2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧
本書は先月「戦争学」を紹介した、松村劭元陸将補の前著の続編。古代から2,600年間におよぶ戦史を紹介した前著と違い、世紀末の2000年に発表された20世紀の「戦闘教義」を網羅した書である。 総力戦下の国家の国力8要素と、戦いの9原則が前著で紹介されて…
第二次世界大戦では多くの主力艦(戦艦・巡洋戦艦・航空母艦)が沈んだが、その多くは太平洋でのことである。早々に降伏してしまったフランス海軍や、戦艦4隻が建造中止になったソ連海軍、大型艦は逃げ惑うだけのイタリア海軍、精強だがわずかな艦艇しか就…
先月、大竹文雄教授の「競争社会の歩き方」を紹介した。僕にとって初耳の学問、行動経済学の入門書だった。2019年発表の本書は、その大竹教授が推薦する東大経済学部政策評価研究教育センター長山口慎太郎教授の著作。行動経済学を家庭(結婚・出産・子育て…
昨日、歴史小説家中村彰彦著「幕末を読み直す」を紹介した。歴史小説と時代小説の比較(線引き?)はとても興味深かったが、タイトルにある「幕末」の扱いが思ったより少なかったので、本棚の奥から本書を引っ張り出してきた。2005年発表の書で、著者は東急…
本書は、歴史作家中村彰彦のエッセイ集。作者は幕末会津藩の猛将佐川官兵衛の一代記「鬼官兵衛烈風録」でデビューした人。栃木県の出身で、近県のせいだろうか会津を舞台にした作品が多いという。 作者によれば、歴史小説を書くには多くの資料にあたり下調べ…
本書は1984年に「小説現代」に連載された、内田康夫の短編を8編集めたもの。主人公は世界に一台しかない犯罪捜査用のパソコン(今様に行けばAI)である「ゼニガタ」と、それを使う探偵事務所長鴨田英作である。 作者は1980年に「死者の木霊」でデビューする…
本書(1962年発表)以前「火星年代記」を紹介した、レイ・ブラッドベリの長編ファンタジー。本国では根強い人気のある作家だが、短編集含め8冊しか作品のない寡作家でもある。「火星・・・」がデビュー作で、本書は7作目にあたる。 SF・ファンタジーと一括し…
1993年発表の本書は、ポーラ・ゴズリングの第11作。「モンキーパズル」あたりからレギュラー探偵を登場させている作者は、前作「ブラックウォーター湾の殺人」でこれまでのストラーカー&ケイトに加えて、ブラックウォーター郡の若き三世保安官マット・ゲイ…
本書は、自民党総裁選を前にした2021年9月に出版されたもの。事実上、河野太郎候補の政権構想といっていい。DCのジョージタウン大学で学んだことや、父親洋平氏への生体肝移植のことが前半1/3を占めているが、残りは以下の点で政策論を述べている。 ・外交…
いろいろな共著者を得て、スパイ&軍事スリラーを書き続けてきたトム・クランシーは、2013年に亡くなった。最後の共著者は「グレイマンもの」のマーク・グリーニーだったが、その直前にピーター・テレップと発表した(2011年)のが本書。主人公は、<統合タ…
2021年発表の本書は、読売新聞社でIT問題を担当、情報セキュリティ大学院大学で2019年には修士号もとった記者若江雅子氏の「PF規制に霞ヶ関は何をしたのか」論。公取・総務省・経産省・個人情報保護委員会や関係する法曹界・学界の人物が多く登場するが、半…
2021年発表の本書は、ルポライター安田峰俊氏が(「COVID-19」禍で海外取材が出来なくなって)これまでの取材データや海外ネットワークを使ってまとめたもの。冒頭各国の対中国感情の係数が示してある。日本は尖閣事件などあって2010年代初頭から係数が悪化…
先月イタリア総選挙が行われ、かつてムッソリーニに傾倒していたという女性党首の極右政党が第一党になった。現代イタリア政界では複数党の連立が当たり前で、組閣に1~2ヵ月はかかるらしい。連立政権の一角に、元首相のベルルスコーニ氏の名前があった。2…
1990年発表の本書は、久しぶりの「V・I・ウォーショースキーもの」。シカゴの女探偵V・Iことヴィクの正義感あふれるゆえの苦闘を、イリノイ州在住の作家サラ・パレツキーが書き続ける第6作である。毎回背景となる舞台を変えているこの作品群、今回の舞台は建設…
本書は1959年に発表された、巨匠松本清張の代表作である。物語の大半を占める金沢を中心とした石川県の冬の風情が、陰鬱な雰囲気を倍増させている。26歳のOL禎子は、勧める人があって10歳年上の鵜原憲一と見合いをし、結婚した。当時としてはお互い、やや遅…
2018年発表の本書は、帝国データバンクと読売新聞の中村記者による、「COVID-19」禍前の日本の産業界(景気)地図。最近デジタル政策もサイバーセキュリティ対策も東京視点だけでは不十分だと痛感させられているので、何かの参考になればと買ってきた。「ご…
1955年発表の本書は、女王アガサ・クリスティの「ポワロもの」。第二次世界大戦後10年近く経ち、ロンドンには世界中から留学生がやってきている。よく貴族の館に大陸からの使用人(執事・メイド・コック・運転手・庭師等)が雇われている「多国籍環境」での…
今日は鉄道の日(毎年10/14)である。明治22年に鉄道省によって制定された記念日だ。これまで多くの「鉄道愛」の書を紹介してきた宮脇俊三氏は、2003年に亡くなっている。享年76歳、戒名は「鉄道院周遊俊妙居士」という。本書は作者が晩年に情熱を燃やした「…
2日間に渡り紹介した書で、日本の防衛力の問題が明白になった。市民が防衛に十分な関心を持たないので、政治も行政も本気にならない。闘わないことを前提として、自衛隊は活動してきた。一部メディアや野党の反対コールに、政府全体が及び腰だ。それではど…
昨日「防衛事務次官冷や汗日記」を紹介した。37年間防衛庁(後に省)の内局に努め、各幕(現場)と官邸・政治家や財務省などと「板挟み」になってきた黒木氏の経験談は、それなりの重みがあった。どの先進国にも、軍の暴走を防ぐ<シビリアンコントロール>…
本書は「南スーダンPKO日報問題」で防衛事務次官を退いた黒江哲郎氏が、37年間の防衛省(庁)での思い出をつづった回顧録。2020年末から元防衛官僚を中心に作るサイト<市ヶ谷論壇>に掲載された記事を、2022年に書籍化したもの。基本的に防衛省もしくは中央…
本書は、ちょうど「東京オリ/パラ」の1年延期が決まった、2020年5月に発表されたもの。著者の後藤逸郎氏は、毎日新聞で<週刊エコノミスト>編集などに携わったジャーナリスト。「オリンピック・マネー」という題名通り、このイベントにまつわるカネ・利…
大手の出版部長だった作者は、子供のころからの鉄道(というか汽車)好き。小学校入学前から時刻表を読みふけり、周囲は「神童」と思ったらしい。それが高じて日本中の国鉄全部乗るという快挙を成し遂げ「時刻表2万キロ」という著書で文壇デビューを果たし…
多くのペンネームを持ち、多様な物語を発表した才人エド・マクベイン。もちろん有名なのは「87分署シリーズ」なのだが、そのほかにも本書(1976年発表)に始まる「ホープ弁護士シリーズ」をこの名義で何冊か発表している。舞台は、大都会を遠く離れたフロリ…
1999年発表の本書は、CNNのジャーナリストから謀略小説作家に転じたダニエル・シルヴァの第三作。デビュー作「マルベリー作戦」は第二次世界大戦中の謀略戦を描いたものだったが、第二作「暗殺者の烙印」では現代に舞台を移し、CIAのエージェントであるオズ…
T・ジェファーソン・パーカーという作者の作品を読むのは、初めて。巻末の解説によると2002年の「サイレント・ジョー」と2004年の「カリフォルニア・ガール」で2度米国探偵作家クラブ最優秀長編賞を獲った実力派だ。1年に1作程度という現代作家としては寡…
1985年発表の本書は、シャーロット・マクラウドの「セーラ&マックスもの」の第6作。前作「消えた鱈」では、ようやく新婚気分も落ち着いたところでセーラとマックス夫婦が純銀製の鱈を巡る事件に巻き込まれる。セーラはあまたある伯父叔母のなかでも特にう…
先月「ワインの便利手帳」で、ワインの楽しみ方の基本を勉強した。 ・宅呑みワインの選び方 ・そのカタログと合わせる料理 ・外食時のワインの選び方 などを一通り知ることができた。そうなると、どうしても試してみたくなるもの。それももう少し具体的に、…
2019年発表の本書は、産経新聞で香港・北京取材が長かったジャーナリスト福島香織氏の新疆ウイグルレポート。習大人のグローバル政策「一帯一路」の陸の起点となる地域だが、ウイグル族他のイスラム教徒が多い地域に漢民族が入植を続けている。 ウイグル他の…
本書は、これまで3冊を紹介してきた21世紀研究会の「世界地図シリーズ」の1冊。国や民族が異なると、生活上の常識にも大きな乖離がある。特に前回紹介した「イスラーム」については、勉強させられることが多かった。 日本もグローバリズムが進んできて、居…