新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

大型ノート三冊分の記録

零戦こと零式艦上戦闘機は、その名の通り紀元2,600年(1940年)に制式となった帝国海軍の戦闘機である。その驚くべき航続距離は、広い太平洋で十二分の威力を発揮した。しかし、多少の改造はあったものの後継機に恵まれず、旧式化しながら1945年の終戦まで戦…

組織を率いるための聖書

年末に塩野七生著「日本人へ~リーダー論」を読んで、ああこの人もローマ帝国初期の「小さな政府」を理想とする人だと改めて感じた。来年度予算が106兆円を超えるなど日本がどんどん大きな政府に向かっていくのを、僕は呆然と見送っているだけだ。一方で「公…

組織で生き延びるための聖書

以前ウォルフガング・ロッツの自伝「シャンペン・スパイ」を紹介しているが、彼はモサドの実在した大物スパイである。その紹介文の中にも本書にある「スパイの適格性テスト」のことを書いたのだが、今日はその書「スパイのためのハンドブック」をご紹介しよ…

第三次世界大戦に備えて

中東で、アフリカで、アジアで・・・紛争の種はくすぶり続けている。世界中が相互不信に陥っている印象すらあって、どこかで上がった火の手が世界を覆ってしまうかもしれないと、僕は危惧している。 20世紀、人類は二度の世界大戦を経験した。今世紀三度目が来…

この人も「小さな政府」論者

本書は「ローマ人の物語」など数多くの著作で知られ、紫綬褒章や文化功労章など数々の「勲章」をお持ちの塩野七生さんのエッセイ集。時代的には2005年ころで、世界ではイラク戦争、日本では小泉・竹中改革が進行していた。イタリアに憧れ、イタリアに住み、…

サイバー戦争への覚悟

本書も今月20日に出版されたばかりの本、これも著者からいただいたものだ。先月2012年発表の「サイバーテロ、日米対中国」を紹介した、慶應大学土屋教授の近著である。著者は(お読みになったかどうかは知らないが)僕の拙劣なコメントも莞爾と許していただ…

原中将の「軍備改変」構想

太平洋戦争はほとんどが島嶼の争奪戦で終始し、空母艦隊や水陸両用戦部隊の活躍ばかりが目立った。従って「日の丸戦車隊」がその威力を見せたのは、序盤のマレー半島電撃戦くらいのものである。もちろん欧米の戦車と平地で戦えば、全く相手にならなかったこ…

戦場を制したもの(~1942.1)

第二次世界大戦、特に欧州大戦の陸戦の花形は「戦車」だった。実際に戦場を制したものとしては「砲兵」が挙げられるのだが、撃つ方からしてみれば戦果がどれ程挙がったかは後にならないと分からない。戦車戦なら、目の前の戦車が煙を吹けば勝ったと分かる。…

海軍築城設営戦の教訓

先月「軍艦メカ開発物語」で日本海軍の制御技術について勉強した話を紹介した。本書は同じく土木工学についての好著である。著者は日本大学工学部土木工学科を卒業し太平洋戦争中の1942年に海軍施設系技術士官の第一期生として任官している。終戦時、海軍技…

逆説的論理による戦略論

本書は米国大手シンクタンクCSISの上級顧問である著者に、訳者の奥山真司がインタビューした10編の記事をまとめたもの。著者エドワード・ルトワックはルーマニア生まれのユダヤ人、イタリアで育ち英国に渡り軍属として英国籍を取得している。専門は軍事史、…

狙撃手は3人いた

57年前の今日、テキサス州ダラス市街でケネディ大統領が暗殺された。ソ連帰りの元海兵隊員オズワルドが逮捕されたが、警察からの移送中に彼も暗殺されてしまった。事件はオズワルドの単独犯行で一応の決着を見たが、それを信じない人は多い。1992年にはオリ…

北朝鮮を理解する基礎

1950年6月、金日成の北朝鮮軍は38度線を越えて「南朝鮮」に侵攻、瞬く間にソウルを陥とし釜山近くまで進撃する。その後米軍中心の国連軍が仁川に上陸作戦を敢行、逆に平壌を陥とし鴨緑江まで攻め上るが中国軍の介入で後退、結局38度線で停戦することになる…

B-17, Queen of the Sky

「本棚」ではないのだが、このところ古い映画を見てついコメントしたくなることがある。今日はそんな一つの映画を紹介したい。題名は「頭上の敵機」、原題は「12-O'clock High」で、12時上空とは真上を指す。舞台となっているのは1942年ころの欧州西部戦線。…

大物すぎるスパイの戦果

ウォルフガング・ロッツはユダヤ系ドイツ人。少年時代にユダヤ人の母親に連れられてパレスチナの地に渡り、ナチスの迫害を逃れるだけでなく英軍に加わって北アフリカ戦線で戦った。といってもドイツ語の話せる彼は、もっぱらロンメル軍団の捕虜尋問にあたっ…

トランプ先生は戦争を起こせるか?

先週「軍人が政治家になってはいけない本当の理由」を紹介したが、その中で米国で軍によるクーデターが一度も起きていない理由として、米軍が以下の点を徹底していることが挙げられていた。 ・政治決定に対する絶対的な服従 ・政治的な中立性 それゆえに、本…

第二次欧州大戦の前哨戦

1936年から3年間、スペイン全土で戦われた共和国軍と反乱軍の戦い。諸説あるが数十万人の犠牲者を出し、数多くの悲劇的なエピソードを生んだ戦いである。本書(1986年発表)は、スペインの歴史家ピエール・ヴィラールが80歳の時に書き下ろしたもの。フラン…

保健予備隊の闘い

戦争に医療は不可欠、元々頑健な肉体や十分な栄養補給が必要だし、戦場は危険で不潔なところである。戦傷だけでなく防疫や健康管理に至るまで、医療担当部署の責務は重い。太平洋戦争の終戦後まで含めて5年以上を軍医として従軍した柳沢医師が、戦後に戦時…

十二試艦戦への要求仕様

零式艦上戦闘機、通称「レイ戦」こそが、日本にとっての太平洋戦争の主役だった。この機種が空を制していた時期には日本軍は勝ち続け、その能力を失った後は負け続けた。本書は「零戦」の主任設計者堀越二郎が、その戦闘機の生涯を回顧したものである。 筆者…

日英同盟のきっかけ

「北京の55日」という大作映画がある。1900年の清朝末期の義和団事件を描いたもので、主演は米国海兵隊のマット・ルイス少佐役のチャールトン・ヘストン。この作品には、伊丹十三が演じた日本陸軍の柴五郎中佐も登場する。エヴァ・ガードナー(ロシアの男爵…

三度皇帝になった男

このところ、どうしても中国という国のことが気になって仕方がない。陳舜臣の歴史ものや、柘植久慶の戦記などを読みながら、近代史はどうだったのだっけと本書を再読してみた。万里の長城の北、熱河省から黒河省にいたる広大な土地に、13年間だけ存在したの…

中国、その壮大な戦いの場

このところ柘植久慶の「逆撃:三国志シリーズ」を2作紹介したこともあって、本書を読み返してみた。古今の戦争・戦史に詳しい作者だが、三国志のころは「中国史のなかで最も魅力あふれる時代」(まえがき)と評している。三国志といえばキラ星のように登場…

Fighterの技術的な魅力

以前「戦車対戦車」を紹介した、三野正洋の技術的な戦闘機比較論が本書。翼面荷重・馬力荷重・翼面馬力や、速度・旋回・防御の指数、さらに設計効果や生産効果まで指数化して、第一次世界大戦から第二次世界大戦、戦後のレシプロ戦闘機を100機種近く比較研究…

東西33の海戦記録

本書は、作者が高校教員をしながら雑誌「海と空」に1957年から連載した小編を集めて文庫化したものである。第二次世界大戦の戦記や兵器についての著作が多い人だ。33編の内訳は、太平洋での戦いが16、地中海・大西洋での戦いが17となっている。 15ページ/編…

ハイテク戦争研究者の戦後

高木彬光「悪魔の嘲笑」を読んで、「陸軍登戸研究所」の毒薬が出てきたので、本棚を探して本書をもう一度読んでみた。太平洋戦争が終わって30年近くたった1984年に発表された本書は、作者が「陸軍登戸研究所」の生き残りを探して日米のみか中国にまで足を伸…

「徴員」という不思議な身分

東郷艦隊がバルチック艦隊を破った20世紀初頭、戦闘艦のエネルギー源は石炭だった。その後石油が動力源として台頭したが、日本列島は石炭は産しても石油はほとんどない。満州事変から大陸での戦線が拡大してゆくにつれ、日本政府(軍)は戦争には石油が必要…

海洋国家日本の再出発

著者松村劭は元陸将補、在日米軍との共同作戦計画にも関わる一方、防衛研究所研究員も務め、英米の軍事研究機関との付き合いも深かった人だ。2010年に亡くなるのだが、35冊ほどの著作があり僕はその半分程度は読ませてもらった。陸自の人だが、海洋関係の著…

中国で王朝が滅びる時

「国家安全法」が施行されることになって、香港の自治は風前の灯になった。香港は英国が1997年まで租借、共産主義中国が自由社会に開いた数少ない窓だった。返還後も50年間は「一国二制度」で自由市場であるはずだったのが、今その歴史を終わろうとしている…

元自衛官の人と話す前に

サイバーセキュリティなどという(一般の人からの印象では)陰気で危険なことに関わりあっていると、どうしても犯罪からみや軍事からみの話が多くなる。中学生の頃から海外ミステリーに溺れ、大学生になっては軍事関係の書を読み漁り「机上演習」までやった…

技術者視点での戦車の優劣

三野正洋という人は大学教員(工学部)が本職だが、数多くの戦争関連著作がある。いずれも工学研究者らしい、エンジニアリング視点に立ったものだ。そこに示される冷徹な数値は、「無敵皇軍」とか「撃ちてし止まん」などという感情論とは無縁のものだ。 本書…

空を飛ぶモノへの憧れ

著者は1917年生まれ、幼いころからヒコーキというものに魅せられた生涯を送った人である。実家が写真館で飛行機の写真に触れる機会も多く、子供の頃に実際に乗ってみた経験もある。当時の飛行機は原始的なものだったが、大人になった著者は「飛行機映画がタ…