以前「ロシアの核」を紹介したデイル・ブラウンの比較的新しい作品が本書(2004年発表)。作者はB-52の搭乗歴やF-111のテストパイロットだったことを売りに、1986年「オールドドッグ出撃せよ」で作家デビューしている。デビュー作のヒーローである米国空軍のマクラナハンは、10作以上の作品に登場し本書でも主役を務める。
ただ彼の軍や政府での立場は良くない。核軍縮交渉が進む中彼はロシアの核の脅威を主張し、ロシアがシベリアから米国本土を直接攻撃してくると考えて対策を練っている。軍縮派からは邪魔もの扱いされるし、ホワイトハウスや軍上層部にとっては心配の種だ。
ロシアが中部アジアのトルクメニスタンに部隊を展開して攻勢に出ようとするのを、マクラナハン少将は察知する。すぐに無人機による攻撃に出た彼は、ロシア軍部隊をズタズタにするが独断専行を問われて准将に格下げ、実働部隊から外されてしまう。
そんな彼を一番恐れていたのがロシアのグルイズロフ大統領、彼自身パイロット上がりでマクラナハンの考えや動きに注目していたのだ。実はロシアのステパーシン参謀総長(大将)は、マクラナハンの読み通りの方法でシベリアに長距離爆撃機などを集結させ、アラスカから米国本土への核攻撃を計画していたのだ。
米国防衛網の虚を突いたロシア空軍の攻撃はアラスカのレーダー網や空軍基地を無力化、長距離爆撃機から発射された核ミサイルは、米国内陸部の核基地のいくつかを破壊してしまう。混乱に陥ったホワイトハウスと米軍司令部をしり目に、マクナラハンはかつて指揮していた部隊を「超法規的に」動かし、反撃に出る。
とにかくどこまでが現実か分からないほどの種類の新兵器が、両軍ともに登場する。無人機(ドローン)やステルス技術はもちろんのこと、モビルスーツもどきの強化スーツまで出て来て白兵戦を行う。核攻撃後弱った米国相手に和平交渉をしようとしたグルイズロフ大統領だが、マクナラハンの反撃でダメージを受け目論見を失ってしまう。本当にこの規模の核攻撃を応酬すれば、シベリアにも米国内陸部にも「核の冬」が来てしまうように思うのだが。
この種の作品では、常に前作を上回るスケールでの物語展開が求められます。そうはいってもちょっとやり過ぎではないかと思いましたね。