新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

海洋国家日本再生へ(前編)

本書は僕が多くの軍事知識を貰うことができた、松村劭元陸将補著の海戦史。著者は陸上幕僚部、防衛研究所を経て陸上自衛隊西部方面部防衛部長で退官された、戦略・戦術研究、情報分析の専門家。数々の著書があり、以前「海から見た日本の防衛」「戦術と指揮…

蔵王温泉周辺でのアリバイ

本書(1969年発表)は、「本格の鬼」鮎川哲也の鬼貫警部もの。まだ新幹線は東海道だけ、長距離電話も地方によっては交換台を経由してという時代の作品である。舞台は芸能界で、クラシック歌手の鈴木久美子とピアニストの夫重之の夫婦喧嘩から物語が始まる。1…

政治は熱量、ではどう評価する

4年ぶりの総選挙が始まろうとしている。本書は2019年の発表で、 ・元大阪府知事、大阪市長、弁護士 橋下徹氏 ・山猫総合研究所代表、国際政治学者 三浦瑠璃氏 が日本の現代政治(&政治家)について対談したもの。橋下弁護士は「維新の会」の創設者で、大阪…

ヴュルテンベルク王国の少尉候補生

1944年の今日は、「砂漠の狐」と呼ばれたドイツ陸軍のロンメル元帥が亡くなった日。先日見た映画「砂漠の鬼将軍」のラストのように、ヒトラー暗殺に関与したとして自殺を強いられた日である。2019年発表の本書は、非常に珍しい日本人の手になる欧州軍事史で…

ウクライナと琉球のケース

昨日「民族問題の世界地図」で、東南アジアから中近東までの民族紛争のタネを勉強した。本書(2017年発表)は元外務省分析官の佐藤優氏が、同志社大学で10回にわたって外交論を講義した内容から「民族問題」に関わる部分を抽出したもの。上記の書で語られな…

火種は20年まえから分かっていた

本書は、歴史家・評論家の高崎通浩氏が2002年に発表した「世界を知るデータブック」の1冊。東南アジアから中近東まで、インド・中国といった大国まで含めた民族・宗教の分布と紛争のタネを列挙したもの。少し古い本だが、20年程度では「火種の地図」に変更…

3人の財務省特別調査官

米国には通常の警官の他、連邦捜査機関のFBI、海軍の捜査組織NCISなどがあって、独自の捜査を担当する。本書(1984年発表)には、財務省の特別調査官が登場する。国税庁ではないので、税務調査をするわけではない。主なターゲットは金融犯罪、特に偽札等の偽…

Mig-21 vs. F4C

ヴェトナム戦争というと、北ヴェトナム軍のゲリラ戦・米陸軍や海兵隊の死闘・村を焼き払うなどの残虐行為・降ってくる枯葉剤など地上の戦闘や悲劇ばかりが思い出される。米国はこの戦場で5万人以上の犠牲者を出し、以後大規模な地上戦闘を嫌うようになる。 …

パリのペルシア人

以前紹介した「I am Legend」が3度の映画化なら、1910年発表の本書は1925年を始めとして3度映画化、加えて1973年にはロックミュージカルでも映画化されているという古典。この文庫本が出たころには、「劇団四季」でも上演されていたらしい。作者のガストン…

人間と獣の間・・・

本書はSF小説創成期の大家、H・G・ウェルズの「改造人間もの」である。「宇宙戦争」や「タイムマシン」が有名なのだが、本書「モロー博士の島」も古典として語り継がれるべき作品だと思う。マイクル・クライトンの「ジュラシック・パーク」も、本書の流れにあ…

大元帥の責任と権限

宮内庁は、24年余りの時間をかけて「昭和天皇実録」全61巻を編纂した。実は「明治天皇実録」も「大正天皇実録」もすでに編纂されている。ただ今回のものは、一般向けに全19巻に分けて出版されることになった。それに先立ち「歴史探偵」半藤先生はじめ4人の…

ダボス人間的世界観への挑戦

紫色に光る御髪と、ドスの効いた毒舌(!)が印象に残る論客、浜矩子氏。安倍政権を「妖怪アホノミクス」とコキ下ろし、「趣味は大量飲酒」とおっしゃる破天荒な経済学者である。本書は2017年の発表、安倍政権真っただ中で、米国にはトランプ政権が誕生、欧…

先鋭化された過激派集団

昨日「イスラム国の衝撃」をご紹介したのだが、引き続き同国の内情を掘り下げた書を読んでみた。筆者の黒井文太郎氏は、インテリジェンスに詳しい軍事ジャーナリスト。国家というより戦闘集団としての「イスラム国」を分析し、最終的に「彼らとの平和共存は…

始りはオスマン・トルコ崩壊

デジタル政策が国際環境でも幅広く議論されるようになり、僕も国際情勢を勉強しなくてはならなくなった。サイバー空間には国境はないはずなのに・・・。これまでいろいろな国の現状を見てきたが、どうにも苦手な地域が「中東」。宗教そのものに知見も興味もない…

翻訳者で変わるトーン

1959年発表の本書は、以前「梟はまばたきしない」を紹介したA・A・フェアの「クール&ラム探偵社」もの。このペンネームはE・S・ガードナーの別名だが、このシリーズは本家のペリイ・メイスンものより良質なミステリーだと思う。特に小柄で腕っぷしはNGだが頭の…

白昼デパートでの銃撃戦

本書はこれまで3作を紹介してきた、イーヴリン・E・スミスの「ミス・メルヴィルもの」の第四作。もうじき50歳が近い名家の令嬢スーザン・メルヴィルは、生活に困って殺し屋稼業をする羽目に。父親に教わった銃の腕があってのことだが、中年レディは街中では目…

都市戸籍の人達も苦労している

昨日「日本人は知らない中国セレブ消費」で、中国のプチ富裕層が何を求めているか、価値観はどうかなどを紹介した。この書は2017年のものだが、内容は全部「都市戸籍」を持っている人のこと。以前「戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊」を紹介した川島博之…

上海人の金銭感覚、2017

1週間前に別ブログでだが、上海の2年の勤務を終えて帰国した人に聞いた話を紹介した。スマホがあれば財布の要らない便利都市、みんな豊かで政府を信頼しているとのことだった。 中国都市部の今の状況 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com) 日本での「…

Green政策の処方箋

菅内閣の基本方針は「Green & Digital」だった。現下の国際情勢における方針として異論はないのだが、どうもGreenの方は僕は苦手だ。とはいえ食わず嫌いは良くないので、少々古い(2008年発表)書だが読んでみた。発表の前には「愛・地球博」や「洞爺湖サミ…

柴田錬三郎巷談12編

昨日司馬遼太郎「新選組血風録」を紹介したのも、このところ「巣ごもり」で古い映画を見ることが増えたから。BSの「木曜時代劇」など、懐かしさに溢れる作品を放映してくれる。先月は「仕掛人藤枝梅安」「柳生武芸帖」を見て、時代劇の良さを再認識している…

組織の中で生きる術を学ぶ

中学生の時、国語の先生に「Xの悲劇」を紹介してもらってから欧米ミステリーにハマった僕だが、それ以前はと言うと「時代小説」をよく読んでいた。そのなかでも最初(の頃)に読んだのが本書。大家司馬遼太郎が「小説中央公論」に1962年に連載した、15編の…

倒叙のような倒叙でないような

リチャード・ハルという作家は、長編ミステリー15作を発表しながら、邦訳されたのは3作だけ。 1934年 伯母殺人事件 1935年 他言は無用(本書) 1938年 善意の殺人 「伯母殺人事件」はデビュー作ながら、大きなセンセーションを巻き起こした作品で、いまでも…

三度映画化されたSFホラー

リチャード・マシスンという作家の作品を、紹介するのは初めて。1953年から半世紀以上に渡って脚本・小説を書き続けた作家で、僕は短編「激突」をTVで見て出会った。 ◆激突(1971年) ・監督 スティーヴン・スピルバーグ ・主演 デニス・ウィーバー(マクロ…

女王初期の短編集

女王アガサ・クリスティーは、1920年代にはまだ手法が完成しておらず、ポワロ&ヘイスティングズの本格ミステリー、トミー&タペンスの明るいスパイものなどを取り混ぜて長編小説を発表していた。正直後年の作品集に比べると、単発ものの「アクロイド殺害事…

オカルトと科学の融合

本書は、以前紹介した東野圭吾の「ガリレオシリーズ」の第二短篇集。1999~2000年の間に<オール読物>に掲載された5編が収められている。TVシリーズのように女性刑事は登場せず、大学時代の同級生草薙刑事からもちこまれる「怪事件」を湯川助教授が解決す…

21世紀型経済の処方箋

先日水野和夫氏の著書「資本主義の終焉と歴史の危機」を読んで、今世界で起きていることの多くが説明できる説に驚いた。要は地球上からフロンティアが消え、これを前提としていた資本主義は維持できないというものだ。 超マクロ経済学による説明 - 新城彰の…

ブルームズベリーの古いアパート

以前「名のみ知られた名作」をいくつか紹介した。書評に「名作」とありながら、絶版になっていて普通の書店では手に入らないミステリーたちである。例えば、ヘレン・マクロイ「幽霊の2/3」とロジャー・スカーレット「エンジェル家の殺人」を手に入れた嬉…

ハーカーズ島の惨劇

本書(1994年発表)は、マーガレット・マロン作「デボラ・ノットもの」の第三作。ノースカロライナの若い女性判事デボラの活躍を描いたもので、前2作は彼女のベースである内陸のコルトン群(架空)での事件だったが、今回は実在の島ハーカーズ島でデボラが…

4つの分断がむしばむ民主主義

米国バイデン政権の支持率が下落傾向、某誌などは「支持率暴落」とまで書いている。きっかけはアフガニスタン撤兵のゴタゴタなのだが、僕はいずれやらねばならぬことだから政権の決断に拍手を送っている。バイデン政権を悩ませている問題はアフガニスタンや…

メイスン先生の法廷術講座

本書も、E・S・ガードナーの「ペリイ・メイスンシリーズ」の一冊。このシリーズは法廷シーンが売り物で僕もそれを期待して読むのだが、本書は冒頭短い法廷シーン、最後の100ページの法廷シーンとそれが2度も出てくる「お買い得作品」である。 所要である判事…