新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

第六艦隊首席参謀の回想

著者の井浦祥二郎元大佐は、海軍兵学校を卒業後一貫して潜水艦部隊に所属し、日米開戦時には中佐としてハワイ作戦に参加している。終戦時には第六艦隊首席参謀・大佐の地位にあった。第六艦隊とは潜水艦隊のことで、多くの船を失った帝国海軍の中でも最後ま…

海軍第343航空隊「剣」

太平洋戦争末期、圧倒的な質×量の米軍航空兵力に立ち向かえる帝国陸海軍戦力はあまりなかった。陸軍の隼や海軍の零戦では太刀打ちできない戦闘機や爆撃機を米国の技術と生産能力は量産していた。これらに対抗するため多くの試作機が作られたが、役に立ったも…

「シリアの友」たちの優柔不断さ

2017年発表の本書は、東京外国語大学教授の青山弘之氏(東アラブの政治・思想・歴史が専門)が、21世紀最大の人道危機と言われたシリア紛争を紹介したもの。日本ではこの地域のことを知ることができる書物は多くなく、今回はシリアという国について勉強させ…

陸軍の技術分野を一手に

光人社のNF文庫「兵器入門」シリーズ、今月は「工兵」である。兵棋演習のコマでは横になったEの文字が付いた分隊コマで、歩兵とスタックして近接突撃を掛けてくると脅威だったのを覚えている。いにしえの話、ローマの軍隊は決して強くなかったが、土木工事…

<バイオプレパラト>元幹部の証言

1999年発表の本書は、元ソ連の生物兵器製造組織<バイオプレパラト>の幹部だったカザフ人、ケン・アベリック(現地名カナジャン・アルベコフ)が、自らの経験を綴ったもの。著者はソ連崩壊時には陸軍大佐の地位にあり、ツラレミア(野兎病)菌を兵器化した…

専制・絶対王政に拘った結果

1917年の今日7月16日は、ロシアの最後の皇帝ニコライ二世とその家族が処刑された日である。ロシアは欧州の後進国と見られていたが、19世紀末から急激に国力を増し、大規模な陸軍だけではなく、巨大な海軍をも保有するに至った。しかし革命で民主主義を確立…

幻と消えた中欧連合構想

長期化するウクライナ紛争、その背景には一般の日本人が知らない「中欧」の歴史がある。本書は1994年出版の古いものだが、ポーランドと周辺の歴史に詳しい研究者広瀬佳一氏の著書。第一次世界大戦によって、オーストリア=ハンガリー二重帝国は崩壊、ポーラ…

次のリスクへの勉強材料?

もう11年も経ってしまったのかと思わせるが、本書は2011年3月11日の東日本大震災を受けて、企業がどのように動いたかのドキュメント。日経の記者を中心に63名が執筆者として名を連ね、震災半年後の7月に出版されたものである。なぜこの本を改めて読んだか…

口径統一に最後まで至らず

光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「小銃・拳銃・機関銃」である。帝国陸軍がどのような小火器を使っていたかを、写真や図面約400点とともに紹介したのが本書。陸軍が最初に採用した「村田式13年歩兵銃」は、口径11mmの単発銃だった。日露戦争では「30…

最後の預言者ムハンマドの影響力

本書は以前「地名」と「食」を紹介した、21世紀研究会の「世界地図シリーズ」の1冊。今回は「イスラーム」である。20世紀末の統計で、世界のイスラーム教徒は約12億人いるという。国別で多い順に、 1)インドネシア 1.8億人(88%) 2)パキスタン 1.3億…

新鋭戦車4両対生身の歩兵たち

本書はスティーブン・スピルバーグ監督の「Saving Private Ryan」の脚本を基にしたノーベライゼーション。「Battman」の原作や多くの映画のノーベライゼーションをした、作家マックス・A・コリンズの作品である。 ノルマンディ上陸作戦を描いた大作映画のひと…

ロンメル夫人の誕生日

昨年の今日、映画「The Longest Day」のDVDを紹介した。英米独三ヵ国のオールスターキャストが出演した、永遠の大作である。今回はその原作となった同名のドキュメンタリーを紹介したい。本書は1959年に発表されたが、それに先立つ3年間に作者のコーネリア…

超国家機関の200年

本書は以前「赤目のジャック」を紹介した歴史作家佐藤賢一が、2018年に発表した欧州史の一断面。「テンプル騎士団」という言葉は歴史教科書にも出てきたし、彼らの隠し財宝を巡るスリラーも読んだ記憶がある。どういう組織だったかについては、日本人の多く…

酒仙隊長、クロパトキン大将を走らす

昨日紹介した明石元次郎大佐(日露戦争当時)が「日本情報戦力の父」なら、本書の秋山好古少将(同)は「日本騎兵の父」と呼べるだろう。伊予松山藩の士族の出身で、弟の真之(東郷艦隊の参謀)が海のヒーローなら兄は陸のヒーローだった。 小柄で愛嬌のある…

日露戦争を決着させたもの

昨日5/27は「帝国海軍記念日」、1905年のこの日東郷艦隊が対馬沖でバルチック艦隊を撃破、ロシアの海軍力を壊滅させて日本海の制海権を握った日だった。海上では優位を得たとはいえ、陸上ではロシア軍は決して敗軍ではなかった。 奉天会戦は事実上の引き分け…

八八艦隊という夢

光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「戦艦」である。1940年代に海の主役を「空母機動部隊」に譲ってからも、海軍マニアに夢を抱かせる艦種といっていい。架空戦記作家横山信義は、多くの作品で「空母機動部隊が潰し合った後の戦艦同士の決戦」を描いて…

30年経って、変われたのか?

本書の発表は1993年、ほぼ30年前の書である。現役外務省官僚(駐ウズベキスタン大使)だった孫崎享氏が、日本外交の過去・現状・課題を述べたもの。ソ連崩壊・冷戦終了で、米国が「敵は日本の経済力」と思っていた時代。日本も先ごろ亡くなった石原慎太郎氏…

理系(土木工学)の歴史探偵

本書の著者竹村公太郎氏には、ある団体の役員をしていた時に知り合い、いろいろ教えていただいた。国交省の技術官僚(土木工学)で、河川局長まで務めた人。現行ダムの2倍の嵩上げ(貯水量は10倍以上になる)が持論だった。 政策勉強会などでご一緒し、新し…

ここにもあった分断国家

1ヵ月前、新疆ウイグル自治区での中国政府の残虐行為を告発した「ジェノサイド国家中国の真実」を紹介した。その3人の著者のうちの一人でモンゴル出身の楊海英静岡大学教授が、故郷内モンゴル自治区での中国政府の所業を書いたのが本書(2018年発表)であ…

全ての歴史は現代史である

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が好調だという。何十年も大河ドラマを見ていない僕が見るくらい、三谷脚本の面白さは抜群だ。鎌倉幕府創設の舞台裏で、どんなことが起きていたか気づかされることも多い。 ただ歴史というのは、一辺を切り取っても十分な理解…

個艦優越に賭けた決戦兵器

光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「駆逐艦」である。すでに「特型駆逐艦雷海戦記」を紹介していて、艦隊決戦の花形として建造され厳しい訓練を重ねながら、期待ほどには戦果を挙げられなかった帝国海軍駆逐艦隊のことは記している。 「車引き」の戦果…

「Wuhan」が大変なことに・・・

今も続く「COVID-19」禍。一時期「ゼロコロナ政策」が上手くいっているかのように見えた中国でも、このところ<オミクロン株:BA2>のように感染力の強いウイルスが蔓延し、上海・西安など大都市がいくつもロックダウン状態にある。全ては2020年1月「武漢:W…

東トルクメニスタンで起きていること

昨日「中国人のお金の使い道」で、この10年間の中国の都市部・沿海部の繁栄ぶりを紹介した。その辺りにはまだ微笑ましい部分もあるのだが、内陸に目を転じると許しがたい状況も見えてくる。以前からチベットの弾圧やモンゴルへの圧力は知られていて、最近新…

戦場を制したもの(1942)

以前この前の巻「西方電撃戦」を紹介した、雑誌「丸」に掲載された記事を取りまとめたものの第二巻が本書。前巻同様、第二次世界大戦の19の戦車戦をつづったものだ。時期は1942年で、内訳は、 ・北アフリカの戦い 9 ・ロシア南部の戦い 7 ・ロシア北部の戦…

陸の王者、1910~1945

光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「戦車戦」である。「戦車」でないのは、戦車と言うものを支える技術や装備についてがメインではなく、戦場で戦車がどう使われたのかが中心になっているから。個別の戦車については、別ブログでアバロンヒルの精密陸…

ロシアの本質は帝国主義

2日続けて、ロシアを巡る日米の軍事スリラーを紹介してきた。事実は小説より奇なりということわざもあるが、現実にロシア・ウクライナ戦争が起きて1ヵ月になり、国際情勢は激変した。2014年にはロシアのクリミア進駐があり、マレーシア機撃墜騒ぎもあった…

経営者が戦史を学ぶ意味

本書は少し古い(2000年出版)本だが、バブル崩壊後の日本経済、というより企業の迷走を見て警鐘を鳴らすべく書かれたものである。主筆の江坂彰氏は経営コンサルタント、対談相手の半藤一利氏は歴史家である。 冒頭、旧日本軍は情報と補給の重要性を顧みなか…

もう2年も経ったのかと・・・

本書は日経編集委員、「ワールドビジネスサテライト(WBS)」MCである滝田洋一氏が、2020年1~4月の世界の「COVID-19」対応をレポートしたもの。WBSのアカウントでのその時々のツイートが、数多く引用されている。 今も米国では毎日50万人の新規感染者が出…

先端制御技術1940

著者は東北大学工学部電気工学科卒、海軍造兵中尉に任官し終戦時海軍中佐。戦後松下電器でテレビ事業部技術本部勤務など関西ビジネス界の発展に貢献した人である。表題は「軍艦メカ開発物語」となっているが、内容はもっぱらエレクトロニクス、特に制御系の…

夢想家と天才技術者がいて・・・

戦争を主にテクノロジーの視点から分析し、あくまで客観的な情報から当時起きていたこと、起きたかもしれないことを再現することにかけて、筆者(三野正洋日大講師)は一流の歴史・技術者だと思う。本書は筆者の得意な、第二次世界大戦中に開発・運用された…