新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

10万円一律給付要求のルーツ

 以前、NPO法人「ほっとプラス」の藤田孝典理事の「下流老人」を紹介した。本書はその続編、貧困老人を量産するようになってしまった社会の構造改革はこうあるべきだとの「解決篇」である。著者は現在「10万円一律給付」を求める記事を毎日のように投稿していて、同じ主張を繰り返す根気には敬服する。政府は再度の一律給付はしないと拒否し続けているが、8万人を超える支持があると給付を求め続けている。

 

 前著で、日本では高齢者の経済格差が拡大していて、貧困に陥る老人を守る制度(年金等)が弱すぎると著者は指摘している。前著が世に出た後、多くの人に「ではどうすればいいのでしょうか?資産運用ですか?」などと問われた。自分は「公助」を強化すべきだと主張したのに、読者の方は「自助」のことを考えたと著者は気づいた。

 

 そこで本書では「分断社会を終わらせる」研究をしている経済学者の井手教授(慶應大学)らの助けを借りて、「下流老人問題の解決策」を示している。簡単に言えば、貧困対策をするカネをどうするのかへの回答である。

 

 

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 前著から2年近くたっても、著者の危惧は解消されずより事態は深刻になっているという。多くの高齢者が死ぬまで働かざるを得ない状況だと、著者は言う。無理を重ねて働く姿に、最初の提言は「最低賃金のUP」である。ただ、これは韓国文政権の失敗を繰り返すだけだと思う。

 

 本質的な改革は「共存型の再分配システム」導入で、増税によるより大きな政府と公共サービスの無償化だ。井手教授の挙げるモデルでは、年収200万円の人も1,600万円の人もいるが、(累進)課税をし消費税もUP(20%?)して公務員を増やし、公共サービスの形で一律支給すれば、格差は縮められるというもの。医療もエネルギーも(場合によっては食品も)生活に必要なものは、全部政府から無償提供するということだ。

 

 現金での支給ではなくサービスの支給ならば、必要がない人は受け取らないのでムダが生じない。公共サービスも有償なので、お金がない人は生活そのものが立ちゆかなくなるというわけ。筆者の指向は「一律支給」、現在はこのスキームがないので現金でもいいから一律支給せよという事らしい。しかしこの主張は、資本主義とは言えないように思う。事実上の共産主義ではないか。

 

 香港民主派の人達ではないですが、僕はやはり自由主義・資本主義の世界で生きていたいですね。