新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

アクション小説

圧巻の山岳冒険ストーリー

冒険小説の重鎮ジャック・ヒギンスの諸作は大好きでまだ何作か残っているのが楽しみなのだが、彼が「比類なき傑作」と評したのが本書である。ボブ・ラングレーという作者の名前は何度か聞いたことがあるが、読むのは初めてだろう。背景や主人公を代えた10作…

「オクトーバー」という好敵手

ジャック・コグリン(&ドナルド・A・デイヴィス)の描く「狙撃手」シリーズの主人公カイル・スワンソンには、同等の狙撃能力を持った好敵手「ジューバ」がいる。これと同じようなテイストの、好敵手物語に出会った。作者のダニエル・シルヴァは、本書が二作…

世界をめぐる大活劇

アンディ・マクダーモットという作家のデビュー作が本書(2007年発表)、考古学者ニーナ・ワイルド博士とSAS出身のボディガードエディ・チェイスを主人公にしたシリーズを7作以上発表しているという。表紙からしてドンパチ中心のアクション小説と思って…

私的多国籍軍のターゲット

フランスだけではないが傭兵部隊というのは、先進国の軍隊にとって必要悪である。早くに先進国になったフランスという国は、人口減少・少子化が早く訪れたので自国の防衛に傭兵隊を重視せざるを得なかった。傭兵というのは実に古い職業で、山岳地帯の国(ス…

ルイジアナ、1943

第一次世界大戦も、第二次世界大戦も、ドイツ海軍にとっての舞台は北大西洋だった。第二次世界大戦において大西洋に放たれた船の大半はUボートだった。日本海軍とは戦術思想の異なるドイツ海軍は、潜水艦の使い方を通商破壊戦に絞っていた。 本書はジョン・…

殺し屋同士の死闘

作者のクリス・ホルムは、エラリー・クイーンズ・ミステリマガジン(EQMM)出身の作家。本書以前にクライムファンタジーと評価される「コレクター三部作」を発表している。読んだことはないが、サイコサスペンスのようなもの(僕のあまり好きでないジャンル…

ルブ・アル・ハーリー砂漠

日本ではあまり報道されていないが、シリアと並んでイエメンの内戦も悲惨な状況にあるらしい。南にアラビア海を臨む国イエメンでは、事実上サウジアラビアとイランの宗教対立からくる代理戦争が続いているのだ。言うまでもなく灼熱の砂漠がかなりの面積を占…

ジェームス・ボンド、2011

007ことジェームス・ボンドが誕生したのは1953年、東西冷戦の始まったころである。人気を博したシリーズであり映画も次々にヒットを飛ばしたが、作者のイアン・フレミングは1964年に急死してしまった。残されたのは長編12作と短編集2編のみ。 映画界は長編…

38式狙撃銃 vs M-1Cガーランド

日本で戦闘/戦争シーンに迫力ある作品というと、どうしてもこの作者柘植久慶を措いては語れないと思う。自らグリーンベレーの尉官として戦ったという経歴の真偽はともかく、戦場の細かなシーンのリアリティは出色である。戦場の衛生環境、食事の摂り方、水…

十字軍の宝剣

空の男を中心にプロフェッショナルの世界を描く作家、ギャビン・ライアル。「深夜+1」や「もっとも危険なゲーム」が有名だが、本書は作者自身が自己のベストと評している作品である。空軍軍人でもあり、狩猟の趣味という作者の飛行機や銃に対する愛情は、…

初代「グレイマン」登場

いろいろな戦争や紛争を背景にして、諜報戦やテロリズムを描き続けたジャック・ヒギンズ。多作家であるが、どれを読んでも一定の水準にある、読み応えある小説に仕上げることができる作家である。複数のペンネームを操る彼だが、ヒギンズ名義では何人かのレ…

日系人大統領のテロとの闘い

柘植久慶の作品には、軍隊経験のある日本人が世界の紛争地域で活躍するというものが多い。本書もそのような設定の3部作の第一作。主人公綴喜(ツヅキ)士郎がフランス外人部隊で10年勤めた後、曹長で除隊したところから物語は始まる。 再就職に悩んでいた彼…

ワールドトレードセンター、1988

一昨年グラウンド・ゼロに初めて行ってみて思ったことは、マンハッタン島の南部のこのあたりは世界一といってもいいマネーゲームの街だということ。たまたま会議の場所がアレクサンダー・ハミルトン(金融)博物館だったこともあるが、ウォール・ストリート…

マンハントものの古典

マクシム少佐をレギュラー主人公にした第一作「影の護衛」を読んで、ギャビン・ライアルという作家を見直したので、マクシム少佐以前の作品をもう一度読んでみることにした。ギャビン・ライアルは「影の護衛」以前の7作ではレギュラー主人公を持たなかった…

B-25の奇襲低空爆撃行

ギャビン・ライアルはマクシム少佐シリーズを書く前に、単発ものを7作書いた。本書もそのうちの1冊、1966年の発表である。元戦闘機パイロットであるキース・カーは、カリブ海で細々と運送業を営んでいる。朝鮮戦争では3機の敵機を撃墜したベテランだが、…

グリーンベレー対スペッツナズ

「ミッションMIA」で壮烈なベトナム未帰還兵奪回作戦を描いた、J・C・ポロックの次の作品がこれ。実は日本に紹介されたのは、本書の方が早い。ベトナムで戦った特殊部隊員が、数年の時を経て昔の戦友と一緒に戦うというシチュエーションは同じだが、今…

メキシコ麻薬カルテルとの闘い

アクション・バイオレンス小説でシリーズ化を図ろうとすると、無敵の主人公は設定できても敵役に苦しむことになる。次々に「より強い相手」が必要になるからだ。トム・クランシーの主人公ジャック・ライアンのように大統領にまでなってしまうと、「米中開戦…

仮装巡洋艦「オレゴン」

海が大好きで海洋冒険譚を膨大に公表しているクライブ・カッスラーの、2013年の作品が本書である。これまで国立海中海洋機関(NUMA)の冒険家ダーク。ピットを主人公にしたものがたくさん出版されたが、日本ではその多くが絶版になっているらしい。 ダーク・…

狙撃銃モシンナガンM1891

アンディ・マクナブも、SAS出身の覆面作家である。湾岸戦争で「ブラボー・ツー・ゼロ」という部隊に所属し、イラク軍のスカッドミサイル発射拠点を探るパトロールを指揮した。任務の途中で敵に発見され8名の隊員のうち3名が戦死、マクナブを含む4名が捕虜…

スペンサーを継ぐもの

レンジャー隊員を主人公にしたアクション・犯罪小説は多い。本書も保安官をしていた伯父の葬儀に参列するため、アフガニスタンから10年ぶりに故郷に帰る一等軍曹クウィン・コルソンが地元にはびこる悪人と戦う物語だ。ありふれた設定だが、特に手に取った理…

巨大輸送機の闘い

航空機を中心に据えたミリタリー小説は多いが、輸送機が前面にでてくるものは珍しい。作者のジョン・J・ナンスももちろん軍人だが、巨大輸送機ロッキードC-141の機長をしていたことがあるらしい。 ◆C-141 スターリフター ・全幅 48.74m ・全長 51.29m ・最…

監視社会アメリカ、2012(後編)

ATS(アダプティブ・テクノロジ・ソリューションズ)は国家安全保障会議にも入り込んでいて、極秘抹殺予定者リスト(題名ともなっているブラック・リスト)に勝手に名前を付け加えることも出来る。本来は、オサマ・ビン=ラディンのようなアメリカに敵対…

監視社会アメリカ、2012(前編)

作者ブラッド・ソーはライター、プロデューサーなどを経て「傭兵部隊<ライオン>を追え」でデビューしたミリタリー作家である。驚いたことに共和党のシンクタンク「ヘリテージ財団」のメンバーでもある。本書の中にもブルッキングス研究所のレポートが紹介…

SAS出身の覆面作家

クリス・ライアンという作家は、イギリス軍の特殊部隊SAS(Special Air Service)で狙撃手の務め、湾岸戦争でイラクでの戦果によりミリタリー・メダルを授与されている。湾岸戦争では、スマートな爆弾が使用され目標に向かって軌道を修正しながら命中させ…

インドの軍事スリラー

高級織物カシミアを産し、カラコルム山脈を背景にした美しい土地であるカシミール地方。ここを舞台にした、インド発のミステリーに出会った。ミステリーと言えば英米が主体、フランスのものは少し経験したが、ドイツ・ロシアのものは過去に1編づつしか読ん…

デンマークの現代アクション小説

ギャビン・ライアル「もっとも危険なゲーム」で扱われたのは、銃を持った人間を最後の狩りの相手とするまでエスカレートしたハンターの異常心理だった。この作品は1963年の発表だが、その50年後やはり北欧を舞台にした同じテーマのアクション小説が生まれて…

悪い奴のお金の話

ドナルド・E・ウェストレイクという作家は作風の広い人で、いくつかのペンネームを使い分けている。その一つがリチャード・スターク。かれはこの名前で「悪党パーカー」シリーズを20作近く発表している。その第一作が本書(1962年)。 冒頭ニューヨークと思…

ビン・ラディンを狙った作家

原題の"Black Site" とは、アフガニスタン・パキスタン国境のカイバル峠に置かれた(という設定の)捕虜収容所を示す。タリバンなどの中間指導層を捕えておく、極秘の施設である。よくある落ちぶれた元特殊部隊員が、友人を救うために厳しい訓練で自らを叩き…

トム・クランシーの真価

トム・クランシーはデビュー作「レッドオクトーバーを追え」で北大西洋での潜水艦戦を描いて衝撃的な登場をした。ソ連の最新鋭戦略原潜が西側への亡命を図って行方をくらまし、ソ連海空軍がこれを必死に追うというストーリーだった。膨大な軍事知識がちりば…

ミッション「生死を問わず」

ロバート・B・パーカーのスペンサーシリーズは、最初のころ得意分野を探すように作風・テーマを変え続けた。デビュー作「ゴッドウルフの行方」は、大学の街ボストンを舞台にレイモンド・チャンドラーばりのハードボイルド探偵を描いたものだった。第二作「…