新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

変格ミステリー

シャロン・テート事件の20年後

本書は、「放映されなかったコロンボもの」のひとつ。以前「13秒の罠」もそうだと紹介している。その作品は、いつものW・リンク&R・レビンソンではない作者だった。本書はいつもの二人に加えて、ウィリアム・ハリントンが著者欄に名を連ねている。恐らくはこ…

主役の陰に隠れる名探偵

英国ミステリー界の重鎮、クリスチアナ・ブランドの代表的な短編を集めたのが本書。作者は日本のミステリー読者にはあまりなじみがないかもしれないのは、それほど多作家でもなく、邦訳されたものはもっと少ないからかもしれない。 レギュラー探偵として一番…

4つの結末が必要・・・

あまり日本では有名とはいえない著述家レオ・ブルース、英国生まれで100冊以上の幅広いジャンルの著作があるが、一番多いのが本書のようなミステリー。1936年発表の本書がデビュー作で、ある意味非常に人を食ったような作品である。 テーマは「推理の競演」…

おじさん刑事の肖像

「刑事コロンボ」のシリーズは、大体富豪なり有名人なりが犯人役になる。様々な職業のカッコいい犯人に、ボロ車・ボロコート・猫背で貧相なコロンボ警部が挑むという映像的な面白さがある。今回の犯人役は、高名な画家。カリフォルニアの海岸べりにアトリエ…

ミステリー作家の楽屋裏

先日ミステリー界の「当代一の読み手」と紹介した佐野洋の「同名異人の4人が死んだ」の評に、推理作家って大変なんだと書いた。犯罪を扱うものだけに、万一にも現実の何かを想起させてはいけない。特に人名の扱いには、慎重の上にも慎重をとのスタンスがに…

初期のポラロイドカメラ

本書は「刑事コロンボ」全60余話の中でも、ベスト10級の名作と言われる作品。主人公(犯人のこと)が高名なカメラマンであったことと、表紙の絵にある古いポラロイドカメラが重要な役割を果たしていることから、僕の印象に残った作品でもある。 放映は1975年…

被害者の肖像

いわゆるミステリーベストxxを選ぶと、かつてはベスト30くらいには必ず入っていたのが本書。モスクワ特派員などを経験したジャーナリストが、1950年に発表したものだ。アンドリュー・ガーヴは英国人、本書の前に習作ミステリー数編を発表した後、本格的に作…

Scilly諸島での冒険譚

アンドリュー・ガーヴは、本格ミステリー「ヒルダよ眠れ」でデビューした。被害者ヒルダは良妻賢母だった、なぜ殺されたのか?この謎を追う探偵役の前で、被害者のイメージが崩れていく過程がとても面白いサスペンス調の作品だった。 しかし作者はその後、本…

フランス流の皮肉2冊分

フレッド・カサックはパリ出身の作家、全部で7作の短めの長編小説を残した。1957年「死よりも苦し」でデビュー、大半の作品を1950年代に発表している。そのうち「日曜日は埋葬しない」でフランス推理小説大賞を受賞している。本書は、その前後に発表された…

幻となった「コロンボ講話」

刑事コロンボものは、ほとんどリチャード・レビンソンとウィリアム・リンクの合作によるものだ。ところがわずかに別の著者による原作があって、本書はそのひとつ。作者はアルフレッド・ローレンスである。・・・しかし実はこの作品、TVドラマ化されているもので…

ちょっと変わった倒叙推理

本書は、2ヵ月前に紹介した大谷羊太郎の「八木沢刑事もの」の一編。作者はトリックメーカーとして知られ、奇抜な手法のミステリーを多く発表している。この多くというのが曲者で、日本の近代ミステリー作家は多作が過ぎると僕などは思う。かって精緻な本格…

シェークスピア劇の異邦人

よれよれレインコートでフケと葉巻の灰をまき散らすやぶにらみの小男、とても探偵役には似つかわしくないのだがそれが難事件を鮮やかに解決する・・・という「刑事コロンボ」シリーズ。主演のピーター・フォークは片目が義眼の、もともとはチンピラ役が多かった…

犯人探しではなく・・・

普通のミステリーは、殺人のような重大事件があり、探偵役が登場して事件を調査し、最後に犯人(たち)を名指しないしは逮捕して終わる。Why、Howという謎もあるのだが、「WHO done it?」と言うのが主流。しかし本書(1946年発表)でデビューしたパトリシア…

2,000年間「悪魔」を追って

エドワード・D・ホックは膨大な短編ミステリーを書いた。以前怪盗ニック・ヴェルヴェットのシリーズを紹介しているが、彼は依頼を受ければなんでも盗むのだが「価値のないもの」に限るという変わったビジネススタイルを貫いている。盗むのは例えば、古新聞・…

観てから読むことになり

在宅勤務が続いていて、本の読み方も変わってきた。これまで半分以上のページは往復の新幹線車内か、近距離・遠距離を問わず移動中に読んでいる。もちろん欧米便のフライトの中ということもある。ところが移動時間というのがほとんど無くなってしまし、今はT…

悪女の皮肉な戦い

パトリシア・マガーは本格手法での変格ミステリーを得意とした作家だと、以前紹介した。彼女は大学でジャーナリズムを専攻、道路建設協会の広告部勤務を経て「建設技術」という雑誌の編集を担当、戦後間もない1946年に「被害者を探せ」でデビューしている。…

ミステリーTVドラマの金字塔

リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンクはユニバーサルTVのプロデューサー。コンビを組んでいくつものTVシリーズを書き、TVのオスカーである「エミー賞」の最優秀脚本賞を2度受賞している。彼らの脚本で日本で一番よく知られたのは「刑事コロンボ」だ…

桂冠詩人セシル・デイ・ルイス

ミステリーのカタログや裏表紙などに、簡単な内容紹介が載っている。これが、書籍を買うかどうかの判断材料になることは多い。本格ミステリー好きのNINJA青年は「xxミステリー100選」などという書評とともに、内容紹介文を見て購入する優先順位をつけてい…

逆説とトリックの小箱

ギルバート・キース・チェスタトンはイギリスの作家、詩人、批評家、随筆家である。1905年ころ長編ミステリー「木曜の男」を発表しているが、推理作家としての地歩を築いたのは「ブラウン神父」という、小柄でコウモリ傘に帽子とマント、丸顔であどけない神…

夜の蝶が乗った玉の輿

ミステリーの翻訳や評論をしている人が自分でもミステリーを書くというのは、珍しいことではない。以前ハードボイルド小説に詳しい小鷹信光の「探偵物語」を紹介したが、舞台は日本、登場人物は日本人になっていても、テイストはすっかりアメリカンハードボ…

新訳は読みやすい

新潮文庫版の「813」を読んで、ルパンものの最高傑作と言われるこの作品にさほどの評価ができなかったことは、以前に紹介した。その中で、フランス文学界の重鎮の方の翻訳だったのも評価できない一因ではないかと述べた。しかし、重鎮の方に忖度して新訳…

5人のコンサルタント

富裕な奥さんと結婚したため、一時は医学の道を歩みながらも医師になることなく金銭的には不自由なく暮らす中年男ティム。彼の悩みは、奥さんの不倫とその相手が親友のブレイゼスであること。一方世間のニュース、特に殺人のニュースを見ても組織犯罪による…

18個のおもちゃ

奇術とミステリーには共通点が多い。いずれも聴衆や読者をあっと言わせてナンボの世界だし、いたずら心がないと上手くいかない。クレイトン・ロースンなどは奇術師を探偵役にした、読者を驚かせる作品を多く残した。日本のロースンと言えば、泡坂妻夫以外に…

解決しない探偵

ABCショップというカフェの片隅で、ミルクをすすりチーズケーキをほおばる老人。カカシのように痩せた男だが丸眼鏡の奥の眼光は鋭く、興奮してくると少し震える指で紐に結び目をつくったりほどいたりする。「イブニングオブザーヴァー紙」の記者ポリー・バー…

本格手法の変格ミステリー

パトリシア・マガーという作家は、あまり日本では知られていないかもしれないが、ユニークなミステリーを残した。1946年の「被害者を探せ」に始まり、初期の5作はおおよそ1年毎に発表されたが、各々独自の趣向を凝らしている。名作と言われるのは第二作「…

本格ミステリーからSFまで

ミステリー界に短編の名手と言われる作家は多いが、本書の著者フレドリック・ブラウンはそのジャンルの広さが際立っている。膨大な作品で知られるアイザック・アシモフも本格ミステリー、サスペンスもの、SFと書き分けるが、ブラウンもこれに匹敵する。 本…

マンハッタン、1944

有名なサスペンス作家であるウィリアム・アイリッシュ(本名コーネル・ウールリッチ)の作品中、ベスト3と言われるのが「幻の女」「黒衣の花嫁」「暁の死線」であることは、以前にも紹介した。 本書は高校生の時に読んで、あまり「名作」とは思えなかった。…

最初で最後のミステリー

三谷幸喜という人は才人である。何年か前「清須会議」という映画を見たが、あれだけの個性的な俳優/女優を有名な歴史上の人物にあてはめ、新解釈も加えながら組み立てたストーリーは出色だった。特に鈴木京香演じるお市の方の恐ろしさが印象深い。 彼が20年…

完全犯罪に対するスタンス

最も成功した完全犯罪とは、露見しなかった犯罪である。犯罪があったことに気付かれなければ、捜査も行われず、罪に問われることもない。普通のミステリーは、犯罪が露見してからの難題(アリバイ・密室・凶器・動機等々)を探偵役が解いてゆくプロセスを追…

最初に読んだ倒叙ミステリ

ミステリの一番の売りは "Who done it?" だと思う。不可能犯罪を暴く "How done it?" などもあるが、やはり「犯人はお前だ」というのが王道だ。巨匠エラリー・クイーンはデビュー2作目 "French Powder Mystery" で最後の1行で犯人の名前を言うというアクロ…