新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

プロゴルファー夫妻の息子

 本書はスポーツエージェントで「MBスポーツレップス」の経営者であるマイロン・ボライターが主人公の第四作。アメリカンフットボール、テニス、バスケットボールの世界を舞台にした三作に続き、本書ではゴルフの世界が描かれる。

 

 最もマイロンはゴルフをスポーツとは見ておらず、自分でもやったことはない。エージェントとしてスポーツマン/ウーマンと契約するのだが、ゴルファーとの契約もない。しかし相棒のウィン・ロックウッド三世は、大富豪の家に育ったせいもあってハンディ3という腕前。ただ彼もゴルフをスポーツとして楽しむよりは、貴族のゲームととらえているようだ。

 

 熱血漢のマイロンと違い、冷酷なくらい冷静なウィン。これまでの三作でも、マイロンはウィンに様々な形で助けられてきた。それが今回は、ロックウッド家にもかかわりの深い事件になってウィンは手を貸してくれない。

 

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 ジャックとリンダのコルドレン夫妻は共にプロゴルファー、全米一の実力者であるリンダに比べジャックは20余年低迷している。デビュー間もないころ大きな大会で9打差のリードをして最終日を迎えながら、キャディが間違ったクラブを渡したせいで崩れ優勝を逃した。その十字架をずっと背負ってきたのだが、今年の全米オープンでは、初日から絶好調で2位に8打差をつけている。

 

 ところが一人息子のチャドが行方不明になり、脅迫電話がかかってきた。誘拐なのだろうが、身代金の額を言わない不思議な脅迫者だ。リンダは従兄弟のウィンの友人として知っていた、FBIで捜査経験もあるマイロンに助けを求める。チャドを取り戻してくれたら、「MBスポーツレップス」と契約してもいいと言って・・・。

 

 誘拐の動機はカネか、それともジャックを優勝させないための圧力か、あるいはチャド自身の狂言か・・・。マイロンは捜査の過程で、ジャックやリンダの過去も調べる。それは、高校生の時に知り合った相棒ウィンの少年期にもつながるものだった。誘拐の捜査と、ジャックの全米オープンでの戦いが並行して描かれる。最終日、やはり崩れたジャックは若手選手に首位を譲ってしまうのだが・・・。

 

 マイロンたちの会話に見慣れない名前が多く出てくるのは、TVドラマや映画の登場人物。日本人にはわかりにくいジョークも含めて、読みづらい原因になっている。業界のウラ話として勉強には成るのですが、その辺をはしょってもう少し短くしてくれたらいいのにとは思います。