新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ボディガード、マイロン

 本書はハーラン・コーベンのマイロン・ボライターものの第五作。マイロンは小さなスポーツエージェント会社の経営者。扱うスポーツアメフト・テニス・バスケットボール・ゴルフときて、今回は再びバスケットボール。ただいつものようなスポーツ界の内幕ものというよりは、20年前の事件を追う私立探偵ものに近いストーリーだ。

 

 マイロンは故障でプロの世界での活躍はできなかったが、子供のころからのスポーツマン。スポーツ界に多くの知己がいて、ひとりの重鎮から若いバスケットボール選手のボディガードを依頼される。

 

 重鎮は女子バスケットボールリーグを立ち揚げ中で、彼女ブレンダはその中での中心選手。ただやはりバスケットボールの選手だった父ホレスが失踪するなど、身辺に不穏な動きがある。ホレスは高校時代のマイロンが憧れ、指導も受けた人物だった。マイロンは、ブレンダとのエージェント契約を交換条件に依頼を引き受ける。

 

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 ホレスが失踪前に名家であるブラッドフォード家に何度も電話していたことを知ったマイロンは、ブラッドフォード家とホレスの関係を探るうち20年前にブレンダの母親アニタが同家でメイドを務めていたことをつきとめる。20年前に同家では当主アーサーの妻が事故死していて、その第一発見者がアニタ。しかもその後、アニタは謎の失踪をして現在も行方不明だ。

 

 ブレンダを守りながら20年前の事件を追うマイロンに、ブラッドフォード家の飼い犬たちが脅しをかけてくる。アーサーはニュージャージー州知事選挙に出馬予定で、スキャンダルを徹底的に隠ぺいしようとする。

 

 マイロンが小学生時代は野球に打ち込み、ホームラン王を狙えたというエピソードが紹介される。しかし頭部への死球で、以降野球ができなくなった。事務所の片腕エスペランサは、事件へのスタンスでもやさしさを見せる彼に「あなたはそういうところが弱いのよ」となじる。一方相棒のウィンは優秀な金融コンサルタントで大富豪でいながら、銃器を複数持ち歩き冷徹に相手を倒す。

 

 まるでTVドラマ「Star Trek」のカーク船長とスポック副長のようなやりとりが続く。僕はこのシリーズを「ハードボイルド」に分類するのだが、それはこのウィンの冷徹さが大きい。白人の大富豪なのだが、スペンサーものの暗黒街でのし上がった黒人ホークを思わせる。ちょっと優し気なマイロン、次の作品ではどう変貌してくれるのでしょうか?