新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

最大の脅威は日本の経済力

バイデン政権が明確に「ライバルは中国」と名指ししたが、その少し前は「Pax Americana」の時代だった。1980年代に米ソ冷戦は解消に向かい、ライバルはいなくなった。しかしソ連の凋落・軟化と同時に、新しいライバルの芽が出てきたことはある。それが日本。…

ゲタ履きの万能機

航空戦力の充実が急務となっていた1930年代、各国は爆撃機・戦闘機だけでなく偵察機の開発にもしのぎを削った。陸戦と違って海上戦力は、どんなに強い戦闘力を持っていても、相手がどこにいるかが分からなければ戦いようがない。1万トン級の体躯を誇った巡…

断片しか知らない歴史

世界最強国家である米国が、アジアの小国に敗れた。この評価は正しくないかもしれないが、少なくとも米国人の多くはそういう傷を心に持っている。もちろんその小国とは日本ではない、ヴェトナムである。 第二次世界大戦に勝って唯一の超大国になった米国だが…

米軍が最大の犠牲を払った闘い

76年前の6月末、3ヵ月に及ぶ連合軍の沖縄作戦は終了しようとしていた。日本軍10万人、連合軍15万人が参加し、45万人の沖縄住民を巻き込んだ闘いだった。住民の1/3が犠牲になったとも言われ、その傷跡は今でも沖縄の地に残っている。 1944年10月、サイパン…

He219A-5/R2「ウーフー」

第二次世界大戦は、間違いなく「空の戦い」だった。陸戦・海戦を問わず、制空権なき側は必ず敗れた。また一般市民を巻き込んだ「戦略爆撃」という手法が、本格的にとられた闘いでもあった。第一次世界大戦では、ドイツの飛行船がイギリス本土を爆撃するなど…

歴史はフィクションである

本書の作者は西洋史を題材とした小説が得意で、1999年に「王妃の離婚」で直木賞を獲得したこともある。英仏100年戦争を舞台にしたものとして「傭兵ピエール」「赤目のジャック」などの作品がある。ただ本書は小説ではなく、作者のバックボーンたる英仏100年…

死者常食族ウェンドルの正体

1976年発表の本書は、以前「アンドロメダ病原体」や「5人のカルテ」を紹介した才人マイクル・クライトンの第7作にあたる。上記2作は医師ならではの作品なのだが、進化論や歴史にも知見を持つ作者は、本書のような歴史書に近い作品も遺している。 10世紀、…

正しいこと、イスラエルと世界のため

「アラブの海に浮かぶ国」イスラエルは40年前の昨日、イラクの狂犬と呼ばれたサダム・フセインが建設中だった原子炉を空爆し、これを完全に破壊した。サダムはこの原子炉「オシリス」を使って核兵器開発を考えていたと思われ、アラブ諸国の核武装はユダヤ民…

1944年6月6日

僕の本棚にあるDVDは少ないが、その一つが「The Longest Day」である。言うまでもなく、第二次世界大戦のハイライト、ノルマンディ上陸作戦を描いたものだ。後に「プライベート・ライアン」でディーテールが描かれるが、本編の壮大なスケールには及ばない様…

ウクライナから見たロシア

昨日・一昨日と、トランプ&プーチンの力の源泉や関係性について紹介してきた。本書はそのプーチンの「正体」を暴きたいと、ウクライナ人の研究者グレンコ・アンドリー氏が日本語(!)で書き下ろしたもの。冒頭日本人だけではないが、プーチンへの幻想を持…

無自覚の工作員

昨日トランプ&プーチンという2人の大統領が、キリスト教福音派やロシア正教からは理想的な首班であるとする書を紹介した。ではこの2人はどう繋がっているのだろうか?公式には2017年のヘルシンキでのG20会合が初対面だとなっているが、2013年にはミスユニ…

ロシアの海への執念

著者大江志乃夫は歴史学者、陸軍軍人の家に生まれ、自身も陸軍士官学校在籍中に終戦を迎えている。名古屋大学経済学部卒、東京教育大教授から茨城大学へ移り茨城大名誉教授として2009年に亡くなっている。明治から昭和にかけての時代を切り取るような著書が4…

世相ゆえか、因習ゆえか

以前横溝正史の「八つ墓村」を紹介した時に、この村で起きた32名の惨殺事件は史実上の「津山事件」を下敷きにしたとコメントした。この事件は、松本清張も犯罪実録集の中で取り上げている。本書はこの事件の経緯を追うだけでなく、自殺した犯人都井睦雄の22…

オリジナルにあたる歴史研究

今年になって「米国ソラリウム委員会が、中国のサイバー攻撃によって米国の被害は3,000億ドルに達する」とした記事を議論していると、委員会(政府の権威ある機関)は金額まで出していなかったことが分かった。委員会レポートに「大紀元」というメディアが金…

活字で読む「信長の野望」

今でも新バージョンが出ているかどうかは知らないが、「信長の野望」はKOEIが販売していたビデオゲームの名作である。ゲームの区分としては、日本の戦国時代を舞台にした戦略級。武将キャラに兵力を持たせ、野戦や攻城戦を戦わせる。力攻めだけではなく、敵…

日本人の思考1940(後編)

本書は「日本軍の小失敗の研究」の続編、1996年に発表されたものだ。著者三野正洋は技術者でありながら、本書には「未来を見すえる太平洋戦争文化人類学」と副題を付けている。日本軍が合理的でない思考をしていたことは前編でも何度も指摘されているが、本…

日本人の思考1940(前編)

三野正洋と言う人は日大講師の傍ら、技術者の視点から「戦略・作戦・戦術」に関する独自の分析をした著作を多く著わしている。以前「戦車対戦車」「戦闘機対戦闘機」という兵器の比較研究書は紹介している。今回は技術論ではなく軍(あるいは国)の思考にメ…

分かりやすく、子供にも分かるよう

先日、歴史探偵半藤先生と本書の筆者池上彰氏の対談風の本を紹介した。僕は筆者がNHKの人だったということしか知らず、TV番組で種々のニュース解説をされているのは知っていたが、まともに視聴したことは無い。だが上記の本を読んで、一度著作を読んでみたい…

平成って長かったんだ!

堺屋先生の本に「平成30年」という未来予想書があって、「失われた三十年」になるぞという警告本だった。不幸なことだが、その予想の多くは的中してしまったようだ。本書は、その30年間を2人のジャーナリストが総括したもの。先日他界された「歴史探偵」半…

経済事件1990年代

先月日経平均が30,000円を越え、バブル再来と言う人もいる。確かにこの基準を越えたのは30年前の「バブル期」以来である。そのころ僕は下っ端サラリーマン、周囲で景気のいい話が飛び交う中、戦争ゲームにうつつを抜かし「湾岸戦争」をTVで見て盛り上がって…

軍人の官僚としての評価

真珠湾攻撃など一時期華々しい戦果を挙げたことから、帝国海軍については戦後に至っても国民の人気は高かった。その海軍を戦乱に巻き込んだのは陸軍ではないかという議論があり、帝国陸軍の評価は高くない。そんな陸軍に「良識派」などいたのかと思う人もい…

11年前の安全保障論

本書の発表は2010年、日米両国で民主党政権で日本では菅(カン)総理、米国ではオバマ大統領の時代である。この時期、日米同盟は未曽有の危機にあった。前の鳩山総理が普天間問題を「最低でも県外」とのスタンスでオバマ大統領と交渉に当たり、「Trust me!」…

闘ってみるまでは分からない

昨日、北村淳著「シミュレーション日本降伏」を紹介した。中国の軍備(質×量)の充実は著しく、現在の日本の安全保障戦略では尖閣諸島はもちろん、その先さえ危ないという警告の書だった。米国在住で軍事情報に詳しい筆者だから、兵器の比較について勉強にな…

日中戦争の戦略論

先日「兵法がわかれば中国がわかる」で、この困った隣国の行動様式を勉強した。習大人がかなり威勢のいいことを言っているし、新年早々中国海警局の艦船が尖閣沖に出没している。日中間で何かが起きるとしたら、この海域である公算は高い方だろう。2019年発…

「万世一系」の出発点

以前、日本の「最も名探偵らしい名探偵」として紹介した東大医学部教授神津恭介だが、作者の高木彬光は彼の路線から「白昼の死角」「破戒裁判」などリアルなミステリーへと転身した。恭介の天才ぶりは現在の事件ではなく「歴史探偵」としてのシリーズで生か…

人物から見た「堺屋史観」

「企業参謀」の大前研一より、勉強のためにたくさん読んだのが堺屋太一の著作。小説もそうだが、歴史ものの論説は独特な語り口があって好きだった。その日本歴史観が前編後編2冊で読めるのが本書。多くの歴史小説や論説がここにダイジェストされている。 日…

もう一国、困った隣人

昨日中国の事を「困った隣人」と紹介したが、ある意味もっと困った隣人なのが韓国。徴用工問題・慰安婦問題など解決したかと思っていたら蒸し返されるし、どう考えても北朝鮮向けに必要ない空母の建造を計画したりする。空母など、どう見ても「仮想敵日本向…

困った隣人への対処を学ぶ

「COVID-19」の影響は最小限に食い止めたはずなのに、GDP2位の国とも思えぬ所業が目立つ中国。尖閣諸島沖での違法操業や台湾海峡で空母をデモンストレーションするなどは、まだかわいい方だ。昨年末には、全体的な国家安全保障の枠組みを構築するとして、重…

「海の忍者」の死に方

太平洋戦争での潜水艦戦というと、帝国海軍の潜水艦の喪失について語る書籍は多いのだが、本書は太平洋戦線での連合軍潜水艦の最期についてまとめたものだ。輸送船ばかりでなく大戦後期では主力艦(戦艦金剛や重巡摩耶、新鋭装甲空母大鳳まで)を沈めた連合…

大型ノート三冊分の記録

零戦こと零式艦上戦闘機は、その名の通り紀元2,600年(1940年)に制式となった帝国海軍の戦闘機である。その驚くべき航続距離は、広い太平洋で十二分の威力を発揮した。しかし、多少の改造はあったものの後継機に恵まれず、旧式化しながら1945年の終戦まで戦…