新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

アクション小説

プロたちのツールへのこだわり

本書(1965年発表)は、先月「死者を鞭打て」を紹介した冒険小説の雄ギャビン・ライアルの作品の中で、本棚に残った最後の作品。僕は後年の<マクシム少佐もの>、例えば「砂漠の標的」あたりが大好きなのだが、マニアが好むのが1970年代前に発表された単発…

イディタロッド犬ソリレースの陰で

1991年発表の本書は、アラスカ州フェアバンクス在住の作家リチャード・バリーのデビュー作。時代は米ソ冷戦末期、舞台はソ連とベーリング海峡を挟んで向かい合っているアラスカ州だ。主人公のリック・ベンスンは、作者同様フェアバンクスに住む形成外科医。…

「死骸が歩いているだけ」との自嘲

1973年発表の本書は、「鷲は舞い降りた」やショーン・ディロンものを多数紹介した冒険小説の雄ジャック・ヒギンズ初期の作品。作者が自ら「一番好きな作品」として推薦している。主人公は元IRA中尉で、今はIRAからもその敵からも警察からも追われる男マーチ…

マクギャレットたちの逆襲

このDVDは、リメイク版「Hawaii-5O」のシーズン2。前シーズンの最後に、宿敵ウォー・ファットの奸計に嵌り知事殺しの罪を着せられたマクギャレット少佐は、脱獄して罪を晴らそうとする。別件で留置されていたコノも、危険な囮捜査に従事する形で復職を果た…

ポーク郡保安官チャールズ・スワガー

2017年発表の本書は、<スワガーもの>を書き続けるスティーヴン・ハンターの「スナイパーの誇り」に続く作品。前作ではWWⅡのソ連軍の女スナイパーの謎を追ったボブ・リー・スワガー、今回は自分の祖父チャールズ・F・スワガーが記録から消された謎に挑む。 ボ…

人気刑事ドラマをリメイクして

このDVDは、米国CBSで2011年に放映されたシリーズ。かつて同じCBSで1968年から12シーズンに渡って放映された「Hawaii-5O」のリメイクである。旧作は純粋な刑事ドラマだったが、リメイク版はもう少し荒っぽく仕上がっている。 舞台も同じハワイ、4人の主要な…

暗殺者の平和な引退・・・

1986年発表の本書は、以前「殺人のすすめ」を紹介したレジナルド・ヒルが別名パトリック・ルエルで書いたもの。ヒル名義でダルジール警視が活躍する本格ミステリーやサスペンスものを40冊ほど書いたほか、ルエルほかの名義でも1ダースあまりの著作がある。…

怪物は尻尾より頭を狙え

以前クリス・ホルムの「殺し屋を殺せ」を紹介して、マーク・グリーニーには及ばないがとその戦闘シーンを評した。やはり同じような比較をした機関があって、2016年の翻訳ミステリーBest5」では、3位が「殺し屋・・・」5位にグリーニーの「暗殺者の反撃」が入…

アニメ風バイオレンス

レイバンのようなサングラスをかけ、拳銃を持った男のアニメが表紙を飾る本書、作者のジム・ケイスは米陸軍のOBだという以外はわからないと裏表紙に紹介がある。著作は50冊に及ぶというし、本書もシリーズの第一作という位置づけだ。 表紙の男が主人公のジョ…

三人の元IRAメンバー

これまでも、ジャック・ヒギンズの作品をいくつか紹介してきた。おおむね英国情報部ファーガスン准将と彼が使う工作員のシリーズと、ノンシリーズに分けられる。ノンシリーズは時代も登場人物もまちまちなのだが、本書ではシリーズのレギュラーメンバーが何…

テロ組織<マカベア>の長、ユダ

本書(1997年発表)は、ジャック・ヒギンズのショーン・ディロンものの1冊。以前紹介した「悪魔と手を組め」に続く作品で、英国首相の私兵であるファーガスン准将、バーンスタイン主任警部とディロンの3名が活躍するシリーズだ。1992年「嵐の眼」で主役と…

瀕死のB-787、中国へ

「超音速漂流」(1980年発表)でデビューしたパイロット作家トマス・ブロックが1987年に発表したのが本書。デビュー作同様、危機に陥った旅客機内外で起きるさまざまなトラブルや思惑を描いたものだが、今回の危機の原因はハイジャックである。(デビュー作…

冒険小説好きのガーヴ

以前「ヒルダよ眠れ」を紹介した作者アンドリュー・ガーヴは、本格ミステリーでデビューしたものの本当に書きたかったのは冒険小説。生涯に別名義も加えて40作近い作品があるのだが、デビュー作のような本格ミステリーはほとんどない。ある書評には、とにか…

ヤクザ・Tokyo・日本刀

寡作ながらリアルなバイオレンス小説の旗手であるスティーヴン・ハンター、有名なのはアール・スワガーとボブ・リー・スワーガー父子を主人公にしたシリーズだ。この親子は共に海兵隊出身、ボブ・リーはヴェトナムなどで「ネイラー」とあだ名される凄腕のス…

プロたちの「Private War」

本書(2000年発表)は先月「トロイの馬」を紹介した、J・C・ポロックのアクション小説。レギュラー主人公を持たない作品集だから、本書の主人公は元デルタフォース隊員のベン・スタフォード。例によってふんだんに戦闘シーンや軍用兵器が登場する。これまでは…

東ドイツの共産原理主義

名作「鷲は舞い降りた」などの冒険小説を書いたジャック・ヒギンズが、東西冷戦時代の東ドイツを舞台に「Mission Impossible」風の活劇を描いたのが本書(1978年発表)である。1963年の東西ドイツ国境、フロッセンの街では細々と東から西への亡命者に国境を…

コレクターとの闘い

デイヴィッド・マレルと言う作家の名前を見て、どこかで聞いたなと思った。表紙を見て、砂漠の戦闘小説かなと思って購入し、帰りの列車で解説を見て、マレルのデビュー作は「一人だけの軍隊」だったことを知った。そう、デイヴィッド・マレルは映画「ランボ…

女流アクション作家・・・なの?

本書は米国のミステリー作家ポーラ・ゴズリングのデビュー作で、英国推理作家協会賞を受賞した作品である。この作者の作品を読むのは初めてだが、噂では作風の広い人だという。裏返すと、パターンのない作家という評価も聞こえてくる。 殺し屋につけ狙われる…

アマゾン流域、1938

冒険小説のなかでも航空ものが得意な作者、ジャック・ヒギンズの初期の作品が本書(1971年発表)である。舞台は、第二次世界大戦直前のアマゾン流域中央のエリアである。まだ暗黒大陸と言ってもいい土地だった南米、その中でも地上からの人が簡単に出入りで…

圧巻の山岳冒険ストーリー

冒険小説の重鎮ジャック・ヒギンスの諸作は大好きでまだ何作か残っているのが楽しみなのだが、彼が「比類なき傑作」と評したのが本書である。ボブ・ラングレーという作者の名前は何度か聞いたことがあるが、読むのは初めてだろう。背景や主人公を代えた10作…

「オクトーバー」という好敵手

ジャック・コグリン(&ドナルド・A・デイヴィス)の描く「狙撃手」シリーズの主人公カイル・スワンソンには、同等の狙撃能力を持った好敵手「ジューバ」がいる。これと同じようなテイストの、好敵手物語に出会った。作者のダニエル・シルヴァは、本書が二作…

世界をめぐる大活劇

アンディ・マクダーモットという作家のデビュー作が本書(2007年発表)、考古学者ニーナ・ワイルド博士とSAS出身のボディガードエディ・チェイスを主人公にしたシリーズを7作以上発表しているという。表紙からしてドンパチ中心のアクション小説と思って…

私的多国籍軍のターゲット

フランスだけではないが傭兵部隊というのは、先進国の軍隊にとって必要悪である。早くに先進国になったフランスという国は、人口減少・少子化が早く訪れたので自国の防衛に傭兵隊を重視せざるを得なかった。傭兵というのは実に古い職業で、山岳地帯の国(ス…

ルイジアナ、1943

第一次世界大戦も、第二次世界大戦も、ドイツ海軍にとっての舞台は北大西洋だった。第二次世界大戦において大西洋に放たれた船の大半はUボートだった。日本海軍とは戦術思想の異なるドイツ海軍は、潜水艦の使い方を通商破壊戦に絞っていた。 本書はジョン・…

殺し屋同士の死闘

作者のクリス・ホルムは、エラリー・クイーンズ・ミステリマガジン(EQMM)出身の作家。本書以前にクライムファンタジーと評価される「コレクター三部作」を発表している。読んだことはないが、サイコサスペンスのようなもの(僕のあまり好きでないジャンル…

ルブ・アル・ハーリー砂漠

日本ではあまり報道されていないが、シリアと並んでイエメンの内戦も悲惨な状況にあるらしい。南にアラビア海を臨む国イエメンでは、事実上サウジアラビアとイランの宗教対立からくる代理戦争が続いているのだ。言うまでもなく灼熱の砂漠がかなりの面積を占…

ジェームス・ボンド、2011

007ことジェームス・ボンドが誕生したのは1953年、東西冷戦の始まったころである。人気を博したシリーズであり映画も次々にヒットを飛ばしたが、作者のイアン・フレミングは1964年に急死してしまった。残されたのは長編12作と短編集2編のみ。 映画界は長編…

38式狙撃銃 vs M-1Cガーランド

日本で戦闘/戦争シーンに迫力ある作品というと、どうしてもこの作者柘植久慶を措いては語れないと思う。自らグリーンベレーの尉官として戦ったという経歴の真偽はともかく、戦場の細かなシーンのリアリティは出色である。戦場の衛生環境、食事の摂り方、水…

十字軍の宝剣

空の男を中心にプロフェッショナルの世界を描く作家、ギャビン・ライアル。「深夜+1」や「もっとも危険なゲーム」が有名だが、本書は作者自身が自己のベストと評している作品である。空軍軍人でもあり、狩猟の趣味という作者の飛行機や銃に対する愛情は、…

初代「グレイマン」登場

いろいろな戦争や紛争を背景にして、諜報戦やテロリズムを描き続けたジャック・ヒギンズ。多作家であるが、どれを読んでも一定の水準にある、読み応えある小説に仕上げることができる作家である。複数のペンネームを操る彼だが、ヒギンズ名義では何人かのレ…