新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

技術のいたちごっこ

三匹の小魚を描いたUボート「U333」で何度も死地を潜り抜けて、ペーター・クレーマー艦長は終戦まで生き延びた。有名なUボート艦長の大半が戦死しているわけで、捕虜になれば幸運な職業とも言える。本書は、そのような地獄を行き抜いたUボート艦長の手記…

ドイツ人とナチス

イタリアの事情は知らないが、第二次世界大戦の敗戦国ドイツと日本の戦後には、ある程度共通したところがある。それは「戦争責任」を国全体で背負うというより、特定の勢力/集団に負わせたことだ。日本ではそれは軍部や戦犯であり、ドイツではナチス党であ…

陸上自衛隊の海上戦力

憲法9条の縛りだろうか、長く海外での活動を禁じられてきた「Japan Self Defense Force」、他国から見れば明らかに「Japanese Army/Navy/Air Force」なのだが。海外を文字通り「海の外」と解釈したのか、海上機動力の整備や軍用機の航続距離延伸には消極的…

巡洋艦の役割

第二次大戦以前戦艦・巡洋戦艦は主力艦と呼ばれ、最後は主力艦同士が撃ち合って国の争いに決着を付けるものと位置付けられていた。いわば、戦略兵器である。駆逐艦や水雷艇、潜水艦はと言えば、主力艦を守ることを含めた戦術兵器である。それでは、巡洋艦っ…

ツェッペリン飛行船

南ドイツ、バーデンウィッツベルグ州コンスタンツの船着き場に、背中に羽根を生やした男のモニュメントが建っている。イカロスのようにも見えるが、これがフェルディナント・フォン・ツェッペリン伯爵の像である。伯爵は飛行船の開発・運用に生涯や財産を掛…

占領憲法の矛盾

「日本占領」最終巻には、アイケルバーガー中将が離任して帰国した後の1948年末までが描かれている。本書のかなりの部分は、マッカーサー元帥がトルーマン大統領(民主党)の二期目の選挙に対抗馬として出馬することに費やされている。元帥は共和党から立候…

社会党の躍進とゼネスト

「日本占領」第二巻には、1946年の春から、翌年5月までの記録がある。マッカーサー元帥が最初に取り組んだ「軍事力の破壊」は、順調に進んだ。湾岸戦争後のイラクのようにゲリラ活動は全くなく、武装解除は速やかに行われ、アイケルバーガー中将の仮住まい…

南北日本、分断の危機

児島襄「日本占領」全3冊を読んだ。太平洋戦争の経緯は中学生のころに図書館で読んで以来、いろいろな本に出会ったし、2・26事件など真珠湾に至るまでの経緯も後に勉強した。しかし8・15以降のことは、ほとんど知らなかった。高校の「日本史」でも、日本の戦…

時代が捨てた人、求めた人

本書は「三人の戦争指導者に見る政戦略」と副題されていて、第二次世界大戦の戦争指導者3人(ヒトラー、チャーチル、ローズベルト)を、その戦略眼や政策実行力を評価したものである。3人と言ってはいるが、ヒトラー、チャーチルに各100ページを割いている…

首相の「師・友・秘書」

若くして政治を志し、僕らには分からない苦労を背負って政治家/国会議員を務めるなら、目標は大臣さらには総理大臣なのだろうと思う。首相のイスへの長いレースはもちろん、幸いにもそのイスに座ってからも孤独な闘いは続く。そんな日々を支えてくれるのは…

1機だけのB-29

74年前の今日、長崎に2発目の原爆が投下された。僕の親父はその目撃者である。今の長崎空港は大村湾の中に人工島として建設されているが、その北東に小規模な海上自衛隊の航空基地がある。さらにその北隣には陸上自衛隊の駐屯地もある。それらは、旧帝国海…

ウーゼドム島ペーネミュンデ

半島の付け根の国が、相変わらず騒がしい。何年か前中距離弾道弾「ムスダン」と思しき飛翔物を4発同時発射、日本海に着弾させた。移動式発射台を使っての斉射であり、軍事的脅威は増していると専門家は言った。続いて固体燃料の燃焼試験を満面の笑みを浮か…

ヒトラーの敵「黒いオーケストラ」

トランプ大統領は、就任前から中央情報局(CIA)を非難してきた。例えば、彼がロシアに弱みを握られているとの情報を流したのはCIAだというのである。便益よりもリスクが大きい組織だという認識から、CIAを縮小するとも言ってきた。メディアは、大統領と情報機…

名将リー将軍の銅像

南北戦争というのは、日本人にとってはなじみの薄い事件である。英語名称は「Civil War」というが、これは内戦のことである。こういうタイトルのゲームがあって、買ってはきたのだがまともにプレイできなかった。ゲームシステムそのものが難しいというよりも…

伝説の狙撃手が見たイラク戦争

クリス・カイル上等兵曹は特殊部隊SEALのメンバーとして4度イラク戦争に従軍し、160人もの敵を殺したという。米軍はかなり厳密な公式記録精度を持っていて、その場で第三者によって死亡が確認されたものを「射殺」と認めているので、実際に死傷させたの…

南から北へ、12のお城

海音寺潮五郎という作家には、あまり縁がなかった。歴史ものを多く残した人で、故郷の英雄西郷隆盛の史伝を執筆中に亡くなったという。僕自身は、小学生のころに「天と地と」を読んだくらいしか記憶がない。その年大河ドラマで「天と地と」が放映されていて…

鉄道考古学者の旅

作者の宮脇俊三という人は、中央公論社の役員まで務めた後は好きな鉄道を追いかけて、中国、シベリア、インドまでも行ったうらやましい人である。在職中から金曜日になると落ち着かないという理由は、来週金曜日の夜行列車の予約をするかどうか迷うから。か…

副砲の役割

戦艦は、20世紀前半の「最終兵器」だった。空母機動部隊や長距離爆撃機、核兵器が現れるまで、保有する戦艦の質×量は、国力の大きな指標だった。戦艦の基本性能は、搭載している巨大な大砲のそれと言っていい。戦艦とは、巨砲を運ぶプラットフォームである。…

太平洋の長距離戦闘機(後編)

第二次世界大戦も後半、米国の巨大な工業力と技術力は続々と新鋭兵器を開発・配備させることができた。日本が結局持つことができなかった四発の戦略爆撃機B-17⇒B-29、空母艦隊に随伴可能な高速戦艦アイオワ級、対空火力を飛躍的に向上させる近接信管…

太平洋の長距離戦闘機(前編)

もうじき、真珠湾作戦から78年になる。世界一広い太平洋を巡って、2つの海棲国家が覇権を争った。当時すでに軍縮条約の期限は切れていたが、条約に定めた「英・米・日の主力艦等の比率は5・5・3」というのは割合実態を表していて、この3国が世界をリー…

拡張されたパナマ運河

パナマ運河の拡張工事が終了して2年になる。報道によれば、コンテナ積載量5,000個までの船舶しか通行できなかったが、今後は13,000個積載船舶も通行可能となるという。もう少し詳しく見てみると、通行できる船舶のサイズは、全長:294m、全幅:32.3m、喫水…

近衛連隊、最前線へ

防衛省(当時は防衛庁)は山手線の中心に近い市ヶ谷にあるのだが、これは官僚組織。山手線内にある実戦部隊というのは、陸上自衛隊第32普通科連隊だけなのだそうだ。自衛隊は憲法の規定により軍隊とは呼べないので、「自衛」のためのものという名を付けられ…

ユダヤ旅団の「新十戒」

ホロコーストという言葉はナチスによるユダヤ民族への迫害、民族浄化計画を指すことが多いが、もともとはユダヤ教の獣を丸焼きにして供える祭りのことを示すギリシア語だという。ナチス・ドイツ勢力下の広大な地域(西はフランスから東はウクライナまで)で…

日本の軍備への教訓

防衛省の概算要求は史上最高額になった。米国からのイージスアショアをはじめとする装備購入が多いのを、問題視する人たちもいる。一方で自衛隊員の充足率は低いままで、定年を延ばさないと最低限の要員も確保できないともいう。 北朝鮮の非核化など幻想だと…

都市インフラと軍事構想

いつもお世話になっている地下鉄や地下街、そこにこんな秘密や歴史が隠されているとは思いもしなかった。以前NHKの番組「ブラタモリ」が東京駅周辺の地下街を特集したものを見て、歩きなれた大手町や八重洲の地下街の裏側を少し知ったのだが、本書はその…

仮装巡洋艦

第一次世界大戦と第二次大戦でよく似た状況になったこととしては、イギリス周辺から大西洋にかけての海域における通商破壊戦が一番ではないかと思う。イギリスは我が国同様島国(海洋国家)であり、大陸からの直接侵攻は難しいとしても、補給を止められれば…

大物すぎるスパイの戦果

ウォルフガング・ロッツはユダヤ系ドイツ人。少年時代にユダヤ人の母親に連れられてパレスチナの地に渡り、ナチスの迫害を逃れるだけでなく英軍に加わって北アフリカ戦線で戦った。といってもドイツ語の話せる彼は、もっぱらロンメル軍団の捕虜尋問にあたっ…

現場指揮官の心得

柘植久慶という作家は、多くの戦争/戦闘小説のほかにもビジネス書やサバイバル書を書いている。まだ30歳代だったころ、出会ったのがこの本。「戦場のサバイバル」という著作は、そのままウォーゲームでいう戦闘級の教本だが、本書は戦術級の教本でもある。…

代表的なドキュメンタリー戦記

児島襄(こじま・のぼる)という作家がいる。僕も最初「こじま・じょう」と呼んでいたが、そう言った編集者が作者に殴り倒されたともいう。相手は190cm、120kgの巨漢である。僕は編集者でなくてよかったと思う。 この「日露戦争」は、全8巻の大作である。僕…

幻の英国本土上陸作戦

1940年ナチスドイツが大陸を席捲しひとりイギリスのみがヒトラーに抵抗していたころ、英仏海峡を渡ってドイツ軍が殺到しているという危機は現実のものになりつつあった。実際「あしか(Sea Lion)作戦」がドイツ軍によって企画され、制空権が握れれば、決行…