2025年発表の本書は、BNPパリバ証券のチーフエコノミスト河野龍太郎氏の日本経済展望。昨日の「ほんとうの日本経済」は政策の中でも作戦/戦術級のものを扱っているが、こちらは戦略級のマクロな視点に立った経済書である。 冒頭、日本経済は生産性が伸びて…
2022年発表の本書は、以前「基軸通貨ドルの落日*1」を紹介した評論家中野剛志氏のインフレを研究した経済安全保障論。ロシアのウクライナ侵攻後の例えば中東紛争は起きていない時期の論考だが、確かに筆者の予測する方向に世界は動いている。 世界的なインフ…
2000年発表の本書は、名匠ローレンス・ブロックの<殺し屋ケラーもの>。以前連作短編集「殺し屋」を紹介(*1)していて、そこに収められているのが1990~1998年の作品だった。本書はその後日談とも言える長編。しかし内容は、ハンドラーのドットが受けてく…
1969年発表の本書は、以前「黄金猿の年」を紹介したコリン・フォーブズのWWⅡ戦記。1940年の5月、ドイツ軍の電撃戦でベネルクス3国やフランス北部が席巻されてしまう。かの地には英国の大陸派遣軍(BEF)もいたのだが、散り散りになりダンケルク目指して撤…
2通目の手紙も失われて、最後の2人がすがったのはもともとの現場に残された金庫。実は金庫は新旧あって、古い金庫に最後の1通が残されていた。ウォーカーが査問委員会メイヤー判事宛てたもので、 ・英国船ルシタニア号の沈没に関する聴聞会を行ったと聴い…
2003年発表の本書は、モンタナ州在住くらいしか情報のない作家ロバート・ライスのデビュー作。米国政府の捜査官の中でもなじみのない郵政捜査官ギリアン・ルーミスを主人公に、郵便局での射殺事件捜査の中で、90年前に投函されながら配達されなかった手紙の…
新刊本の書店に立ち寄ったのは、いつ以来だろうか?ましてや月刊誌を買うなど、本当に久しぶりである。一昨年くらいから東京(といより江戸)下町滞在を始めていて、永代橋のたもとの定宿が気に入っている(*1)。 きっかけは江東区にオフィスを移したこと。…
2022年発表の本書に始まるシリーズ6巻は、大鑑巨砲作家横山信義の架空戦記。WWⅡにおける連合艦隊の相手として英米軍では強すぎるので、作者としては何らかの工夫をしなくてはならない。タイムスリップや宇宙人の秘密兵器のようなSF的手法を採らないとすれば…
2022年発表の本書は、軍事評論家小川和久氏の「地政学リスクの読み方」。以前「日本人が知らない集団的自衛権*1」などを紹介しているが、本書も、 ・日本人は戦争のことを知らない ・メディアも関連したことを報道しない と批判し、ウクライナ紛争と台湾有事…
2025年発表の本書は、以前「憲法の良識」を紹介した憲法学者長谷部恭男教授と、棚橋桂介弁護士、朝日新聞豊秀一編集員の対談本。テーマは安倍2.0政権で成立した、安保法制(集団的自衛権)に対する集団訴訟とその判決である。 安倍総理は「戦後レジームから…
1955年発表の本書は、これまでやや軽めのミステリー<ダルース夫妻もの>を何冊か紹介した、パトリック・クェンティンの文学的なミステリー。発表と同時に大変な好評を得て、ベストテン級の傑作と評価された。 出版社で社長の娘ベッシィの婿として要職にある…
1990年発表の本書は、<木枯し紋次郎シリーズ>で有名な笹沢左保の社会派ミステリー。晩年の作品で、バブルに踊るIT産業界を舞台にした異色作だ。 外資系コンピュータ企業日本WHM社は、2万人の社員を抱え虎ノ門に本社を置く大企業。このところ社員の自殺や…
本書は、以前「マダム・タッソーがお持ちかね」を紹介した歴史ミステリー作家ピーター・ラヴゼイの1983年の作品。作者は本書で、英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞を獲得している。 本書の時代背景は1921年。第一次世界大戦後間もないころで、クリスティ…
2011年発表(2022年新書で再版)の本書は、これまで「イスラム国の正体」「プーチンの正体」を紹介してきた軍事ジャーナリスト黒井文太郎氏の「昭和の陰謀論解説」。WWⅡ以前の満州での謀略・国内も含めたテロ・太平洋戦争中の諜報・復興時の陰謀や黒い霧・高…
今月磯田道史著「江戸の家計簿*1」で、江戸時代の金銭感覚を勉強したのだが、残念ながらお酒や肴の値段が分からない。それでは、と探して見つけたのが本書(2017年発表)。著者の伊藤善資氏はエッセイスト。全国の蔵元1,612箇所のお酒を呑んだとする剛の者で…
2002年発表の本書は、ジャック・ヒギンズの<ショーン・ディロンもの>、以前紹介した「復讐の血族」の続編にあたる。前作でディロンたちに米国大統領暗殺計画を阻止され、3人の兄を殺されてしまったケイト・ラシッドは復讐に燃えていた。ベドウィンの王家…
1932年発表の本書は、毎月1冊紹介している本格ミステリーの技巧派アントニー・バークリーの<名探偵シェリンガムもの>。先月紹介した「最上階の殺人」と並ぶ、このシリーズの傑作との評判がある。 新居に引っ越してきた新婚夫婦が邸内を調べていて、地下室…
1989年発表の本書は、エリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>の第17作。シュルーズベリ修道院の近くにある土地は、ある豪族が所有し1年前まで陶工ルアルドが借りて暮らしていた。しかしルアルドはシュルーズベリ修道院に入り、妻は行方不明になった…
1940年発表の本書は、ジョン・ディクスン・カーの第一短編集。カーのレギュラー探偵と言えば、いずれも大兵肥満のフェル博士とヘンリ・メリヴェール卿の2人でよく似ている。本書に収められた10編中6編には、やはりよく似た体形のマーチ大佐が登場する。 「…
2024年発表の本書は、イランに留学し仕事で長期滞在もした人が、匿名・書下ろしでレポートしたイランという国の実態。匿名でしか発表できなかった内容である。題名は「地下世界」となっているが、イラン社会全体を表現している。 まず経済だが、経済制裁もあ…
1982年発表の本書は、昨日紹介した金子常規氏「兵器と戦術の世界史」の続編。日本での兵器発達史であり、より詳しく戦闘力を殺傷力・移動力・防御力に区分し、戦闘はこの三要素のぶつかり合いによる相手の戦意を潰すことと解説している。 地方勢力が乱立して…
1979年発表の本書は、陸軍士官学校49期砲兵卒、陸上自衛隊で教官を務めた金子常規氏の「世界史における砲兵の変遷」である。伝説のデザイナーであるダニガンによれば「砲兵は戦場の神」である。デジタル化が進んだ現在の戦場でも、その価値は大きく減じてい…
1997年発表の本書は、デボラ・クロンビーの<ダンカン&ジェマもの>の第5作。ダンカン・キンケイド警視と部下のジェマ・ジェイムズ巡査部長は、ようやく親密になってきてジェマの息子トビーも含めた幸せな家庭を考え始めている。しかしそこに水を差す事件…
2022年発表の本書は、<宝島>誌に掲載された記事を再録したもの。14人の著者が16の聖域についてレポートしている。現代日本では大手メディアが「報道しない自由」によって扱わなくなったものがある。本書は、これらを聖域としていたことを暴く記事を集めた…
2011年発表の本書は、香港在住で台湾推理作家協会の海外会員、陳浩基の本格ミステリー。翻訳版で島田荘司推理小説賞を受賞している。舞台は香港、香港警察の許巡査部長が主人公だが、胎児を含む一家3人の惨殺シーンで幕を開ける。複雑な事件ではなく不倫関…
このDVDは、CBSネットワークで1997年に放映された「JAG:犯罪捜査官ネイビーファイル」の第3シーズン。20年以上前にビデオに録画して見ていた番組だが、このシーズンから見覚えがある。 「赤い幽霊船」は、退役して赤さびだらけになった空母「ホーネット」…
ラスティはユーゴスラビア移民の息子。父親はナチの迫害から逃れて、米国に渡ってきた。貧しい生活から、努力して掴んだ検事補の地位だ。子供のころの苦難や、キャロリンの亡霊などが夢に出てきて、彼をさいなむ。そして起訴から3ヵ月後、ついに公判が始ま…
1987年発表の本書は、連邦検察局の現役検事補スコット・トゥローのフィクションデビュー作。ベストセラーとなって、映画化もされた話題作である。地方検察局にはびこる愛憎と野望をヴィヴィッドに描き、主人公の私(ラスティ首席検事補)の眼を通じて、米国…
別ブログでは熱海と東京を「わが町」として紹介している。しかし東京はとてつもなく広く、僕の知らない町の方が圧倒的に多い。そこで本書(2018年発表)を読んでみることにした。筆者の加藤佳一氏はバス旅行の専門誌「バスジャパン」の創刊者。22コース中、…
本書は1905年に短編「十三号独房の問題」でデビューした、ジャック・フットレルとその名探偵<ヴァン・ドゥーゼン教授もの>の第一短編集。以前に第三短編集は紹介していて、有名な<タイタニック号>で未発表原稿とともに沈んだ悲劇の作家であることはご承…