新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

闘う空の脇役たち

以前「あっと驚く飛行機の話」の中で、第二次世界大戦での軍用機に関するコメントを紹介したが、対象が膨大なのでとても書ききれるものではない。このテーマで二冊目に紹介したいのが本書「忘れられた軍用機」である。 本書には42機の各国の軍用機が紹介され…

命を懸けた人たちの手記

本書は光人社NF文庫に2015年に加わったものだが、元稿は雑誌「丸」に掲載されたもので、ほとんどを実際に操縦槓を握って命のやり取りをした人が執筆している。23編の記事の内、1編が対談、1編が編集部による「未完成機の特集」だが、取り上げられている戦…

米国vs.全世界の大海戦

本書は「海の架空戦記作家」横山信義が、本当に書きたいものを書いたシリーズの1作。第二次世界大戦はどう転んでも日本に勝ち目がなかったことは、何度も紹介している。それでも架空戦記作家たちは、工夫をを凝らして、 ・なんとか善戦できるように ・あわ…

市民運動出身の首長

20世紀の終わりごろ、TVで政治討論番組をよく見ていた僕には、自分からは遠い政党でありながら気になる政治家が2人いた。一人は先週「東電福島原発事故、総理大臣として考えたこと」を紹介した、当時社民連の菅直人議員。もう一人が社民党の保坂展人議員。…

伸介登場前の社会派ミステリー

1979年発表の本書は、アリバイ崩しの巨匠津村秀介のデビュー第三作。第五作「山陰殺人事件」で登場するレギュラー探偵浦上伸介の前には、作者は所轄の警官を探偵役に社会派ミステリーを書いていた。作者が<週刊新潮>で<黒い報告書>を連載していた事件記…

クイーンが見いだしたキング

1958年発表の本書は、以前「不変の神の事件」を紹介した本格ミステリー作家ルーファス・キングの短編集。日本ではなじみの薄い作家なのだが、編集者エラリー・クイーンが、ミステリー短編集の歴史とも言うべき「クイーンの定員」を選んだうちに入っていて注…

おもちゃ箱をひっくり返したよう

本書も三野正洋の「小失敗」シリーズの1冊、対象はヒトラーの軍隊である。副題に「第二次世界大戦戦闘・兵器学教本」とあるように、軍事思想を中心にした日本軍篇とは異なり、兵器の開発や運用が主な話題である。ただ冒頭、第一次世界大戦に学ばなかったと…

言霊論から見た原発事故

昨日、福島原発事故の「時の総理」菅直人氏の著書で「最悪の事態を考える」ヒントをもらったことを紹介した。同じく2012年発表の本書は、「逆説の日本史」で言霊論を展開している作家井沢元彦氏の視点で見た原発事故の背景。とはいえ、その件は全体の1/3、残…

戦後日本最大の危機

サイバーセキュリティ業界では、最近「最悪の事態を考えたリスク管理」の議論をしている。10月末にNHKBSで放送された「カトリーナは人災」のドキュメンタリーは、大変参考になった。さらに今回は戦後日本最大の危機といえる、東日本大震災とそれに伴う福島第…

沼沢地の町イーリーの事件記者

本書で2002年に文壇デビューしたジム・ケリーは、いくつかの新聞社を渡り歩いた記者。1987年にはその年の最優秀経済記者にも選ばれているが、1995年にノンフィイクション作家の妻と共にロンドンを離れ、本書の舞台ともなっているケンブリッジ州の小さな町イ…

有史2,600年、先人の知恵

本書は松村劭元陸将補の「戦争学シリーズ」の第三作、2,600年間の軍事史や20世紀の軍事革命を綴った前2作に続き、戦争学の理論を名将の言葉を借りて紹介したもの。野党や一部メディアは日本の軍事費について「削減して福祉等に廻せ」と言うが、 ・軍事費ほ…

在デリー高等弁務官の死

1984年発表の本書は、英国推理作家協会(CWA)賞新人賞受賞作。作者のエリザベス・アイアンサイドは英国生まれで、欧州各地やインドを巡り歩いたと解説にある。今や人口で中国を抜く大国インドだが、その国土の広さも半端ではない。作者がインドで暮らした3…

「絶望社会」先進国の肖像

前の文政権が検察力を弱めようとして警察に肩入れし、今の尹政権が検察復権を目指して警察をスポイルした。その結果、梨泰院の事件がより多くの犠牲者を出したという。死者のほとんどは若者、特に女性が多かった。 2020年発表の本書は、在日三世のライター安…

三位一体の食卓へ

先々月「ワインの便利手帳」、先月「イタリアの食卓・おいしい食材」を紹介した。僕ら夫婦も、ただワインをガブガブ呑んでいる時代は終わり、本当の美味しさを味わう(人生の)時期に来ている。だから勉強を始めているのだが、ワインの選び方・味わい方を知…

日本でペリー・メイスンは育つか

昨日佐々木知子著「日本の司法文化」を紹介して、検挙率95%、無罪率0.1%という日本の犯罪捜査や裁判の状況をご紹介した。ゴーン被告人の肩を持つつもりはさらさらないが、これほど「超精密」な司法文化では法廷弁護士の役割は目立たない。そこで検察から見…

超精密司法の国の検察

あえて題名は言わないが、TVの検察ものドラマを見ていて「ちょっと外れすぎ」だと思った。確かに「型破りな検事が・・・」と宣伝されているが、いくらなんでも日本の検察官には見えない。そこで10余年前に読んだ本だが、本書(2000年出版)を本棚から出してきて…

混沌へと向かう米国と世界

「COVID-19」禍の2020年末発表の本書は、笹川平和財団上席研究員渡部恒雄氏の「トランプ以後」の国際情勢論。サイバーセキュリティや経済安全保障の観点から、国際情勢のお話を一度伺いたいと思っていて、その予習のために買ってきたものだ。筆者は米国の戦…

Crime Impossible

1972年発表の本書は、デビュー作「やとわれた男」や悪党パーカーシリーズを紹介しているドナルド・E・ウェストレイクの、パーカーものとは違うシリーズの1作。これも犯罪者が主人公で、カネの話が中心になるのだが、パーカーものよりはすこしユーモラス。あと…

4重のアリバイ工作

斎藤栄は東大将棋部出身のミステリー作家、以前「殺人の棋譜」「Nの悲劇」「奥の細道殺人事件」を紹介している。デビュー作「殺人の棋譜」では将棋タイトル戦の影で進む誘拐事件の捜査を描き、江戸川乱歩賞の候補になった。その勢いを駆って発表(1967年)…

GDPの2%を占める産業

2005年発表の本書は、米国における「トンデモ訴訟」を集めたもの。米国は訴訟社会で、和解金などを含まない純粋な訴訟費用だけで、GDPの2%に達するという。1992年、79歳のステラさんはマクドナルドの熱いコーヒーを膝にこぼしてやけどをした。本人の過失が…

「アルファ碁」に見るAIの深淵

2018年発表の本書は、プロ棋士王九段がAI囲碁について、開発に携わったこともある棋士の立場で、その本質を記したもの。台湾出身の筆者は13歳から日本で暮らし、剛腕の異名をとったこともあると記憶している。 自身の棋風を「ゾーンプレス型」、局地の戦いに…

パンデミックを予言した小説

2020年4月に出版された本書は、「COVID-19」のパンデミックを予言した小説。作者のローレンス・ライトは<ニューヨーカー誌>のスタッフライター。ジャーナリストとして、ノンフィクションや脚本を手掛けたが、1998年の映画「マーシャル・ロー」の脚本を書…

ARPANETから半世紀

2021年発表の本書は、インターネットの過去・現在・未来を「インターネットの父」村井教授と天才プログラマーと呼ばれた実業家竹中直純氏が対談したもの。 1969年に、米国の3大学の研究所をパケット通信網で結んだのが"APANET"。これがインターネットの最初…

嵐の夜の東京壊滅作戦

先月、日本の自衛隊の問題点について、どうすればいいのかの提言をまとめた「令和の国防」まで3冊の書を紹介した。 闘えるようにするには - 新城彰の本棚 (hateblo.jp) 2014年発表の本書は、小説の形を借りて「闘えない自衛隊」の問題点と、その解決策を示…

奇妙な話が大好きな青年貴族

昨年までに、第五長編「毒を喰らわば」までを紹介してきたドロシー・L・セイヤーズの「ピーター・ウィムジー卿もの」。作者はクリケットが得意な青年貴族ピーター卿の登場するミステリーを、長編11、短編21発表している。本書には、5冊ある短編集の中から創元…

嘘も手掛かりのうちなんだ

1940年発表の本書は、以前「幽霊の2/3」や「家蠅とカナリア」を紹介したヘレン・マクロイの「心理探偵ベイジル・ウィリングもの」の1冊。作者は15作のウィリング博士を主人公としたミステリーを書いているが、翻訳出版された順番が発表順と異なり、すべてが…

医師が勧める「死に方」

本書の著者中村仁一氏は、特別養護老人ホームの「配置医師」である。この見慣れない肩書は、行政用語で老人ホームに常勤する医師の事らしい。筆者は本書執筆の時点(2011年)で、すでに12年も社会福祉法人「同和園」でこの職にある。医師の世界には本来ラン…

20年ぶりに買いました

普段、本屋と言えばBOOKOFFしか行かない僕だが、この日丸の内オアゾの書店にふらりと入った。雑誌コーナーを見ると、懐かしい軍事史もの(歴史群像)が健在だった。その隣にあったのがこれ。発行社は(株)ジャパン・ミリタリー・レビュー、発刊1966年。50年…

ナス屋敷のお祭りの中で

1956年発表の本書は、女王アガサ・クリスティの「ポワロもの」。学生時代に多くの本格ミステリーを読んだ僕だが、ヴアン・ダイン、クイーンはもちろんカー、クロフツなどの著作は手に入るものはみんな読んだものの、クリスティの特にポワロものには未読が多…

黒江壮の実家の街

本書はいくつも紹介した、深谷忠記の「壮&美緒シリーズ」の中期(1992年発表)の作品。後にようやく壮が36歳の准教授の時に二人は結婚するのだが、この時点ではまだ29歳。婚約した二人は、初めて壮の実家を訪れる。場所は山口県の萩市、言わずと知れた長州…