新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

第二次欧州大戦のエピソード

本書は以前「ゼロ戦20番勝負」を紹介した、秦郁彦氏の第二次欧州大戦の作戦級エピソード集。筆者は防衛庁出身、拓殖大・日大などで教鞭を執った人。主としてWWⅡ関連のノンフィクションを発表し、1993年委は菊池寛賞を受賞している。 本書は1962年から雑誌<…

「無主の地」の18年間(後編)

溥儀は再び皇帝に返り咲くことを夢見て、日本軍の誘いに乗った。しかし石原中佐らは、満州国を<五族協和>の共和国にしようとしていた。溥儀は元首ではあるが「執政」という役職になる。溥儀は激怒するが、とりあえずはこの案を呑んだ。石原は満州国は日本…

「無主の地」の18年間(前編)

戦史研究家で作家の児島襄作品は、これまで「日露戦争」「日本占領」を紹介している。今回は「満州帝国」全3巻を読んだ。今日6月4日は、1928年に張作霖爆殺事件が起きた日。朝鮮半島を手に入れた日本は、「無主の地」と考えた中国東北部に手を伸ばそうと…

古文書を追いかけてⅡ

本書は以前「日本史の内幕*1」など何冊かの歴史考を紹介したマルチタレント歴史学者磯田道史氏の「歴史の裏と闇」研究。「・・・の内幕」もそうだったかもしれないが、<読売新聞>に2017~2022年に連載された記事をまとめて、2022年に新書として出版したものだ…

慎重で悠長にも見える英雄の歩み

本書は歴史作家戸部新十郎が、1996年から月刊誌<武道>に連載した内容を単行本化したもの。戦国の覇者織田信長の8つの戦い(*1)を詳述して、英雄の足跡を描いたものだ。冒頭、信長・秀吉・家康を「三英傑」と呼ぶが、信長だけが突出していると作者は言っ…

プーチンが報復を止めない理由

2025年発表の本書は、国際ジャーナリスト春名幹男氏の「ソ連崩壊からプーチンの報復の理由」解説。米国のレーガン政権が謀略を持ってソ連を追い詰め、これを崩壊させた。謀略は、諜報機関所属のスパイ、二重スパイらが入り乱れて少しずつ進んだ。KGBのプーチ…

日本を戦略的に鍛える教材

2022年発表の本書は、軍事評論家小川和久氏の「地政学リスクの読み方」。以前「日本人が知らない集団的自衛権*1」などを紹介しているが、本書も、 ・日本人は戦争のことを知らない ・メディアも関連したことを報道しない と批判し、ウクライナ紛争と台湾有事…

昭和期に暗躍した黒幕たち

2011年発表(2022年新書で再版)の本書は、これまで「イスラム国の正体」「プーチンの正体」を紹介してきた軍事ジャーナリスト黒井文太郎氏の「昭和の陰謀論解説」。WWⅡ以前の満州での謀略・国内も含めたテロ・太平洋戦争中の諜報・復興時の陰謀や黒い霧・高…

呑み倒れの街「江戸」のお値段

今月磯田道史著「江戸の家計簿*1」で、江戸時代の金銭感覚を勉強したのだが、残念ながらお酒や肴の値段が分からない。それでは、と探して見つけたのが本書(2017年発表)。著者の伊藤善資氏はエッセイスト。全国の蔵元1,612箇所のお酒を呑んだとする剛の者で…

邪馬台国から大東亜戦争まで

1982年発表の本書は、昨日紹介した金子常規氏「兵器と戦術の世界史」の続編。日本での兵器発達史であり、より詳しく戦闘力を殺傷力・移動力・防御力に区分し、戦闘はこの三要素のぶつかり合いによる相手の戦意を潰すことと解説している。 地方勢力が乱立して…

ギリシアの火からミサイルまで

1979年発表の本書は、陸軍士官学校49期砲兵卒、陸上自衛隊で教官を務めた金子常規氏の「世界史における砲兵の変遷」である。伝説のデザイナーであるダニガンによれば「砲兵は戦場の神」である。デジタル化が進んだ現在の戦場でも、その価値は大きく減じてい…

お金から見た江戸暮らし

昨日「地理・地形から見た江戸」を紹介したのだが、2020年発表の本書は「お金から見た江戸の暮らし」。以前「日本史の内幕*1」などを紹介したマルチタレント歴史学者磯田道史教授の全カラーガイドである。 1両握りしめて江戸時代へタイムトリップするという…

アクティブな古地図を見るように

2014年発表の本書は、時代劇考証でNHK大河ドラマ等に貢献する東京学芸大学教授大石学氏の「地理・地形から見た江戸時代」。京都や江戸を巡るにつけ、古地図に興味を持ち始めた僕にとっては、アクティブな古地図とも言える参考書である。 五街道の整備は公用…

大江戸八百八町の捜査事情

2023年発表の本書は、文芸評論家縄田一男氏と江戸文化研究科菅野俊輔氏による、江戸時代中期の犯罪、捜査、庶民文化の紹介本。池波正太郎の「鬼平犯科帳」「仕掛人藤枝梅安」をモチーフにしているが、町奉行を含めた治安組織全体と売春、賭博、興行などを含…

「人は石垣、人は城」の山城遍歴

昨日歴史作家安部竜太郎の「戦国の山城をゆく」を紹介したが、2006年発表の本書はその続編。前著は、戦国時代前期まで戦国大名の重要施設「山城」が、資金豊富で年間を通して大規模作戦が可能なうえに大量の鉄砲を持つ「ニュータイプ戦国大名」によって駆逐…

「兵どもが夢の跡」12選

2004年発表の本書は、歴史作家安部龍太郎氏の「戦国時代の山城探訪」。日本各地12箇所の山城&城跡(*1)を著者が自らの足で歩き、目で見た姿をレポートしている。戦国時代には、各地の豪族が要害の城を持っていた。日常の政務を行うのは平地の館であっても…

素顔の殺人犯たち

2018年発表の本書は、フリーライター小野一光氏が凶悪殺人犯数人にインタビューし、彼らの素顔/本音を取材したもの。週刊誌記者は、新聞・TVのようにリアルタイムに事件を追うことができない。週に一度の締め切りがあるためで、例え特ダネをつかんでもタイ…

忍び寄る「赤い帝国」の罠

2023年発表の本書は、以前「中国vs.世界」などを紹介した中国通のルポライター安田峰俊氏の「中国の対日工作レポート」。 中国政府は世界53ヵ国以上に、100箇所以上の海外派出所を設けている。これは共産党に反対する中国人を監視する目的で造られたのだが、…

北方アーリア人の他民族支配

2016年発表の本書は、バイエルン州政治教育センター研究員でドイツ現代史家のバスティアン・ハインが著したナチ親衛隊解説。ホロコーストの主犯であり、強力な軍隊である独自の軍隊も持っていたとされるナチ親衛隊の実相を、WWⅠ後から現代にいたるまでの歴史…

中国の現代軍事研究1998

本書は、9・11テロを受けて中国人民解放軍国防大学の喬良教授(空将)と王湘穂退役大佐が1998年に発表した「現代軍事研究」。日本では2001年に共同通信社坂井氏の監修で邦訳出版されたものの容易に手に入らず、2020年に新書版で再版されている。 筆者らは古代…

モーゼルKar98k対モシン・ナガンM91/30

2001年発表の本書は、同年封切られた映画「Enemy at the Gate」の脚本のノベライゼーション。監督したジャン=ジャック・アノーがアラン・ゴダールと共に脚本も書いた。言わずと知れたWWⅡの天王山となった激戦地で、独裁者の名を冠した街をヒトラーは是非に…

戦士を縛っていたもの

2017年発表の本書は、以前「本当の潜水艦の戦い方*1」や架空戦記などを紹介した元海自潜水艦長中村秀樹氏の自衛隊総括。筆者は生粋の潜水艦乗りで、短い艦長時代に米軍の潜水艦との戦闘演習で、18勝1敗1分の成績を残したという。自分だけでなく日本の自衛…

理系の歴史探偵PartⅡ

2014年発表の本書は、以前同名の書(*1)を紹介した、元国交省河川局長竹村公太郎氏の歴史探訪。前著の続編にあたり、文明や文化の視点でまとめられたものだ。歴史の定説について、「地形」と「気象」に着目して異説を唱えるお話しが18章詰まっている。 欧米…

戦史に学ぶ生き残り術

2000年発表の本書は、何冊か技術的な戦史を紹介している日大三野正洋講師の「改善・改良・改革のススメ」。筆者の主張は「変化のないところに進歩はなく、改善・改良・改革なくしては何者も生き延びられない」である。組織の中で、 ・批評厳禁 ・自由奔放 ・…

普通の国家への長い道のり

2022年発表の本書は、先週紹介した「戦闘国家」で小泉准教授と対談した日大危機管理学部小谷賢教授の「戦後日本のインテリジェンス史」。日本のインテリジェンス力が低いというのは通説だが、筆者は本書で、 1)戦後日本はなぜインテリジェンス・コミュニテ…

なぜそこで戦ったか

2003年発表の本書は、日本中世史が専門の谷口研語氏の、地形と合戦名の研究。原、川、山、島、峠、畷などの地名が付いた合戦や軍事行動を、平安時代から幕末まで70ほども集め、どのような戦いが行われたかを「地の利」を中心に解説している。 「関ケ原」に代…

諜報力に拠って生き延びる国

2025年発表の本書は、危機管理学の小谷賢教授と軍事ヲタク小泉悠准教授の対談本。テーマは、戦い続ける国ロシアとイスラエルを素材にした「諜報力に拠った国家像」である。 まずロシアだが、16世紀のモスクワ大公国イワン雷帝が作ったオプリチニキ(親衛隊)…

洋の東西、古代の闘い

本書は、久しぶりに手に入った21世紀研究会の「世界地図シリーズ」。これまで4冊を紹介しているが、今回は「武器と戦争」がテーマ。内容は戦争史そのものなのだが、近代になってくると登場する武器やドクトリンはほぼ平準化されて「地図」にはなりにくい。…

浮いているものはいつか沈む

映画「トラ・トラ・トラ」の冒頭、日本海軍のTOP会合のシーンがある。大艦巨砲主義の参謀が、航空兵力強化よりも戦艦で戦おうと主張し「排水量6万4,000トン、不沈艦の完成も間もない」というのに、航空参謀が「欧州の戦場は陸海を問わず制空権無き者は必ず敗…

時と場所がカギの短編集

本書は、以前「ベルリン・ゲーム」「メキシコ・セット」「ロンドン・マッチ」のスパイ三部作を紹介した、レン・デイトンの戦記短篇集。作者は「エスピオナージの詩人」と呼ばれ、陰惨でサスペンスフルなスパイ小説を、美しい詩のように語ることができる。上…