新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

<優雅なる住居>誌が招く事件

 1967年発表の本書は、以前紹介したリリアン・J・ブラウンの「シャム猫ココシリーズ」第二作。なんとか<フラクション>紙に職を得たクィラランだが、間借りしていたアパートは家主の死で追い出されることになり、家主から引き継ぐ形になったシャム猫<ココ>ともども、次の住居を探さなくてはいけない。加えて職場の上司からは人事異動を告げられ、今度は日曜版の新設雑誌<優雅なる住居>を担当することになった。

 

 45歳も過ぎて、全く知見のないインテリア・デコレーターの世界を取材する羽目になったクィララン。それでも食うため、(ココのため)未知の世界に飛び込んでいく。富裕層が趣味にあかせて作った邸宅や、先端モダンの住宅を取材していくのだが、早速不幸が<優雅なる住居>誌に襲い掛かる。

 

 まず有名な翡翠収集家テイト氏の住居やコレクションを載せたところ、出版の翌日に強盗が入り高価なコレクションの大半が盗まれ、病弱だったテイト夫人がショックで死亡してしまった。さらに金持ちのプロモーターであるハリーに気に入られて、彼の(今でいう)タワマンに間借りできたのはいいのだが、近所に住む高名なデコレーター、ディビッドの射殺現場を発見してしまう羽目に。

 

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 デコレーターたちの世界も暗闘があって、若くして成功者になったディビッドには敵も多い。デコレーターと知り合いになり豪華な邸宅・インテリアを紹介してもらっているうちに、クィラランはそのことに気づく。またデコレーターのアシスタントを務めるコーキーという女性と付き合い始め、その裏面を深く知るようにもなった。

 

 そんな中、<ココ>はなぜか不機嫌。クィラランが自分よりいい食材を与えているのだが、クィラランの手袋やネクタイ(ウールに限る)をかじって穴をあけてしまう。そしてハリーが大事にしているソファーまで、かじってしまいクィラランは後始末をどうしようかと悩む。そこに登場するのが、猫精神分析医のハイスパイト夫人。雄猫<ココ>の精神不安定を直すには雌猫を飼えと言われ、<ヤムヤム>がクィラランの生活に加わる。

 

 前作にも増して<ココ>の名探偵ぶりは素晴らしい。辞書の単語を指して事件解決のヒントを与えたり、ハーネス(引き綱)でクィラランに襲い掛かる男をぐるぐる巻きにして逮捕してしまう。

 

 ちょっと度外れた物語ですが、シリーズになると違和感も減ります。もっと探してみることにしましょう。