新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

哲学者たちの太平洋戦争

これまで日本海軍についてはさまざまな技術的、経済的な分析をした書を紹介しているが、2001年発表の本書は「思想戦」がテーマ。真珠湾攻撃の直前から、京都学派と呼ばれる哲学者たちが、 ・日米開戦の回避 ・一日も早い有利な条件での終戦 ・敗戦後の処理を…

<歴史街道>のWWⅡ分析記事

2019年発表の本書は、PHP研究所の月刊誌<歴史街道>に掲載された、太平洋戦争関連の記事15編を収めたもの。初出は2008~2019年と様々だが、歴史研究なので古い記事でも参考になると考えて買ってきた。著者は複数の記事を書いた人もいるので12人。したがって…

旧日本軍の兵器とその開発背景

2005年発表の本書は、以前「パールハーバーの真実*1」などを紹介した軍事ライター兵頭二十八氏と、歴史評論家別宮暖朗氏の共著。WWⅡで使用された旧日本軍の兵器は、速戦即決型の戦争を戦うために開発されたもので、長期の戦争に耐えるものではなかった。特に…

第二次欧州大戦、不思議な50話

2004年発表の本書は、以前「へんな兵器」「WWⅡ秘話」を紹介した軍事史ライター広田厚司氏の「不可解・奇妙・偶然」なエピソード集。戦争は常にカオスであり、信じがたいことが起きる。筆者はWWⅡ戦史を専門に雑誌<丸>などに寄稿していて、単独では物語にな…

足掛け180年、海の支配者の変遷

2024年発表の本書は、佐々木孝博元海将補の「軍艦の歴史」。筆者は防衛大学校時代に師事した野村實氏の「海戦史に学ぶ*1」を継ぐものとして本書を書いたと思われる。1852年ペリー来航以来、海に支配者がどう変遷してきたかの歴史である。 WWⅡまでの軍艦につ…

「文明の十字路」の今

2023年発表の本書は、中東調査会研究主幹青木健太氏の<アフガニスタンの今>。アケメネス朝ペルシア(前6世紀)から、アレクサンダー大王の東征など幾多の歴史に登場する「文明の十字路」なのだが、反面「帝国の墓場*1」とも呼ばれるのがこの地。 1973年ザ…

兵卒の近代化に寄与はしたが・・・

2002年発表の本書は、日本の近現代史が専門の一橋大吉田裕教授の「天皇の軍隊の功罪」。先月落合弘樹著「秩禄処分」で、明治維新における武士(という軍事専門家)のリストラ次第を紹介したが、武士の穴を埋めたのが1873年に発布された徴兵制である。 急激な…

独立、脱植民地、開発そして民主化

2008年発表の本書は、アジア近代史の著書が多い元NHK記者宮城大蔵氏の、インドネシア周辺の戦後史。旧宗主国のオランダやマレーシア等を支配していた英国、ベトナム戦争に介入した米国に加え、一時期占領統治した日本が、戦後どのようにこの地域の政治に関わ…

柘植久慶が選ぶ「世界の陸戦20」

2009年発表の本書は、軍事史作家柘植久慶の歴史上の陸上戦闘分析。似たテーマで松村劭元陸将の書も紹介しているが、そこで取り上げられなかった近代の戦いも紹介されている。特徴的なのは作者自身が戦闘の現地を実際に歩く、フィールドワークを経ての分析で…

この世界に「安心」という言葉はない

2024年発表の本書は、以前「日本人が知らない集団的自衛権*1」を紹介した、軍事アナリスト小川和久氏の「台湾有事分析」。日米のシンクタンク等が実施したシミュレーションをいくつも紹介し、日米台の東アジアにおける(2023年当時の)戦力と、人民解放軍の…

「Tax Eater」を減らした事例

1999年発表の本書は、京都大学人文科学研究所の落合弘樹氏の「明治維新行革史」。江戸時代の士農工商制度は、多くの「Tax Eater」を抱えたものだった。近代国家に生まれ変わるにあたり、税金(年貢)で生活している士族を減らすことは急務だった。しかし誰し…

日本有事に向けた体制整備

2024年発表の本書は、日本の中枢で防衛を考えている人たちの<日本有事の対応論>。何作か紹介している、2人の元内閣官房副長官補、兼原信克氏と高見澤將林氏がホスト役になり、以下の4テーマに分けて、各省OBの専門家(*1)と議論した対談集である。 ■エ…

全斗煥大統領を暗殺せよ

今日10月9日は、1983年に「ラングーン事件*1」が起きた日。2013年発表(邦訳は2021年)の本書は、韓国駐日大使でもあった羅鐘一氏の大統領暗殺未遂事件とその実行犯について調査したノンフィクション。 WWⅡの後民族分断国家となった北朝鮮と韓国だが、当初…

巨大官僚機構の200年史(後編)

革命によってドイツ帝国は倒れ、ドイツはWWⅠの敗戦国となった。政治家や将軍は表舞台を去ったが、参謀本部は残った。ワイマール共和国への移行に向けて、膨大な作業があったからである。暫定的な国軍は40万人規模と言われたが、戦勝国は10万人まで減らせと言…

巨大官僚機構の200年史(前編)

「勝つときは容赦なく勝つが、より良い負け方を知らない」というのが、識者のドイツ軍に対する評価である。ドイツは統一が遅れた国家であり、中心となったのは現在の北ポーランドからベルリンに至る大きくない領土を守っていたプロイセン=ブランデンブルク…

総合安全保障のススメ

昨日紹介した「尖閣問題」、著者の春原氏と米国の親日派アーミテージ元国務長官、ナイ元国防次官補の鼎談も以前紹介している(*1)。御三方とも亡くなってしまったが、問題はより大きく切迫したものになっている。米中対立やトランプ2.0政権の不安定さもある…

日中対立ドキュメント2010~2013

2013年発表の本書は、先日60歳の若さで亡くなった(*1)日経紙の記者春原剛氏の、尖閣諸島国有化レポート。2010年9月、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりしてくる事件が発生。2004年小泉内閣当時、上陸してきた中国人を強制送還して以来…

その国の性格を表すところ

2023年発表の本書は、出版社勤務から実業と著作の二刀流を続ける内藤博文氏の「歴史から見た首都の意味」。その国の首都がどこにあるかで、国の性格が見えてくるという。歴史的に首都の位置がどう変わったか、その時国はどうだったのかを研究した結果である…

実録:戦時下の重要インフラ防御

本書も付き合いのあるNTT松原美穂子氏の新著、作者から送っていただいた今月出版されたばかりのものである。3年は続くロシア・ウクライナ戦争以前から、ウクライナの重要インフラへの攻撃は続いていた。サイバー空間は平時/戦時の境があいまいで、そこで最…

パリ発、プロパガンダではない歴史

本書はロシアのウクライナ侵攻直前の2021年冬に、フランスで出版されたウクライナの歴史。筆者は東欧が専門の政治学者アレクサンドラ・グージョン(ブルゴーニュ大学)講師。ロシアは数々のプロパガンダでウクライナを貶めている(*1)が、真実の歴史はこう…

欧州は意外に小さかった

1992年発表の本書は、以前「県民性の日本地図」「合戦の日本地図」を紹介した、明治学院大学武光誠教授の世界戦史。このころPHP文庫は<99の謎>シリーズを出版していて、そのうちの1冊である。トロイア戦争から湾岸戦争までと副題にあって、約3,200年の人…

文理融合の歴史防災学

2014年発表の本書は、以前「日本史の内幕」を紹介した歴史家磯田道史教授の「歴史に学ぶ防災学」。日本は災害列島であり、過去にも多くの巨大災害があった。これを地形や岩石等の分析によって研究するのは理系だが、筆者は古文書によって研究するという。両…

専門家もメディアも間違っている!

2024年発表の本書は、イスラム思想研究家の飯山陽氏による「パレスチナ問題解説」。筆者は<いかりちゃんねる>などで情報発信を続けていて、2023年11月のハマスのイスラエル奇襲以降、大量のコラムを発表した。 本書はnote「飯山陽のメディアが伝えない本当…

1982年生まれの2人の研究者

2025年発表の本書は、1982年生まれの戦争研究者2人の対談本。ロシアの専門家で戦争オタク系の小泉悠氏と、マッチョ系で東京国際大学の安全保障研究者山口亮氏である。オーストラリアで育った山口氏は、ベトナム戦争・湾岸戦争など多くの実戦に関わってきた…

大東亜戦争に至る思想史

1939年発表の本書は、思想家大川周明氏が遺した<大日本帝国が見るべき日本の歴史>。著者は5・15事件に連座したとして収監され、釈放されたのちに本書を著している。日中戦争から太平洋戦争に至る精神的背景になった書と見られ、著者はA級戦犯に指定された…

マルタの運命と石井部隊の戦後

1981年「悪魔の飽食」を、森村誠一が<赤旗>に連載する形で発表するや、国内はもとより海外からも多数の反響があった。悪名高い関東軍731部隊(通称:石井部隊)の所業については、関わった人達が「墓場まで持っていく」決意で口を開いていなかった。しかし…

WWⅡ直前の日ソ国境紛争

1939年の5月から9月にかけて、満州北西部の国境地帯で、日ソ両軍が激突したのが「ノモンハン事変」。まさにWWⅡ直前の紛争であり、近代戦にとって多くの示唆を得られた戦いだったはずだ。しかし(少なくとも)日本陸軍は学んだことを、後日に活かせなかった…

21世紀へ兵器体系の進化(1980~1990)

35年前の今日(1990.8.2)は、イラクのサダム・フセインがクウェートに侵攻した日。1996年発表の本書は、以前「ベトナム戦争」を紹介した三野正洋氏らのフォークランド紛争/湾岸戦争における兵器ハンドブック。 1982年4月、アルゼンチン海軍は南大西洋の英…

リアリストの「Strategy of Denial」

2024年発表の本書は、米国シンクタンク<マラソン・イニシャティブ>の共同代表エルブリッジ・コルビー氏の「対中国戦略論」。筆者は元CIA長官ウィリアム・コルビーの孫、国防総省や国務省で政策立案をし外国勤務も多い。40歳代の気鋭の戦略家であり、トラン…

インテリジェンス同盟の50年

2020年発表の本書は、英米両国の市民として諜報活動に携わった唯一の人アンソニー・R・ウェルズ氏の諜報50年史。英語を母国語とする英米加豪とニュージーランドの5ヵ国は、諜報同盟を結び「5Eyes」と呼ばれている。発端はWWⅡ中の1941年、英国チャーチル首相…