新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

軍事スリラー

河川砲艦での救出劇

1960年発表の本書は、これまで「黒海奇襲作戦」など4冊を紹介した英国冒険作家ダグラス・リーマンが、今話題の東シナ海を舞台に描いた活劇。作者の本領は、小型もしくは老朽の戦闘艦が、より強大な敵と戦う姿。本書では、本来河川で運用される旧式の河川砲…

邦人保護担当特別領事、黒田康作

2009年発表の本書は、真保裕一の日本人作家には珍しい軍事スリラー。作者はアニメータ出身の作家・脚本家で、ドラえもん映画の脚本も手掛ける。1991年「連鎖」で江戸川乱歩賞を受賞するなど、多彩な作品で吉川英治・山本周五郎・新田次郎賞も獲得している。…

兵士は方法論で考える

2001年発表の本書は、以前「テロ資金根絶作戦」などを紹介したSAS出身の匿名作家クリス・ライアンの軍事スリラー。作者は1984~94年の間、SAS正規連帯に所属し湾岸戦争などい従軍した。恐らくは下士官だったと思われる。レジメントと呼ばれるSASの兵士は、極…

私設特殊部隊<剣>登場

近代軍事スリラーの大家トム・クランシーは、多くの共著者を活用した。死後も、マーク・グリーニーが<ジャック・ライアンもの>を書き続けてくれている。数多くの共著者の中で、本書(1997年発表)に始まる<剣>シリーズのマーティン・グリーンバーグは、…

甦った聖人、ヴァチカンへ

1984年発表の本書は、グローヴァー・ライトの第三作。元はミュージシャンだった作者は、60年代に米軍の依頼で各地の慰問に行き、軍隊との接点を持った。後にドバイのクラブで歌うようになり、支配人になって現地の特殊部隊員らと交流を持った。英国特殊部隊…

寄せ集め航空団の闘い

1991年発表の本書は、CNN記者から軍事ジャーナリスト、作家に転じたマイケル・スキナーのフィクションデビュー作。軍用機がいっぱい(さすがに戦闘はしなかったが、日本のF1支援戦闘機まで!トルネードやミラージュも)出てくる。作者はパイロットではないが…

ウクライナの次の狙い(後編)

ヴォローディン大統領は国営TVの美人ニュースキャスターを使って、 ・NATOの東方拡大 ・カリーニングラードの危機 ・米国ライアン大統領の好戦的な所業 を喧伝、インタビューでもそつのない応答をして市民の結束を呼び掛ける。一方ライアンの方は、NATOの首…

ウクライナの次の狙い(前編)

2015年発表の本書(4冊組)は、クランシーの<ザ・キャンパス>ものをマーク・グリーニーが書き継いだもの。今年紹介した「米露開戦」「米朝開戦」「機密奪還」に次ぐ作品だ。今回の悪役は「米露」に続いてロシアのヴォローディン大統領。プーチン氏をほう…

日米中の軍事システムが乗っ取られ

2019年発表の本書は、いずれも海軍兵学校卒業のデイビッド・ブランズ(潜水艦乗り)とJ・R・オルセン(情報将校)の共著による、サイバー軍事スリラー。2人は2つの軍事スリラーを自費出版したが、本書は大手出版社から出版された「公的な」デビュー作。日米…

ハッカー少年とテロリスト

以前「テロ資金根絶作戦」などを紹介した、SAS出身の作家クリス・ライアン。60冊余りの作品があるが、多くは軍事スリラー。「テロ・・・」のマット・ブラウニングのように複数の作品の主人公を務めるヒーローものも多いが、本書(2005年発表)は単発もの。主人…

テロリストを狙う10人の精鋭たち

2014年発表の本書は、ベテランミステリー作家ドン・ウィンズロウが本格的な軍事スリラーに挑戦した作品。作者は入院中に構想して産み出した探偵ニール・ケアリーものでデビューし、注目を集めた。多くの作品が邦訳されているのだが、実は呼んだのは初めて。3…

<ザ・キャンパス>外伝

2014年発表の本書は、マーク・グリーニーが書き継いだトム・クランシーの「ジャック・ライアンもの」。このところの主人公はライアン大統領ではなく、ジャック・ジュニアも所属する民間情報機関<ザ・キャンパス>である。大統領が先頭に立ってドンパチと言…

帝国管区ウクライナの闘い

2014年発表の本書は、寡作家スティーヴン・ハンターの「スワガーもの」。伝説のスナイパーで<ボブ・ザ・ネイラー(釘付けボブ)>とあだ名されるボブ・リー・スワガーも68歳になった。日向ぼっこをしながら孫と遊ぶ日々だが、スナイパーに係る謎を与えられ…

黒人でライフルが撃て、身を守れない

先月、狙撃手だったコグリンとベテラン作家デイヴィスの共著「最強のガニー、スワンソン狙撃手もの」を3冊立て続けに紹介した。2018年発表の本書も、狙撃手だったニコラス・アーヴィングが、軍事アクション小説で実績あるA・J・テイタの助けを借りて発表した…

サウジの国難に挑む「最強のガニー」

2010年発表の本書は、これまで「不屈の弾道」「運命の強敵」を紹介してきた、ジャック・コグリン&ドナルド・A・デイヴィス共著による「最強のガニー、カイル・スワンソンもの」の第三作。 狙撃手として、特殊部隊の兵士として最高の技量・勇気・体力を持つカ…

Homegrown-Terrorist、ジューバ

2009年発表の本書は「狙撃手スワンソンもの」の第二作。海兵隊屈指のスナイパーだったジャック・コグリンが、ベテラン作家ドナルド・A・デイヴィスの助けを得て書き続けるシリーズは好調だ。 昨日紹介した前作「不屈の弾道」で、シリアで人質になっていた海兵…

カイル・スワンソン一等軍曹登場

2007年発表の本書は、海兵隊屈指のスナイパーだったというジャック・コグリンが、ベテランのノンフィクション作家ドナルド・A・デイヴィスの助けを借りて書き上げたもの。イラク戦争はじめ多くの戦場を経験した作者は、除隊後自伝的ノンフィクションを書いたが…

レアアースという資産(後編)

李将軍と黄社長の陰謀は、SGIP社の協力やブラジル大富豪の資金でうまくいくかに見えたが、ICBMの重要部品や精錬装置のコア部分の密輸が、洋上で巡回している米海軍に阻まれてしまう。北朝鮮がかくも高価な部品を手に入れられることを知ったライアン政権は、…

レアアースという資産(前編)

今年初め、トム・クランシーの遺作「米露開戦」を紹介した。最後の共著者マーク・グリーニーによって、このシリーズは書き継がれていくことになる。本書(4冊組)はグリーニー単独の手になるもので、二期目半ばのライアン大統領は、北朝鮮の陰謀と対峙する…

ドイツの巨砲を破壊せよ

1957年発表の本書は、冒険作家アリステア・マクリーンの第二作。デビュー作「女王陛下のユリシーズ号」は、北海での英国海軍軽巡洋艦の闘いと死を描いたものだったが、今回の舞台はエーゲ海。トルコに近い架空の島ナヴァロンでの、連合国軍人の破壊工作行が…

スバールバル諸島、1983

本書はまだ冷戦期の1983年に、英国の軍事スリラー作家リチャード・コックスが発表したもの。作者は予備役のパラシュート部隊の少佐、パイロット資格もあり、サンデータイムズやデーリーテレグラフの記者をしていたらしい。軍事紛争エリアを実際に取材した経…

ロシアのウクライナ侵攻(後編)

<ザ・キャンパス>がセバストポリから無事に脱出したころ、ジャック・ジュニアは独自にスイスのプライベートバンクのカネの流れを追っていた。ところが所属する調査会社の経営者キャスターは、ジャックを外そうとする。実はジャックが追っているカネの流れ…

ロシアのウクライナ侵攻(前編)

2013年発表の本書は、軍事スリラーの大家トム・クランシーの遺作。昨年スティーブ・ピチェニックとの共著「暗黒地帯」でも取り上げられたウクライナ紛争を、大統領ジャック・ライアンのシリーズでも扱ったものだ。共著者はマーク・グリーニー。クランシーが1…

パンデミックを予言した小説

2020年4月に出版された本書は、「COVID-19」のパンデミックを予言した小説。作者のローレンス・ライトは<ニューヨーカー誌>のスタッフライター。ジャーナリストとして、ノンフィクションや脚本を手掛けたが、1998年の映画「マーシャル・ロー」の脚本を書…

嵐の夜の東京壊滅作戦

先月、日本の自衛隊の問題点について、どうすればいいのかの提言をまとめた「令和の国防」まで3冊の書を紹介した。 闘えるようにするには - 新城彰の本棚 (hateblo.jp) 2014年発表の本書は、小説の形を借りて「闘えない自衛隊」の問題点と、その解決策を示…

最も優れた戦略家の警告

米中衝突の可能性が高まる中、2021年に出版された軍事スリラーが本書。作者は海兵隊特殊部隊出身の作家エリオット・アッカーマンと現役時代「最も優れた戦略家」と讃えられたジェイムズ・スタヴリディス提督。恐らくスタヴリディス提督が構想と監修を担当し…

麻薬組織とタリバンが組んだ?

いろいろな共著者を得て、スパイ&軍事スリラーを書き続けてきたトム・クランシーは、2013年に亡くなった。最後の共著者は「グレイマンもの」のマーク・グリーニーだったが、その直前にピーター・テレップと発表した(2011年)のが本書。主人公は、<統合タ…

ハルキウの「狐」戦車隊

2017年発表の本書は、昨年「北朝鮮急襲」を紹介した、トム・クランシー&スティーヴ・ピチェニック原案の<新オプセンター・シリーズ>。扶桑社から翻訳出版された4作目にあたる。実際の執筆は、ジェフ・ローヴィンとジョージ・ガルドリスキだ。 舞台は、今…

凄い奴らが主演した映画

世界最強米軍は、数々の特殊部隊を持っている。今は正式に一軍になっている海兵隊だって、もともとは水陸両用の特殊部隊とも言えた。現状の特殊部隊の中でも一番厳しい訓練をし、高い資質・能力を求めるのが、海軍特殊部隊「NAVY SEALs」という。2012年に、…

東ドイツを駆け抜けるフェアモント

昨日デイル・ブラウンの「幻影のエアフォース(2002年)」を紹介したが、その中にパイロットの脳が直接操縦する戦略爆撃機やMig戦闘機の話があった。本書はそれより20年早く1980年に出版された、類似アイデアに基づくもの。作者のスティーヴン・L・トンプスン…