新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ロシア<青の革命>

2009年発表の本書は、英国の歴史教員ジェィムズ・スティールのデビュー作。彼はオックスフォードで歴史・教育を学び、私立高の副校長である。彼が本書を書いている間に金融危機が訪れ、ロシアでも彼が描いたような政情不安が起きとあとがきにある。 本書の欧…

情報セキュリティの知識・組織・実践

本書は来月2日発売予定の新刊書、これも著者から送られてきたものだ。400ページ弱の中に、現在の企業情報セキュリティの全てが詰まっている書といっても過言ではない。日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)は、サイバーセキュリティ業界の老舗団体。サ…

一極集中是正のヒント

別ブログでではあるが、東京一極集中の危険性を書いてみた。欧米諸国では人口1,000万人をこえる都市は珍しい。安全保障面からもこのような集中は避けるべきというのが、都市計画の裏にある。今回の「COVID-19」騒ぎでさらに拍車がかかったのが、一極集中是正…

ウィムジー卿を巡る女性たち

本書は1930年発表の、ドロシー・L・セイヤーズのピーター・ウィムジー卿ものの第五作。前作「ベローナクラブの不愉快な事件」より、第三作の「不自然な死」によく似た毒殺ものである。古来女流ミステリー作家には、毒殺ものが多い。アガサ・クリスティも第一…

やはり世界中「カネ余り」

緊急事態宣言の広がりもあって、「#二度目の一律現金給付を求めます」がトレンド入りしたらしい。これに麻生副総理・財務大臣は「銀行預金が増えるだけ、経済効果は期待できない」と消極的である。さらにこのところ銀行の預金総額が急増しているとの報道も…

コーンウォールの芸術家たち

本書は、ジェイニー・ボライソーのコーンウオールミステリーの第三作。「しっかりものの老女の死」から数ヵ月、季節は冬になっている。4年前に夫のディヴィッドを癌で亡くしたローズは40歳代後半、一時期親しくしていたピアース警部との仲は進展せず、今は…

「下流老人」への反論

昨日、藤田孝典著「下流老人」を紹介したが、不幸な人たちの例を次々挙げ、 ・彼らが「自助」出来なかったことを責めるのではなく、 ・人間関係が薄くなり「共助」にも頼れない今、 ・もっと税金を投入して「公助」を拡大すべきだ。 という論調には同意でき…

社会保障改革要、そこまでは同意

2015年発表の本書は、当時流行っていた「ピケティ理論」にも乗って、日本の格差社会を告発してブームを巻き起こした書である。筆者の藤田孝典氏は生活保護や貧困対策に注力するNPO代表で、Web上の論客としても有名だ。 本書は高齢者間の格差が広がり、現役時…

初期のポラロイドカメラ

本書は「刑事コロンボ」全60余話の中でも、ベスト10級の名作と言われる作品。主人公(犯人のこと)が高名なカメラマンであったことと、表紙の絵にある古いポラロイドカメラが重要な役割を果たしていることから、僕の印象に残った作品でもある。 放映は1975年…

山男善人説を覆し

以前「高層の死角」「新幹線殺人事件」を紹介した森村誠一は、初期の6長編が第一期と言われている。今は「棟居刑事もの」などシリーズ作も多いのだが、このころは全て舞台の違う単発ものを発表していた。本書はその中の第五作にあたる。 ホテルマンを10年勤…

Leave Us Alone Coalition

本書も昨年10月末に初版が出たばかりの新書、とはいえこれは貰い物ではなくBook-offの100円コーナーで手に入れたものである。どうしてそんなに新しい本がと思うのだが、2020年11月と書き込みがあり本文中に傍線を引くなどしてあったから100円コーナーに回さ…

マッカーシズムのアメリカ

本書は一作ごとに趣向を変えて読者を楽しませてくれるウィリアム・デアンドリアの第五作。以前紹介したTV業界人マット・コブのシリーズではなく、時代を1951年に設定してマッカーシズム(赤狩り)の時代を描いている。 日本人のよく知らない米国の、ある意味…

大型ノート三冊分の記録

零戦こと零式艦上戦闘機は、その名の通り紀元2,600年(1940年)に制式となった帝国海軍の戦闘機である。その驚くべき航続距離は、広い太平洋で十二分の威力を発揮した。しかし、多少の改造はあったものの後継機に恵まれず、旧式化しながら1945年の終戦まで戦…

隋朝盛衰記

田中芳樹という作者の本は、「銀河英雄伝説」を読んだことがあるだけ。それもTVアニメを見て、興味を持ったからである。「アルスラーン戦記」などの著作もあってサイエンスフィクション作家と言われているが、実は中国史に深い造詣を持ち「岳飛伝」など歴史…

被害者の肖像

いわゆるミステリーベストxxを選ぶと、かつてはベスト30くらいには必ず入っていたのが本書。モスクワ特派員などを経験したジャーナリストが、1950年に発表したものだ。アンドリュー・ガーヴは英国人、本書の前に習作ミステリー数編を発表した後、本格的に作…

製造業DXのクライマックス

菅政権の目玉政策は、デジタル化と脱炭素。昨年末「トヨタ」の豊田章男社長が脱炭素に掲げられた目標の達成は容易ではないと、日本政府にクレームを付けた。僕はエネルギーや環境問題については知識が少ないのでクレームの妥当性は判断できないが、相当の危…

これ無くして、何の人生

本書の著者山口直樹さんは、銀座の日本酒専門店「方舟」の支配人。自ら「酒匠・ソムリエ・バーテンダー」と名乗る、お酒のプロだ。もちろん僕はそんな高級店に出入りできないのだが、著書をBook-offで買って読むのはOKだ。 250ページ余りの中に、ワイン・日…

地中海の異邦人たち

作者のパトリシア・ハイスミスは「見知らぬ乗客」(1950年発表)でデビューしたサスペンス作家。1955年に「太陽がいっぱい」でフランス推理小説大賞を受賞、本書(1964年発表)で英国推理作家協会賞外国作品賞を受賞している。米国テキサス生まれの作者だが…

中国と日本のこれから

米国の分断大統領選挙や、欧州・ロシアの混迷についていくつかの本を読んできた。さて残ったエリアがある。アフリカやオセアニアもあるのだが、どうしても中国は避けて通れない。それに日本そのものの問題もある。そんな思いで手に取ったのが本書(2016年発…

組織を率いるための聖書

年末に塩野七生著「日本人へ~リーダー論」を読んで、ああこの人もローマ帝国初期の「小さな政府」を理想とする人だと改めて感じた。来年度予算が106兆円を超えるなど日本がどんどん大きな政府に向かっていくのを、僕は呆然と見送っているだけだ。一方で「公…

組織で生き延びるための聖書

以前ウォルフガング・ロッツの自伝「シャンペン・スパイ」を紹介しているが、彼はモサドの実在した大物スパイである。その紹介文の中にも本書にある「スパイの適格性テスト」のことを書いたのだが、今日はその書「スパイのためのハンドブック」をご紹介しよ…

「オロクジ(死体)はどこだ?」

1962年発表の本書は、エド・マクベイン87分署シリーズの中でも珍しい中編集。ずいぶん多くの作品を紹介していた愛読書なのだが、本書は特に印象に残っているものだ。といって、トリックがすごいとかアクションがすごいというわけではない。87分署の刑事たち…

国名シリーズの終着駅は日本

本書は、エラリー・クイーンの国名シリーズ最終作品である。第9作の「スペイン岬の謎」のあと、突然「中途の家」と来て国名シリーズは中断する。ある評ではこの作品は「スゥエーデン燐寸の謎」とすべきだという話も合ったのだが。そして第11作は最初の題は…

軽妙だが深淵なモノローグ集

脚本家で、舞台・映画・TVドラマと八面六臂の活躍を続ける才人三谷幸喜が、たった5日間の「会議」を描いたのが本書。一代の天才織田信長が明智光秀に討たれ天下統一に暗雲がさしたが、その光秀も討たれ「Beyond信長」を決める場になったのは、戦場ではなく…

とどめはEUそのものの病

フランスや英国の視点から、EUの課題を勉強してきた。多くの国が言うのは「ドイツの一人勝ち・自分勝手」ということ。ユダヤ系フランス人のトッド先生などは、「メルケルのドイツ第四帝国」と呼ぶ。そこでドイツ事情に詳しい音楽家の川口恵美さんの書を読ん…

第三次世界大戦に備えて

中東で、アフリカで、アジアで・・・紛争の種はくすぶり続けている。世界中が相互不信に陥っている印象すらあって、どこかで上がった火の手が世界を覆ってしまうかもしれないと、僕は危惧している。 20世紀、人類は二度の世界大戦を経験した。今世紀三度目が来…

この人も「小さな政府」論者

本書は「ローマ人の物語」など数多くの著作で知られ、紫綬褒章や文化功労章など数々の「勲章」をお持ちの塩野七生さんのエッセイ集。時代的には2005年ころで、世界ではイラク戦争、日本では小泉・竹中改革が進行していた。イタリアに憧れ、イタリアに住み、…

マニピュレーションの研究

本書の作者深谷忠記の作品を、ずいぶんたくさん紹介してきた。とはいえ著作は80冊を越えているので、その何分の一に過ぎないが。作者はもう80歳に近いはずだが、なかなかの健筆である。2010年代になってから、「文庫書下ろし」が目立ってきた。以前紹介した…

情報リテラシーを磨くこと

本書も先月出版されたばかりの本、当初1万部以下の予定だったのが10倍増刷しているという。これも著者ではないが関係者から廻してもらって読んだ。米国在住の病理学者峰博士に、編集Yことジャーナリストの山中氏がSkypeでインタビューしてまとめたものであ…

クリスマスの教会バザー

本書は、ジル・チャーチルの「主婦探偵ジェーン・ジェフリイもの」の第二作。前作「ゴミと罰」でコミュニティへの通いの家政婦殺しを解決したジェーンが、ふたたび殺人事件に巻き込まれる。ジェーンと親友シェリイは、協力してクリスマスの準備に忙しい。彼…