新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

海兵隊員の死闘

75年前の今日は、硫黄島の栗林兵団が組織的抵抗を終えた日である。2週間前の3月10日は東京大空襲の日で、10万人以上の市民が犠牲になっている。グァムやサイパンからのB-29だけでもこれほどの被害を受けるのだから、東京からわずか1,000kmしか離れていな…

クライシス・コミュニケーション

今年初めに三菱電機や日本電気へのサイバー攻撃があったとの報道があり、いずれも1~2年過去のものだったにもかかわらず、しばらく世間を騒がせた。産業界ではこのような事態を受けて、改めて「クライシス・コミュニケーションどうあるべき」の議論が始ま…

アイデアそのものは不滅

広田厚司という人は、会社勤めのかたわら欧州大戦史を研究し、雑誌「丸」などに多くの投稿をしている。この光人社NF文庫にも多くの著作があり、先日紹介した三野正洋とは少し違った視点で第二次世界大戦の兵器を分析している。 本書は第二次欧州戦線に現れた…

未曾有の大海戦

のちの第二次世界大戦において「レイテ海戦」と呼ばれた闘いが最も近いかもしれないのだが、空前絶後数の「主力艦」が狭い海域にひしめき、雌雄を決しようとしたのが「ジェットランド沖海戦」である。もちろん両者の間には30年の時差があり、その間に航空機…

武装中立、3カ国の場合

第二次欧州大戦では、ヨーロッパのほとんどの国が戦果に巻き込まれた。しかしトルコ(これは小アジアの国に分類できるかも)と、ここに取り上げる3カ国だけは中立を保った。本書にあるように中立を守れた事情や理由は異なるが、共通しているのは「武装中立…

組織運営のノウハウを学ぶ

日本の組織で、これほどの規模で長期に運営されその人事記録が詳細に残っている例は他にないだろうと思う。帝国陸軍こそは、組織運営のノウハウを学ぶ最良の「ビッグデータ」である。高級将校の全てについて出身地や生年はもちろん、幼年学校、陸軍士官学校…

諜報・戦場・政治謀略

戦場では、まれにだがとんでもないことが起きる。例えば本書の表紙のイラストにあるように、同じ塹壕から米軍と独軍の兵士が各々別方向に銃を撃っていたという話も事実である。本書は第二次世界大戦の主に欧州戦線で起きた、諜報・戦場・政治謀略に関する40…

情報・分析は正しかったが

薦めてくれる人があって、今話題のこの本を読んで見た。この種の本としては「失敗の本質」という名著があるが、新進気鋭の経済学者の歴史探求ということで興味深く読み始めた。猪瀬直樹著「昭和16年夏の敗戦」というのも以前読んだことがあり、総力戦研究所…

ドーバー海峡を越えていたら

僕がシミュレーション・ウォーゲームを好きなのは、そしてSFゲームやファンタジーゲームを好まないのは、歴史のIF「あの時こうしていたら・・・」を自分の手でやってみることができるからだ。例えば、アリューシャンのような支作戦に「龍驤」「隼鷹」を割かずに…

「車引き」の戦果と限界

太平洋戦争前に建造され、戦いの中でほぼ全て失われた特型駆逐艦という艦種は、帝国海軍に特有のものだ。同時期の他国の駆逐艦に比べ大型で、速力も航続力も高い。もちろん武装も強力だ。駆逐艦はといえば、もともとは主力艦や船団を魚雷艇のような小艦艇の…

巨砲搭載艦

以前、従来のパナマ運河を通行できる船は全幅32.3m以下であった、と書いた。その幅で46cm主砲を相当数積んだ軍艦は造れない。相応の数で無ければ可能か?もちろん可能である。巨砲を1門だけ積んだ軍艦というのも例はある。他ならぬ日本海軍に。 清国との緊…

技術のいたちごっこ

三匹の小魚を描いたUボート「U333」で何度も死地を潜り抜けて、ペーター・クレーマー艦長は終戦まで生き延びた。有名なUボート艦長の大半が戦死しているわけで、捕虜になれば幸運な職業とも言える。本書は、そのような地獄を行き抜いたUボート艦長の手記…

ドイツ人とナチス

イタリアの事情は知らないが、第二次世界大戦の敗戦国ドイツと日本の戦後には、ある程度共通したところがある。それは「戦争責任」を国全体で背負うというより、特定の勢力/集団に負わせたことだ。日本ではそれは軍部や戦犯であり、ドイツではナチス党であ…

陸上自衛隊の海上戦力

憲法9条の縛りだろうか、長く海外での活動を禁じられてきた「Japan Self Defense Force」、他国から見れば明らかに「Japanese Army/Navy/Air Force」なのだが。海外を文字通り「海の外」と解釈したのか、海上機動力の整備や軍用機の航続距離延伸には消極的…

巡洋艦の役割

第二次大戦以前戦艦・巡洋戦艦は主力艦と呼ばれ、最後は主力艦同士が撃ち合って国の争いに決着を付けるものと位置付けられていた。いわば、戦略兵器である。駆逐艦や水雷艇、潜水艦はと言えば、主力艦を守ることを含めた戦術兵器である。それでは、巡洋艦っ…

ツェッペリン飛行船

南ドイツ、バーデンウィッツベルグ州コンスタンツの船着き場に、背中に羽根を生やした男のモニュメントが建っている。イカロスのようにも見えるが、これがフェルディナント・フォン・ツェッペリン伯爵の像である。伯爵は飛行船の開発・運用に生涯や財産を掛…

占領憲法の矛盾

「日本占領」最終巻には、アイケルバーガー中将が離任して帰国した後の1948年末までが描かれている。本書のかなりの部分は、マッカーサー元帥がトルーマン大統領(民主党)の二期目の選挙に対抗馬として出馬することに費やされている。元帥は共和党から立候…

社会党の躍進とゼネスト

「日本占領」第二巻には、1946年の春から、翌年5月までの記録がある。マッカーサー元帥が最初に取り組んだ「軍事力の破壊」は、順調に進んだ。湾岸戦争後のイラクのようにゲリラ活動は全くなく、武装解除は速やかに行われ、アイケルバーガー中将の仮住まい…

南北日本、分断の危機

児島襄「日本占領」全3冊を読んだ。太平洋戦争の経緯は中学生のころに図書館で読んで以来、いろいろな本に出会ったし、2・26事件など真珠湾に至るまでの経緯も後に勉強した。しかし8・15以降のことは、ほとんど知らなかった。高校の「日本史」でも、日本の戦…

時代が捨てた人、求めた人

本書は「三人の戦争指導者に見る政戦略」と副題されていて、第二次世界大戦の戦争指導者3人(ヒトラー、チャーチル、ローズベルト)を、その戦略眼や政策実行力を評価したものである。3人と言ってはいるが、ヒトラー、チャーチルに各100ページを割いている…

首相の「師・友・秘書」

若くして政治を志し、僕らには分からない苦労を背負って政治家/国会議員を務めるなら、目標は大臣さらには総理大臣なのだろうと思う。首相のイスへの長いレースはもちろん、幸いにもそのイスに座ってからも孤独な闘いは続く。そんな日々を支えてくれるのは…

1機だけのB-29

74年前の今日、長崎に2発目の原爆が投下された。僕の親父はその目撃者である。今の長崎空港は大村湾の中に人工島として建設されているが、その北東に小規模な海上自衛隊の航空基地がある。さらにその北隣には陸上自衛隊の駐屯地もある。それらは、旧帝国海…

ウーゼドム島ペーネミュンデ

半島の付け根の国が、相変わらず騒がしい。何年か前中距離弾道弾「ムスダン」と思しき飛翔物を4発同時発射、日本海に着弾させた。移動式発射台を使っての斉射であり、軍事的脅威は増していると専門家は言った。続いて固体燃料の燃焼試験を満面の笑みを浮か…

ヒトラーの敵「黒いオーケストラ」

トランプ大統領は、就任前から中央情報局(CIA)を非難してきた。例えば、彼がロシアに弱みを握られているとの情報を流したのはCIAだというのである。便益よりもリスクが大きい組織だという認識から、CIAを縮小するとも言ってきた。メディアは、大統領と情報機…

名将リー将軍の銅像

南北戦争というのは、日本人にとってはなじみの薄い事件である。英語名称は「Civil War」というが、これは内戦のことである。こういうタイトルのゲームがあって、買ってはきたのだがまともにプレイできなかった。ゲームシステムそのものが難しいというよりも…

伝説の狙撃手が見たイラク戦争

クリス・カイル上等兵曹は特殊部隊SEALのメンバーとして4度イラク戦争に従軍し、160人もの敵を殺したという。米軍はかなり厳密な公式記録精度を持っていて、その場で第三者によって死亡が確認されたものを「射殺」と認めているので、実際に死傷させたの…

南から北へ、12のお城

海音寺潮五郎という作家には、あまり縁がなかった。歴史ものを多く残した人で、故郷の英雄西郷隆盛の史伝を執筆中に亡くなったという。僕自身は、小学生のころに「天と地と」を読んだくらいしか記憶がない。その年大河ドラマで「天と地と」が放映されていて…

鉄道考古学者の旅

作者の宮脇俊三という人は、中央公論社の役員まで務めた後は好きな鉄道を追いかけて、中国、シベリア、インドまでも行ったうらやましい人である。在職中から金曜日になると落ち着かないという理由は、来週金曜日の夜行列車の予約をするかどうか迷うから。か…

副砲の役割

戦艦は、20世紀前半の「最終兵器」だった。空母機動部隊や長距離爆撃機、核兵器が現れるまで、保有する戦艦の質×量は、国力の大きな指標だった。戦艦の基本性能は、搭載している巨大な大砲のそれと言っていい。戦艦とは、巨砲を運ぶプラットフォームである。…

太平洋の長距離戦闘機(後編)

第二次世界大戦も後半、米国の巨大な工業力と技術力は続々と新鋭兵器を開発・配備させることができた。日本が結局持つことができなかった四発の戦略爆撃機B-17⇒B-29、空母艦隊に随伴可能な高速戦艦アイオワ級、対空火力を飛躍的に向上させる近接信管…