2010年発表の本書は、当時東京都知事だった石原慎太郎氏の「リーダー論」。高名な作家で、政界にユニークな足跡を残した人であり、日本が覚醒するような議論を(ある時は過激に)展開し続けた人である。
日本人に誇りを持たせるためか、真実ではないかもしれないエピソードやレトリックを駆使した人でもある。それらの「?」な点(*1)をいくつか除けば、本書は21世紀の「新君主論」と位置付けてもいい。
作家であり、政治家でもあり、メディア界でも取り上げられる筆者だったから、多くの人に会っている。戦後日本に繁栄をもたらした多くの経営者や政治家、外国の経営者や政治家もしかりだ。
加えて大変な読書家でもあり、歴史上の多くのリーダー像や話したことについて、膨大な知識を持っていた。その知識を今の時代に生きる経営者や政治家にぶつけ、議論し、自分なりに昇華させていった。それらの蓄積が、本書に詰まっている。
武士道精神や自己犠牲を賛美する傾向はあるのだが、リーダーの一面(あくまで一面)としてマキャベリストの顔も必要だと、インテリジェンスの重要性を説いている。例えばチャーチルは「英国の仮想敵はどの国か」と問われて「英国以外の全て」と応えたと、何度か出てくる。
またGEのウェルチCEOは「世界で1~2位になれる事業でなければ整理する」との経営哲学を持っていたと紹介している。日産のゴーンCEOの経営改革は「まやかし」とも言っている。
筆者は学生時代に文壇デビューをし、若くして政界や財界のトップの薫陶を受ける機会を得た。「そのころには大物がいたが、今は小物ばかり」と嘆くのは、自らの年齢や経験あっての差だろう。
多くのリーダー像が詰まった書で、もっと早く読んでおけばよかったと思いました。