新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

身代金は5億ドル

 スコットランド生まれの冒険作家アリステア・マクリーンは、「女王陛下のユリシーズ号」でデビュー、第二作の「ナヴァロンの要塞」が映画化されてヒットし有名になった。生涯で30作余りの冒険小説を書き、おおむね半分の作品が映画化されている。

 

 1976年発表の本書は、作者にとって20作目の作品。舞台はサンフランシスコの金門橋である。米海軍の太平洋岸の有力な基地の多いサンフランシスコ湾、金門湾、サン・パブロ湾と太平洋を、狭い金門海峡が繋いでいる。その海峡に世界一(当時)の吊り橋が完成したのが1937年、全長2,700mあまりの橋である。海軍基地が湾内にあることから、巨大な軍艦がくぐれる高さも必要だった。本書でも、戦艦<ニュージャージー>が橋の下をくぐるシーンがある。

 

 アラブの石油大国(サウジアラビア?)の王と王子、石油大臣が米国を訪問し、大統領一行が出迎えることになった。サンフランシスコ市内に宿泊していた一行は、金門橋を通って空港へ向かう予定だったが、橋の中央に来た時に1ダースほどのテロリストグループに襲撃される。

 

        f:id:nicky-akira:20210330213702j:plain

 

 グループリーダーのブランソンは、参謀役のエッフェンと共に2年の歳月と25万ドルの経費をかけて、この襲撃を計画したのだ。大統領が使う大型の豪華バスの偽物を用意し、周辺警備にあたる海軍のヘリコプターを事前にハイジャックしている。警官の制服を着たブランソンらは、巧みに大統領とそのスタッフ、王族らを監禁する。橋を封鎖し、電波の検知器を作動させ、橋の支柱に爆薬まで仕掛ける周到さに、軍も警察も手が出ない。ブランソンはメディアを前に、大統領や王族の身代金として、5億ドルを要求する。スイスの銀行に振り込まれたのちは、エアフォースワンを使って犯人引き渡し条約のない国へ飛ぶつもりだ。

 

 この計画は実によく練られたもので、作者が実際に決行するつもりで計画したかに思われる。前半はブランソン一味の「活躍」だけが目立つのだが、一行に随行していたメディア記者の中にFBIのエージェント、リブソンが紛れていたことから計画が綻び始める。後半の主役はリブソン、冷静な判断と思い切ったやり方でブランソン一味の目をくぐって当局と連絡を取り、ブランソンらに罠を仕掛ける。

 

 珍しく米国を舞台にしたマクリーンの異色作、後の映画「ホワイトハウス・ダウン」などに繋がる力作と思いました。