新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

モーゼルKar98k対モシン・ナガンM91/30

2001年発表の本書は、同年封切られた映画「Enemy at the Gate」の脚本のノベライゼーション。監督したジャン=ジャック・アノーがアラン・ゴダールと共に脚本も書いた。言わずと知れたWWⅡの天王山となった激戦地で、独裁者の名を冠した街をヒトラーは是非に…

戦士を縛っていたもの

2017年発表の本書は、以前「本当の潜水艦の戦い方*1」や架空戦記などを紹介した元海自潜水艦長中村秀樹氏の自衛隊総括。筆者は生粋の潜水艦乗りで、短い艦長時代に米軍の潜水艦との戦闘演習で、18勝1敗1分の成績を残したという。自分だけでなく日本の自衛…

理系の歴史探偵PartⅡ

2014年発表の本書は、以前同名の書(*1)を紹介した、元国交省河川局長竹村公太郎氏の歴史探訪。前著の続編にあたり、文明や文化の視点でまとめられたものだ。歴史の定説について、「地形」と「気象」に着目して異説を唱えるお話しが18章詰まっている。 欧米…

戦史に学ぶ生き残り術

2000年発表の本書は、何冊か技術的な戦史を紹介している日大三野正洋講師の「改善・改良・改革のススメ」。筆者の主張は「変化のないところに進歩はなく、改善・改良・改革なくしては何者も生き延びられない」である。組織の中で、 ・批評厳禁 ・自由奔放 ・…

普通の国家への長い道のり

2022年発表の本書は、先週紹介した「戦闘国家」で小泉准教授と対談した日大危機管理学部小谷賢教授の「戦後日本のインテリジェンス史」。日本のインテリジェンス力が低いというのは通説だが、筆者は本書で、 1)戦後日本はなぜインテリジェンス・コミュニテ…

なぜそこで戦ったか

2003年発表の本書は、日本中世史が専門の谷口研語氏の、地形と合戦名の研究。原、川、山、島、峠、畷などの地名が付いた合戦や軍事行動を、平安時代から幕末まで70ほども集め、どのような戦いが行われたかを「地の利」を中心に解説している。 「関ケ原」に代…

諜報力に拠って生き延びる国

2025年発表の本書は、危機管理学の小谷賢教授と軍事ヲタク小泉悠准教授の対談本。テーマは、戦い続ける国ロシアとイスラエルを素材にした「諜報力に拠った国家像」である。 まずロシアだが、16世紀のモスクワ大公国イワン雷帝が作ったオプリチニキ(親衛隊)…

洋の東西、古代の闘い

本書は、久しぶりに手に入った21世紀研究会の「世界地図シリーズ」。これまで4冊を紹介しているが、今回は「武器と戦争」がテーマ。内容は戦争史そのものなのだが、近代になってくると登場する武器やドクトリンはほぼ平準化されて「地図」にはなりにくい。…

浮いているものはいつか沈む

映画「トラ・トラ・トラ」の冒頭、日本海軍のTOP会合のシーンがある。大艦巨砲主義の参謀が、航空兵力強化よりも戦艦で戦おうと主張し「排水量6万4,000トン、不沈艦の完成も間もない」というのに、航空参謀が「欧州の戦場は陸海を問わず制空権無き者は必ず敗…

時と場所がカギの短編集

本書は、以前「ベルリン・ゲーム」「メキシコ・セット」「ロンドン・マッチ」のスパイ三部作を紹介した、レン・デイトンの戦記短篇集。作者は「エスピオナージの詩人」と呼ばれ、陰惨でサスペンスフルなスパイ小説を、美しい詩のように語ることができる。上…

コンパクトな戦争論

2002年発表の本書は、軍事史作家柘植久慶のコンパクトな戦争論。おそらくは文庫書下ろしで、どこかの雑誌に連載したかもしれない34のエピソードを、300ページの中に収めている。三国志の世界を舞台に、覇者や将軍、参謀などの行動を通して、勝敗や生死を分け…

新世代のWWⅡ歴史検証

2025年発表の本書は、ドイツ現代史が専門の歴史作家大木毅氏(*1)の「太平洋戦争の検証」。すでに多くの歴史家が取り上げたテーマだが、僕より若い世代が「戦略・作戦・戦術」を立体的に検証したというので読んでみた。多くの検証が、 ・戦略面 例:なぜ米…

米国の戦略家はこう考えている

2025年発表の本書は、米国ハドソン研究所上席研究員の村野将氏が、米国の戦略家4人と2022~24年に対談した記事に書下ろしを加え、トランプ2.0政権の対中戦略(のあるべき姿)を描いたもの。その4人とは、 ・クレピネビッチ元国防長官顧問 ・マクマスター元…

哲学者たちの太平洋戦争

これまで日本海軍についてはさまざまな技術的、経済的な分析をした書を紹介しているが、2001年発表の本書は「思想戦」がテーマ。真珠湾攻撃の直前から、京都学派と呼ばれる哲学者たちが、 ・日米開戦の回避 ・一日も早い有利な条件での終戦 ・敗戦後の処理を…

<歴史街道>のWWⅡ分析記事

2019年発表の本書は、PHP研究所の月刊誌<歴史街道>に掲載された、太平洋戦争関連の記事15編を収めたもの。初出は2008~2019年と様々だが、歴史研究なので古い記事でも参考になると考えて買ってきた。著者は複数の記事を書いた人もいるので12人。したがって…

旧日本軍の兵器とその開発背景

2005年発表の本書は、以前「パールハーバーの真実*1」などを紹介した軍事ライター兵頭二十八氏と、歴史評論家別宮暖朗氏の共著。WWⅡで使用された旧日本軍の兵器は、速戦即決型の戦争を戦うために開発されたもので、長期の戦争に耐えるものではなかった。特に…

第二次欧州大戦、不思議な50話

2004年発表の本書は、以前「へんな兵器」「WWⅡ秘話」を紹介した軍事史ライター広田厚司氏の「不可解・奇妙・偶然」なエピソード集。戦争は常にカオスであり、信じがたいことが起きる。筆者はWWⅡ戦史を専門に雑誌<丸>などに寄稿していて、単独では物語にな…

足掛け180年、海の支配者の変遷

2024年発表の本書は、佐々木孝博元海将補の「軍艦の歴史」。筆者は防衛大学校時代に師事した野村實氏の「海戦史に学ぶ*1」を継ぐものとして本書を書いたと思われる。1852年ペリー来航以来、海に支配者がどう変遷してきたかの歴史である。 WWⅡまでの軍艦につ…

「文明の十字路」の今

2023年発表の本書は、中東調査会研究主幹青木健太氏の<アフガニスタンの今>。アケメネス朝ペルシア(前6世紀)から、アレクサンダー大王の東征など幾多の歴史に登場する「文明の十字路」なのだが、反面「帝国の墓場*1」とも呼ばれるのがこの地。 1973年ザ…

兵卒の近代化に寄与はしたが・・・

2002年発表の本書は、日本の近現代史が専門の一橋大吉田裕教授の「天皇の軍隊の功罪」。先月落合弘樹著「秩禄処分」で、明治維新における武士(という軍事専門家)のリストラ次第を紹介したが、武士の穴を埋めたのが1873年に発布された徴兵制である。 急激な…

独立、脱植民地、開発そして民主化

2008年発表の本書は、アジア近代史の著書が多い元NHK記者宮城大蔵氏の、インドネシア周辺の戦後史。旧宗主国のオランダやマレーシア等を支配していた英国、ベトナム戦争に介入した米国に加え、一時期占領統治した日本が、戦後どのようにこの地域の政治に関わ…

柘植久慶が選ぶ「世界の陸戦20」

2009年発表の本書は、軍事史作家柘植久慶の歴史上の陸上戦闘分析。似たテーマで松村劭元陸将の書も紹介しているが、そこで取り上げられなかった近代の戦いも紹介されている。特徴的なのは作者自身が戦闘の現地を実際に歩く、フィールドワークを経ての分析で…

この世界に「安心」という言葉はない

2024年発表の本書は、以前「日本人が知らない集団的自衛権*1」を紹介した、軍事アナリスト小川和久氏の「台湾有事分析」。日米のシンクタンク等が実施したシミュレーションをいくつも紹介し、日米台の東アジアにおける(2023年当時の)戦力と、人民解放軍の…

「Tax Eater」を減らした事例

1999年発表の本書は、京都大学人文科学研究所の落合弘樹氏の「明治維新行革史」。江戸時代の士農工商制度は、多くの「Tax Eater」を抱えたものだった。近代国家に生まれ変わるにあたり、税金(年貢)で生活している士族を減らすことは急務だった。しかし誰し…

日本有事に向けた体制整備

2024年発表の本書は、日本の中枢で防衛を考えている人たちの<日本有事の対応論>。何作か紹介している、2人の元内閣官房副長官補、兼原信克氏と高見澤將林氏がホスト役になり、以下の4テーマに分けて、各省OBの専門家(*1)と議論した対談集である。 ■エ…

全斗煥大統領を暗殺せよ

今日10月9日は、1983年に「ラングーン事件*1」が起きた日。2013年発表(邦訳は2021年)の本書は、韓国駐日大使でもあった羅鐘一氏の大統領暗殺未遂事件とその実行犯について調査したノンフィクション。 WWⅡの後民族分断国家となった北朝鮮と韓国だが、当初…

巨大官僚機構の200年史(後編)

革命によってドイツ帝国は倒れ、ドイツはWWⅠの敗戦国となった。政治家や将軍は表舞台を去ったが、参謀本部は残った。ワイマール共和国への移行に向けて、膨大な作業があったからである。暫定的な国軍は40万人規模と言われたが、戦勝国は10万人まで減らせと言…

巨大官僚機構の200年史(前編)

「勝つときは容赦なく勝つが、より良い負け方を知らない」というのが、識者のドイツ軍に対する評価である。ドイツは統一が遅れた国家であり、中心となったのは現在の北ポーランドからベルリンに至る大きくない領土を守っていたプロイセン=ブランデンブルク…

総合安全保障のススメ

昨日紹介した「尖閣問題」、著者の春原氏と米国の親日派アーミテージ元国務長官、ナイ元国防次官補の鼎談も以前紹介している(*1)。御三方とも亡くなってしまったが、問題はより大きく切迫したものになっている。米中対立やトランプ2.0政権の不安定さもある…

日中対立ドキュメント2010~2013

2013年発表の本書は、先日60歳の若さで亡くなった(*1)日経紙の記者春原剛氏の、尖閣諸島国有化レポート。2010年9月、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりしてくる事件が発生。2004年小泉内閣当時、上陸してきた中国人を強制送還して以来…