新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

南から北へ、12のお城

海音寺潮五郎という作家には、あまり縁がなかった。歴史ものを多く残した人で、故郷の英雄西郷隆盛の史伝を執筆中に亡くなったという。僕自身は、小学生のころに「天と地と」を読んだくらいしか記憶がない。その年大河ドラマで「天と地と」が放映されていて…

鉄道考古学者の旅

作者の宮脇俊三という人は、中央公論社の役員まで務めた後は好きな鉄道を追いかけて、中国、シベリア、インドまでも行ったうらやましい人である。在職中から金曜日になると落ち着かないという理由は、来週金曜日の夜行列車の予約をするかどうか迷うから。か…

副砲の役割

戦艦は、20世紀前半の「最終兵器」だった。空母機動部隊や長距離爆撃機、核兵器が現れるまで、保有する戦艦の質×量は、国力の大きな指標だった。戦艦の基本性能は、搭載している巨大な大砲のそれと言っていい。戦艦とは、巨砲を運ぶプラットフォームである。…

太平洋の長距離戦闘機(後編)

第二次世界大戦も後半、米国の巨大な工業力と技術力は続々と新鋭兵器を開発・配備させることができた。日本が結局持つことができなかった四発の戦略爆撃機B-17⇒B-29、空母艦隊に随伴可能な高速戦艦アイオワ級、対空火力を飛躍的に向上させる近接信管…

太平洋の長距離戦闘機(前編)

もうじき、真珠湾作戦から78年になる。世界一広い太平洋を巡って、2つの海棲国家が覇権を争った。当時すでに軍縮条約の期限は切れていたが、条約に定めた「英・米・日の主力艦等の比率は5・5・3」というのは割合実態を表していて、この3国が世界をリー…

拡張されたパナマ運河

パナマ運河の拡張工事が終了して2年になる。報道によれば、コンテナ積載量5,000個までの船舶しか通行できなかったが、今後は13,000個積載船舶も通行可能となるという。もう少し詳しく見てみると、通行できる船舶のサイズは、全長:294m、全幅:32.3m、喫水…

近衛連隊、最前線へ

防衛省(当時は防衛庁)は山手線の中心に近い市ヶ谷にあるのだが、これは官僚組織。山手線内にある実戦部隊というのは、陸上自衛隊第32普通科連隊だけなのだそうだ。自衛隊は憲法の規定により軍隊とは呼べないので、「自衛」のためのものという名を付けられ…

ユダヤ旅団の「新十戒」

ホロコーストという言葉はナチスによるユダヤ民族への迫害、民族浄化計画を指すことが多いが、もともとはユダヤ教の獣を丸焼きにして供える祭りのことを示すギリシア語だという。ナチス・ドイツ勢力下の広大な地域(西はフランスから東はウクライナまで)で…

日本の軍備への教訓

防衛省の概算要求は史上最高額になった。米国からのイージスアショアをはじめとする装備購入が多いのを、問題視する人たちもいる。一方で自衛隊員の充足率は低いままで、定年を延ばさないと最低限の要員も確保できないともいう。 北朝鮮の非核化など幻想だと…

都市インフラと軍事構想

いつもお世話になっている地下鉄や地下街、そこにこんな秘密や歴史が隠されているとは思いもしなかった。以前NHKの番組「ブラタモリ」が東京駅周辺の地下街を特集したものを見て、歩きなれた大手町や八重洲の地下街の裏側を少し知ったのだが、本書はその…

仮装巡洋艦

第一次世界大戦と第二次大戦でよく似た状況になったこととしては、イギリス周辺から大西洋にかけての海域における通商破壊戦が一番ではないかと思う。イギリスは我が国同様島国(海洋国家)であり、大陸からの直接侵攻は難しいとしても、補給を止められれば…

大物すぎるスパイの戦果

ウォルフガング・ロッツはユダヤ系ドイツ人。少年時代にユダヤ人の母親に連れられてパレスチナの地に渡り、ナチスの迫害を逃れるだけでなく英軍に加わって北アフリカ戦線で戦った。といってもドイツ語の話せる彼は、もっぱらロンメル軍団の捕虜尋問にあたっ…

現場指揮官の心得

柘植久慶という作家は、多くの戦争/戦闘小説のほかにもビジネス書やサバイバル書を書いている。まだ30歳代だったころ、出会ったのがこの本。「戦場のサバイバル」という著作は、そのままウォーゲームでいう戦闘級の教本だが、本書は戦術級の教本でもある。…

代表的なドキュメンタリー戦記

児島襄(こじま・のぼる)という作家がいる。僕も最初「こじま・じょう」と呼んでいたが、そう言った編集者が作者に殴り倒されたともいう。相手は190cm、120kgの巨漢である。僕は編集者でなくてよかったと思う。 この「日露戦争」は、全8巻の大作である。僕…

幻の英国本土上陸作戦

1940年ナチスドイツが大陸を席捲しひとりイギリスのみがヒトラーに抵抗していたころ、英仏海峡を渡ってドイツ軍が殺到しているという危機は現実のものになりつつあった。実際「あしか(Sea Lion)作戦」がドイツ軍によって企画され、制空権が握れれば、決行…

Their Finest Hour

この言葉は、イギリス首相ウィンストン・チャーチルが、1940年のイギリスが一番苦しい時に言ったものらしい。前年ポーランドを数日で片付けたドイツ第三帝国は、この年ノルウェー・デンマーク・オランダ・ベルギー・ルクセンブルクから大陸軍国であるフラン…

戦略上の要衝にあるゆえに

沖縄の選挙では与党は3連敗している。直近の衆議院議員補欠選挙も、現地出身の元大臣を擁立しながら政治経験のないジャーナリストに敗れた。一方で辺野古基地拡張工事はつづいていて、正直こじれきった事態で、先行きがを憂慮される。ただ僕は普天間基地周…

世界平和を乱す疾病

相変わらずトランプ先生の傍若無人さは止まらない。イラン核合意はカミクズだと言い、ペルシア湾の緊張が高まっている。中国は「約束を破った」そうで、全輸入品に25%の追加関税をかけた。北朝鮮の飛翔体については、「深刻だ」と言ったかと思えば「発射に…

「String Bag」の戦果

マレー沖海戦で、海軍航空隊の「空飛ぶ駆逐艦」である陸上攻撃機が、イギリスの新鋭戦艦・巡洋戦艦を仕留めた話を以前ご紹介した。この時、英軍側は雷撃機の速度を見誤って迎撃に失敗したという。つまり、想定の倍くらいの速度で襲い掛かってくる敵機への対…

4,000年の重み

中国は「権謀術数」の国だという。まあ、日本を含めてどの国でもその要素や歴史はある。俗に「中国4000年」というが、古くから文明が栄え記録が残されていることで、権謀術数の歴史がいっぱい積み重なっている。陳舜臣には「中国の歴史」全7巻と「小説十八…

撃ちてし止まむ

第二次世界大戦における日系アメリカ人の苦難については、山崎豊子「二つの祖国」などで紹介されている。この書はNHKの大河ドラマにもなって、日系二世部隊の存在や活躍は広く知られるに至った。本書は、2003年にノンフィクション作家である渡辺正清が、日系…

Diable Rouge / Red Baron

第一次世界大戦の新兵器と言えば、航空機・潜水艦・毒ガス・戦車などが挙げられるだろう。「殺し合いともなれば、人間の発明の能力は無尽蔵」とUボートエースのペーター・クレーマーが話しているように新兵器は続々登場する。その中で航空機は最初は偵察に…

天皇の島の70日間

パラオ諸島は第一次世界大戦後、敗戦国ドイツから戦勝国日本に割譲された。ほぼ日本の真南に位置し、南太平洋の中でも良港がある。基本的にはサンゴ礁の島で、いまでもほとんどの島が無人島だ。日本からのスキューバダイビング客も多い。 しばらく日本の統治…

昭和天皇の弟君

世は「昭和」の次の「平成」、さらに「令和」になろうとしている。その三年前、三笠宮が亡くなったというニュース映像で、宮の軍服姿を見たのを覚えている。三笠宮は第二次大戦の終結を、中国大陸で陸軍の参謀として体験したという。昭和天皇には、3名の弟…

空飛ぶ砲兵Ju-87

第二次世界大戦の序盤から中盤にかけて、ドイツ軍の攻勢を支えたのは諸兵科連合の思想と制空権の確保というドクトリンだった。後者を担ったのは、Bf-109に統一された戦闘機隊だし、前者に寄与したのは急降下爆撃機Ju-87だった。 電撃戦で「大陸軍国」フラン…

湾岸戦争(戦術編)

「砂漠の嵐」作戦は、1991年1月17日に空爆やミサイル攻撃で幕を開け、2月24日に地上戦に突入月内にクウェート全土を奪還して事実上終了した。この短い期間に、多国籍軍側は様々な兵器を投入、新兵器のテストをし旧兵器の最後の活用もした。 ◆空戦 多国籍軍は…

湾岸戦争(戦略編)

イラクがクウェート侵攻をしたとき、世界最強アメリカ軍の統合参謀本部議長の職にあったのは、コリン・パウエル将軍だった。ジャマイカ系アメリカ人であるパウエル将軍は、黒人として初めて軍のトップに昇り「ガラスの天井」を破った人物である。 統合参謀本…

湾岸戦争(政治編)

1990年8月2日、イラク・クウェート国境に集結していたイラク軍が国境を越えて侵攻。瞬く間にクウェートを占領してしまった。イラクは人口1,650万人、常備軍も約90万人持っている。人口170万人、常備軍2万人のクウェートに抵抗の余地はほとんどなかった。 T…

時代遅れのドクトリン

軍人は直近の大戦争のドクトリンで、次の大戦を戦うという。帝国海軍は日露戦争の、特にツシマこと日本海海戦の戦訓で太平洋戦争を準備した。大洋を越え遠征してくる敵国の主力艦隊、これを日本近海で待ち受け撃滅、制海権を失った敵国は講和へと傾く、とい…

帝国海軍の4発機

第二次世界大戦は、事実上「空の闘い」だった。巨大戦艦も重装備の戦車も、制空権なきところでは有効な働きはできなかった。大戦前の研究時代も含めて数多くの機体が構想・設計・試作され、その大半は日の目を見ることなく廃棄された。 十分な航空資材を得ら…