新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

社会派ミステリー

東京駅の新幹線ホーム

東京駅に東海道新幹線以外の新幹線が乗り入れたのは、いつのことだったろうか?東北新幹線、上越新幹線は上野どまりだったはずだ。もちろん秋田新幹線、山形新幹線や北陸新幹線も。だからあまたのアリバイ崩しミステリーはあるのだが、複数の新幹線を絡めた…

ラストベルトの環境汚染

1988年発表の本書は、サラ・パレツキーの「シカゴの女探偵V・I・ウォーショースキーもの」の第五作。V・Iことヴィクは子供のころを過ごしたサウス・シカゴで、赤ん坊のころから知っている娘の「父親を捜して」という依頼を受けたことをきっかけに、この街で蠢く…

マクギー捜査官の成長

欧米への海外出張のフライトで、必ず見ていたのが「ネイビー犯罪捜査班(NCIS)」。スピーディなストーリー展開、アクションにユーモア、さらにサイエンスと意外な結末が揃っていて、楽しませてもらった。どのエピソードも往復見るので、大体3回以上は見た…

科学捜査の曙、1905

コロンビア大ロースクール卒、ニューヨーク大で文学博士号をとり、2009年発表の本書でアメリカ探偵作家クラブの最優秀新人賞を獲得した才女がステファニー・ピントフ。夫と娘がありニューヨーク在住ということくらいしか、私生活については分かってない作家…

女流作家の捕物帳

これまでに3大捕物帳(半七・銭形平次・人形佐七)を紹介してきたが、もちろんこれら全ては男性作家の手になるものだ。「むっつり右門」「若さま侍」に範囲を広げても、これは変わらない。しかし、女流作家平岩弓枝は「はやぶさ新八」シリーズを書いている…

コーンウォールの芸術家たち

本書は、ジェイニー・ボライソーのコーンウオールミステリーの第三作。「しっかりものの老女の死」から数ヵ月、季節は冬になっている。4年前に夫のディヴィッドを癌で亡くしたローズは40歳代後半、一時期親しくしていたピアース警部との仲は進展せず、今は…

マッカーシズムのアメリカ

本書は一作ごとに趣向を変えて読者を楽しませてくれるウィリアム・デアンドリアの第五作。以前紹介したTV業界人マット・コブのシリーズではなく、時代を1951年に設定してマッカーシズム(赤狩り)の時代を描いている。 日本人のよく知らない米国の、ある意味…

「オロクジ(死体)はどこだ?」

1962年発表の本書は、エド・マクベイン87分署シリーズの中でも珍しい中編集。ずいぶん多くの作品を紹介していた愛読書なのだが、本書は特に印象に残っているものだ。といって、トリックがすごいとかアクションがすごいというわけではない。87分署の刑事たち…

熱海マンションの罠

本書は以前紹介した高木彬光の「百谷泉一郎&明子」ものの1冊で、1966年に7ヵ月にわたって「週刊大衆」に連載されたものである。全330ページほどだから、連載の各回に10ページほどの長さで掲載されていたのだろう。その10ページはある種の短編のようなもの…

トラベルミステリー、ここに始まる

西村京太郎という作家は、膨大な作品を書いている。長編・短編集合わせるとその数600冊ほど。1965年の長編二作目「天使の傷痕」で江戸川乱歩賞を受賞している。その後、特に決まった探偵役を持たずノンシリーズを発表していたが、1978年の本書(40冊目)で十…

社会派ミステリーの傑作

水上勉という作家は、非常に幅広い作風を持った人。100冊を超える長編小説があり、直木賞・菊池寛賞・吉川英治賞・谷崎潤一郎賞・川端康成文学賞などを総なめにしている。代表作として取り上げられるのは、 ・五番町夕霧楼 ・越前竹人形 ・飢餓海峡 などがあ…

三重のアリバイ工作

本書は、津村秀介の「伸介&美保」シリーズの一編。殺人の舞台は、北陸本線と金沢の名勝兼六園。例によって容疑者には鉄壁のアリバイがあるのだが、その前の事件背景設定が秀逸である。作者は約20年にわたって「週刊新潮」の「黒い事件簿」を書き続けた人だ…

8人目の海兵隊員

作者のマイケル・バー=ゾウハーは、恐らくは元モサド隊員。六日間戦争(1967年)でダヤン国防相の報道官を務め、第四次中東戦争(1973年)では自ら空挺隊員としてスエズ運河を渡っている。自らの軍事・諜報経験を基にして「過去からの狙撃者」や「エニグマ…

資格商法詐欺の被害者

1997年発表の本書は、津村秀介のアリバイ崩し「浦上伸介シリーズ」の1冊なのだが、他の作品に比べて社会派ミステリーの色が濃い。バブルが崩壊して「就職氷河期」(今その第二波が来ているという人もいるが)だったころで、中堅から大手企業でも40~50歳代…

モサド副長官の娘

先日藤沢のBook-offで、NCIS(ネイビー犯罪捜査班)のシーズン4と5、9を見つけた。これで安心してシーズン3を見ることができる。貧乏性の僕は、これが最後・・・と思うと固まってしまって前に進めないのだ。 シーズン2を見終わって数カ月たつ。最終話でレ…

三枚のベリル・クックの絵

本書(1998年発表)は以前「容疑者たちの事情」を紹介した、ジェイニー・ボライソーのコーンウォールミステリーの第二作。画家兼写真家のアクティブな未亡人ローズが、また殺人事件に巻き込まれる。前作以上にローカル色が強く、ほとんどの登場人物がコーン…

いやいや弁護士の日常

作者のスコット・プラットは本書(2008年)がデビュー作。新聞記者やコラムニストから弁護士に転じ、7年間刑事弁護士を務めた。その後子供のころから成りたかった作家になったという経歴。米国には日本の人口比で補正しても、10倍ほどの弁護士がいるという…

三千万円の賞金

1961年発表の本書は以前紹介した「人蟻」(同1960年)「破戒裁判」(同1961年)に続く弁護士百谷泉一郎/明子夫妻シリーズの第三作。「明察神のごとき」神津恭介ものと離れて、血の通った若い二人を主人公にした社会派ミステリーである。 今回は経済犯罪や部…

シカゴは夏も半端じゃない

以前サラ・パレツキーのV・I・ウォーショスキー(通称ヴィク)ものを3冊紹介した。第三作の「センチメンタル・シカゴ」は極寒のシカゴの街が舞台だった。五大湖のほとり、ちょっと行けばそこはカナダという土地柄寒いのは予想が付く。しかし第四作の本書(198…

花のお江戸の名探偵

1930年代と言えば、欧米では本格ミステリーの全盛期。エラリー・クイーンやディクスン・カーが本格的に活動し始め、先輩格のクリスティも名作を発表し続けていたころだ。一方リアルな探偵ものとしてのハメットらもデビューし、ミステリー界は沸きに沸いてい…

NCISの第二シーズン

あまりビデオを買うことはないのだが、このシリーズ(ネイビー犯罪捜査班)だけは別だ。国際線のフライトで見る癖がついてしまい、このところ海外出張が少ないので「禁断症状」が出てしまった。昨年末に第一シーズンを買ってきて、食後にウィスキーをなめな…

コーンウォール、1997

グレートブリテン島の南西の端、長い半島が大西洋めがけて突き出ているのがコーンウォール州。さらにその先端に近い町がペンザンスだ。トーマスクックの時刻表によれば、ロンドンからの距離は490km、特急で5時間かかるところ。文化的には古代ケルトの風習が…

援軍は兜町の女将軍

戦後ミステリー界、第二期の巨人のひとり高木彬光は「名探偵らしい名探偵」神津恭介以外にも、何人(組)かの名探偵を生み出した。作者は理系の出身ゆえ、初期の頃は機械的・化学的なトリックを得意としていた。その解決には、医学博士である恭介が適任だっ…

東北縦貫ハイジャック列車行

種村直樹という人は、有名なレイルウェイライターである。新幹線、ローカル特急、寝台列車やフェリーなど動くものならなんでも乗り、駅弁や駅そば、地方の名産品などなんでも食べてたくさんの紀行文を書いた。以前紹介した宮脇俊三と比べると、より一般の利…

行政システム開発に隠れた陰謀

本書(2015年発表)は、SF作家である藤井太洋が書いたミステリー。作者はソフトハウス勤務中からiPhoneで小説を書き始め、単行本ではなく電子書籍でデビューしたという「新世代」の作家である。今後は原稿用紙を前に苦吟する作家など、いなくなってしまうか…

ベーブ・ルースの記録を破るもの

作者のポール・エングルマンは大手雑誌の編集者、本書(1983年発表)がデビュー作である。舞台は1961年のニューヨークで、主人公の私立探偵マーク・ペンズラーは、マイナーリーグの二塁手だった男。ニューヨークを本拠地にしたメジャー球団ジェンツへの昇格…

隅田川の屍体、1945

壮&美緒シリーズで有名な作家、深谷忠記。おおむね2作に1作はこの2人がレギュラーを務め旅情も盛り込んだシリーズだが、残りは単発ものである。読者が読みやすいのはシリーズもの、ごひいきの探偵が出てきてある程度ワンパターンな展開になる「安心感」…

メガバンク勤務経験で得たもの

今を時めくベストセラー作家池井戸潤のデビューがミステリーだったことは、つい最近知った。1998年「果つる底なき」で、江戸川乱歩賞を受賞している。慶應義塾大学卒、三菱銀行勤務を経ての作家デビューだった。デビューー作含め有名な半沢直樹シリーズなど…

竜頭蛇尾の私小説

斎藤栄という人も、多くのミステリーを書いた。1966年デビュー作の「殺人の棋譜」で江戸川乱歩賞を受賞し、「奥の細道殺人事件」などの話題作を発表した。その後タロット日美子・江戸川警部・小早川警部らのシリーズをいくつか発表している。これまで、最初…

死刑囚と事件記者の一日

「暗闇の終わり」に始まる事件記者ジョン・ウェルズが主人公の4部作については、先月から今月にかけて全てご紹介した。息子を自殺させ妻にも逃げられた記者の悩みと事件追及の情熱が、全編を貫いていた。 https://nicky-akira.hateblo.jp/entry/2020/02/23/…