新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

軍事スリラー

隠れた冒険小説の大家

コリン・フォーブズという作者の本を、手に取ったのは初めて。タンカーと救難ヘリのイラストに「黄金猿の年」というタイトル。創元推理文庫の中では「スリラー・サスペンス」に区分されていて、紹介文も裏表紙には無く目立たない本だ。 創元社の文庫は、あま…

パリ解放記念日8/25

1971年、本書によってフレデリック・フォーサイスはデビューし、それまでの軍事スリラーやスパイものを一気に時代遅れにした。作者はイギリス人だが、子供の頃から大陸に親しみドイツ語やフランス語も堪能、空軍パイロットを経てジャーナリストになり国際舞…

インテリジェンスとは「神の視座」

本書は先月ノンフィクション「ニッポンFSXを撃て」を紹介したジャーナリスト作家手嶋龍一の手になる、本格的なインテリジェンス小説である。解説は、これも以前紹介した「日韓激突」で作者と対談した元外交官佐藤優氏が書いている。その解説によればインテリ…

身代金は5億ドル

スコットランド生まれの冒険作家アリステア・マクリーンは、「女王陛下のユリシーズ号」でデビュー、第二作の「ナヴァロンの要塞」が映画化されてヒットし有名になった。生涯で30作余りの冒険小説を書き、おおむね半分の作品が映画化されている。 1976年発表…

グルイズロフ大統領が恐れた男

以前「ロシアの核」を紹介したデイル・ブラウンの比較的新しい作品が本書(2004年発表)。作者はB-52の搭乗歴やF-111のテストパイロットだったことを売りに、1986年「オールドドッグ出撃せよ」で作家デビューしている。デビュー作のヒーローである米国空軍の…

板門店での銃撃事件

多分韓国のミステリー(軍事スリラーか?)を紹介するのは、これが初めて。南北の休戦状態を題材にした映画としては「シュリ」(1999年)が有名だが、本書はそれを超える人気を博したという映画(2000年)の原作。原題を「DMZ:非武装中立地帯」という。作者…

ヒンドゥークシの嵐

本書(2010年発表)は、元米国国家航空警備隊の機関士でアフガニスタンなどでC-5やC-130輸送機に乗り込んだ経験の長いトマス・W・ヤングがノンフィクション「The Speed of Heat」(これもアフガニスタンが舞台)に続いて発表した軍事スリラーである。飛行機…

混迷する第三次世界大戦

2002年発表の本書は、セラミック外装の高速原潜<チャレンジャー>が主人公のシリーズ第三作。2年近く前に、第一作「原潜迎撃」と第二作「深海の雷鳴」を紹介してから少し時間が経った。南アフリカとドイツが枢軸を組み、英米連合軍の主力艦隊を奇襲で壊滅…

ロシア<青の革命>

2009年発表の本書は、英国の歴史教員ジェィムズ・スティールのデビュー作。彼はオックスフォードで歴史・教育を学び、私立高の副校長である。彼が本書を書いている間に金融危機が訪れ、ロシアでも彼が描いたような政情不安が起きとあとがきにある。 本書の欧…

「北爆」の真実

ベトナム戦争については初期にケネディ大統領が厳しい条件を付けるなど、「米軍は後ろ手に縛られたままこの戦争を戦った」という主張がある。米軍及び政権中枢は、国際社会や国内の反戦運動に配慮しながらこの戦いを続け、結局「世界最強の米軍はアジアの一…

日米で評価が分かれたスリラー

本書は1975年に米国で発表された軍事スリラー、作者のルシアン・ネイハムはパイロットライセンスを持つジャーナリストで、結局小説はこの1冊しか残さなかった。解説によると6ヵ国語に翻訳されたとかスティーブ・マックィーン主演で映画化の企画があるなど…

チャーチル誘拐作戦、1943

本書は、恐らくはジャック・ヒギンズ最高の傑作と思われる。1975年に出版された後、削除されていたエピソードを加えて1982年に再版されている。本書は再版版の翻訳である。空挺部隊は第二次世界大戦で登場した新しい兵種、敵陣深く侵攻でき軽装備ながら厳し…

ありったけの航空支援

「アメリカン・スナイパー」は、イラクで多くの敵兵やゲリラを仕留めた伝説の狙撃兵クリス・カイルの自伝である。クリント・イーストウッド監督で映画化もされたのだが、この本の共著者がスコット・マキューエン。 https://nicky-akira.hateblo.jp/entry/201…

回路に仕込まれたウイルス

以前「ミッションMIA」「樹海戦線」を紹介したJ・C・ポロックの第三作が本書(1985年発表)。前者を架空戦記、後者をアクション小説に分類したのだが、本書は軍事スリラー(本当は政治スリラー)と考えるべきだろう。それでもストーリーの基本線は変わっていな…

大西洋上でのチェスゲーム

1956年発表の本書は、同名の有名な映画の原作である。大西洋上で特命を帯びたUボートと、哨戒中の対潜駆逐艦の1対1の対決を描いたものである。作者は両艦の艦長を中心に、Uボートと駆逐艦の主に司令室でのアクションを交互に描いていく。 映画でクルト・…

道北・道東防衛戦

昨年「尖閣諸島沖海戦」を紹介した、中村茂樹のリアルシミュレーションの陸戦版が本書。作者は海上自衛隊で潜水艦長から艦隊運用、情報分析、幹部教育、戦史などの部署を経験した人。今回の敵国はロシアである。 現実に原油安やコロナ禍で大変苦しいことにな…

Mission Impossible,1940

本書の作者トミー・スティールはこれがデビュー作・・・なのだが、本書発表(1983年)以前から有名人である。本業(?)はロックミュージシャン、「Rock with the Caveman」などのヒット曲で知られ、映画や舞台でも活躍する俳優でもある。 シェークスピア劇も得…

壮大な架空戦記

佐藤大輔という人はもともとゲームデザイナーだった。日本の短いシミュレーション・ウォーゲーム全盛期に、やりたい放題といえるくらい派手な作品を発表した「アドテクノス」の一員である。代表作は「Red Sun & Black Cross」のシリーズで、僕も続編である「…

ロシアの「オプ・センター」

トム・クランシーが精神科医であるスティーブ・ピチェニックと共著した「オプ・センター」シリーズ、第六作の「国連制圧」が割と面白かったので、さかのぼって第二作である本書を読んでみた。 国際紛争の中で緊急事態を察知するハイテク情報網を持ち、強制排…

サイバー戦争を予言したシリーズ

軍事スリラーものの大家トム・クランシーは、生涯で何度も共著者を変えている。1998年頃から、近未来スリラーの新しいシリーズ「Power Plays」を始めたが、この時の共著者がマーティン・グリーンバーグ。同名のSF評論家がいて、Wikiでもなかなか正体がわから…

小説の形をした教科書

柘植久慶という作家には多くの軍事スリラーの著書があって、「前進か死か」全6冊などは本当にリアルな作品で何度も読んだ。一方ビジネス書やサバイバル書も多く、「パーフェクトコマンダー」という前線指揮官の心得を書いた本は、以前紹介している。 https:…

人道主義者との闘い

本書はトム・クランシーとスティーヴ・ピチェニックの共著による、米国の危機管理組織「オプ・センター」ものの第6作。舞台はニューヨークなのだが、アメリカであってアメリカでないところ「国連」である。 今回の悪役は、5人のテロリスト。ブルガリア人傭…

大統領!Situationです。

トム・クランシーは生涯で何人もの共著者を使った。戦略・作戦級ゲームデザイナーのラリー・ボンドに始まり、最後に戦術・戦闘級のチャンピオンであるマーク・グリーニーと組んだ。クランシーの死後も、グリーニー流の軍事スリラーを書き続けている。クラン…

顔認証プログラムが暗殺者

作者のデイヴィッド・メイスンは、英国の近衛連隊の出身。特殊部隊にいたがどうかは分からないが、ドーハ戦争で武勲を立てて除隊、オックスフォードシャーの州長官も務めた。本書はデビュー作「バビロンの影~特殊部隊の狼たち」に続く第二作である。デビュ…

戦車一両、敵中を行く

冒険小説の雄ギャビン・ライアルは最初レギュラーの主人公を持たず単発ものを書いていたが、元SAS少佐ハリー・マクシムを主人公にしたシリーズものにも手を染めた。これらがなかなか面白い。マクシム少佐は妻のジェニファーをテロで失い、半ばヌケガラと…

旧式兵器の競演

「超音速漂流」でデビューしたトマス・ブロックは、米国大手航空会社のパイロットである。現職のうちに作家デビューを果たした。職業柄、民間航空機のハイジャックものが得意なのだが、本書(第三作)では本格的に軍事知識を盛り込んで、大規模犯罪とこれに…

それぞれの死出の旅

キューバ危機のころ、僕はまだ小学生だった。「シートン動物記」がお気に入りの本で、核戦争がどういうものかの知識は無かった。米ソ両国が核のボタンを握りしめて「相互確証破壊: Mutual Assured Destruction(MAD)」へのチキンレースをしていたことは、ず…

米中対立の見事な予測

現在の戦略兵器としては、国際関係上ほぼ使えない戦略核兵器を除けば、空母機動部隊が一番に挙げられるだろう。1941年末、南雲機動部隊が真珠湾で旧式戦艦7隻を撃沈破して以降、その地位は揺らいでいない。しかしいつかは空母機動部隊を破る「戦略兵器」が…

ウクライナ、1993

1987年「オールド・ドッグ出撃せよ」でデビューしたデイル・ブラウンは、もともと米空軍のテストパイロット。本書にも出てくるF-111の多くのバリエーションに航法士として搭乗経験がある。デビュー作はその経験を活かしたもので、その精緻な航空機の運用描写…

ISIS+大量破壊兵器の目標は?

作者のジョエル・C・ローゼンバーグは、「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラー作家だと紹介文にある。著作の出版総計は300万部をこえているそうだが、邦訳は本書が最初とのこと。2015年発表の本書は、4年後の今でも現在進行形のシリア内戦とその周辺国…