2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧
本書は1927年発表の、ドロシー・L・セイヤーズの第三長編。いつものように、貴族探偵ピーター・ウィムジー卿が活躍する本格ミステリーだ。アガサ・クリスティーが名作を発表し始めていたし、米国ではヴァン・ダインがデビューしていたが、クイーンもカーもま…
本格ミステリーだと、どうしても犯罪は殺人が中心に据えられることが多くなる。「ノックスの十戒」の中にも、殺人未満の事件では不十分だとの記述がある。また結果として人が死んだのだが、衝動的な殺人・事故のようなものではインパクトが薄い。どうしても…
コナン・ドイルは自分を有名にしてくれたシャーロック・ホームズを、本当は好きではなかったようだ。一度はスイスの滝壺に落として殺したつもりだったが読者の熱望で生き返らせるしかなかった。それに比べると、登場作品は少ないものの、本書の主人公チャレ…
まだ20歳代だったころ、偶然の人事で僕は本社のスタッフ部門に転勤になった。技術が売りのこの会社、当時少なかった工学修士を技術開発の戦線から外し、スタッフ部門に回すというのは極めて異例だった。それが後年の僕を救うことになるのだが、当時は非常に…
・・・といっても、かなりのミステリーマニアでも「ああ、あいつね」と答えられる人は少ないだろう。以前「猿きたりなば」を紹介しているが、その作品で日本に最初に紹介されたのがジョージ君である。作者は英国でアガサ・クリスティーの後継者の一人とされる、…
「COVID-19」が生物兵器として作られたものかどうかは今後の検証にゆだねるとして、BC(Bio, Chemical)兵器について復習しておこうと思い本書を再読してみた。本書は2003年に、「オウム真理教」の一連の事件をひとつのきっかけとしてまとめられたものらしい…
本書は、小泉純一郎が5年5カ月の間総理大臣を務めた期間のすべてで政務秘書官を務めた、飯島勲著になる官邸記録である。20世紀には誰もがあり得ないと思った「郵政民営化」を政治家としてやるべきこととして掲げ、2度の自民党総裁選挙で敗れながら最後に…
エド・マクベインの「87分署シリーズ」は刑事群像を描いていて、のちに多くの日本の刑事ドラマが作られたが、そのモデルになったものである。ニューヨークがモデルと言われる架空の街アイソラで、所轄の刑事部屋が主な舞台だ。中心的なのはキャレラ刑事だが…
「COVID-19」感染拡大の中、「前例のない措置」がいろいろ取られるようになってきた。そのこと自身は当然と言えるのだが、「この機に憲法改正をして緊急事態条項を盛り込もう」という意見もあるやに聞く。確かにメディアは「ウィルスとの戦争」と叫んでいる…
激烈を極めた太平洋戦争の航空戦、最後は「特攻機」として失われていった多くの航空機と乗員たち。そんな中でも、戦後まで生き残った航空指揮官たちはいた。1993年から足掛け3年間にわたって、生き残った指揮官のうちインタビューを受けてくれた17名の人に…
「時刻表2万キロ」という国鉄全線乗りつぶし紀行でデビュー(?)した作者は、一流出版社の役員を辞して次々と新しい鉄道の挑戦を行った。本書もそのひとつ、国鉄の最長一筆書き切符を購入し、実際に13,000余キロを完乗する話である。 今のJRでもそうだが、…
アガサ・クリスティーと言えば、ポアロとミス・マープルがレギュラー探偵の双璧。その他に夫婦探偵トミー&タペンスやバトル警視、パーカー・パインなどのシリーズが知られている。さらに何冊か、単発ものもある。例えば名作「そして誰もいなくなった」は、…
本書はアリバイ崩しものの大家、津村秀介の比較的初期の作品である。横浜県警淡路警部と毎朝日報谷田キャップは登場するが、フリーライターで探偵役浦上伸介のパートナー前野美保はまだ登場しない。 京都に近い保津峡で、女が男を渓谷に突き落として殺した。…
「海猿」というアニメがあって、本書(2009年)に先立つ2002年のTVドラマに、その後映画にもなり人気を博した。これで極めて地味だった官庁「海上保安庁」の存在や意義を、多くの国民が知ることになったと、知り合いの国交省の人は言う。 その後、能登沖の北…
有名なヒッチコック監督のサスペンス・ホラー映画「サイコ」、シャワーを浴びる女性を切り刻むシーンに始まり、衝撃のラストまで「怖いもの見たさ」で見てしまった映画だった。演出はもちろんだが、子供のころにストーリーの怖ろしたをしっかり味わった記憶…
石山本願寺攻略に続いて、越後の上杉謙信が死に、甲斐の武田家を滅ぼした織田信長だったが、明智光秀の謀反で横死する。光秀を「中国大返し」で破った羽柴秀吉の天下になるのだが、このあたりは「信長の棺」「秀吉の枷」を読んだ人なら、作者の仕掛けは分か…
「信長の棺」でデビューした作者の加藤廣、このときすでに75歳。プロのバレリーナになろうと思ったら3歳までに決断すべきと言われていて、プロになるには適切な年齢がある。僕らのような技術者であれば、大学卒業時の22歳くらいだろうか。確かに作家の場合…
アガサ・クリスティーは最初の夫アーチボルト・クリスティと離婚した後、14歳年下の考古学者マックス・マーロワンと再婚した。前夫との間に何があったのかはわからないが、失踪事件を起こすなど精神的に追い詰められて離婚に至ったようだ。二人目の夫は学者…
ウォーレン・アドラーは米軍通信記者として兵役に就いた後、ジャーナリストを経て作家活動に入った。日本であまり知られていない作家だが、映画「ホワイトハウス・ダウン」のような小説かと思って買ってきた。本書の発表は1986年、ソ連の脅威が薄れつつある…
斎藤栄という人も、多くのミステリーを書いた。1966年デビュー作の「殺人の棋譜」で江戸川乱歩賞を受賞し、「奥の細道殺人事件」などの話題作を発表した。その後タロット日美子・江戸川警部・小早川警部らのシリーズをいくつか発表している。これまで、最初…
1920年に「スタイルズ荘の怪事件」でデビューしたアガサ・クリスティ、20年代は「明るいスパイもの」に欲があって本格ミステリーにいまいち身が入らない面もあった。しかし最初の夫と離婚し考古学者マックス・マーロワンと再婚してからは、私生活も安定し作…
佐藤大輔という人はもともとゲームデザイナーだった。日本の短いシミュレーション・ウォーゲーム全盛期に、やりたい放題といえるくらい派手な作品を発表した「アドテクノス」の一員である。代表作は「Red Sun & Black Cross」のシリーズで、僕も続編である「…
高校生の頃、本気でミステリー作家になろうとしていた僕は、普通の小説のほかにも関係しそうなものを乱読した。人はどうやったら死ぬのか、気を失うのかといった医学関係のもの、犯罪を犯しても罪を免れたり、軽く済ませる法律関係のもの、銃器や爆発物の作…
トム・クランシーが精神科医であるスティーブ・ピチェニックと共著した「オプ・センター」シリーズ、第六作の「国連制圧」が割と面白かったので、さかのぼって第二作である本書を読んでみた。 国際紛争の中で緊急事態を察知するハイテク情報網を持ち、強制排…
ミステリーの女王アガサ・クリスティは、最初の結婚に失敗した後14歳年下の考古学者マックス・マーロワンと結婚し安定した生活を取り戻した。それが1930年のことだから、ミステリー界の「黄金の1930年代」に間に合ったと言うべきかもしれない。このころから…
昨年経団連が翻訳出版した「サイバーセキュティハンドブック」については、これをセミナーで解説した人が、薄い、専門用語がない、経営者が質問する項目を書いているとして、とかく難しいサイバーセキュリティ対策について、文系出身者も多く忙しい経営者が…
ミステリー作家というよりは、歴史家と言った方が井沢元彦という人を正しく表すかもしれない。デビュー作「猿丸幻視行」からして、SF的な手法も入れながら豊富な歴史考証を背景にしたものだった。一般のミステリー読者にはあまりなじみのない国文学者折口…
冒険小説の重鎮ジャック・ヒギンスの諸作は大好きでまだ何作か残っているのが楽しみなのだが、彼が「比類なき傑作」と評したのが本書である。ボブ・ラングレーという作者の名前は何度か聞いたことがあるが、読むのは初めてだろう。背景や主人公を代えた10作…
世評の高いミステリー作家でも、僕個人が苦手にしている人は何人かいる。その中で代表的なのが、本書の作者P・D・ジェイムズ女史(Phillis Dorothy James)。生涯で20作ほどのミステリーを書き、3度英国推理作家協会のシルバーダガー賞など多くの受賞歴があり…
本書は一時期アガサ・クリスティーの後継者とも評された本格ミステリー作家、コリン・デクスターの第三作。しばらく前にデビュー作「ウッドストック行き最終バス」と第二作「キドリントンから消えた娘」を読んだのだが、ちょっとコメントを書く気にならず残…