法廷もの
本書は以前「評決」を紹介した、弁護士作家バリー・リードの第三作。「評決」とこれに続く「決断」は作者が弁護士として専門としている医療過誤や製薬業の製造物責任を扱ったものだが、本書(1994年発表)は本格的な殺人事件を扱う法廷ものになっている。さ…
自身はさほどの多作家でもないが、ミステリーの厳正さにかけては人後に落ちない作家佐野洋。評論家は彼を、「当代一流の読み手」と称する。そんな作者の研究熱心さが顕れたのが、長編でも短篇集でもなく「連作推理小説」という本書(1995年発表)である。 最…
2005年発表の本書は、米国における「トンデモ訴訟」を集めたもの。米国は訴訟社会で、和解金などを含まない純粋な訴訟費用だけで、GDPの2%に達するという。1992年、79歳のステラさんはマクドナルドの熱いコーヒーを膝にこぼしてやけどをした。本人の過失が…
本書は、以前「Wの悲劇」を紹介した夏樹静子の日本の裁判史。<オール読物>などに掲載された12の小編を、2010年に単行本化したものである。先月森炎著「死刑と正義」で見たように、罪状は明白でも極刑を選ぶべきかについては、いつの時代も判断に迷う。こ…
本書は、ご存じE・S・ガードナーのペリー・メイスンものの1冊。解説には、1940年代の代表作だとある(1949年発表)。このシリーズは1933年の「ビロードの爪」に始まり、作者の死後の1976年まで合計82作品が出版され、その多くが邦訳されている。 ある夜、秘書…
1959年発表の本書は、E・S・ガードナーの「ペリー・メイスン」シリーズの中期の作品。前書きにガードナーが、法医学者のドクター・アドルスンとの交友について紹介している。その中で、アドルスンの言葉として、 ・法医学者は殺人のみに興味を持っているわけで…
本書も、E・S・ガードナーの「ペリイ・メイスンシリーズ」の一冊。このシリーズは法廷シーンが売り物で僕もそれを期待して読むのだが、本書は冒頭短い法廷シーン、最後の100ページの法廷シーンとそれが2度も出てくる「お買い得作品」である。 所要である判事…
本書(1980年発表)は、作者のバリー・リードのデビュー作。作者自身ボストンの弁護士で、1978年に医療過誤事件で彼の弁護事務所は「580万ドルの賠償を支払え」との評決を勝ち取っている。本書はその事件など作者が体験した事件や法廷闘争をベースに構築され…
以前ドナルド・E・ウェストレイクの「悪党パーカー」もので、洋上のカジノ船をパーカーたちが襲撃する話を紹介した。多額のカネが動きしかも現金が多いので、目標としては申し分ない。しかし潜入はともかく逃走は非常に難しい。パーカーたちがどう知恵を絞って…
E・S・ガードナーの「ペリー・メイスンもの」の特徴は、その法廷シーンにあるといって差し支えない。前回紹介した「危険な未亡人」事件では、それがなくてちょっとがっかりした。見ようによっては些細なことをこねくりまわして時間稼ぎをしているようなメイス…
先日「人蟻」を紹介した、高木彬光の百谷泉一郎/明子シリーズの第二作が本書。陪審員制度ではなかった当時の日本で、難しいと言われたほぼ全編が法廷シーンという意欲作である。作者は元々工学部出身、物理的・化学的なトリックを得意としていたが、経済学…
本書はE・S・ガードナーの「ペリー・メイスンもの」の一冊。このシリーズ、最初に「ビロードの爪」が発表されたのが1933年。まさに本格ミステリーの黄金期に始まっている。その後40年にわたって書き続けられ、長編80余冊が出版されている。僕が読んだことがあ…
「ペリー・メイスンもの」などを読み始めて、改めて法廷ものの面白さを思い出した。他の米国のものや日本の法廷ものの読んだが、本書(2002年発表)のようなイタリアの法廷ものは初めてだ。1月にサルディニア島の弁護士を主人公にした「弁護士はぶらりと推…
高校生だった一時期、アール・スタンレー・ガードナーの「ペリー・メイスンもの」は何冊か読んだ。「どもりの主教」と「義眼殺人事件」が傑作と言われていたが、そのほかの作品もいつも楽しめたものだ。後半の100ページほどは、おきまりの法廷シーン。予審の…
ミステリーのひとつのジャンルに「法廷もの」がある。有名なのはE・S・ガードナーの「ペリー・メイスンシリーズ」だが、これはハイライトを法廷に持って行った普通のミステリーと言えなくもない。法廷もののマニアの中では「最初から最後まで法廷だけを描写…