新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

自律分散社会の入り口に

 先日「闇ウェブ」を取り上げた時に、インターネットの奥深い闇のところでは、麻薬や児童ポルノ、銃器、クレジットカード番号、口座情報、ID/パスワードなどが売られていて、その支払いには「足のつかないビットコイン」が使われていることを紹介した。今日はその「ビットコイン」を紹介したい。正確には「闇ウェブ」が言うのは「暗号通貨」のことで、ビットコインはその一つの例である。

 

 インターネットは世界をものすごく縮め、資源(ヒト・モノ・カネ・情報)のうち情報はもちろん、ビデオ会議などによってヒトの流通も簡易化できている。しかし難しかったのはカネ、本書に言う「経済的価値」を送るのには別のスキーム(クレジット決済等)を使わないといけなかった。

 

 それを可能にしたのが、ビットコインをはじめとする暗号通貨である。インターネットは匿名性がメリットなのだが、取引の相手が信用できるかどうかが不透明である。しかし取引相手が誰であれ、経済価値がその人物から送られたことが証明できればいいわけだ。そこで取引情報を過去にさかのぼって全部記録してあれば、今自分の「サイフ」にどれだけの暗号通貨があるかを、自分でも確認できるし他人にも示すことができる。

 

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 問題は「その記録」をどう管理するかである。信用できる管理者でないと困るし、管理コストは安い方がいい。例えばクレジット手数料は5%くらいはある。それをビットコインのようなパブリックブロックチェーン技術を使えば、管理をコンピュータに任せて自動化し、手数料を数桁下げられるこ。ブロックチェーンの特徴を簡単に言うと、

 

・取引のある固まりを数値化し、これを暗号化する。

・正しいと認識された上記の結果を大量の関係機関が記録する。

・これを遡って検証するとき、一部が改ざんされていても残りの多数決で復元する。

 

 というもの。まったく手数料がゼロにならないのは、この「記録」にコンピューティングパワーが必要だからだが、管理は自動的に行われるのでとても安い。本書ではこの技術の応用として、暗号通貨以外にも胴元のいない賭博や社長のいない組織などを挙げている。胴元のいない賭博など、現在の法律体系では対処できない。著者はブロックチェーンを「第三次コンピュータ革命」と言っているが、通貨だけではなく社会全体の革命にいたるものと思われる。そう、僕たちは管理者のいない「自律分散社会」に入ろうとしているのだ。