「K字回復」と言うのだそうだが、「COVID-19」禍でも業績や株価が上昇している企業がある一方、いずれも低迷し倒産か廃業かと苦しんでいる企業も少なくない。だたNYダウも日経平均も数値としては好調で、一部には「バラ撒きバブル」と気象を馴らす人もいる。バブルと言えば、仮想通貨ビットコインも天井知らず。ついに6万ドルを突破したという。
本書は2018年の発表、日経新聞社の複数の記者が広範に取材して、仮想通貨の現状や課題を取りまとめたものである。2017年には「コインチェック事件」があり、過去最高の580億円余りが消えてしまった。同社が管理する仮想通貨NEMの管理口座から、不正な流出があったのだ。NEMが送られた先(ウォレット)は分かっているのだが、それが誰の物かは分からず、差し押さえ等する法的整備も未熟ゆえ、みすみす盗られてしまったというわけ。
そもそも「仮想通貨」の基本要件を満たしていない商品を売り逃げる詐欺のようなものを除いても、「仮想通貨」自体にうさんくささは付きまとう。実際に貨幣を発行するわけではなく、デジタル上の記録として、
・私はあなたに10,000コイン渡しましたね。
・だからあなたは10,000コイン持っていますよね。
と残っているため「通貨」としての役割が保障されるのだ。技術的にはこれらの記録をブロックチェーンという技術で保持することで、価値が担保される。存在するのはネットワークの中で、記録を守る(マイニングという)には膨大な電算機力(要は電力)を必要とする。
通貨は中央銀行による集中管理だが、仮想通貨は「Decentralize」のスキームで動く。2016年までは世界で一番仮想通貨を使っていたのは中国だったが、習大人がこれに気づいて(仮想通貨を人民元の敵とみなした?)強力な規制をかけた。その結果、2018年には円建て決済が一番多くなったという。ただマイニングは電力が安いせいもあって、中国のシェアが高い(今でも75%ほど)。
本書出版のころからバブルを疑われ、習大人には排斥されても、今も仮想通貨を巡る状況に大きな変化はない。ただ価値は増え続けていて、例えばビットコインは6万ドルの線を越えるという。
本書は仮想通貨にからむ犯罪や、その社会インフラとしての課題について平易に教えてくれます。もちろん未来予測はしてませんがね。