新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「基地の島・自然の楽園」の真実

僕ら夫婦も大好きな国内旅行先である沖縄、何がいいかと言うと、温暖でアロハで過ごせるところと、物価の安さ。僕は前者が、家内は後者が気に入っている。定宿のある宜野湾市は普天間基地を抱えていて、早く移転が完了してほしいと思ってもいる。 本書は2015…

探偵小説のすべてを盛り込み

戦後、日本は一種の探偵小説ブームになった。それまで世情を不安に落とすという軍部の意向で、発禁扱いだったのが解禁されたからだ。捕物帳などに逃げていた作者の復活もあったが、横溝正史や本書でデビューした高木彬光などの本格作家が登場したこともある…

BIの具体的な試算

昨日、一昨日と新しい分配の在り方についての書を紹介した。 ・井手英策「欲望の経済を終わらせる」 ・井上智洋「現金給付の経済学」 どちらもが取り上げていたのが、BI(ベーシック・インカム)の議論。前者は<維新の会>が主張するBIでは、消費税率を62%…

反緊縮加速主義の提案

本書は以前「人工知能と経済の未来~2030年雇用大崩壊」を紹介した、新進の経済学者井上智洋准教授の最新(2021年)研究。「人工知能・・・」で、AI時代にはBI(ベーシックインカム)が必要との主張をしていた筆者は、その後の「COVID-19」禍で、2030年に来るべ…

反新自由主義の研究

本書は、以前「リベラルは死なない」で旧民進党の制作ブレーンであることを示した慶應大学井手英策教授の近著(2020年発表)。著者は反新自由主義の研究者で、本来「頼り合う社会」であるはずなのに、フリードマンやハイエクらの影響で世界経済が互酬、再分…

五木流、人生100年時代の計

昨日、大前研一氏の「人生100年時代、自ら働き方改革をしてエクセレント・パースンになれ!」という書を紹介した。プロとしての生き様には参考になることも多いのだが、本書はもう少し内省的な「100年時代の計」。 著者の五木寛之氏は(紹介するまでもないが…

大前流、人生100年時代の計

本書は、経営コンサルタントの大前研一氏が「COVID-19」禍が始まった2020年の夏に、「個人が企業を強くする」という単行本の内容を加筆・訂正し、新書化して再出版したもの。もうじき80歳になろうという著者だが、舌鋒はますます鋭い。 テレワークに関して「…

海軍第343航空隊「剣」

太平洋戦争末期、圧倒的な質×量の米軍航空兵力に立ち向かえる帝国陸海軍戦力はあまりなかった。陸軍の隼や海軍の零戦では太刀打ちできない戦闘機や爆撃機を米国の技術と生産能力は量産していた。これらに対抗するため多くの試作機が作られたが、役に立ったも…

スペンサーvs.グレイマン

グレイマン(灰色の男)といってもマーク・グリーニーの描くコート・ジェントリーではない。もし相手がその男だったら、いかにスペンサーがタフガイでも、側にホークが付いていても命は助からない。ここで登場するグレイマンは、これまでスペンサーもので何…

インドの勢いと内在する課題

中国包囲網としての「QUAD」に加盟しながら、ロシアに制裁を加える米国主導のG7に背を向けて、ロシア主催の「BRICS」に加わるインド。もうじき人口で中国を抜くだろう超大国インドの動向は国際社会の注目の的だ。しかし僕自身この国のことを良く知らないので…

長十手の岡っ引き

笹沢左保著「木枯し紋次郎シリーズ」で手に入ったものは全部読んでしまい、しばらく作者にもご無沙汰だったのだが、今回本書が手に入った。作者には多くの時代劇シリーズがあるが「紋次郎」ほど有名なものは少ない。僕自身も「紋次郎シリーズ」を最初に紹介…

「シリアの友」たちの優柔不断さ

2017年発表の本書は、東京外国語大学教授の青山弘之氏(東アラブの政治・思想・歴史が専門)が、21世紀最大の人道危機と言われたシリア紛争を紹介したもの。日本ではこの地域のことを知ることができる書物は多くなく、今回はシリアという国について勉強させ…

証拠しか相手にしない

以前「死の冬」を紹介した「CSIニューヨーク」の邦訳第二作が本書。原本となったのは、2009年に放映されたCBSのTVドラマである。科学捜査班の活躍を描く人気のドラマで、本家はラスベガス、スピンアウトとしてマイアミとこのニューヨークがある。ニューヨー…

「COVID-19」禍半年で見られた変化

2020年7月発表の本書は、主として月刊「Voice」に掲載された15の論考(書き下ろしであったり、インタビューをまとめた)を束ねたもの。全体として何かの主張に結び着けようというものではなく、多様な分野の学者、評論家、作家、コンサルタントなどが「COVI…

経済安全保障の特集記事

このブログで「雑誌」を取り上げるのは始めて。週刊誌など、昔は<週刊ベースボール>を買っていた時期もある。空港のロビーなどで<週刊文春>を読むこともあったが、このところはまったくご無沙汰。それなのになぜ<日経ビジネス>を取り上げるかと言うと…

陸軍の技術分野を一手に

光人社のNF文庫「兵器入門」シリーズ、今月は「工兵」である。兵棋演習のコマでは横になったEの文字が付いた分隊コマで、歩兵とスタックして近接突撃を掛けてくると脅威だったのを覚えている。いにしえの話、ローマの軍隊は決して強くなかったが、土木工事…

ジョッシュとフィルの第二作

昨日「そして殺人の幕が上がる」を紹介した、ジェーン・デンティンガーの第二作が本書(1984年発表)。前作に引き続き、女優兼演出家のジョッシュ・オルークと、ニューヨーク市警部長刑事のフィル・ジェラルドが探偵役を務める。 二人は前作の事件で知り合い…

いっときだけの「家族」

1983年発表の本書は、ミステリーが好きで後にはミステリー専門の書店まで経営するという傾倒を見せた女優ジェーン・デンティンガーの作品。ニューヨーク・ブロードウェーの演劇界を舞台にアラサー女優ジョスリン・オルークが探偵役を務めるシリーズの第一作…

死刑判断は法律論にあらず

2012年発表の本書は、東京地裁などの裁判官を経験して現在は弁護士である森炎氏の著書。裁判員制度施行後3年経ち、死刑判断に変化が出ていることを論考したもの。有罪・無罪だけではなく、量刑まで裁判員が決めなくてはならない。死刑判決を下すにあたり、…

1800年代後半のロス・アンジェルス

小学生の時、お正月など少し長い休みに子供たちだけでゲームをしていた。高学年になってからは「Bankers」のようなものだったものだったが、低学年の頃はカルタのようなものだった。その中で覚えていたのが、当時TVドラマでやっていた「怪傑ゾロ」をモチーフ…

大酒のみで気弱な若者

これまで何冊も紹介しているが、本書も津村秀介の「浦上伸介もの」の未読の1冊。アリバイ崩しの名探偵浦上伸介は、作者の第五作「山陰殺人事件」でデビューし、本書(1985年発表)でレギュラーの地位を確立した。そんな記念すべき作品なのだが、長年手に入…

迷える子羊が歩く美食の道

昨日「添乗員が参照するヒミツの参考書:魅惑のスペイン」を紹介した。面白かったのだが、バスク地方を始めとする北スペインの記述がないのが、残念だった。そこで、ちょっと趣旨は違うけれど北スペインを歩いた記録である本書を探してきた。著者の小野美由…

アフリカはピレネーより始まる

本書は、先月「ドイツものしり紀行」を紹介した紅山雪夫氏の紀行、スペイン編。1997年トラベルジャーナル社より出版された「スペインの古都と街道」を改題、文庫化したものである。馴染み深いドイツと違い、僕ら夫婦のスペイン体験は一度だけ。 マドリードの…

<バイオプレパラト>元幹部の証言

1999年発表の本書は、元ソ連の生物兵器製造組織<バイオプレパラト>の幹部だったカザフ人、ケン・アベリック(現地名カナジャン・アルベコフ)が、自らの経験を綴ったもの。著者はソ連崩壊時には陸軍大佐の地位にあり、ツラレミア(野兎病)菌を兵器化した…

MI6に学ぶインテリジェンス

2020年発表の本書は、国際ジャーナリスト山田敏弘氏が、引退したスパイらにインタビューしてまとめた「インテリジェンス教本」。題名はセンセーショナルに付けてあるが、サイバー空間を含めて日本のインテリジェンス能力やリテラシー向上の方向性を示したも…

ロンドンのパートタイム殺し屋

英国作家サイモン・カーニックは、本書(2002年発表)がデビュー作。以後、特にレギュラー主人公を持たずにクライム・サスペンスを書き続けている。本書の主人公デニス・ミルンはロンドン警察の巡査部長。警察に入って十数年で、30歳代半ばの独身男だ。 若い…

<ジャンクタウン>の幽霊

1968年発表の本書は、これまで2作品を紹介したリリアン・J・ブラウンの「シャム猫ココシリーズ」の第三作。なんとか<デイリー・フラクション紙>に職を得たベテラン記者ジム・クィララン。相変わらずカネには困っていて、<ココ>と<ヤムヤム>という2匹の…

古代のシミュレーションゲーム

僕のゲーム好きは小学生時代からのもの。最初は「バンカース」などをしていたのだが、高学年のころから将棋を始めた。当時若手売り出し中の九段が書いた5冊組の教則本を片手に、コマをいじくっていた。中学時代が興味のピークで、その後麻雀や囲碁に移って…

専制・絶対王政に拘った結果

1917年の今日7月16日は、ロシアの最後の皇帝ニコライ二世とその家族が処刑された日である。ロシアは欧州の後進国と見られていたが、19世紀末から急激に国力を増し、大規模な陸軍だけではなく、巨大な海軍をも保有するに至った。しかし革命で民主主義を確立…

中国・韓国に毅然と対する

2020年春に出版された本書は、ジャーナリスト櫻井よしこ氏が自らキャスターとして放映した番組内容を書籍化したもの。放映時期は2019年度下期で、6章(つまり6回放送分)が収められている。放映された番組はYouTubeチャンネルで、「櫻LIVE 君の一歩が明日…