新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

スペンサー、撃たれる!

1997年発表の本書は、前作「チャンス」同様いままで手に入らなかった作品で、ある日Book-offで運良く見つけたもの。ロバート・B・パーカーのスペンサーものはとてもスピーディな展開と、ホークをはじめとするタフガイたちのアクション、スーザン(&パール)と…

松沢流東京再生計画

本書の著者松沢成文参議院議員(維新の会)には、神奈川県知事時代に一度パネルディスカッションをご一緒させてもらったことがある。場所は茅ヶ崎市、テーマは東海道新幹線が相模川を渡るところに、新幹線の新駅を作ることだった。他の駅間に比べて新横浜~…

いや、それがスペインさ

本書は、第一作から第三作までをご紹介した、ポーラ・ゴズリングの第五作。じゃあ第四作はどうしたと聞かれそうだが、別名義の普通小説らしいのでパスした。毎回思い切って作風を変える作者だが、今回はスペインという国とそこに住む異邦人を、本格ミステリ…

まだ「一億総中流」だったころ

本書の著者飯田経夫教授は、僕の母校で有名な経済学者。たまにノーベル賞学者がでる大学だが、全部理系。文系で有名な先生は、この人くらいかなと思う。僕の学生時代も教鞭を取っておられたのだが、僕自身は受講したことはない。サークルの同僚が、経済学部…

<咳止めシロップ>を嗜む町

2012年発表の本書は、米国南部ルイジアナ出身のジャナ・デリオン作の「ミス・フォーチュンもの」の第一作。作者はいくつものシリーズを書き分けているが、大半はルイジアナ周辺が舞台。本書に登場する架空の町シンフルには、バイユーと呼ばれる濁った川が通…

アニメ風バイオレンス

レイバンのようなサングラスをかけ、拳銃を持った男のアニメが表紙を飾る本書、作者のジム・ケイスは米陸軍のOBだという以外はわからないと裏表紙に紹介がある。著作は50冊に及ぶというし、本書もシリーズの第一作という位置づけだ。 表紙の男が主人公のジョ…

「正義の石臼」を挽く労働者

本書(1993年発表)は先日紹介した「密造人の娘」に続く、マーガレット・マロンの「デボラ・ノットもの」の第二作。前作に登場したデボラの周りの人たちが再び登場し、その枠も広がっている。 前作で6月の地方判事選挙に敗れて2位に終わったデボラだったが…

市民財団所長ジェニー・ケイン

1980年代には米国で、女性を探偵役にした女性作家が何人もデビューしている。 ◇サラ・パレツキー V・I・ウォーショースキーもの ◇スー・グラフトン キンジー・ミルホーンもの 彼女らに少し遅れ1985年に本書でデビューしたのが、ナンシー・ピカードである。作者…

志津三郎兼氏の長脇差

前の短編集でおもわぬ名探偵ぶりを発揮することになった木枯し紋次郎だが、本書では危うく(?)渡世から足を洗いそうになる。すでに20年近く放浪の旅をしていて、特に20歳を過ぎてからは、血を見ないでは終わらない事件にばかり巻き込まれている紋次郎であ…

救いのない物語は始めから

1950年発表の本書は、以前「殺意の迷宮」「11の物語」を紹介したサスペンス作家、パトリシア・ハイスミスのデビュー作である。普通ミステリー作家は、ホームズやクィーンもしくはマーロウなどの探偵ものを読んで、ミステリーを書こうとするものだ。しかし作…

真の教育改革への第一歩

今日、海の日から高校生までの子供たちは夏休みが始まる。別に「COVID-19」のせいだけではなく、日本の教育制度は難しい面が多い。 ・大学を出ても社会人として通用しない人も多い。 ・大学の奨学金の重さに耐えかねている社会人。 ・増えすぎた大学と「水増…

「COVID-19」対応に見る日本の病理

本書は感染症専門医で「ダイアモンド・プリンセス号」に乗り込んで、その実情をYouTubeに公開した岩田健太郎医師が、2020年3月に緊急出版したもの。「COVID-19」とは何かから始まり、巷間言われる感染対策のうち意味のあるもの・ないものを示したうえで、危…

最大の脅威は日本の経済力

バイデン政権が明確に「ライバルは中国」と名指ししたが、その少し前は「Pax Americana」の時代だった。1980年代に米ソ冷戦は解消に向かい、ライバルはいなくなった。しかしソ連の凋落・軟化と同時に、新しいライバルの芽が出てきたことはある。それが日本。…

大物スパイを巡る闘い

本書は1980年発表、東西冷戦はそろそろ終わりを迎えるころなのだが当事者にはそんなことは分からない。軍事の競争もそうなのだが、諜報戦もピークに達していた。この時代を裏の裏から描くことができるとすれば、マイケル・バー=ゾウハーは最高の作家といっ…

デストロイヤーの誕生

頭のどこかで「サピア&マーフィー」という共同作者名を覚えていた。何を読んだのか、どんなストーリーだったのかも覚えていない。ところがある日、いつものBook-offで本書を見つけた。著者名は「ウォーレン・マーフィー&リチャード・サピア」となっている…

帝都大学物理学教室湯川助教授

本書は1996年以降に「オール読物」に掲載された短編5編を収めたもの。東野圭吾の「湯川学もの」最初の短編集である。帝都大学理工学部物理学科の助教授湯川学のところに、大学時代のバドミントン部仲間で今は警視庁捜査一課の刑事をしている草薙がやってき…

マット・コブの育った町

本書はW・L・デアンドリアの第五作、TV局<ネットワーク>のトラブル担当マット・コブが登場するシリーズとしては第三作にあたる。マットは同社で一番若い重役、これまで2つの事件でも、会社の危機を救ってきた。しかしこれまではTV業界の裏話はたくさんあっ…

CNBC "Disrupter50" に学ぶ

デジタルを始めとする先端技術が、社会を変えつつある。スタートアップ企業が価格破壊や価値創造で、業界地図を塗り替えることも珍しくない。米国のニュース専用放送局CNBCは、毎年業界構造の破壊者(Disrupter)たりうる企業50を紹介していて、本書はその20…

このシーズンだけ18話

このDVDは、ご存じNCIS(ネイビー犯罪捜査班)のシーズン5。通常は1シーズン24話がDVD12枚に収められているのだが、このシーズンだけは18話でDVDも9枚に過ぎない。特典映像「シーズン5の見どころ」に出てきたベリサリオ総監督も、その理由については説明…

富の基準は家畜と奴隷

本書は以前紹介した「死をもちて赦されん」でデビューした、修道女探偵フィデルマものの短編集である。作者ピーター・トレメインは実はイングランド生まれ、アイルランドでの記者生活を経て作家デビューをしている。別名義で冒険スリラーなど書いていたが、…

株式会社3.0を目指して

2017年発表の本書は、「公益資本主義」を掲げて安倍内閣からの諮問で「目指すべき市場経済システムに関する専門調査会」の会長代理を務めた経済人、原丈人氏の手になる者。著者はシリコンバレーでベンチャーキャピタリストをし、英米型の資本主義に限界を感…

変格作家の正統サスペンスもの

これまで「目撃者を探せ」「探偵を探せ」「被害者を探せ」の3作を紹介しているネブラスカ州生まれの女流作家パトリシア(パット)・マガーはユニークな変格ミステリー作家である。探偵が犯人を捜すのではなく、犯罪はあったのだが特殊なシチュエーションで…

「安い国」で暮らすということ

先月後半から、日経新聞が「安いニッポン」と題した連載を始めた。その主張はおおむね本書のそれに沿ったものだ。2019年末に「年収1,400万円は低所得」とする記事が出たが、IT産業らが隆盛な西海岸ではある意味当然のこと。これに反して日本は「年収1,200万…

温故知新の政治学

昨日、竹中教授の平成時代を俯瞰した書を紹介したが、本書も平成時代を総括したものである。「サンデープロジェクト」や「朝まで生TV」の司会でお馴染みのジャーナリスト田原総一朗氏と「ミカドの肖像」などで知られ元東京都知事でもある作家の猪瀬直樹氏の…

「激変の平成」を俯瞰する

「小泉・竹中改革は格差を広げ、貧しい日本を作った」と何人かの評論家が言う。僕は竹中先生には直接薫陶を受けているからだけではなく、この批判は当たらないと思っている。では竹中先生は、改革とその前後をどう総括しておられるのか、令和の時代にはどう…

読んでから振るか、振ってから読むか

本書は以前「海から見た日本の防衛」を紹介した、松村劭元陸将補の初心者向けの軍事解説書。表紙にビデオゲームのイラストが描かれているが、決して軽めの読み物ではない。発表は1995年で、家庭用ビデオゲームが大流行し、その中には「大戦略」などシミュレ…

ネット時代の旧メディアの姿勢

2020年発表の本書は、ニッポン放送で「OK! Cozy up!」を担当するパーソナリティ飯田浩司氏の初の著作。スポーツ中継をしたくて入社した放送会社で、制作部への配属から現場の記者、ラジオパーソナリティなどを通して、著者なりのメディアのあり方を述べた書…

シャロン・テート事件の20年後

本書は、「放映されなかったコロンボもの」のひとつ。以前「13秒の罠」もそうだと紹介している。その作品は、いつものW・リンク&R・レビンソンではない作者だった。本書はいつもの二人に加えて、ウィリアム・ハリントンが著者欄に名を連ねている。恐らくはこ…

連邦司令官ジョーンズ、2002

なんとも不思議な物語である。以前短篇集「地図に無い街」、長編「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を紹介したSF作家、フィリップ・K・ディックの初期の長編が本書(1956年発表)。時代は1996年から始まるが、第二次世界大戦後地球上で中ソ対西側諸国の核戦…

新聞の劣化と週刊誌の矜持

今年初めには総務省(旧郵政省)の複数の幹部が吹き飛ばされてしまった「文春砲」、その件に限らずスクープ記事を連発しある種の人達を戦々恐々とさせていると思う。その「週刊文春」が常に目標としてきたのが「週刊新潮」、その2誌の考え方や取材方法、過…