新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

アンソロジー

日本の「新本格」の担い手たち

このブログを2019年に始めて丸6年、2,300ほどの書を紹介してきた。カテゴリのベスト3は、歴史・軍事史、政治・経済書、本格ミステリーとなっていていずれも350冊ほどである。4位の社会派ミステリーは180冊ほどだから、この3カテゴリがメインである。 そ…

歴史上の偉人10名登場

1960年発表の本書は、カリフォルニア在住の作家・演出家シオドー・マシスン(*1)の短編集。収められた10編の短編は「歴史上名を残した人物が、一生に一度名探偵役を演じる」というテーマで<EQMM誌>に連載されたもの。作者がこの企画を持ち込んだ時、エラ…

科学捜査に飽きたなら

本書は日本推理作家協会(理事長:東野圭吾)が、時代推理傑作選として編纂したアンソロジー。8編の江戸時代ものの短編が収められていて、原本はまちまちなのだが故人でもある作者の作品も含めて徳間文庫オリジナルとして2009年に出版されている。 「江戸時…

大戦間の黄金時代を舞台に

1992年発表の本書は、13人の作家が2つの条件を提示されて「アガサ・クリスティに捧げる短編」を書き下ろしたアンソロジー。その条件とは、 ・黄金期たるWWⅠ~WWⅡの時期を舞台 ・少なくとも一つの死体を登場させる殺人物語 であるが、何人かの作家は尻込みし…

高木彬光レギュラーズ

本書は光文社文庫の企画で、高木彬光が創造した5人の名探偵が登場する中短編を、各1作収めたもの。実はもう一人墨野隴人という探偵役がいるのだが、本書には収めてもらえなかったようだ。この探偵については「実は・・・」があるので、また別途ご紹介すること…

日本の21世紀ミステリー

欧米のミステリーは1930年代に一つのピークをつけ、その後バラエティ豊かなものになって、現在は本格的なパズラーは比率を大きく減らした。僕自身も21世紀の欧米作品で一番多く読んでいるのは、軍事スリラーかスパイものである。 しかし(奇跡的に)日本では…

13作家の特別書き下ろし

1991年発表の本書は、セーラ・ケリングものをいくつも紹介したシャーロット・マクラウドが他の12人の作家に声をかけて、クリスマスに関わる短編を書き下ろしてもらいアンソロジーとしたもの。 英米の作家ばかりだが、おおむね自らのホームグラウンドを舞台に…

昭和20年代の「宝石」

本書は「本格の鬼」鮎川哲也の編集による、昭和20年代の「幻の本格作品」を集めたアンソロジー。第二次世界大戦後、日本のミステリー界は空前の本格ブームを迎えた。江戸川乱歩、横溝正史ら戦前からの作家に加え、高木彬光・鮎川哲也らの登場で、一気に花開…

不可能犯罪アンソロジー

子供のころに読んでいたのは、主に創元推理文庫。ハヤカワ・ポケットミステリーより値段が手ごろだったし、ポケミスの2段組みは読みにくかった。それがいつの間にかハヤカワもミステリー文庫を出すようになって、選択肢が増えた僕は喜んだものだ。この文庫…

編集者としてのエラリー・クイーン

中学生だった僕をミステリーの世界に引きずり込んだのは、「Xの悲劇」(バーナビー・ロス名義1932年発表)とそれを貸してくれた中学校の国語の先生である。中学校の図書館で、戦記ものやホームズ、ルパンものばかり読んでいるのを知っておられたのやもしれ…