本書の著者松沢成文参議院議員(維新の会)には、神奈川県知事時代に一度パネルディスカッションをご一緒させてもらったことがある。場所は茅ヶ崎市、テーマは東海道新幹線が相模川を渡るところに、新幹線の新駅を作ることだった。他の駅間に比べて新横浜~小田原間は長く、間に一駅あってもいいくらいだ。藤沢市側に作るか、茅ヶ崎市側かでもめたが、河の上に作ることで両者は折り合った。あとは地域として新駅を誘致するかどうかと言うところだった。
著者は知事として、僕は地域活性化のデジタル分野の専門家として、他のパネリストと新駅の価値について公開討論したのを思い出す。もちろん楽屋でも地域振興に熱心な著者ゆえ、いろいろなアイデアを披露してもらえた。
最近は参議院議員のゆえかあまり目立たない議員生活だが、ある日藤沢のBook-offで本書を見つけ、懐かしくて買ってしまった。著者は歴史マニアで、あの江戸城を木造で寛永年間にあったように再建する計画だという。
江戸城は太田道灌が最初に建造したのだが、当時は日比谷はまだ入江。利根川は江戸湾に注いでいた。これを北条氏の跡を継いで入府した徳川家康が、大規模改造工事を行って巨大都市の礎を作った。慶長年間に建てられた天守閣は、まだ小規模なもの。これを2代秀忠が元和年間に今の天守台のところに建造、3代家光が5層で全高(天守台除く)45mという大天守に建て替えた。これが「振袖火事」で有名な明暦の大火で全焼、再建されずに現在に至っている。
天守台は本丸の北側、北桔梗門のそばにある。僕は大手町のビルから見下ろして、意外に小さいと思ったこともある。著者は、
・民間資金で寛永当時の技術で再建する。
・復元費用350億円、初年度効果1,000億円以上、雇用8,000人以上。
・東京まるごとテーマパークの中心に位置付ける。
と、この計画を説明する。木組み・瓦葺・石組みなどの職人もまだ残っているので、伝統工芸の継承も可能だと言っている。ただ大きな障壁が3つあるという。
・建築基準法で、木造建築は3階まで
並べただけで、気が遠くなりそうな障壁に見えます。それでも、令和になってから明るいことの少ない日本です。このくらいの夢があってもいいのではないでしょうか?ちなみに松沢氏は横浜市長選に殴りこむ由、健闘を祈ります。