新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

日本人の思考1940(後編)

本書は「日本軍の小失敗の研究」の続編、1996年に発表されたものだ。著者三野正洋は技術者でありながら、本書には「未来を見すえる太平洋戦争文化人類学」と副題を付けている。日本軍が合理的でない思考をしていたことは前編でも何度も指摘されているが、本…

日本人の思考1940(前編)

三野正洋と言う人は日大講師の傍ら、技術者の視点から「戦略・作戦・戦術」に関する独自の分析をした著作を多く著わしている。以前「戦車対戦車」「戦闘機対戦闘機」という兵器の比較研究書は紹介している。今回は技術論ではなく軍(あるいは国)の思考にメ…

分かりやすく、子供にも分かるよう

先日、歴史探偵半藤先生と本書の筆者池上彰氏の対談風の本を紹介した。僕は筆者がNHKの人だったということしか知らず、TV番組で種々のニュース解説をされているのは知っていたが、まともに視聴したことは無い。だが上記の本を読んで、一度著作を読んでみたい…

平成って長かったんだ!

堺屋先生の本に「平成30年」という未来予想書があって、「失われた三十年」になるぞという警告本だった。不幸なことだが、その予想の多くは的中してしまったようだ。本書は、その30年間を2人のジャーナリストが総括したもの。先日他界された「歴史探偵」半…

経済事件1990年代

先月日経平均が30,000円を越え、バブル再来と言う人もいる。確かにこの基準を越えたのは30年前の「バブル期」以来である。そのころ僕は下っ端サラリーマン、周囲で景気のいい話が飛び交う中、戦争ゲームにうつつを抜かし「湾岸戦争」をTVで見て盛り上がって…

軍人の官僚としての評価

真珠湾攻撃など一時期華々しい戦果を挙げたことから、帝国海軍については戦後に至っても国民の人気は高かった。その海軍を戦乱に巻き込んだのは陸軍ではないかという議論があり、帝国陸軍の評価は高くない。そんな陸軍に「良識派」などいたのかと思う人もい…

11年前の安全保障論

本書の発表は2010年、日米両国で民主党政権で日本では菅(カン)総理、米国ではオバマ大統領の時代である。この時期、日米同盟は未曽有の危機にあった。前の鳩山総理が普天間問題を「最低でも県外」とのスタンスでオバマ大統領と交渉に当たり、「Trust me!」…

闘ってみるまでは分からない

昨日、北村淳著「シミュレーション日本降伏」を紹介した。中国の軍備(質×量)の充実は著しく、現在の日本の安全保障戦略では尖閣諸島はもちろん、その先さえ危ないという警告の書だった。米国在住で軍事情報に詳しい筆者だから、兵器の比較について勉強にな…

日中戦争の戦略論

先日「兵法がわかれば中国がわかる」で、この困った隣国の行動様式を勉強した。習大人がかなり威勢のいいことを言っているし、新年早々中国海警局の艦船が尖閣沖に出没している。日中間で何かが起きるとしたら、この海域である公算は高い方だろう。2019年発…

「万世一系」の出発点

以前、日本の「最も名探偵らしい名探偵」として紹介した東大医学部教授神津恭介だが、作者の高木彬光は彼の路線から「白昼の死角」「破戒裁判」などリアルなミステリーへと転身した。恭介の天才ぶりは現在の事件ではなく「歴史探偵」としてのシリーズで生か…

人物から見た「堺屋史観」

「企業参謀」の大前研一より、勉強のためにたくさん読んだのが堺屋太一の著作。小説もそうだが、歴史ものの論説は独特な語り口があって好きだった。その日本歴史観が前編後編2冊で読めるのが本書。多くの歴史小説や論説がここにダイジェストされている。 日…

もう一国、困った隣人

昨日中国の事を「困った隣人」と紹介したが、ある意味もっと困った隣人なのが韓国。徴用工問題・慰安婦問題など解決したかと思っていたら蒸し返されるし、どう考えても北朝鮮向けに必要ない空母の建造を計画したりする。空母など、どう見ても「仮想敵日本向…

困った隣人への対処を学ぶ

「COVID-19」の影響は最小限に食い止めたはずなのに、GDP2位の国とも思えぬ所業が目立つ中国。尖閣諸島沖での違法操業や台湾海峡で空母をデモンストレーションするなどは、まだかわいい方だ。昨年末には、全体的な国家安全保障の枠組みを構築するとして、重…

「海の忍者」の死に方

太平洋戦争での潜水艦戦というと、帝国海軍の潜水艦の喪失について語る書籍は多いのだが、本書は太平洋戦線での連合軍潜水艦の最期についてまとめたものだ。輸送船ばかりでなく大戦後期では主力艦(戦艦金剛や重巡摩耶、新鋭装甲空母大鳳まで)を沈めた連合…

大型ノート三冊分の記録

零戦こと零式艦上戦闘機は、その名の通り紀元2,600年(1940年)に制式となった帝国海軍の戦闘機である。その驚くべき航続距離は、広い太平洋で十二分の威力を発揮した。しかし、多少の改造はあったものの後継機に恵まれず、旧式化しながら1945年の終戦まで戦…

組織を率いるための聖書

年末に塩野七生著「日本人へ~リーダー論」を読んで、ああこの人もローマ帝国初期の「小さな政府」を理想とする人だと改めて感じた。来年度予算が106兆円を超えるなど日本がどんどん大きな政府に向かっていくのを、僕は呆然と見送っているだけだ。一方で「公…

組織で生き延びるための聖書

以前ウォルフガング・ロッツの自伝「シャンペン・スパイ」を紹介しているが、彼はモサドの実在した大物スパイである。その紹介文の中にも本書にある「スパイの適格性テスト」のことを書いたのだが、今日はその書「スパイのためのハンドブック」をご紹介しよ…

第三次世界大戦に備えて

中東で、アフリカで、アジアで・・・紛争の種はくすぶり続けている。世界中が相互不信に陥っている印象すらあって、どこかで上がった火の手が世界を覆ってしまうかもしれないと、僕は危惧している。 20世紀、人類は二度の世界大戦を経験した。今世紀三度目が来…

この人も「小さな政府」論者

本書は「ローマ人の物語」など数多くの著作で知られ、紫綬褒章や文化功労章など数々の「勲章」をお持ちの塩野七生さんのエッセイ集。時代的には2005年ころで、世界ではイラク戦争、日本では小泉・竹中改革が進行していた。イタリアに憧れ、イタリアに住み、…

サイバー戦争への覚悟

本書も今月20日に出版されたばかりの本、これも著者からいただいたものだ。先月2012年発表の「サイバーテロ、日米対中国」を紹介した、慶應大学土屋教授の近著である。著者は(お読みになったかどうかは知らないが)僕の拙劣なコメントも莞爾と許していただ…

原中将の「軍備改変」構想

太平洋戦争はほとんどが島嶼の争奪戦で終始し、空母艦隊や水陸両用戦部隊の活躍ばかりが目立った。従って「日の丸戦車隊」がその威力を見せたのは、序盤のマレー半島電撃戦くらいのものである。もちろん欧米の戦車と平地で戦えば、全く相手にならなかったこ…

戦場を制したもの(~1942.1)

第二次世界大戦、特に欧州大戦の陸戦の花形は「戦車」だった。実際に戦場を制したものとしては「砲兵」が挙げられるのだが、撃つ方からしてみれば戦果がどれ程挙がったかは後にならないと分からない。戦車戦なら、目の前の戦車が煙を吹けば勝ったと分かる。…

海軍築城設営戦の教訓

先月「軍艦メカ開発物語」で日本海軍の制御技術について勉強した話を紹介した。本書は同じく土木工学についての好著である。著者は日本大学工学部土木工学科を卒業し太平洋戦争中の1942年に海軍施設系技術士官の第一期生として任官している。終戦時、海軍技…

逆説的論理による戦略論

本書は米国大手シンクタンクCSISの上級顧問である著者に、訳者の奥山真司がインタビューした10編の記事をまとめたもの。著者エドワード・ルトワックはルーマニア生まれのユダヤ人、イタリアで育ち英国に渡り軍属として英国籍を取得している。専門は軍事史、…

狙撃手は3人いた

57年前の今日、テキサス州ダラス市街でケネディ大統領が暗殺された。ソ連帰りの元海兵隊員オズワルドが逮捕されたが、警察からの移送中に彼も暗殺されてしまった。事件はオズワルドの単独犯行で一応の決着を見たが、それを信じない人は多い。1992年にはオリ…

北朝鮮を理解する基礎

1950年6月、金日成の北朝鮮軍は38度線を越えて「南朝鮮」に侵攻、瞬く間にソウルを陥とし釜山近くまで進撃する。その後米軍中心の国連軍が仁川に上陸作戦を敢行、逆に平壌を陥とし鴨緑江まで攻め上るが中国軍の介入で後退、結局38度線で停戦することになる…

B-17, Queen of the Sky

「本棚」ではないのだが、このところ古い映画を見てついコメントしたくなることがある。今日はそんな一つの映画を紹介したい。題名は「頭上の敵機」、原題は「12-O'clock High」で、12時上空とは真上を指す。舞台となっているのは1942年ころの欧州西部戦線。…

大物すぎるスパイの戦果

ウォルフガング・ロッツはユダヤ系ドイツ人。少年時代にユダヤ人の母親に連れられてパレスチナの地に渡り、ナチスの迫害を逃れるだけでなく英軍に加わって北アフリカ戦線で戦った。といってもドイツ語の話せる彼は、もっぱらロンメル軍団の捕虜尋問にあたっ…

トランプ先生は戦争を起こせるか?

先週「軍人が政治家になってはいけない本当の理由」を紹介したが、その中で米国で軍によるクーデターが一度も起きていない理由として、米軍が以下の点を徹底していることが挙げられていた。 ・政治決定に対する絶対的な服従 ・政治的な中立性 それゆえに、本…

第二次欧州大戦の前哨戦

1936年から3年間、スペイン全土で戦われた共和国軍と反乱軍の戦い。諸説あるが数十万人の犠牲者を出し、数多くの悲劇的なエピソードを生んだ戦いである。本書(1986年発表)は、スペインの歴史家ピエール・ヴィラールが80歳の時に書き下ろしたもの。フラン…