていた。それが本書では金に糸目は…

圧巻の大河ドラマ(後編)

南部の白人たちにとっては黒人奴隷の労働力で綿花を栽培/収穫するのが最も大きな産業だったが、南北戦争(州間戦争と彼らは言う)に敗れてから黒人労働力にかけるコストが上がり、害虫被害も出て生活は苦しくなっていた。もちろん、黒人たちもより苦しい生…

圧巻の大河ドラマ(前編)

ミステリー小説の上手さには、4つのカテゴリーがあると思う。 (1)構想 プロットと言ってもいい。全体を流れるテーマを、どういうスタンスで扱うか。まれには、これそのものがトリックだったりする。 (2)エピソード ごく短い短編を除いては、複数のエ…

黒人街の憂鬱

ボストンにも黒人街があるようだ。僕が通っていたのは2006年ころの短い期間だったから時期が違うのかもしれない。ここにあるような危険な場所は、教えてもらっていない。本書の発表は1992年、そのころは一番荒んでいた時代だったのかもしれない。 黒人街の一…

42歳の探偵、成長す

「A形の女」でデビューしたマイクル・Z・リューインは、決して多作家ではないが「ネオ・ハードボイルド」の旗手のひとりと評価されている。インディアナポリスを舞台に、私立探偵アルバート・サムスンものを7作、パウダー警部補もの3作ほかを残した。本…

インディアナポリスの貧しい探偵

本書はすでに2作ほど紹介しているマイクル・Z・リューインのアルバート・サムスンものの第四作である。サムスンものの評価を確立したとされる作品で、シリーズ中最高傑作という人もいる。本書の発表は1978年、そのころ舞台となるインディアナ州の州都イン…

刑事たちのホームドラマ

エド・マクベインの87分署シリーズでは、何人かの刑事たちが主人公である。メインキャラクターは(殺すことができなくなったので)不死身のキャレラ二級刑事。このほか、長身・金髪の二枚目クリング三級刑事、薄い頭髪を気にするマイヤー二級刑事、海軍上…

スペンサー、ハリウッドに立つ

先日爛熟期にあるハリウッドでプリンス・マルコが活躍(例によって女性相手が主体だが)する、ジェラール・ド・ヴィリエの「インディアン狩り」を紹介した。それから12年、今度はロバート・B・パーカーのレギュラー探偵スペンサーがやってきた。ほとんどホー…

デフ・マン三度目の挑戦

1956年に第一作「警官嫌い」が発表されてから、エド・マクベインはコンスタントに87分署シリーズを発表し、1973年に出版された本編は27作目である。12作目「電話魔」で登場しキャレラ刑事に重傷を負わせ、22作目「警官(サツ)」でもおなじみの刑事たちを…

陪審員たちの闘い

ミステリーのひとつのジャンルに「法廷もの」がある。有名なのはE・S・ガードナーの「ペリー・メイスンシリーズ」だが、これはハイライトを法廷に持って行った普通のミステリーと言えなくもない。法廷もののマニアの中では「最初から最後まで法廷だけを描写…

等身大の私立探偵

本書はインディアナポリスで一番安い私立探偵だと、自らも言うアルバート・サムスンの二度目の登場作品である。1日$35+経費というのは確かに安い。フィリップ・マーロウは$100、スペンサーは$200だった。本書の発表は1973年だから、マーロウよりは大分…

リンカーン・ライムシリーズへのステップ

「どんでん返し職人」ジェフリー・ディーヴァーの1995年の作品が本書。同年の前作「監禁」については、少々辛口のコメントをした。その後ほぼ全身不随の捜査官リンカーン・ライムを主人公にしてブレイクしたディーヴァーだが、それまではそこまで傑出した作…

ミステリーの長さ

ミステリーの創始者と言われるエドガー・A・ポーが著わしたのは、短編小説だけだった。(翻訳の文庫本で:以下同じ基準)20~40ページくらい。中学生なら興味を切らさず、読み終えることができる長さである。その後ウィルキー・コリンズが500ページ級の「月…

インディアナポリスの探偵

ハメット・チャンドラー・マクドナルドという正統派ハードボイルド小説も、第二次大戦後特に1970年代になるとかなり変わってきた。以前紹介したロバート・B・パーカーのスペンサーシリーズもそのひとつだが、マイクル・Z・リューインのアルバート・サムスン…