新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

海洋国家日本再生へ(前編)

本書は僕が多くの軍事知識を貰うことができた、松村劭元陸将補著の海戦史。著者は陸上幕僚部、防衛研究所を経て陸上自衛隊西部方面部防衛部長で退官された、戦略・戦術研究、情報分析の専門家。数々の著書があり、以前「海から見た日本の防衛」「戦術と指揮…

ヴュルテンベルク王国の少尉候補生

1944年の今日は、「砂漠の狐」と呼ばれたドイツ陸軍のロンメル元帥が亡くなった日。先日見た映画「砂漠の鬼将軍」のラストのように、ヒトラー暗殺に関与したとして自殺を強いられた日である。2019年発表の本書は、非常に珍しい日本人の手になる欧州軍事史で…

ウクライナと琉球のケース

昨日「民族問題の世界地図」で、東南アジアから中近東までの民族紛争のタネを勉強した。本書(2017年発表)は元外務省分析官の佐藤優氏が、同志社大学で10回にわたって外交論を講義した内容から「民族問題」に関わる部分を抽出したもの。上記の書で語られな…

火種は20年まえから分かっていた

本書は、歴史家・評論家の高崎通浩氏が2002年に発表した「世界を知るデータブック」の1冊。東南アジアから中近東まで、インド・中国といった大国まで含めた民族・宗教の分布と紛争のタネを列挙したもの。少し古い本だが、20年程度では「火種の地図」に変更…

Mig-21 vs. F4C

ヴェトナム戦争というと、北ヴェトナム軍のゲリラ戦・米陸軍や海兵隊の死闘・村を焼き払うなどの残虐行為・降ってくる枯葉剤など地上の戦闘や悲劇ばかりが思い出される。米国はこの戦場で5万人以上の犠牲者を出し、以後大規模な地上戦闘を嫌うようになる。 …

大元帥の責任と権限

宮内庁は、24年余りの時間をかけて「昭和天皇実録」全61巻を編纂した。実は「明治天皇実録」も「大正天皇実録」もすでに編纂されている。ただ今回のものは、一般向けに全19巻に分けて出版されることになった。それに先立ち「歴史探偵」半藤先生はじめ4人の…

先鋭化された過激派集団

昨日「イスラム国の衝撃」をご紹介したのだが、引き続き同国の内情を掘り下げた書を読んでみた。筆者の黒井文太郎氏は、インテリジェンスに詳しい軍事ジャーナリスト。国家というより戦闘集団としての「イスラム国」を分析し、最終的に「彼らとの平和共存は…

始りはオスマン・トルコ崩壊

デジタル政策が国際環境でも幅広く議論されるようになり、僕も国際情勢を勉強しなくてはならなくなった。サイバー空間には国境はないはずなのに・・・。これまでいろいろな国の現状を見てきたが、どうにも苦手な地域が「中東」。宗教そのものに知見も興味もない…

ナチスドイツのマイナー兵器(後編)

◆タオホパンツアーⅢ号/Ⅳ号 通常のⅢ号/Ⅳ号戦車を水密化し、約15mの深さまで潜れるようにしたもの。英国上陸「あしか作戦」のために約200両が改造された。簡単なシュノーケルも付いていた。しかし「あしか作戦」は決行されず、1941年に東部戦線に投入されソ…

ナチスドイツのマイナー兵器(前編)

別ブログでだが、アバロンヒル社の「Advanced Squad Leader」というアナログゲームシステムを使って、第二次世界大戦当時の兵器や戦場の模様を紹介している。 https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2019/07/13/060000 このゲームは、日英米ソ独伊はもと…

「日本鬼子」の三光作戦

明日は僕の親父の誕生日、満94歳になる。親父は太平洋戦争末期、最後の初年兵として招集され、外地に派遣される前に終戦となって命拾いをした。わずか数ヵ月の兵隊さん生活だったが思うところは一杯あるようで、よく酒に酔うと当時の話をしていた。曰く、 ・…

「名機」の分かれる評価

このところ太平洋戦争を舞台にした懐かしい架空戦記を紹介しているが、それらの中で必ず登場するのが「零式艦上戦闘機」、通称「ゼロ戦」である。秦郁彦氏は大蔵省から読売新聞の嘱託となり、近代史(特に戦史)の研究者として多くの著作を発表している。本…

コミンテルン謀略が変えた歴史

本書は2015年に発表された、日中戦争裏面の謀略史である。著者の黒田紘一氏のことは、1943年長野県生まれとある以外全く分からない。Bingで検索しても、本書の著者であること以上の情報はない。ただし巻末に挙げられた相当数の参考文献を見ても、ある程度信…

「丸太」即チ、材料ノ意味

「COVID-19」が「中国科学院武漢ウイルス研究所」から漏れ出たものかどうかは別にして、防疫研究のためにはウイルスを培養して各種の実験をする必要があることは確かだ。旧日本軍もそれをしていて、今中国に2ヵ所あるレベル4施設のうちの一つがあるハルピ…

九二式重機と歩いた山野

本書は中国戦線からビルマ(今のミャンマー)に転戦、終戦まで戦い抜いた石井兵長(最終階級伍長)の手記である。作者は青年学校教諭職にあったところを招集されたとのことだし、中学校時代の話も出てくる。英語の読める兵士として将校に重用されてもいると…

隠密性が命の難しい艦種

よく架空戦記に「潜水空母」とか「海中戦艦」などという艦種が出てきて、(英米軍相手に)大活躍する物語がある。帝国海軍の巨大潜水艦「伊ー400」級は、確かに「晴嵐」攻撃機3機を搭載していて、十分な浮上時間がとれるならパナマ運河のような敵軍のアキレ…

最大の脅威は日本の経済力

バイデン政権が明確に「ライバルは中国」と名指ししたが、その少し前は「Pax Americana」の時代だった。1980年代に米ソ冷戦は解消に向かい、ライバルはいなくなった。しかしソ連の凋落・軟化と同時に、新しいライバルの芽が出てきたことはある。それが日本。…

ゲタ履きの万能機

航空戦力の充実が急務となっていた1930年代、各国は爆撃機・戦闘機だけでなく偵察機の開発にもしのぎを削った。陸戦と違って海上戦力は、どんなに強い戦闘力を持っていても、相手がどこにいるかが分からなければ戦いようがない。1万トン級の体躯を誇った巡…

断片しか知らない歴史

世界最強国家である米国が、アジアの小国に敗れた。この評価は正しくないかもしれないが、少なくとも米国人の多くはそういう傷を心に持っている。もちろんその小国とは日本ではない、ヴェトナムである。 第二次世界大戦に勝って唯一の超大国になった米国だが…

米軍が最大の犠牲を払った闘い

76年前の6月末、3ヵ月に及ぶ連合軍の沖縄作戦は終了しようとしていた。日本軍10万人、連合軍15万人が参加し、45万人の沖縄住民を巻き込んだ闘いだった。住民の1/3が犠牲になったとも言われ、その傷跡は今でも沖縄の地に残っている。 1944年10月、サイパン…

He219A-5/R2「ウーフー」

第二次世界大戦は、間違いなく「空の戦い」だった。陸戦・海戦を問わず、制空権なき側は必ず敗れた。また一般市民を巻き込んだ「戦略爆撃」という手法が、本格的にとられた闘いでもあった。第一次世界大戦では、ドイツの飛行船がイギリス本土を爆撃するなど…

歴史はフィクションである

本書の作者は西洋史を題材とした小説が得意で、1999年に「王妃の離婚」で直木賞を獲得したこともある。英仏100年戦争を舞台にしたものとして「傭兵ピエール」「赤目のジャック」などの作品がある。ただ本書は小説ではなく、作者のバックボーンたる英仏100年…

死者常食族ウェンドルの正体

1976年発表の本書は、以前「アンドロメダ病原体」や「5人のカルテ」を紹介した才人マイクル・クライトンの第7作にあたる。上記2作は医師ならではの作品なのだが、進化論や歴史にも知見を持つ作者は、本書のような歴史書に近い作品も遺している。 10世紀、…

正しいこと、イスラエルと世界のため

「アラブの海に浮かぶ国」イスラエルは40年前の昨日、イラクの狂犬と呼ばれたサダム・フセインが建設中だった原子炉を空爆し、これを完全に破壊した。サダムはこの原子炉「オシリス」を使って核兵器開発を考えていたと思われ、アラブ諸国の核武装はユダヤ民…

1944年6月6日

僕の本棚にあるDVDは少ないが、その一つが「The Longest Day」である。言うまでもなく、第二次世界大戦のハイライト、ノルマンディ上陸作戦を描いたものだ。後に「プライベート・ライアン」でディーテールが描かれるが、本編の壮大なスケールには及ばない様…

ウクライナから見たロシア

昨日・一昨日と、トランプ&プーチンの力の源泉や関係性について紹介してきた。本書はそのプーチンの「正体」を暴きたいと、ウクライナ人の研究者グレンコ・アンドリー氏が日本語(!)で書き下ろしたもの。冒頭日本人だけではないが、プーチンへの幻想を持…

無自覚の工作員

昨日トランプ&プーチンという2人の大統領が、キリスト教福音派やロシア正教からは理想的な首班であるとする書を紹介した。ではこの2人はどう繋がっているのだろうか?公式には2017年のヘルシンキでのG20会合が初対面だとなっているが、2013年にはミスユニ…

ロシアの海への執念

著者大江志乃夫は歴史学者、陸軍軍人の家に生まれ、自身も陸軍士官学校在籍中に終戦を迎えている。名古屋大学経済学部卒、東京教育大教授から茨城大学へ移り茨城大名誉教授として2009年に亡くなっている。明治から昭和にかけての時代を切り取るような著書が4…

世相ゆえか、因習ゆえか

以前横溝正史の「八つ墓村」を紹介した時に、この村で起きた32名の惨殺事件は史実上の「津山事件」を下敷きにしたとコメントした。この事件は、松本清張も犯罪実録集の中で取り上げている。本書はこの事件の経緯を追うだけでなく、自殺した犯人都井睦雄の22…

オリジナルにあたる歴史研究

今年になって「米国ソラリウム委員会が、中国のサイバー攻撃によって米国の被害は3,000億ドルに達する」とした記事を議論していると、委員会(政府の権威ある機関)は金額まで出していなかったことが分かった。委員会レポートに「大紀元」というメディアが金…