新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ユーモアミステリー

抱腹絶倒のホームズ譚

1887年末ストランド誌に短編の連載が始まった「シャーロック・ホームズ」ものは、読者の賞賛を浴び作者のコナン・ドイルはサーの称号すら得るに至った。E・A・ポーに始まるミステリーの系譜の中で、ホームズものが占める歴史的価値は偉大である。それゆえ…

トビー&ジョージのデビュー作

以前「猿来たりなば」などを紹介した、エリザベス・フェラーズのデビュー作が本書。作者は、本格ミステリー黄金期の最後に現れた英国の女流作家である。息の長い作家で、90歳近くで亡くなるまでに75冊ほどの長編小説を残した。ただ日本では、本書のようなト…

中年女性は目立たない?

イーヴリン・E・スミスは、雑誌編集者やクロスワードパズルの作者をしていたが、1950年代からSF短編を発表し始め、デルフィン・C・ライアンズ名義のものを含めて多くのSF長編を発表している。しかし60歳を目前に1986年に発表した本書で、ミステリーの世界に…

バラクラヴァ農業大学の悲劇

以前紹介した、シャーロット・マクラウドのシャンディ教授ものの第二作が本書。前作「にぎやかな眠り」で同僚のエイムズ教授の奥さんが殺された事件を解決したばかりか、シャンディ教授は50歳代半ばを過ぎて人生の伴侶ヘレンと結ばれる。幸せいっぱいの教授…

古書の世界の連作大河完結

2013年1月から、フジテレビの「月9枠」で放映されたTVドラマ「ビブリア古書堂の事件手帳」は、歴代最低の視聴率で大コケに終わった。380万部もうれた原作に、当時の人気若手女優剛力彩芽を起用しながら失敗作に終わっている。 全7巻のこのシリーズ、僕…

すかんぴんだが口八丁

以前「コルト拳銃の謎」を紹介した、フランク・グルーバーのジョニー&サムが登場するシリーズの第一作が本書。ボディビルの書籍を売るテキ屋の二人、ジョニー・フレッチャーは口八丁のセールスマン、サム・クラッグはボディビルの生きた見本である。 本書の…

名探偵ジョージ・ポーファイラス

・・・といっても、かなりのミステリーマニアでも「ああ、あいつね」と答えられる人は少ないだろう。以前「猿きたりなば」を紹介しているが、その作品で日本に最初に紹介されたのがジョージ君である。作者は英国でアガサ・クリスティーの後継者の一人とされる、…

犯罪は引き合わない

ヘンリー・スレッサーは1927年ブルックリン生まれ、コピーライターを振り出しにディレクターなどを経て、広告代理店を経営するようになった。本業のかたわら1950年代から短編ミステリーを<EQMM>などの投稿するようになり、「グレイ・フラノの屍衣」でアメ…

北大西洋航路の「笑劇」

本格ミステリーの黄金期、イギリスとアメリカにわたって不可能犯罪を追い続けたのが、ジョン・ディクスン・カー。すでに何作か紹介しているが、本書は1934年発表で全編北大西洋航路上のクイーン・ヴィクトリア号で物語が展開する。脱出トリックという意味で…

リーダーズ・ダイジェストの思い出

中・高校生のころ、「リーダーズ・ダイジェスト」という雑誌をとっていたことがある。もうほとんど中味は覚えていないが、いろいろな書籍のエッセンスだけを集めたもので、全部を読む暇のない忙しい人が愛用していたらしい。高度成長期の、ワーカホリックを…

ノベライゼーションにかける手間

映画やTVドラマのノベライゼーションを読むことはあまりないのだが、以前「古畑任三郎シリーズ」の短編集を紹介したことはある。才人三谷幸喜が本領発揮した短編集だったと思う。TVドラマとしても面白かったが、ほどよく手が入っていて小説としても読め…

ベレスフォード夫妻、最後の挨拶

1922年に「秘密機関」でデビューしたおしどり探偵、トミー&タペンス・ベレスフォード夫妻。1973年発表の本書では70歳代もなかばになり、リューマチがどうのとか背中がつっぱると嘆いている。10歳代の孫もいる二人だが、冒険心は全く衰えていない。 物語は、…

ビジネス上手な私立探偵

本書の発表は1935年、アメリカで本格ミステリーが開花したころの発表である。作者のレックス・スタウトは、これが二作目。「毒蛇」でデビューしたのは、蘭と美食を愛し恐らくは120kgを超える巨体をもてあます私立探偵ネロ・ウルフとその助手アーチー・グッド…

イギリス貴族の「笑劇」

以前デビュー作「誰の死体?」を紹介したドロシー・L・セイヤーズの第二長編が本書である。デビュー作については、カッコいい貴族探偵ピーター・ウィムジー卿を主人公にした本格ミステリーとして同時期のライバルであるアガサ・クリスティより上手いかもし…

理系探偵シャンディ教授

東野圭吾の「ガリレオ」シリーズではないが、名探偵には理系の大学教授/准教授が少なくない。科学捜査の役に立つ知識を持っていることもあるし、直接的に鑑識や検視の役割を担うこともあるからだ。シャーロット・マクラウドはカナダ生まれ、東海岸育ちの作…

大人の童話ミステリー

クレイグ・ライスは、アメリカの女流ミステリー作家。ユーモアとペーソスにあふれる作風で、独特の地位を築いた。その特徴が非常に良く著わしているのが本書。原題の「Home Sweet Homicide」は、もちろん「Home Sweet Home」のもじり、Homicideというのは殺…

人生100年時代のプロローグ

アガサ・クリスティーは、トミー&タペンスものの長編を4つ書いた。最初の「秘密機関」は1922年発表、当時の2人は20歳代前半だった。しかし3作目の本書(1968年発表)では、2人は60歳代後半のはずである。2人の子供も結婚して孫もできた。そろそろ落ち…

完全犯罪へのヒント

ミステリーを読み始めた中学生のころ、謎解きが当たったりすると有頂天になり、自分は正義の味方になったような気がしたものである。次々と殺人事件の書籍を読み漁り、人殺しなんて悪いことをする奴を追求するのに没頭していた。名探偵は言うに及ばず警官・…

女王が帰るべきところ

「ミステリーの女王」アガサ・クリスティーは膨大な著作とファンを世に残したが、私生活は最初から幸福だったわけではない。ミステリーデビューに先だつ1914年、彼女はアーチボルト・クリスティー大尉と結婚(当時24歳)した。第一次大戦が終わり、1920年に…

明るいスパイ物語

イギリス人の好きなもの、年金・バラ・庭園づくり・紅茶・ミステリー。引退後は田舎に住み、土づくりからガーデニング、とりわけバラを作ってそれを眺めながらお茶の時間、雨が降ればロッキングチェアでミステリーを読み、そのうちにうとうと、というわけ。 …

価値のないもの盗みます

エラリー・クイーンという筆名を持つうちのひとり、フレデリック・ダネイは編集者としても巨大な足跡をミステリー史に残した。彼は「ミステリー・リーグ」という雑誌を創刊し一度は失敗するものの、再び「エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン」(E…

美食のたまもの、300ポンド

美食と蘭を愛する、私立探偵ネロ・ウルフ。1930年代に始まる、アメリカン・ミステリーのひとつの究極を示した作品群である。作者はレックス・スタウト。ひげ面のお爺さんだが、作者自身も美食家であったらしい。代表作のひとつ「料理長が多すぎる」では、本…