新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

安全保障シミュレーション結果Ⅱ

 本書は、昨日紹介した「自衛隊最高幹部が語る台湾有事」と同様、中国軍の台湾侵攻をシミュレートした結果のレポートである。シミュレーションは国会議員10名余で、2022年に実施された。筆者山下裕貴元陸将は、その企画・指導役だった。

 

 数ヵ月に渡って偽情報などを使った「超限戦」を米日台に仕掛け、沖縄を含む軍事基地や社会インフラに、最初はサイバー攻撃、続いてミサイル等を撃ち込んだ後、人民解放軍は、以下の戦力で海峡を渡って来る。

 

・陸上戦力、3個軍集団42万人

・海軍戦闘艦、40隻

・空軍戦闘機、1,000機

 

        

 

 米中共に両国の全面対決は望んでいない。中国は嘉手納など米軍基地には手を出さず、自衛隊専用基地にだけ攻撃をしてくる。米国も3個空母機動部隊は派遣するものの、軍司令部に中国本土への攻撃は禁じていた。

 

 澎湖諸島などを制圧した中国軍は、尖閣・与那国にも襲い掛かる。与那国等の自衛隊は全滅するも、島民退避は成功した。淡水や桃園海岸には橋頭保・埠頭が設置され、中国軍が上陸してくる。輸送船団を日台米の航空部隊が攻撃するが、反撃で米空母1隻が大破する。航行不能になった「レーガン」は、海自の護衛艦が横須賀に曳航していった。しかし中国輸送船団の被害も徐々に増え、西岸数キロを支配した時点で中国軍の進撃は止まった。補給の切れた上陸軍は、ある種の人質のようなものだ・・・。

 

 昨日の「台湾有事」が戦略級シミュレーションなら、本書のは作戦級シミュレーションのように思われる。より細かく部隊配備や行動が規定されていて、兵站を考慮している一方、経済的影響や国民士気などは簡易に扱われていると感じた。

 

 しかしいずれにせよ決定的なのは、米軍がどういう形で関わるかということ。台湾軍と日本の自衛隊だけでは、早晩台湾島は習政権のものになる。それを示してくれただけでも、意味ある2冊でしたね。