以前クリス・ホルムの「殺し屋を殺せ」を紹介して、マーク・グリーニーには及ばないがとその戦闘シーンを評した。やはり同じような比較をした機関があって、2016年の翻訳ミステリーBest5」では、3位が「殺し屋・・・」5位にグリーニーの「暗殺者の反撃」が入っていた。選考理由はホルム作品が「アクションの密度で勝る」だったと、本書(2016年発表)の解説にある。
そう、本書は「殺し屋・・・」の続編で、主人公は同じ元特殊部隊員の殺し屋マイクル・ヘンドリクス。ハッキング含めた戦友レクターの技術支援を受けて、射撃や格闘はマイクルが担当。何人もの同業者を、仕事の前に葬ってきた。しかし犯罪組織も彼らに気づき、凄腕の殺し屋を差し向けてきた。前作では、殺し屋同士の死闘はマイクルが制したものの、レクターは殺されてしまった。「情報」を得られないマイクルの活動は低調になっていたが、思わぬことから(前作にも登場した)FBI捜査官シャーロットから「死んだはずの男」探しを依頼される。
犯罪組織間の仲介を引き受け「悪魔の赤い右手」と呼ばれた男セグレディは、7年前犯罪組織を離れようとFBIに投降した。しかし自宅を犯罪組織に爆破され、死んだものと思われていた。それが今、ISISがサンフランシスコで起こしたテロ現場でセグレディが目撃されたのだ。FBIやCIAだけでなく犯罪組織の方も、セグレディを(今度こそ)殺そうとする。
犯罪組織に追われることはセグレディ同様のマイクルに、シャーロットは敵の敵は味方と吹き込む。マイクルも犯罪組織の殺し屋から身を隠すより、組織のTOPやセグレディの後任に着いた新しい「右手」を消す方が早いと判断した。曰く「怪物の尻尾から逃げるより、頭を狙うべき」というわけ。
しかし犯罪組織は民間軍事企業<ベラム産業>の精鋭たちを用いて、セグレディを追っている。新しく仲間になった20歳の女ハッカーキャメロンの助けを得て、マイクルは<ベラム産業>や新しい「右手」と戦う準備をする。
「密度が濃い」と評されたアクションだが、今回はそれほどの感動を覚えなかった。どちらかというとマイクルより、年取って死病に犯されているセグレディの方が魅力的。前作の敵役、エンゲルマンほど不気味な相手も出てこない。もちろん水準以上のアクション小説ではあるのですが、これならグリーニーの方が上だと思います。