新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

イスラエル建国前史、WWⅠ

1988年発表の本書は、これまで「過去からの狙撃者」「パンドラ抹殺文書」など出色のスパイスリラーを紹介してきた、マイケル・バー=ゾウハーの歴史スパイもの。WWⅠ当時、パレスチナを含むアラビア半島全域はオスマン・トルコ帝国支配だった。パレスチナには…

国内旅行のためのガイドブック

今週ご紹介している「日本地図シリーズ」、最後はお城である。昨日の「大名の日本地図」にあったように、1~3万石クラスの小大名だと城は持てず陣屋が精々だった。それでも100位の藩は城持ちだったし、天領(幕府直轄地)にも城/城跡はある。本書では100…

全国280箇所の「地方政府」

「日本地図シリーズ」第三弾は、幕末期の大名と藩に関するもの。著者の中嶋繁雄氏は歴史ノンフィクション作家。「廃藩置県」の前には、天領の他に全国に約280の藩が存在した。地方政府でもあったこの組織群について本書では、 ・当主と明治政府での地位(公…

どうしてそこが戦場になったか

本書は、昨日に引き続き「日本地図シリーズ」の第二弾。同じく武光教授に加えて、合戦研究会の皆さんが著者に加わっている。そこそこの勢力同士がぶつかり合ったものを合戦と定義しているようで、戦場が海外のものは除かれている。巻末にある日本合戦史には…

「いけず先生」による京女の歴史

2017年発表の本書は、NHK「いけずな京都旅」のコメンテータである国際日本文化研究センター井上章一教授の京都論。TV番組では軽妙に「いけず」と博識を披露している著者だが、てっきり文系研究者と思っていたら建築学の教授(建築史・意匠論)だった。確かに…

裏面から見た各国の悩み

2022年発表の本書は、国税調査官出身のフリーライター大村大次郎氏の「世界の歴史・経済論」。もちろん世界を動かしている最大のものは、イデオロギーや宗教、軍事力ではなく「お金」である。その視点から、通常表には出てこない真実がいくつも紹介されてい…

21世紀の科学でも解けない謎

2021年発表の本書は、欧州在住30年のジャーナリストの2人(片野優氏・須貝典子氏)が、欧州各地に残る「都市伝説」を13編集めたもの。不思議な話の連続で、多くのものは映画や小説によって紹介されている。ただ、僕も知らなかった話がいくつかあった。 ◆自…

海兵隊幹部から見た沖縄問題

2016年発表の本書は、日本文化にも造詣の深い政治学者で在沖縄海兵隊にも所属したことのあるロバート・D・エルドリッジの「オキナワ論」。沖縄にある米軍(専用)基地の再編や削減などについて、米軍も日本政府も失敗したという。例えば、最も大きな争点である…

タイムマシンで行く15の道

2016年発表の本書は、3人の歴史学者(*1)による京都の歴史探訪で、15の道を紹介している。ガイドブックにある「○○は何年に建立されました」的な紹介と、歴史書にある「このような時代で、××のために必要だった」的な解説を融合した書である。ある種の道や…

クライシスコミュニケーションの実例

本書は、戦後日本最大の危機だった東日本大震災と、それに伴って起きた福島第一原発事故の数日間を、TVメディアがどう伝えたかをダイジェストしたもの。筆者の伊藤守氏は、社会学専攻で早稲田大学メディア・シティズンシップ研究所所長。震災後1年経った201…

陸軍参謀本部作戦課長

服部卓四郎という名前は、何度も戦史・戦記の中で見ている。しかしどういう人物だったか、印象はあまりない。帝国陸軍のエリートとして、選択肢として常に強硬な方針を示し、結果として日本を破滅の淵に追いやったとされるが、そんな軍人は大勢いた。歴史に…

最初から強権的な独裁者だった

2年前の今日、世界の秩序を変えたプーチンのウクライナ侵攻が始まっている。本書は、その年の6月に軍事ジャーナリスト黒井文太郎氏が過去の記事も引用して、プーチンの所業からその正体に迫るべく発表したもの。著者の書は以前「イスラム国の正体」を紹介…

記者は何故戦場を目指すのか?

2021年発表の本書は、ジャーナリスト佐藤和孝氏の、現代アフガニスタンレポート。筆者は、2012年にシリアで取材中に銃撃されて亡くなったジャパンプレス山本美香氏の同僚であり、山本美香記念財団の代表理事でもある。40年間の記者生活を、アフガニスタン・…

習大人から見たウクライナ戦争

2022年発表の本書は、吉林省生まれで筑波大学の名誉教授遠藤誉氏(中国問題グローバル研究所長)のウクライナ戦争をめぐる大国の関係論。中国習近平主席の視点が強く、いわゆる西側の常識とは異なる主張も少なくない。主張ポイントを時系列的に整理すると、 …

生存者の口伝も交えた実録

「新選組」についてはこれまで、司馬遼太郎、池波正太郎の作品を紹介している。これらはいずれも小説だが、本書は1928年に作家子母澤寛が発表した実録である。作者は本書に続き「新選組異聞」「新選組物語」を発表、「新選組三部作」とした。この時代には、…

内政干渉が許される分野

2022年発表の本書は、スタンフォード大学社会学部教授筒井清輝氏の「普遍的人権」の入門書。サントリー学芸賞・石橋湛山賞を受賞した書である。著者は政治社会学が専門で、多くの学生と人権に関する議論をし、各国で人権侵害に抵抗した政治家や活動家を招い…

カウンターテロリズムの研究

2022年発表の本書は、日大危機管理学部福田充教授のカウンターテロリズム研究。オウムの地下鉄サリン事件を契機に、危機管理の研究を始めた筆者が、安倍元総理暗殺事件を契機に、現代テロの特徴と対処法を示した内容になっている。 蘇我入鹿暗殺、本能寺の変…

100年前の日本を見る思い

2022年発表の本書は、民主化ミャンマーに派遣され初歩から融資制度を作った銀行マン泉賢一氏の「ミャンマー金融戦記」。筆者はSMBCから2013年に現地に派遣されたが、その時はまだティン・セイン軍政下。外国銀行が営業できる状況になかったが、改革開放の機…

30年間放置されてきたカルト集団

2023年発表の本書は、安倍元首相暗殺事件以後再び追及されることになった旧統一教会についてのレポート。対談しているのは、叔母が元信者で多額の献金をし、脱会させるのに苦労した経験を持つ漫画家小林よしのり氏と、30年前から同教会の闇を追い続けてきた…

ユビキタス化した戦争への対応

2021年発表の本書は、ウクライナ紛争で一躍「時の人」となったロシア研究者小泉悠氏の「ロシアの戦略論」。大兵力を投入しながらウクライナでの電撃戦は果たせず、初期投入兵力の9割を失ったともいわれるロシア軍。装備の古さ、士気の低さ、指揮の拙劣さ、…

台湾海峡をめぐる仮説

2022年発表の本書は、ジャーナリスト清水克彦氏の手になる台湾有事の背景と展望。筆者は軍事が専門ではないが、文化放送のMCを務めて人脈が広がり、多くのキーマンにインタビューして本書をまとめている。 そもそも今の中国は、米国が育てた。ソ連に対応した…

何時なら対英米戦を回避できたか

昨日、軍事ライター兵頭二十八氏の、技術・戦術面から見た日米開戦の状況分析「真珠湾の真実」をご紹介した。後年伝えられていたより、さらに日米間の戦力格差は大きかったことが分かった。それでは、なぜ無謀というより絶望の開戦に至ったか、高名な歴史探…

冷徹な技術者の結論

2001年発表の本書は、以前「こんなに弱い中国人民解放軍」「日本転覆テロの怖すぎる手口」を紹介した軍事ライター兵頭二十八氏の初期作品。戦争をリードするのは古来技術だが、その比重が近代には途方もなく大きくなった。国力が10~20倍ある米国に挑んだ帝…

最初の情報戦「大義名分」

2018年発表の本書は、東京大学史料編纂所の本郷和人教授の手になる「リアルな日本の軍事史」。筆者の専攻は、日本中世政治史と古文書学。日本史関連の著書があり、NHK大河ドラマ「平清盛」の時代考証も務めた。 全体的には、すでに知っている「リアル」が多…

壊れてしまった世界秩序

2022年発表の本書は、ロシアの侵攻後半年の時点での「変わってしまった世界秩序」について5人の有識者とジャーナリスト峯村健司氏が対談した記事を書籍化したもの。注目されないロシア研究を黙々と続け、一躍時の人となった小泉悠専任講師は100ページも思い…

満清支配をくつがえせ!(後編)

闘いの訓練も受けておらず老若男女が混じっている叛乱軍ゆえ、時折痛い目にも遭うのだが、東王楊秀清の指揮もあって北を目指して進撃する。行く先々で清朝に不満を持つ民衆が参加してくるので、軍勢は増えていく。 ただ中心たる洪秀全は、ほとんど表に出てこ…

満清支配をくつがえせ!(前編)

今年陳舜臣の「琉球の風」を読んで、知らなかった歴史に感動した。そこでもう一歩踏み込んで、中国の近世を知ろうと思い手に取ったのが本書(全4巻)。1969年から3年間にわたって<小説現代>に連載されたものだ。アヘン戦争後の中国、清朝は揺らいでいた…

日本に自律と核武装を勧める

本書はフランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド氏が、ウクライナ紛争後の世界についてインタビューに応えたもの。侵攻後1ヵ月前後に2度受けたインタビューが基になっていて、他の2つの記事はこれらを補完する目的で、2017年と21年のものを再掲してい…

イスラム教シーア派の主導国

2021年発表の本書は、共同通信社で2年間テヘラン支局長を務めた新冨哲男氏のイランレポート。イランはシーア派イスラム教徒の主導国で、イスラエルを攻撃している<ハマス><ヒズボラ><フーシ派>の後ろ盾である。 紀元前550年、この地にアケメネス朝ペ…

「洪門」という根強い勢力

昨日の「中国vs.世界」に引き続き、安田峰俊氏の中国論を紹介したい。それも特別にドロドロしたテーマである秘密結社。広大な土地を治めるには、地方分権型では上手くいかない。古来の王朝も、今の共産党政権も、 ・中央に絶対的な権力を集中 ・地方には中央…