新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

それでもプーチンは闘う

 2022年発表の本書は、以前「米中戦争~その時日本は」を紹介した元東部方面総監渡部悦和氏が、井上武元陸将・佐々木孝博元海将補との対談でまとめたウクライナ紛争(初期)の分析。巻末に、世界はどう変わり、日本はどうすべきかの提案もある。

 

 侵攻開始から2ヵ月半までの戦況、得られた情報の分析だが、やはりロシア軍の不手際が際立っているとの結論だ。

 

プーチン大統領に正しい情報が上がっていなかったが、それは誰もが彼を怖れていたから

・数日でキーウを落とせるとの甘い見通しで、兵力の集結も兵站の準備も不十分

・戦域が西部軍管区、南部軍管区にまたがるのに、統一司令部が無かった

航空優勢が得られないうちの空挺部隊や地上部隊の投入は、あり得ない作戦

・ロシア地上軍は、師団から大隊戦術群(BTG)に再編して戦闘力が落ちていた

・ロシア軍の士気は低く、新鋭電子戦兵器「クラスハ」まで置き去りにして逃げるほど

 

        

 

・クリミア占領から8年、ウクライナ側は電子・情報戦能力を向上させ、新兵器も投入していた

・ゼレンスキー政権は強固な意志を持ち、SNS等も駆使して国内外の協力をとりつけた

・サイバー空間での闘いも米国IT企業らが準備していて、ロシア軍を駆逐した

 

 という次第。それでもプーチン大統領はあきらめず、化学兵器と戦術核兵器くらいは使う可能性があるという。この紛争を各国は注視していて、例えば中国は台湾上陸戦を躊躇し、延期する可能性が高い。米国は本格的な対中戦略展開の前に、ロシアを弱体化させることに努めるが、自ら参戦はしない・・・などとある。

 

 この戦争を見て、日本はどうすべきかについては、

 

・オールドメイン(全領域)戦略の確立と、装備等の充実

・台湾有事は日本有事と考えた作戦展開、その準備や訓練

・戦術、戦略ミサイルを防御する<アイアンドーム>のような防空システム

・空中(UAV)、水中(UGV)ドローンの開発と配備

 

 が必要で、何より防衛費GDP1%枠を撤廃せよとの提言だった。もう憲法改正の話は出ていませんね。軍人が言う話ではないということか、それとももう必要ない、闘うべき時には(憲法がどうあろうと)闘うということかもしれません。