昨日「会社を危機から守る25の鉄則」で経営リスクマネジメントの考え方を紹介した。本書はそれよりずっと古い、1974年発表の素人向けの法律書。著者は「赤カブ検事もの」などで知られる和久峻三氏である。以前紹介した1992年発表の「商法面白事典」に先だって、経営リスクをまとめたもの。
難しかったけれど非常にためになったのは、手形(融通手形・指図禁止記載・パクリ詐欺・裏書詐欺・沈め屋・サルベージ屋)、小切手(先日付小切手・偽造の手口)、資金調達(見せ金・預け合い)、商品取り込み詐欺、無尽講などのリスク。デジタル時代になって、新しいカネの流れ(例えば暗号資産)が出来ているが、それらにもアナログ時代と同じような手口が使われるかもしれないと認識しておきたい。
個人的にはこのようなややこしいカネの話には触れたくないのだが、経営となるとそうもいくまい。大手企業なら財務・法務に詳しい専門家を雇えるが、零細企業では経営者のリテラシーが企業の存続を左右することになる。これは昨今のサイバーリスクも同じだ。
その他にも、借地・借家の利用法、独占禁止法にあたるケース、パート社員まで含めた解雇規制、不当景競法にあたるケースなどが紹介されている。似た商号で営業している2店舗のケースでは、函館のカレー屋「小いけ」のことを思い出してしまった。
取引先の重要情報を窃取されたケースは、印刷会社が請け負った取引先情報の磁気テープを夜間侵入してきた泥棒にコピーされたもの。被害額は400万円ほどと算定されたが、窃盗罪は成立せず住居侵入罪だけで1万円以下の罰金で終わったとある。そう「無体財物窃盗」についての問題は、この時点でも明確になっていた。
うまく使えば法律はリスク回避に役立つが、法律を逆用しようとするヤカラが跋扈していることも確かです。それはデジタル時代になっても変わらないですよね。