昨日、一昨日と新しい分配の在り方についての書を紹介した。
・井手英策「欲望の経済を終わらせる」
・井上智洋「現金給付の経済学」
どちらもが取り上げていたのが、BI(ベーシック・インカム)の議論。前者は<維新の会>が主張するBIでは、消費税率を62%増税するか、社会保障を全廃しても23%増税が要ると批判している。後者は、社会保障を廃止するのは受け入れられず、現在の社会保障に追加する形での導入が望ましいと言っている。
この議論のベースになっている「試算」を知りたくて、本書を買ってきた。著者の鈴木亘氏は学習院大学経済学部教授、大阪市特別顧問として西成特区構想を担当したとあるから<維新>のブレーンと思われる。
「COVID-19」禍で、生活保護、医療、介護、年金の危機が顕わになったという主旨の書で、生活保護が最低賃金労働者よりずっと恵まれていることなどの矛盾を指摘している。これらの分野での行政の過剰な介入を収め、規制緩和と小さな政府で改善を図るというから、著者は井手教授らがいう新自由主義者なのかもしれない。
BIの試算は下記である。
・大人に10万円/月、子供に7万円/月を支給 ⇒ 予算額146兆円
・生活保護の生活扶助と住宅扶助、基礎年金、失業給付を廃止
・消費税の軽減税率を廃止
・以上で約100兆円の予算を削減できる
・残り46兆円を消費税で賄うなら22%の増税、所得税でなら23%増税が必要
・地方交付税交付金での民生事業も、16兆円ほど削減できる可能性がある
なるほど、これなら実現性がある。自治体などの行政業務もスリム化できる。ただ著者はよりマイルドな「給付付き税額控除」を勧めるとも言っています。この議論、行方を見守りたいですね。