新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ますます必要なメディア・リテラシー

昨日廣淵升彦著「メディアの驕り」を紹介して、新聞・TVの偏向報道が多くなり、市民は判断力を持たないといけないとの思いが強くなった。「メディア・・・」は2017年発表だがその1年後に、産経新聞出身のジャーナリスト高山正之氏と、NHK出身の自民党参議院議…

市民に求められる判断力

2017年発表の本書は、国際ジャーナリストの廣淵升彦氏が日本メディアの問題点を示し、市民への警鐘を鳴らしたもの。ロシアのクリミア併合などがあり、日本の報道が偏向していることが執筆のきっかけになったと思われる。今やロシア・ウクライナ紛争は「情報…

少子化対策の一助になるか?

「Global & Digital」に反旗を翻す人は少なくないが、高名な学者と言うとエマニュエル・トッド氏が一番かもしれない。ユダヤ系フランス人で、米国型のスタンダードは大嫌いと言う人。歴史学者・人口統計学者であって「女性の識字率が上がると、出生率は下が…

口径統一に最後まで至らず

光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「小銃・拳銃・機関銃」である。帝国陸軍がどのような小火器を使っていたかを、写真や図面約400点とともに紹介したのが本書。陸軍が最初に採用した「村田式13年歩兵銃」は、口径11mmの単発銃だった。日露戦争では「30…

父なるライン、母なるドナウ

本書は以前「フランスものしり紀行」、先月「ヨーロッパものしり紀行」を紹介した紅山雪夫氏の紀行シリーズ・ドイツ編。ローマ時代の遺跡(今でも使われているものも!)や中世の城塞、街並みを訪ねて回る旅行案内である。原本は1993年にトラベルジャーナル…

明石藩主松平公暗殺

古い映画をNHK-BSで毎日のように放映してくれるのは、本当にありがたいと思う。特に戦争映画を録画することが多いのだが、西部劇や時代劇も懐かしくていい。これらの中でも、戦闘シーンが生々しく描かれているのが大好きだ。今回も「本棚」にではないのだが…

あらゆる暴力が承認された状態

ロシアのウクライナ侵攻は、新たな30年戦争の幕開けだとする識者もいる。連日報道される残虐行為、これまでもボスニア・ヘルツェゴビナやアフガニスタン、シリアなどで繰り返されてきた悲劇である。ただ今回は各国報道機関の注目度が異なり、あまりこの種の…

ケラーは旅が好きだ

ローレンス・ブロックという作家にはシリーズものが3種あって、以前何作か紹介したマット・スカダーものが17冊翻訳出版された以外は、泥棒バーニイものも怪盗タナーものも書店で見かけない。ただ米国ではサスペンス小説で名の通った作家である。マットもの…

サラリーマンのサバイバル術

本書の巻末に、筆者(成毛眞)の略歴がある。1979年中大卒、メーカー、アスキーを経て1986年Microsoft入社、日本法人社長となり2000年退社。(株)インスパイアを設立して社長就任、2008年取締役創業者、となっている。僕自身も関わりを持った、同年代の企業…

「大阪維新」の10余年

日本政界の今年最大のイベント(!)参議院議員選挙が、明日いよいよ公示される。一時期民主党が政権を担ったことはあるが、55年体制以降は実質的に自由民主党政権が継続している。現時点では政権交代を狙える野党はいないのだが、その第一の候補は「日本維…

長期政権を支えた無私の人

本書は、まだ「COVID-19」禍が始まったばかりの2020年4月に出版されたもの。以前「小説政界陰の仕掛け人」を紹介した、ルポライター大下英治の菅官房長官論である。「政界陰・・・」が扱っていたのは、中曽根・田中・竹下総理の陰にいた3人だったから、ずいぶ…

初めてHOTになった湯川准教授

本書は、東野圭吾の「湯川学もの」の中で最近の長編。この後には「沈黙のパレード」(2018年)があるだけだ。さしもの理系作家も、超常現象・不可能犯罪を科学的手法で解決するネタを、易々とはひねり出せないのだろう。本書(2015年発表)も、2012年に発表…

「COVID-19」は何を変えたか

本書は、昨日紹介した「めいろま」さんのアドバイスVol.2。2020年末の発表で、「COVID-19」禍で世界が大きく変わった後の、日本と世界を考察している。日本でも政府の「COVID19」対応は批判を浴びた。初代担当大臣西村議員の著作の評判も悪い。しかし、筆者…

「めいろま」さんのアドバイス

2019年発表の本書は、元国連職員でイギリス人の夫君を持つ谷本真由美氏の国際情報書。筆者は「@May_Roma」のアカウントで舌鋒鋭いツイートをする人としても知られている。序章「日本人はなぜ世界のニュースを知らないのか」に始まり、日本人が知らないものと…

英国の悩みと戦略、ロシアの影

2019年発表の本書は、英国に赴任経験もある産経新聞の岡部伸編集委員が、「Brexit」国民投票の後に英国の事情をレポートしたもの。いくつかこのテーマの書物は読んでいるが、英国が抱える問題と共に次の時代に向けた新戦略を紹介していることに特徴がある。 …

最後の預言者ムハンマドの影響力

本書は以前「地名」と「食」を紹介した、21世紀研究会の「世界地図シリーズ」の1冊。今回は「イスラーム」である。20世紀末の統計で、世界のイスラーム教徒は約12億人いるという。国別で多い順に、 1)インドネシア 1.8億人(88%) 2)パキスタン 1.3億…

防衛費GDP比2%を目指すなら

本書は、外務省で駐タイ大使などを務めた岡崎久彦氏が、2003~2005年にかけて新聞や月刊誌に発表した論考から収録したもの。筆者は外務省を退官してから、岡崎研究所で所長を務め、第二次安倍政権での外交・安全保障ブレーンだった。 これらの論考が書かれた…

大戦の傷跡残る街の老猫

1950年発表の本書は、アガサ・クリスティーの「ミス・マープルもの」。老嬢探偵の代名詞ミス・マープルが登場するものとしては、4冊目の長編になる。第二次世界大戦中も、かわらぬペースでミステリーを発表し続けてきた作者だが、1950年ともなると戦後の混…

金正恩はスマホを使う

今年になって再三のミサイル発射を続けている北朝鮮、ロシアのウクライナ侵攻で世界の目がそちらに向いているのが気に入らないらしい。せっかく米国バイデン大統領が極東にやってきたのに、韓国・日本を訪問しオーストラリア、インドとの首脳会談もしたのに…

アイアソン埠頭の新居

1983年発表の本書は、シャーロット・マクラウドの「セーラ・ケリングもの」の第四作。前作「盗まれた御殿」の事件から2ヵ月、未亡人セーラと青年美術鑑定人マックスは結婚の意思を固め、新居を「海の見える別荘」を改築して充てることにした。ビーコン・ヒ…

旧ソ連の化学兵器

本書は2020年に発表された、ロシアの作家セルゲイ・レベジェフのスパイスリラー。作者は地質学者で、ロシア北部や中央アジアでの現地調査を7年続けた後作家に転じた。詩人・エッセイスト・ジャーナリストでもあるという。作風としてはソ連崩壊やロシアの闇…

新鋭戦車4両対生身の歩兵たち

本書はスティーブン・スピルバーグ監督の「Saving Private Ryan」の脚本を基にしたノーベライゼーション。「Battman」の原作や多くの映画のノーベライゼーションをした、作家マックス・A・コリンズの作品である。 ノルマンディ上陸作戦を描いた大作映画のひと…

稀覯本の鑑定とブラックジャック

1983年発表の本書は、その年のアメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞を獲った作品。新人賞だから作者のウィル・ハリスは本書がデビュー作である。作者はカリフォルニア州にある政府系シンクタンク<ランド研究所>の研究者だと、解説にある。そんな作者がデビ…

サスティナビリティ経営は総合格闘技

2020年発表の本書は、サスティナビリティ経営・ESG投資アドバイザーの夫馬賢治氏が、SDGsなどの目標に向けた産業界の動向や、現状の見通しをまとめたもの。サスティナビリティ経営はすでにイメージアップ戦略ではなくなり、多くのグローバル企業が本気で取…

ロンメル夫人の誕生日

昨年の今日、映画「The Longest Day」のDVDを紹介した。英米独三ヵ国のオールスターキャストが出演した、永遠の大作である。今回はその原作となった同名のドキュメンタリーを紹介したい。本書は1959年に発表されたが、それに先立つ3年間に作者のコーネリア…

最強のモラルパワー大国

米中対立に加え、ロシアのウクライナ侵攻によって、国際的緊張は一気に高まった。ロシアを非難する国は多いが、非難決議にあからさまに反対しないまでも棄権し沈黙(暗黙?)する国も少なくない。中国・インドの両大国もそうだし、欧米流の「正義」に眉をひ…

超国家機関の200年

本書は以前「赤目のジャック」を紹介した歴史作家佐藤賢一が、2018年に発表した欧州史の一断面。「テンプル騎士団」という言葉は歴史教科書にも出てきたし、彼らの隠し財宝を巡るスリラーも読んだ記憶がある。どういう組織だったかについては、日本人の多く…

欧州を侵略する3つの脅威

2018年発表の本書は、読売新聞の三好範英編集委員が、欧州の危機的状況をレポートしたもの。筆者は3度、合計10年以上にわたりベルリン特派員を務めた。当時の人脈を生かして、以下の場所で政府・業界関係者ばかりでなく、一般市民にも取材して本書をまとめ…

<山の民>藤吉郎

今日6月2日は本能寺の変の日。「信長の棺」に始まる本能寺三部作以降、戦国時代から徳川幕府初期の<歴史の真相>とも呼べる作品を、作者加藤廣は1ダースほど遺した。デビュー作「信長の棺」以下、千利休や九鬼水軍を扱った作品も以前紹介しているし、他…

幼馴染の女医、没落貴族そして警部

作風をカメレオンのように変える女流作家ポーラ・ゴズリング、全て水準以上の作品ばかりでアクション・ラブサスペンスから本格ミステリーまで変身を繰り返している。発表時系列に読んできて、本書が第七作。前作「モンキー・パズル」から警察小説っぽい雰囲…