新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

十二試艦戦への要求仕様

零式艦上戦闘機、通称「レイ戦」こそが、日本にとっての太平洋戦争の主役だった。この機種が空を制していた時期には日本軍は勝ち続け、その能力を失った後は負け続けた。本書は「零戦」の主任設計者堀越二郎が、その戦闘機の生涯を回顧したものである。 筆者…

日英同盟のきっかけ

「北京の55日」という大作映画がある。1900年の清朝末期の義和団事件を描いたもので、主演は米国海兵隊のマット・ルイス少佐役のチャールトン・ヘストン。この作品には、伊丹十三が演じた日本陸軍の柴五郎中佐も登場する。エヴァ・ガードナー(ロシアの男爵…

三度皇帝になった男

このところ、どうしても中国という国のことが気になって仕方がない。陳舜臣の歴史ものや、柘植久慶の戦記などを読みながら、近代史はどうだったのだっけと本書を再読してみた。万里の長城の北、熱河省から黒河省にいたる広大な土地に、13年間だけ存在したの…

中国、その壮大な戦いの場

このところ柘植久慶の「逆撃:三国志シリーズ」を2作紹介したこともあって、本書を読み返してみた。古今の戦争・戦史に詳しい作者だが、三国志のころは「中国史のなかで最も魅力あふれる時代」(まえがき)と評している。三国志といえばキラ星のように登場…

Fighterの技術的な魅力

以前「連合軍の小失敗の研究」「戦車対戦車」などを紹介した、三野正洋の技術的な戦闘機比較論が本書。翼面荷重・馬力荷重・翼面馬力や、速度・旋回・防御の指数、さらに設計効果や生産効果まで指数化して、第一次世界大戦から第二次世界大戦、戦後のレシプ…

東西33の海戦記録

本書は、作者が高校教員をしながら雑誌「海と空」に1957年から連載した小編を集めて文庫化したものである。第二次世界大戦の戦記や兵器についての著作が多い人だ。33編の内訳は、太平洋での戦いが16、地中海・大西洋での戦いが17となっている。 15ページ/編…

ハイテク戦争研究者の戦後

高木彬光「悪魔の嘲笑」を読んで、「陸軍登戸研究所」の毒薬が出てきたので、本棚を探して本書をもう一度読んでみた。太平洋戦争が終わって30年近くたった1984年に発表された本書は、作者が「陸軍登戸研究所」の生き残りを探して日米のみか中国にまで足を伸…

「徴員」という不思議な身分

東郷艦隊がバルチック艦隊を破った20世紀初頭、戦闘艦のエネルギー源は石炭だった。その後石油が動力源として台頭したが、日本列島は石炭は産しても石油はほとんどない。満州事変から大陸での戦線が拡大してゆくにつれ、日本政府(軍)は戦争には石油が必要…

海洋国家日本の再出発

著者松村劭は元陸将補、在日米軍との共同作戦計画にも関わる一方、防衛研究所研究員も務め、英米の軍事研究機関との付き合いも深かった人だ。2010年に亡くなるのだが、35冊ほどの著作があり僕はその半分程度は読ませてもらった。陸自の人だが、海洋関係の著…

中国で王朝が滅びる時

「国家安全法」が施行されることになって、香港の自治は風前の灯になった。香港は英国が1997年まで租借、共産主義中国が自由社会に開いた数少ない窓だった。返還後も50年間は「一国二制度」で自由市場であるはずだったのが、今その歴史を終わろうとしている…

元自衛官の人と話す前に

サイバーセキュリティなどという(一般の人からの印象では)陰気で危険なことに関わりあっていると、どうしても犯罪からみや軍事からみの話が多くなる。中学生の頃から海外ミステリーに溺れ、大学生になっては軍事関係の書を読み漁り「机上演習」までやった…

技術者視点での戦車の優劣

三野正洋という人は大学教員(工学部)が本職だが、数多くの戦争関連著作がある。いずれも工学研究者らしい、エンジニアリング視点に立ったものだ。そこに示される冷徹な数値は、「無敵皇軍」とか「撃ちてし止まん」などという感情論とは無縁のものだ。 本書…

空を飛ぶモノへの憧れ

著者は1917年生まれ、幼いころからヒコーキというものに魅せられた生涯を送った人である。実家が写真館で飛行機の写真に触れる機会も多く、子供の頃に実際に乗ってみた経験もある。当時の飛行機は原始的なものだったが、大人になった著者は「飛行機映画がタ…

李氏朝鮮の実態

昔は何度も旅行に行っていた韓国、特に文政権になってからは困った隣人になってしまい渡航する気も起きない。さて、と考えてみるとかの国のことは、 ・伊藤博文暗殺 ・閔妃暗殺 くらいしか知らない。太平洋戦争後、徴用工問題/慰安婦問題など持ち出されて、…

内向きの米国が経験した失敗

トランプ政権になってホワイトハウスからグローバリストが駆逐されてしまったとう話は、別ブログでご紹介した。WTOの上級委員の補充を妨害してアゼベド事務局長が任期1年を余して辞めさせたり、「COVID-19」騒ぎの最中にWHOへの資金拠出を止めてしまうなど…

250年続く組織の自己革新

アメリカ海兵隊は、独立戦争前の1775年に設立された。もともとは艦上勤務の警察組織だったらしい。NCISのギブス捜査官も海兵隊出身という設定だが、警察組織だったというのはうなづけることだ。その後、前進基地防護・陸上部隊支援・水陸両用強襲・即応部隊…

相性が全てを決める

先月紹介した吉田俊雄の戦記シリーズ、「良い参謀、良くない参謀」に続き、指揮官と参謀の組み合わせや相性について触れたのが本書である。参謀は、職位が低くても強大な権力を持つことがある。俗に「(指揮官の)虎の威を借りる狐」と言われたり、艦隊その…

ロシアでの破壊工作

作者の水木楊は、戦前の上海に生まれた元日経記者。国際政治ミステリー「1999年、日本再占領」で作家デビューしている。本書は歴史ドキュメンタリーで、日露戦争前から終結までの、情報将校明石元次郎大佐の活動を描いたものだ。 日露戦争も、ある意味無謀な…

「彗星」嘉手納を空襲せよ

表題となっているのは、日本海軍が九九艦上爆撃機の後継機として開発した「彗星」艦爆である。九九艦爆は太平洋戦争の初期から大活躍した急降下爆撃機だが、最高速力400km/h前後と鈍足で敵戦闘機に遭えば逃げ切ることは不可能だった。頑丈ではあるが、固定脚…

企業参謀としての僕の参考書

まだ20歳代だったころ、偶然の人事で僕は本社のスタッフ部門に転勤になった。技術が売りのこの会社、当時少なかった工学修士を技術開発の戦線から外し、スタッフ部門に回すというのは極めて異例だった。それが後年の僕を救うことになるのだが、当時は非常に…

BC兵器から身を守るには

「COVID-19」が生物兵器として作られたものかどうかは今後の検証にゆだねるとして、BC(Bio, Chemical)兵器について復習しておこうと思い本書を再読してみた。本書は2003年に、「オウム真理教」の一連の事件をひとつのきっかけとしてまとめられたものらしい…

実戦でしか得られない知識

激烈を極めた太平洋戦争の航空戦、最後は「特攻機」として失われていった多くの航空機と乗員たち。そんな中でも、戦後まで生き残った航空指揮官たちはいた。1993年から足掛け3年間にわたって、生き残った指揮官のうちインタビューを受けてくれた17名の人に…

海兵隊員の死闘

75年前の今日は、硫黄島の栗林兵団が組織的抵抗を終えた日である。2週間前の3月10日は東京大空襲の日で、10万人以上の市民が犠牲になっている。グァムやサイパンからのB-29だけでもこれほどの被害を受けるのだから、東京からわずか1,000kmしか離れていな…

クライシス・コミュニケーション

今年初めに三菱電機や日本電気へのサイバー攻撃があったとの報道があり、いずれも1~2年過去のものだったにもかかわらず、しばらく世間を騒がせた。産業界ではこのような事態を受けて、改めて「クライシス・コミュニケーションどうあるべき」の議論が始ま…

アイデアそのものは不滅

広田厚司という人は、会社勤めのかたわら欧州大戦史を研究し、雑誌「丸」などに多くの投稿をしている。この光人社NF文庫にも多くの著作があり、先日紹介した三野正洋とは少し違った視点で第二次世界大戦の兵器を分析している。 本書は第二次欧州戦線に現れた…

未曾有の大海戦

のちの第二次世界大戦において「レイテ海戦」と呼ばれた闘いが最も近いかもしれないのだが、空前絶後数の「主力艦」が狭い海域にひしめき、雌雄を決しようとしたのが「ジェットランド沖海戦」である。もちろん両者の間には30年の時差があり、その間に航空機…

武装中立、3カ国の場合

第二次欧州大戦では、ヨーロッパのほとんどの国が戦果に巻き込まれた。しかしトルコ(これは小アジアの国に分類できるかも)と、ここに取り上げる3カ国だけは中立を保った。本書にあるように中立を守れた事情や理由は異なるが、共通しているのは「武装中立…

組織運営のノウハウを学ぶ

日本の組織で、これほどの規模で長期に運営されその人事記録が詳細に残っている例は他にないだろうと思う。帝国陸軍こそは、組織運営のノウハウを学ぶ最良の「ビッグデータ」である。高級将校の全てについて出身地や生年はもちろん、幼年学校、陸軍士官学校…

諜報・戦場・政治謀略

戦場では、まれにだがとんでもないことが起きる。例えば本書の表紙のイラストにあるように、同じ塹壕から米軍と独軍の兵士が各々別方向に銃を撃っていたという話も事実である。本書は第二次世界大戦の主に欧州戦線で起きた、諜報・戦場・政治謀略に関する40…

情報・分析は正しかったが

薦めてくれる人があって、今話題のこの本を読んで見た。この種の本としては「失敗の本質」という名著があるが、新進気鋭の経済学者の歴史探求ということで興味深く読み始めた。猪瀬直樹著「昭和16年夏の敗戦」というのも以前読んだことがあり、総力戦研究所…