新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

反新自由主義の研究

 本書は、以前「リベラルは死なない」で旧民進党の政策ブレーンであることを示した慶應大学井手英策教授の近著(2020年発表)。著者は反新自由主義の研究者で、本来「頼り合う社会」であるはずなのに、フリードマンハイエクらの影響で世界経済が互酬、再分配を忘れ交換(商売)に特化してしまったという。

 

 デジタル化やグローバル化が進み、中間層が没落して格差が広がったというのが主張。日本では特に、生保いじめなど没落した中間層がより弱い者を叩くようになっている。無駄を探し出して叩くことも多く、公共事業は非効率だとして民営化の流れも起きた。

 

 著者は、生活に必要なサービスを提供することは利益を求める事業とは異なり、同じ尺度で効率性を図ってはいけないという。そこでの提案は、生活に必要なサービスは全て無償で提供する<ベーシック・サービス>である。

 

        

 

 <ベーシック・インカム>と違うのは、お金は不必要な人にも流れるがサービスなら必要な人しか利用しないこと。無駄は発生しない。ではその財源はどうするのかと言うと、消費増税だとある。医療・介護・教育・障碍者福祉の現在の自己負担額が9.5兆円だから、4%の消費増税で賄える。利用者が多少増えるとしてもあと2%、財政再建と両立させるために+3%で、最大消費税19%で<ベーシック・サービス>は可能だ。

 

 <ベーシック・インカム>で全国民に生活保護(月額12万円)並みの支給をしようとすれば、173兆円の予算が必要。これを消費税で賄うには、62%の増税である。全ての社会保障を全廃しても増税幅は23%必要だ。これを唱える新自由主義政党(維新のことらしい)は、政府責任を「渡し切り」にして放棄するものだと、著者の主張とは似て非なるものという。逆に消費税廃止を唱えるれいわ新選組の主張には、28兆円の財政不足を招く一方、貧困家庭には年額16万円の見返りしかないと一刀両断。

 

 うなずけるところもあるのですが、まだ納得は出来ていませんよ。