新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

社会派ミステリー

モサド副長官の娘

先日藤沢のBook-offで、NCIS(ネイビー犯罪捜査班)のシーズン4と5、9を見つけた。これで安心してシーズン3を見ることができる。貧乏性の僕は、これが最後・・・と思うと固まってしまって前に進めないのだ。 シーズン2を見終わって数カ月たつ。最終話でレ…

三枚のベリル・クックの絵

本書(1998年発表)は以前「容疑者たちの事情」を紹介した、ジェイニー・ボライソーのコーンウォールミステリーの第二作。画家兼写真家のアクティブな未亡人ローズが、また殺人事件に巻き込まれる。前作以上にローカル色が強く、ほとんどの登場人物がコーン…

いやいや弁護士の日常

作者のスコット・プラットは本書(2008年)がデビュー作。新聞記者やコラムニストから弁護士に転じ、7年間刑事弁護士を務めた。その後子供のころから成りたかった作家になったという経歴。米国には日本の人口比で補正しても、10倍ほどの弁護士がいるという…

三千万円の賞金

1961年発表の本書は以前紹介した「人蟻」(同1960年)「破戒裁判」(同1961年)に続く弁護士百谷泉一郎/明子夫妻シリーズの第三作。「明察神のごとき」神津恭介ものと離れて、血の通った若い二人を主人公にした社会派ミステリーである。 今回は経済犯罪や部…

シカゴは夏も半端じゃない

以前サラ・パレツキーのV・I・ウォーショスキー(通称ヴィク)ものを3冊紹介した。第三作の「センチメンタル・シカゴ」は極寒のシカゴの街が舞台だった。五大湖のほとり、ちょっと行けばそこはカナダという土地柄寒いのは予想が付く。しかし第四作の本書(198…

花のお江戸の名探偵

1930年代と言えば、欧米では本格ミステリーの全盛期。エラリー・クイーンやディクスン・カーが本格的に活動し始め、先輩格のクリスティも名作を発表し続けていたころだ。一方リアルな探偵ものとしてのハメットらもデビューし、ミステリー界は沸きに沸いてい…

NCISの第二シーズン

あまりビデオを買うことはないのだが、このシリーズ(ネイビー犯罪捜査班)だけは別だ。国際線のフライトで見る癖がついてしまい、このところ海外出張が少ないので「禁断症状」が出てしまった。昨年末に第一シーズンを買ってきて、食後にウィスキーをなめな…

コーンウォール、1997

グレートブリテン島の南西の端、長い半島が大西洋めがけて突き出ているのがコーンウォール州。さらにその先端に近い町がペンザンスだ。トーマスクックの時刻表によれば、ロンドンからの距離は490km、特急で5時間かかるところ。文化的には古代ケルトの風習が…

援軍は兜町の女将軍

戦後ミステリー界、第二期の巨人のひとり高木彬光は「名探偵らしい名探偵」神津恭介以外にも、何人(組)かの名探偵を生み出した。作者は理系の出身ゆえ、初期の頃は機械的・化学的なトリックを得意としていた。その解決には、医学博士である恭介が適任だっ…

東北縦貫ハイジャック列車行

種村直樹という人は、有名なレイルウェイライターである。新幹線、ローカル特急、寝台列車やフェリーなど動くものならなんでも乗り、駅弁や駅そば、地方の名産品などなんでも食べてたくさんの紀行文を書いた。以前紹介した宮脇俊三と比べると、より一般の利…

行政システム開発に隠れた陰謀

本書(2015年発表)は、SF作家である藤井太洋が書いたミステリー。作者はソフトハウス勤務中からiPhoneで小説を書き始め、単行本ではなく電子書籍でデビューしたという「新世代」の作家である。今後は原稿用紙を前に苦吟する作家など、いなくなってしまうか…

ベーブ・ルースの記録を破るもの

作者のポール・エングルマンは大手雑誌の編集者、本書(1983年発表)がデビュー作である。舞台は1961年のニューヨークで、主人公の私立探偵マーク・ペンズラーは、マイナーリーグの二塁手だった男。ニューヨークを本拠地にしたメジャー球団ジェンツへの昇格…

隅田川の屍体、1945

壮&美緒シリーズで有名な作家、深谷忠記。おおむね2作に1作はこの2人がレギュラーを務め旅情も盛り込んだシリーズだが、残りは単発ものである。読者が読みやすいのはシリーズもの、ごひいきの探偵が出てきてある程度ワンパターンな展開になる「安心感」…

メガバンク勤務経験で得たもの

今を時めくベストセラー作家池井戸潤のデビューがミステリーだったことは、つい最近知った。1998年「果つる底なき」で、江戸川乱歩賞を受賞している。慶應義塾大学卒、三菱銀行勤務を経ての作家デビューだった。デビューー作含め有名な半沢直樹シリーズなど…

竜頭蛇尾の私小説

斎藤栄という人も、多くのミステリーを書いた。1966年デビュー作の「殺人の棋譜」で江戸川乱歩賞を受賞し、「奥の細道殺人事件」などの話題作を発表した。その後タロット日美子・江戸川警部・小早川警部らのシリーズをいくつか発表している。これまで、最初…

死刑囚と事件記者の一日

「暗闇の終わり」に始まる事件記者ジョン・ウェルズが主人公の4部作については、先月から今月にかけて全てご紹介した。息子を自殺させ妻にも逃げられた記者の悩みと事件追及の情熱が、全編を貫いていた。 https://nicky-akira.hateblo.jp/entry/2020/02/23/…

救急救命医療の現実

本書は、海堂尊の「田口・白鳥シリーズ」の第三作。「チーム・バチスタの栄光」「ナイチゲールの沈黙」に続くもので、竹内結子・阿部寛主演で映画化されたシリーズでもある。舞台は東城大学医学部付属病院、第一作で心臓外科を、第二作で小児科を扱って、本…

リアルな「ちょい悪刑事」

カッパノベルズは、正直あまりたくさん買った記憶はない。日本のものばかりであることも理由の一つだが、お値段がやや高めで1冊の体積も大きいのが問題。お値段の方は、Book-offの110円コーナーで探すのならハヤカワや創元社のものと同じになった。しかし体…

事件記者対悪徳警官

キース・ピータースンの、事件記者ジョン・ウェルズものの4作目で最後の作品が本書。なんどもウェルズの前に現れていた悪徳警官、トム・ワッツとの決着をつけることになった。ワッツは以前警部だったが、ウェルズに不正を摘発され警部補に格下げになった。…

逃亡者と追跡者

「逃亡者」というTV番組が日本でも放映されて、時々見ていた。妻殺しの濡れ衣を着せられた医師が、真犯人と目される「片腕の男」を追いながらも自らも官憲から逃亡するという、1960年代の連続ドラマだった。1993年に映画化され、逃亡者ハリソン・フォード…

ベテラン海外通信員の死

先日デビュー作「暗闇の終わり」を紹介した、キース・ピータースンの第二作が本書(1988年発表)。前作同様、「ニューヨーク・スター紙」の中年事件記者ジョン・ウェルズが主人公である。前作はニューヨーク北部の田舎町で起きた怪奇な連続自殺事件だったが…

過去を背負った事件記者

キース・ピータースンは1983年に別名でMWAペーパーバック賞を受賞した作家、なぜかその作品は単発で終わり、5年を経て本書で再デビューを果たしている。主人公に選んだのは、ニューヨーク<スター紙>の事件記者、ジョン・ウェルズ45歳である。 ウェルズは…

素人探偵の事件への関わり方

深谷忠記の美緒&壮シリーズは、2時間ドラマそのままの面白さがあってそれなりに評価できるのだが、雑誌編集者の笹谷美緒と数学者の黒江壮の2人では、官憲の捜査に関わるやり方が難しい。それをよく現したのが本書である。 以前紹介したようにおしゃべり女…

乱歩賞作家にあこがれたころ

日本の探偵小説界の重鎮江戸川乱歩が自らの還暦(1954年)を機に設立したのが「江戸川乱歩賞」、三年目から長編ミステリーを公募するようになり、昨年も300編以上の応募があった。ミステリー大好き高校生だった僕は、いつかはこれに応募し、受賞者になりたい…

サルディニア島の弁護士

今年の新年の旅行はローマだった。島のワインを呑みに行ったような旅だったが、やっぱりシチリアやサルディニアのものは美味しいと思う。帰国して「そういえばイタリアン・ミステリーがあったな」と探し出したのが本書。なんとサルディニア島を舞台にしたも…

パリのカウボーイ

昔よく旅行で行ったパリ、中心を流れるセーヌ川沿いには多くの古書店(というか屋台)が出ている。今年 初めに旅行で行ったマドリードでも、、アトーチャ駅のそばに古書屋台が並んでいた。日本ではBook-offに通う僕だが、洋書の目利きなどできるはずもなく、…

神田三河町の親分

歴史ミステリーという分野はいくつもの国で書かれているが、日本には独自のものとして「捕物帳」というジャンルがある。大江戸808町の治安を守る警察組織の現場として、岡っ引きたちの活躍を描いたシリーズである。その開拓者と言われるのが、「半七捕物帳」…

裁判員制度への道

弁護士作家である和久峻三の得意領域はもちろん法廷もの、「赤カブ検事シリーズ」など連作ものもあるがこれらはある意味ビジネスとして書いているものだろう。本当に書きたかったのは、本書のような裁判制度やその歴史に関してのものではないかと思う。 本書…

教育崩壊、1982

以前、美緒&壮シリーズや、「177文字の殺人」を紹介した、ミステリー作家の深谷忠記が最初に書いた長編ミステリーが本書である。1982年に江戸川乱歩賞の最終選考に残った作品で、作者はその後1985年の1万分の1ミリの殺人(別題:殺人ウィルスを追え)でサ…

寒い国から帰る前に

ジョン・ル・カレという作家は、言うまでもなくスパイ小説界の大御所である。デビュー作「死者にかかってきた電話」はさほど売れなかったものの、第三作「寒い国から帰ってきたスパイ」はベストセラーになった。以降、「ティンカー・テイラー・ソルジャー・…