新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

高速スパイ機パイロットを守れ

スカンジナビア半島の北端、そこは完全に北極圏で日本人には馴染みのないところだ。ここが歴史に登場するのは、第二次世界大戦中ナチスドイツと戦うソ連へ連合国が物資援助をする船団を送った時である。輸送船にはM4シャーマンやM3ハーフトラック、小火器、…

本格ミステリへのこだわり

佐野洋、本名丸山一郎。1928年東京生まれ、読売新聞の記者をしていた1959年に本書を書き下ろし、ミステリ文壇にデビューしている。ミステリ作家を職業とするつもりは当初はなかったようで、新聞社にはそのまま勤務している。ペンネームの由来も、「社の用」…

ディープサウスでの心理捜査

大学生活初期までには、ミステリー1,000冊を読破したと豪語した僕(ほかに誇れそうなものは何もないので・・・)だが、苦手な分野というのはある。行動派といえば聞こえはいいが、暴力派に近い低俗なハードボイルドは苦手だ。しかし、それよりもっと苦手なもの…

時代が捨てた人、求めた人

本書は「三人の戦争指導者に見る政戦略」と副題されていて、第二次世界大戦の戦争指導者3人(ヒトラー、チャーチル、ローズベルト)を、その戦略眼や政策実行力を評価したものである。3人と言ってはいるが、ヒトラー、チャーチルに各100ページを割いている…

首相の「師・友・秘書」

若くして政治を志し、僕らには分からない苦労を背負って政治家/国会議員を務めるなら、目標は大臣さらには総理大臣なのだろうと思う。首相のイスへの長いレースはもちろん、幸いにもそのイスに座ってからも孤独な闘いは続く。そんな日々を支えてくれるのは…

大人の童話ミステリー

クレイグ・ライスは、アメリカの女流ミステリー作家。ユーモアとペーソスにあふれる作風で、独特の地位を築いた。その特徴が非常に良く著わしているのが本書。原題の「Home Sweet Homicide」は、もちろん「Home Sweet Home」のもじり、Homicideというのは殺…

マルコ殿下、日本初登場

ジェラール・ド・ヴィリエの連作小説、プリンス・マルコシリーズ。第一作「イスタンブール潜水艦消失」以降、年間4作のペースで発表されている。本書は、1978年の発表。僕はこのシリーズを昔ある程度読んだのだが、40年経って三軒茶屋のBook-offで40冊ほど…

可哀そうすぎアルバート・サムスン

インディアナポリスの心優しき私立探偵アルバート・サムスン、「A型の女」でデビューした彼はこれまで6作の長編で探偵役を務めた。「インディ500」くらいしか目立った話題のない地方都市で、地味に探偵業を営んできた。銃はもたず、暴力を振るう事もない。…

グリンゴ、スペンサー

前回中国からの不法移民の中に芽生えた犯罪組織と戦ったスペンサー、今度はヒスパニック系の犯罪組織との闘いである。今回の舞台はボストンの北の街プロクター、これも架空の街ではないかと思う。本書の発表された1995年は、日本ではバブルが崩壊しかけてい…

民主党政権、2020の悲劇

本書はいわゆる「架空戦記」とは一線を画した、ヴィヴィッドな政治ドラマである。著者の中村秀樹は、潜水艦「あらしお」艦長など主に潜水艦畑を歩んだ海上自衛官(最終階級は二佐)、「本当の潜水艦の戦い方」などの著書がある。これは入門編の軍事的な解説…

二つの大戦間に跳梁した犯罪者

以前「あるスパイの墓碑銘」を紹介した、エリック・アンブラーの第五作「ディミトリオスの棺」は長らく手に入らなかった。僕にとっては「名のみ知られた名作」のひとつである。先日例によってBook-offでみつけ、カバーもなくページの中まで日焼けが進むなど…

中国人不法入国者の街

ロバート・B・パーカーのレギュラー主人公スペンサーのホームグラウンドは、ボストン。アメリカ合衆国発祥の地とも言える、東海岸の港町だ。僕も10余年前、年間3回通ったことがあり、当地で食べるエビやカニ、あるいはクラムチャウダーなどの海の幸を楽しん…

伊賀者、甲賀者のルーツ

徳川家康が石田三成らと戦った有名な「天下分け目の一戦」は、岐阜県関ケ原町一帯で行われた。古来このエリアは北国街道、伊勢街道、中山道が交わるところ、交通の要衝であり過去にも一度「決戦」の舞台となったところである。その闘いとは「壬申の乱」。白…

ベルギー人の愛国心

「ザイール共和国」という名称は、1971年~1997年の間モブツ・セセ・セコ大統領がこの地を統治していた時期のもので、現在はコンゴ民主共和国という。さらに昔の呼び方は、「ベルギー領コンゴ」であった。ベルギーは欧州では小国だが、コンゴのような広大な…

難しいミステリー手法

深谷忠記という作家は才人である。理系(化学)の出身ゆえに、DNAをモチーフにした作品にも迫力がある。その一方で、日本の歴史にも詳しく「歴史推理もの」も書いている。特に本書は、柿本人麻呂と山部赤人が同一人ではないかとの謎に挑んだもので、大変…

さよならトーマス

・・・といっても機関車の話ではない。先月倒産した英国の旅行代理店の老舗「トーマス・クック社」のことである。ちょうど先月英国に出張していたこともあり、感慨深いものがあった。出張時にも「Brexit」の議論をしていたので、その余波がついに企業倒産の引き…

再びチムニーズ荘にて

本書は女王アガサ・クリスティーの長編第9作、1929年発表である。「明るいスパイもの」が大好きのクリスティー、第8作まで3作連続ポアロもので地歩を築いてきたのだろう、ここでまた書きたいものを書いた。舞台は4年前の「チムニーズ荘の秘密」と同じで…

18歳、エドの成長物語

最近あまり見かけない作家のひとり、フレドリック・ブラウンのかつての人気シリーズ「エド・ハンター」ものの第一作が本書。エド青年はカーニバル暮らしだが、たびたび事件に巻き込まれ伯父のアンブローズ・ハンターと共に探偵役を務める。このシリーズは7…

KGBのスリーパー

ジャック・ヒギンズの諸作は、第二次世界大戦終盤を舞台にした「鷲は舞い降りた」「鷲は飛び立った」から現代まで、連綿と続く大河ドラマのようなものだ。「鷲は舞い降りた」でチャーチル誘拐を狙うドイツ将校シュタイナー少佐を助けたIRAの闘士リーアム…

スパイは紳士のお仕事

CIAの業務委託でリーツェン城の修復資金を稼いでいる、神聖ローマ帝国第18代大公のマルコ・リンゲ殿下。その冒険の多くは発展途上国でのものなのだが、今回はウィーンから至近のロンドンでの活躍である。米ソ冷戦も終わりに近づいていた1977年発表の本書では…

相棒は女子大生

津村秀介のアリバイ崩しシリーズ、レギュラー探偵はルポライターの浦上伸介である。長編5作目の「山陰殺人事件」でデビューし、以後ほとんどの作品に登場する。彼のことは、「印象の薄い名探偵」として紹介してから何度か取り上げている。 このシリーズ、「…

トム・クランシーの遺作

戦闘級のチャンピオンであるマーク・グリーニーをパートナーに、よりリアルな国際紛争小説を発表してきたトム・クランシーは、2013年に急逝した。66歳だった。事実上の遺作となったのが、本編「米中開戦」である。ただ、実際に両国が宣戦布告しての全面戦争…

ジュブナイルの思い出

僕が子供の頃にはルパン三世もコナン君もいなかったから、少年たちがよく読んでいたのはホームズもの、ルパンもの、明智小五郎と少年探偵団の活躍する子供向けの本だった。挿絵も多く、漢字が少なく、もちろん抄訳たっだと思われる。 何冊か読んだはずなのだ…

戦略兵器としての石油

マルコ殿下、ひさびさのアメリカでの活躍である。といっても冒頭は平和な殿下のお城「リーツェン城」でのパーティシーンから。CIAから貰う命の代償の資金で荒れ果てた城は少しづつ復旧、殿下も住めるようになりパーティも開けるようになった。 殿下自身も…

87分署、皆殺し計画

前作「稲妻」の最後に、「ヤツが帰ってきた」と87分署の刑事たちが青くなるシーンがある。すでに3度、キャレラ刑事たちを窮地に陥れ、一度は主人公のキャレラに散弾銃で重傷を負わせた男「デフ・マン」が帰ってきたのである。 そもそも「稲妻」の冒頭から、…

真剣師連続殺人事件

おなじみ浦上伸介シリーズの比較的初期の作品(1986年発表)の本書だが、浦上や先輩格の相棒「毎朝日報」の谷田編集長が大好きな将棋の世界の事件である。浦上はアマ二~三段、谷田は四段で将棋クラブに通う棋力。今回の事件の中心人物たちは、それをはるか…

87分署もの、欠けた輪

最後のエド・マクベイン87分署シリーズ「凍った街」を読んでから、ずいぶん時間が経った。全部で56作あるこのシリーズ、学生の頃に読んだのは30作目までくらいだった。それを数年前から少しづつBook-offで買い集めて来て読んでいるのだが、第37作「稲妻」が…

良いおまわりになるためのクイズ

マイクル・Z・リューインのアルバート・サムスンシリーズを1冊を残して読んでしまったので、もうひとつのシリーズであるパウダー警部補ものを買ってきた。パウダー警部補はインディアナポリス警察のベテラン刑事。サムスンものにも、ちょい役で出てきたこ…

不器用なドイツ人

ドイツ好きの僕たち夫婦、この数年平均年一度はドイツ旅行をしている。アパートメントの部屋や列車の中、ショッピングセンターにも面白メカは一杯ある。最初にドイツに仕事で滞在していたころ、窓の開け方を見てびっくりした。レバーが下に向いていると閉ま…

英国海軍のゲリラ戦

ダグラス・リーマンは、海の男の物語を多く残した作家である。彼は第二次世界大戦中、実際に船団護衛等の任務に就いた英国海軍軍人。アレクサンダー・ケント名義で、ナポレオン時代の英国海軍軍人リチャード・ボライソーを主人公にしたシリーズが30冊ばかり…