社会派ミステリー
1997年発表の本書は、先月「ボルチモア・ブルース」を紹介したローラ・リップマンの「テス・モナハンもの」の第二作。米国探偵作家クラブ賞などを複数受賞した話題作である。作者は現役新聞記者であり、テスも倒産した新聞社で記者をしていた設定。 DCにも近…
2016年発表の本書は、昨年「眠る狼」を紹介したグレン・エリック・ハミルトンの第二作。センセーショナルなデビューを果たした前作の勢いそのままに、元レンジャー隊員バン・ショウの活躍を好調に描いている。 バンの本名はドノバン、祖父と同じ名前だ。祖父…
本書は、昨年「寒い夫婦」を紹介した土屋隆夫の短編集。1955年に「宝石」に掲載された「傷だらけの街」以降、1975年に「別冊小説現代」に発表された「風にヒラヒラ物語」まで、8編の短編が収められている。「寒い夫婦」は比較的本格ミステリー色の濃い作品…
1997年発表の本書は<ボルチモア・サン紙>の記者ローラ・リップマンのデビュー作。第二作「チャームシティ」以降、数々のミステリー賞を受賞しているシリーズ「テス・モナハンもの」のスタートである。DCに隣接したメリーランド州の街ボルチモア。そこでは…
1997年発表の本書は、「×法おもしろ事典」や「赤カブ検事シリーズ」を紹介した和久峻三のもうひとつのシリーズ「猪狩文助もの」の1作。すでに80歳を越えていて、歯は1本もなく白内障にも悩まされている、弁護士猪狩が主人公のシリーズである。口癖は「棺に…
このDVDは、ご存じネイビー犯罪捜査班本家NCISのシーズン13。前回の最終回で、ギブス捜査官は、可愛がっていた子供に脚と胸を撃たれる。目の前で上司を撃たれたトニーらに、地中海上にいる航空母艦に運び込まれるが、手術中に心停止を起こすなど危険な状態に…
本書は深谷忠記2006年発表の、壮&美緒シリーズではない単発ものである。僕の書庫に残っている、作者最後の作品である。作者の才能は疑いもないのだが、シリーズものに限界があるのも確かだ。どうしてもパターンが決まってくるし、壮&美緒の場合には官憲で…
2015年発表の本書は、2013年の「一千兆円の身代金」で<このミス大賞>を受賞した八木圭一の社会派ミステリー。慰安婦・徴用工・竹島問題などで日韓関係に亀裂が走り、SNS上で市民同士のののしり合いが続いている。国内でも韓国に強硬に対処するよう求める右…
本書は、グアテマラ生まれの作家パトリシア・M・カールスンの作品。解説によれば統計コンサルタントで素人探偵のマギー・ライアンを主人公にしたシリーズの第六作、少なくとも8作あるはずなのだが邦訳されたのは本書ともう1冊だけ。残念ながら「好奇心あふれ…
このDVDは「NCISニューオリンズ」のシーズン3。前シーズンの最後に国防省の高官までからんだ大規模なテロを未然に防いだのは良かったのだが、防ぐにあたって例によって破天荒(非合法ともいう)な手段を使ったドゥエイン捜査官のチームへの風当たりが強い。…
1950年発表の本書は、以前「まっ白な嘘」や「シカゴ・ブルース」を紹介したフレドリック・ブラウンの代表作。「シカゴ・・・」に始まる青年エド・ハンターものでも見られたように、20歳前の若者が歪んだ社会でどう生きていくかを描く筆には愛と迫力が感じられる…
1975年発表の本書は、多作家(600冊以上の作品がある)西村京太郎の、比較的初期の作品。以前「寝台特急殺人事件」で、十津川警部・亀井刑事の名コンビによるトラベルミステリー・シリーズの始まりと紹介したが、それ以前の本書でも両者は登場する。作者はこ…
1992年発表の本書は、以前「蒲生邸事件」を紹介した宮部みゆきの社会派ミステリー。本書はミステリーでありながら、山本周五郎賞を受賞した話題作だ。犯罪者に撃たれてリハビリ休職中の本間刑事は、遠縁の青年和也から消えてしまった婚約者を探してくれと頼…
「スペンサーもの」などシリーズ作品で知られるロバート・B・パーカーには、なかなか優れた単発ものがある。以前「ダブル・プレー」などを紹介して、作者の手腕を評価したこともある。1994年発表の本書も、そんな単発もののひとつ。アイルランドがルーツの2つ…
1995年発表の本書は、2ヵ月連続で紹介してきたデボラ・クロンビーの<ダンカン&ジェマもの>の第三作。ロンドン警視庁のエリート警視ダンカン・キンケイドと部下でシングルマザーのジェマ・ジェイムズ巡査部長が活躍するものだ。ダンカンは警視という役職…
本書は、以前お多福の捜査主任検事霞夕子ものの中編集「夜更けの祝電」を紹介した夏樹静子の中編集。日米ハーフの女性弁護士朝吹里矢子を主人公にした、中編5編が収められている。作者は学生時代から、NHKの推理クイズ番組のシナリオを手掛けていた。結婚・…
今日4/30は、サイゴン(今のホーチミン)市が北ヴェトナム軍に制圧された日。世界最強米軍が、東南アジアの国に屈服した象徴的な日だ。ヴェトナム戦争は、米国市民の心に大きな傷を残した。そんなわけで、ヴェトナム戦争を正面から扱ったミステリーは珍しい…
1994年発表の本書は、先月デビュー作「警視の休暇」を紹介したデボラ・クロンビーの第二作。一人暮らしのエリート警視ダンカン・キンケイドと、シングルマザー巡査部長ジェマ・ジェイムズのコンビが主人公だ。 ダンカンは小規模なアパートで、気ままな独り暮…
2014年発表の本書は、マーク・プライヤーの「ヒューゴー・マーストンもの」の一冊。デビュー作の「古書店主」は以前紹介していて、パリの米国大使館外交保安部長であるヒューゴーが、華の都をカウボーイブーツでのし歩く典型的な「米国の田舎者」ぶりが興味…
1982年発表の本書は、古典文学者キャロル・クレモーのミステリーデビュー作。作者はウィリアム&メアリ大学の教授、専門分野で2冊の著書がある。ミステリー中毒症の重症患者だと自ら言うマニアで、とうとう自分で書いてしまったのが本書。 舞台は東海岸の総…
1996年発表の本書は、何作も紹介してきた深谷忠記の「黒江壮&笹谷美緒シリーズ」の1作。ずっと手に入らなかったもので、先日藤沢のBookoffでようやく見つけた。作者の未読作品は、あと1冊ノンシリーズが残っているだけ。 2時間推理ドラマの典型のような…
1993年発表の本書は、ダラス生まれで英国好きの作家デボラ・クロンビーのデビュー作。複数のミステリー賞で、新人賞候補になった作品である。舞台は英国、ロンドン警視庁のエリート警視ダンカンは、弟に譲られた会員制リゾートホテルで休暇を過ごすため、フ…
以前、高木彬光短篇集「5人の名探偵」を紹介したが、その5人の内で僕が最後まで読まなかったのが、本書(1968年発表)の探偵役近松茂道検事のシリーズ。神津恭介を始めとして、作者の探偵役は颯爽とした青年のイメージが強い。しかし近松検事だけは、牛の…
2015年発表の本書は、ロサンゼルスで20年余り映画・TVのライターをしていたデイヴィッド・C・テイラーの作家デビュー作品。日本人があまり知らない米国の「赤狩り」の時代に、ソ連から米国に逃れてきたトム・キャシディ(旧名トマス・カスナヴィエツキ)一家の…
本書は以前「殺人の棋譜」「奥の細道殺人事件」などを紹介した、斎藤栄のノンシリーズ。作者は1970年までは1作/年のペースだったのに、それ以降作品を量産し始める。かつて紹介した「Nの悲劇」も、野口英世の死の真相を探るというテーマは面白かったのだ…
1979年発表の本書はリチャード・N・パターソンの処女作。アメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞を得た作品である。作者は当時32歳、オハイオ州の地方検事補を務めたりアラバマ州で法律事務所を共同経営していたこともある弁護士作家だ。カリフォルニア生まれだが…
2000年書き下ろし出版の本書は、以前「越後七浦殺人海岸」などを紹介した大谷羊太郎の八木沢警部補ものの長編。元来ミュージシャンで、大物芸能人の付き人経験もある作者が得意とする芸能界裏面ものである。 大手商社の幹部でニューヨーク駐在の夫を持つ有閑…
1964年発表の本書は「小説十八史略」「アヘン戦争」などの歴史ものや長編推理「割れる」短篇集「獅子は死なず」などを紹介している陳舜臣の国際ミステリー。舞台はインドの北端でチベットに近い街カムドン。元日本軍の衛生兵だったカメラマン長谷川が、街の…
本書は、以前「恋人たちの小道」を紹介したナンシー・ピカードの2006年の作品。作者は「恋人たち・・・」で登場した市民財団所長のジェニー・ケインや、ジャーナリストのマリー・ライトフットを主人公にしたシリーズが知られているが、本書はノンシリーズの力作…
本書は「浅見光彦シリーズ」でおなじみ、内田康夫の第二作である。以前紹介した「死者の木霊」でデビューした作者が、何を自分の特徴にしようか迷っていたころの作品だと思う。第三作「後鳥羽伝説殺人事件」で浅見光彦がデビューし、その後は浅見シリーズが…