ユーモアミステリー
1996年発表の本書は、以前「死者を起こせ」を紹介した、フレッド・ヴァルガスの<三聖人シリーズ>第二作。聖マルコ・聖マタイ・聖ルカとあだ名される36歳の貧困学者たちが、いやいや探偵をする物語。 ルイ・ケルヴェレールは内務省調査員だったが、いくつも…
1997年発表の本書は、2ヵ月続けて紹介したドナルド・E・ウェストレイクの「ドートマンダーもの」。シリーズ第9作にあたり、時代が進んだことで450ページを越える大作になっている。「天から降ってきた泥棒」の冒頭、不運にも逮捕されてしまった運転役のオハ…
1985年発表の本書は、先月「逃げ出した秘宝」を紹介したドナルド・E・ウェストレイクの「ドートマンダーもの」。作者は2~3年おきにこのシリーズを書いていて、本書は「逃げ出した・・・」の続編にあたる。泥棒の天才と自称して実際素晴らしい冴えを見せるドー…
1989年発表の本書は、昨年「富豪の災難」を紹介したシャーロット・マクラウドの「セーラ&マックスもの」の第9作。とはいえ、セーラたちはほとんど登場せず、あまたあるケリング一族の中でも元気な60歳代のエマおばさんが大活躍する。 消防訓練で3階から飛…
1983年発表の本書は、以前「強盗プロフェッショナル」を紹介したドナルド・E・ウェストレイクの「ドートマンダーもの」。自称天才犯罪者であるドートマンダーは、仕事にあたりレギュラー、セミレギュラーの専門家(運転手、錠前師など)を集める。しかし小さな…
1986年発表の本書は、これまで2作を紹介したマイケル・ボンドの「パンプルムース&ポムフリットもの」。作者は童話「くまのパディントン」シリーズで有名だが、このようなユーモアミステリーも書いている。 主人公は元パリ市警警部で、クビになってからはグ…
昨日「完全犯罪を狙った奴ら」で、10の実犯罪録を紹介した。その中で多かったのは貧しい(&いかがわしい)男が資産家の女性にすりよって結婚し、妻を殺して遺産を狙うというケース。1975年発表の本書は、それを地で行ったユーモアミステリーである。とはい…
1984年発表の本書は、以前「パンプルムース氏のおすすめ料理」を紹介した、マイケル・ボンドのシリーズ第二作。作者は「くまのパディントン」で有名な児童文学家だが、パリのグルメ覆面調査員パンプルムース氏と愛犬ポムフリットが活躍するミステリーを20冊…
本書は「シャム猫ココシリーズ」でおなじみの、リリアン・J・ブラウン初の短編集。邦訳としては5冊目にあたり、20~30ページほどの短編14作品が収められている。残念ながら、<ココ>やクィララン記者は登場しない。SF調のものから怪奇譚、奇妙な味のミステリ…
1997年発表の本書は、以前「グルメ探偵、特別料理を盗む」を紹介したピーター・キングの「グルメ探偵もの」の第二作。前作ではロンドンの有名店同士の争いに巻き込まれたグルメ探偵と名乗る「ぼく」の、腰抜けっぽい活躍を紹介した。本書では世界中の職が集…
2010年発表の本書は、宝島社が主催する「このミステリーがすごい(このミス)大賞」で隠し玉賞を受賞した作品。作者の七尾与史は、その後「死亡フラグシリーズ」4作を始め、40作ほどを発表。本書と「ドS刑事」の2作が映像化されている。 この賞は新人作家…
1988年発表の本書は、これまで創元推理文庫で7作を紹介したシャーロット・マクラウドの「セーラ&マックスもの」。8作目の本書以降は、扶桑社から邦訳が出版されている。美術品探偵マックス・ビターソンと結婚し、子供も生まれたケリング家の一員セーラは…
本書は以前「青いチョークの男」を紹介した、フランスのミステリー作家フレッド・ヴァルガスの四作目。「青い・・・」の主人公はパリ5区の警察署長だったが、本書(1995年発表)に始まるシリーズでは3人+αのチームが探偵役を務める。その3人とは、 ・中世が…
作者のピーター・キングは、ロンドン大学卒業後、フランス・イタリア・ブラジルなどで様々な職業に就いたとある。舞台脚本・旅行記・グルメガイドなど多彩な著書があり、1994年発表の本書がミステリーとしてのデビュー作。自ら一流シェフに負けない料理の腕…
20世紀の日本のSF作家と言えば、小松左京・星新一とこの人筒井康隆が挙げられると思う。以前「時をかける少女」を含むSF短篇集を紹介したのだが、作者はミステリーも好きだった。もちろん作者は多芸な人で、小説以外にも戯曲・評論・随筆・童話・絵本・漫画…
英国では純文学などで名を挙げた作家が、突然ミステリーを書くという「伝統」がある。A・A・ミルンやイーデン・フィルポッツなどがいい例だ。20世紀後半になってもその流れはあるようで、本書の作者マイケル・ボンドは「くまのパディントン」で知られる児童文…
本書は1984年に「小説現代」に連載された、内田康夫の短編を8編集めたもの。主人公は世界に一台しかない犯罪捜査用のパソコン(今様に行けばAI)である「ゼニガタ」と、それを使う探偵事務所長鴨田英作である。 作者は1980年に「死者の木霊」でデビューする…
1968年発表の本書は、これまで2作品を紹介したリリアン・J・ブラウンの「シャム猫ココシリーズ」の第三作。なんとか<デイリー・フラクション紙>に職を得たベテラン記者ジム・クィララン。相変わらずカネには困っていて、<ココ>と<ヤムヤム>という2匹の…
1967年発表の本書は、以前紹介したリリアン・J・ブラウンの「シャム猫ココシリーズ」第二作。なんとか<フラクション>紙に職を得たクィラランだが、間借りしていたアパートは家主の死で追い出されることになり、家主から引き継ぐ形になったシャム猫<ココ>と…
一昨日P・G・ウッドハウスの「執事ジーヴズ」ものをご紹介した。「間抜けた主人と賢い従卒」タイプの短編で、慇懃な執事ジーヴスは気弱な青年貴族バートラムを助けて大活躍する。1920~1930年代の物語だったが、本書(1993年発表)はロマンス作家エミリー・ブ…
僕は全く知らなかったが、英国と英国に関係あった諸国では本書の作者P・G・ウッドハウス(1881~1975)は、非常に人気のあるユーモア作家だという。貴族階層の家庭で香港で産まれた作者は、大学進学を目前に実家の没落で進学をあきらめ金融機関(今のHSBC)で…
1966年、本書によって「シャム猫ココシリーズ」が始まる。作者のリリアン・J・ブラウンは、デトロイトの新聞社に30年務めた記者。マンションの10階から飼い猫が突き落されて殺されたのをきっかけに、EQMMで作家デビューを果たす。本格的な長編第一作として執筆…
1941年発表の本書は、以前紹介した「大はずれ殺人事件」の続編。独立した2冊のように見えるが、クレイグ・ライスは2冊を通じた罠を読者に仕掛けている。それは社交界の花形美女(で大富豪!)の、モーナ・マクレーンが前作で公言したこと。 「私が多くの目…
本書(1940年発表)は以前紹介した、クレイグ・ライスのマローン弁護士ものの1冊。J・J・マローン弁護士とジェーク、ヘレンが登場するシリーズとしては、第三作にあたる。「時計は三時に止まる」の次の作品「死体は散歩する」は、まだ見つけていない。そこで…
本書はこれまで3作を紹介してきた、イーヴリン・E・スミスの「ミス・メルヴィルもの」の第四作。もうじき50歳が近い名家の令嬢スーザン・メルヴィルは、生活に困って殺し屋稼業をする羽目に。父親に教わった銃の腕があってのことだが、中年レディは街中では目…
本書は以前紹介したイーヴリン・R・スミスの「ミス・メルヴィルもの」の第三作。富豪の家に育ちながら25年前に父親が資産をもって失踪、母親もなくなり日銭に困った彼女が持ち前の銃の腕を生かして殺し屋をするのが第一作。その後彼女は画家として高名になり、…
本書(1993年発表)は、ジル・チャーチルの「Domestic Mystery」ものの第三作。「ゴミと罰」で登場した主婦探偵ジェーンの素性が、本書で少し詳しく語られる。というのも、ジェーンの実母セシリー・グラント夫人が娘のところにやってくるのだ。夫(ジェーン…
本書は、ジル・チャーチルの「主婦探偵ジェーン・ジェフリイもの」の第二作。前作「ゴミと罰」でコミュニティへの通いの家政婦殺しを解決したジェーンが、ふたたび殺人事件に巻き込まれる。ジェーンと親友シェリイは、協力してクリスマスの準備に忙しい。彼…
日本では紹介された作品が少ないシャーロット・アームストロングだが、1942年に劇作家から転身してミステリーを書き始め、30作ほどの長編を残した。彼女はミシガン州で1905年生まれたというから、二人のエラリー・クイーンと同い年である。 本書は1969年に亡…
米国のユーモアミステリー作家であるクレイグ・ライスの作品は、これまで読んだことがなかった。1939年発表の本書でデビューした作者とレギュラー探偵J・J・マローンは、作者が亡くなるまでの間に12冊ほどで活躍する。本格ミステリーの本家英国には多くの女流…