2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧
2020年発表の本書は、小泉・竹中改革以降の大学組織の変貌により、若い研究者が搾取されている実態を告発したもの。著者の山田剛志氏は、大学教授と弁護士の両面を持つ人。「産学共同研究」は、国立大学を法人にした2003年から推進され、現在まで大学に流入…
光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「戦闘機」である。最初は上空から戦場の様子を偵察する目的で、気球や飛行船と共に実用化された航空機だが、そのうちに相手を撃ち落とす役割を持つようになった。第一次世界大戦でもすでに「エース:5機以上を墜と…
昨年、短篇集「およね平吉時穴道行」を紹介した半村良の、比較的後期の長編が本書(1992年発表)。「およね・・・」を読んで、とらえどころのない作家だと(失礼にも)評しているが、本書を読んでもその印象は変わらなかった。本書発表のころになると作者は押し…
何度も紹介している津村秀介の伸介&美保シリーズ、2000年発表の本書は最後から2冊目の作品である。あと1冊しか本棚に残っていないのは寂しい限りだ。初期のころは鉄道など公共交通機関を使って日本中(時には海外も)走り回って作られたアリバイを崩す面…
<オミクロン株>が猛威を振るいだして、またTVニュースに感染症専門家や都道府県知事の顔が映るようになった。知事というのは不思議な役割で、地方自治の長かと思うとそうでもない。自治の主役は市町村で、政令指定市は独立なのだ。神奈川県など横浜市・川…
先月、元麻布「かんだ」の料理長神田裕行氏の「日本料理の贅沢」を紹介した。<すき焼き>には和牛肉と松茸しか入れない(!)というメニューには驚いたが、和食の「贅沢」なところを存分に(誌上で)味わった。まことに奥の深い和食の世界、感心したけれど…
世に「ヒコーキ」というものに憑りつかれた人は少なくないが、そのなかでも大物が本書たちの著者佐貫亦男博士である。東大航空学科卒、陸軍の97式戦闘機のプロペラ設計を担当している。その後ドイツへ出張、戦争の激化により帰国できなくなり1943年末までド…
首から下がマヒした状態で犯人を追い詰める天才鑑識官リンカーン・ライムのシリーズで、押しも押されもせぬベストセラー作家になったジェフリー・ディーヴァーだが、ルーンというポップなおねえちゃんを主人公にしたシリーズを3作出していることは、以前紹…
平成の30余年は、後年「失われた30年」と呼ばれるかもしれない。初期こそバブルに踊り高揚感のあった時代だったが、以降日本では経済成長が止まってしまった。その間中国などで高い成長率が続き、米国市場もGAFAMを始めとする巨大ITの登場など、新陳代謝が著…
1980年発表の本書は、シャーロット・マクラウドの「セーラ・ケリングもの」の第二作。以前ノースカロライナの女性判事デボラ・ノットのシリーズを「大河ドラマ」と評したが、このシリーズもセーラの成長物語として「大河」の要素が強い。 前作「納骨堂の奥に…
本書は、まだ東京オリ/パラが2020年に行われると考えられていた2017年に、「テロリストが東京オリ/パラを狙ってくる。あと3年もない」と警鐘を鳴らす目的で出版されたもの。著者の今井良氏は、NHKから民放に移り警視庁担当を務めた人。「マル暴捜査」など…
先日APEC/ABACの報告会に出席して、久し振りに東南アジアのことを考えるようになった。そこで20年ほど前に読んで、よくわからなかったこの本を、再読することにした。2000年に、京都大学東南アジア研究センター白石隆教授が著わしたもの。19世紀以降の東南ア…
本書(1955年発表)は、以前「荒鷲の要塞」「金門橋」を紹介した冒険小説の大家アリステア・マクリーンのデビュー作である。舞台は北緯70度近辺の北極圏、何もかもが凍り付く厳寒の海だ。なぜこんなところで戦闘が発生するかと言うと、1943年の時点では欧州…
シミュレーション・ウォーゲームの中には戦争・戦闘だけでなく、国際謀略(外交ともいう)をテーマにしたものもあった。この種のゲームを漁っていた30歳前後、必然的に国際謀略小説(含むノンフィクション)も読むようになっていた。なかなか日本人作家でリ…
本書(1985年発表)は、ポーラ・ゴズリングの第6作。毎回テーマやスタイルを変える作者は本当につかみどころがない。前作「赤の女」はスペインを舞台にしたラブサスペンスだったが、本書は米国北部(ラストベルト?)の田舎町にある大学で全てが完結する。…
3月に韓国大統領選挙があるのだが、それを前にして与党・野党・もうひとつの野党の候補者が、暗闘を続けている。人気だった野党候補者は、内輪もめで選挙対策本部を解散させるし、与党候補者は「髪の毛の植毛」などと意味不明の政策を主張している。日本人…
2016年発表の本書は、マクロ経済学者吉川洋東大名誉教授が、人口減少ペシミズムを打破する意図で書かれたもの。とかく人口減少続く日本では「失われた30年」もあって意気消沈していると、筆者には見えたらしい。 本書で筆者は、紀元前5,000年まで遡っての人…
本書は創元社が独自に編集したジョン・ディクスン・カー(別名カーター・ディクスン)の最後の短編集。長編はいくつか紹介しているが、作者は多くの短編や脚本も遺した。本書には、ラジオドラマ脚本2本、シャーロック・ホームズのパロディを含む4編の短編…
1966年、本書によって「シャム猫ココシリーズ」が始まる。作者のリリアン・J・ブラウンは、デトロイトの新聞社に30年務めた記者。マンションの10階から飼い猫が突き落されて殺されたのをきっかけに、EQMMで作家デビューを果たす。本格的な長編第一作として執筆…
2016年4月、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、パナマにある法律事務所<モサック・フォンセカ>から流出した1千万件を超えるデータを公表した。いわゆる「パナマ文書」である。この法律事務所は違法・合法すれすれの租税回避措置などを扱ってい…
本書は、ご存じE・S・ガードナーのペリー・メイスンものの1冊。解説には、1940年代の代表作だとある(1949年発表)。このシリーズは1933年の「ビロードの爪」に始まり、作者の死後の1976年まで合計82作品が出版され、その多くが邦訳されている。 ある夜、秘書…
本書は、多作家西村京太郎の1971年の作品。まだレギュラー探偵十津川警部らが登場する以前の作品だが、このころの著作には力作が目立つ。本書はある意味、パズラーの極限を目指したもので、プロットそのものがトリックのようなミステリーだ。「プロトリック…
これまで「アリバイのA」からはじまり、「欺しのD」までを紹介したスー・グラフトンの連作。主人公の私立探偵キンジー・ミルホーンは、サンタテレサに住む離婚歴2度の32歳。ジム通いやジョギングを欠かさない彼女だが、決してマッチョな私立探偵ではない…
以前元警視総監吉野氏の著書「情報機関を作る」を紹介したが、実際体験した例ではなく、諜報活動の実態例をジョン・ル・カレやフレデリック・フォーサイスの著書を引いて説明していた。近年よりリアルなスパイスリラーが増えていて、吉野氏も引用できる小説に…
先週「Mission Impossible」のビデオを紹介したが、中学生の時やはり毎週楽しみにしていたのが「Star Trek」。重巡洋艦「エンタープライズ」が23世紀ころの宇宙を駆け回るSFドラマだった。原作者ジーン・ロッデンベリーは、一度TV局にこのシリーズを持ち込ん…
そんなの当たり前だろうと言われそうだ。ロバート・B・パーカーの描く「スペンサーの世界」では、主人公のスペンサーはボストンで開業している私立探偵である。ただしもう30余冊読んだ限りでは、彼が探偵をするのは本当に珍しい。どちらかというと犯罪者を懲ら…
ミステリーの始祖エドガー・アラン・ポーが残したのは、20~50ページほどの短編ばかり。その後「月長石」のような600ページ以上の長編も出るのだが、初期の頃どうしても本格ミステリーは短編が主流だった。本書はアーサー・コナン・ドイルの最初のシャーロッ…
本書(2016年発表)は、農学畑から協和発酵、サントネージュワイン研究所などを経て、フード&ビバレッジ東京代表を務める清水健一氏が、ワインの伝説・俗説を科学者の視点から検証したもの。 著者はお酒大好き人種でもあり、「3人でワイン8本空けた」など…
僕が中学生の頃、大好きで毎週見ていたのがこの番組「Mission Impossible」。邦題は「スパイ大作戦」というのだが、この題名は好きでなかった。後にトム・クルーズ主演でシリーズ映画になるが、僕はオリジナルの方がずっと好きだ。先日伊勢佐木町のBook-off…
「小さな政府」を標榜して、レーガン・サッチャー改革、日本では評判の悪い小泉・竹中改革を支持しておられるのが塩野七生さん。これまでにも何冊か著書を紹介しているが、本書は中世フィレンツェの政治家ニッコロ・マキャベリの遺した言葉を、著者の感性で…